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新たに学ぶ領域の技術書・専門書の知識定着力と実践力を上げる読書手法

Last updated at Posted at 2023-11-30

はじめに

LITALICOの亀田です。執行役員VPoEとしてプロダクト開発や組織づくりに携わっています。

LITALICO Engineers Advent Calendar 2023 の1日目の記事です。ノッた結果すごい早く書き切れたので今年は1日目として出陣します。クリスマス付近で2記事目も書きます。

前提1(自分の認知特性)

自身の最大の特徴の1つとして「情報処理において、文字情報が得意、それ以外は苦手」という理解をしています。

仕事では、耳や画像からの情報処理は苦手なため、知らない情報が多い内容の議論は全くついていけなくなります。

長年の試行錯誤のすえ、「耳から入る情報を機械的にテキストに書き起こし、書き起こしながら情報を構造的に整理し、議論全体の流れを理解する」という術を身につけて、会議に乗り遅れないよう取り組んでいます。

また、文字情報であらゆる物事を理解し、人に物事を伝えるときには事細かに背景からロジックを書き起こしてから、情報整理をして、伝えるという働き方が当たり前になりました。

日々の気付きや感じたことはすべて文字情報として表さないと「この大事な気付きや感情が失われてしまうのではないか」と不安で落ち着きません。

メモは全部notion(元々evernoteを12年ほど使ってきたが、最近notionへ移行)で調べた所、10年以上はほぼ毎日2000-3000文字くらいメモを書いているようでした。

※余談1:notionへ情報が大量にあるためnotionQAが楽しみです。
※余談2:社内の機密情報は大変意識して記載しないようにしています。

またいろんな認知特性チェックのテストをやっても、テキスト情報が強いと言われます。(例えば、本田40式認知特性チェックは常に辞書がぶっちぎりです。今年は他の項目のほぼ倍近いスコアでした。)

前提2(読書について)

また、そういう特性が相まってか、最大の趣味は読書です。
過去にもこういう記事を書きました。

冊数はあまり意味ない指標ではありますが、技術書やビジネス書は年間200冊~300冊(多面的に情報得るために似たような書籍を複数購入し、要点だけ掴んですぐ終える本もあります)、漫画も込みにすると500~1000冊ほどは毎年読んでいます(漫画が過半数)。

暇さえあれば本を読みたくなります。得意なこと、認知的にストレスなく気持ちが良いことなので、自然と文字を読みたくなるのかもしれません。

なぜ書くか

上記の通り、文字情報の取り扱いが得意であることから、読書からの学びは仕事での成果をより上げるため、自身にとって重要な要素の1つです。

また、「学びを目的として本を読む方」は私がエンジニアという職業でもあるため、仕事柄周りには少なくはない認識をしています。

そして、日々流れるように改善をしてきた「読書からより効率的に学ぶ方法」は、具体的にどういう形か・なぜ良いのかを体系的に整理・分析はしたことはありませんでした。

そこで、本記事を通して行うことで、「自身の理解を更に深め、周囲にもなにか1つでも参考になる知識になったら良い」という思いで、タイトルのようなテーマで書くことにしました。

何を書くか

前提

書籍のタイプを以下5分類してみました

パターン 目的
A. 学術的・専門的知識の提供 世の中の原理原則やスタンダード、アンチパターンの考え方を学ぶ 学術書、ビジネス書、専門書や参考書
B. 実体験・歴史的な事実の紹介 特定の人物や企業、歴史的な出来事の体験談を知る 伝記、自伝、歴史書
C.娯楽・創造性の刺激 楽しい気持ちになる、息抜き、想像力や感性を磨く 小説、漫画、ファンタジー、SF
D.自己啓発・個人的成長 自己改善、生活スキルの向上、個人的な成長を促す 自己啓発書、ライフスタイル書
E.実用的な情報の提供 特定の技術や知識を学び、実生活で活用 料理本、ハウツー本、ガイドブック

タイトルにもあるように、本記事では以下A(学術書、ビジネス書、専門書や参考書)にフォーカスした内容を書きます。
※他のタイプにも共通して生かせる部分もあるかとは思います

概要

技術書・専門書の中でも特に「新たに学ぶ領域」に関する場合と絞ります。エンジニアは様々なレイヤーや幅の知識や手法を継続的に学習する必要があると考えており、そこに合致するやり方を今回は書いてみます。

※「今既にある知識を深める」という観点でも大きな違いはありませんが、異なる部分もあるので、上記記載をしました。

そして、そういったモチベーションで本を読み「仕事に具体的に活かすために、行っている工夫・手法」を書きます。

本題の構成

さて、ここから本題です。
以下のような構成で書いていきます。

  1. 目的とゴール
  2. 本の特徴を理解
  3. 具体的な読み方
  4. その他TIPS
  5. 事例

整理しながら「当たり前のことの羅列」かもしれないですし、自身に特化した学習方法なので「どれくらいの人にフィットしたやり方」なのかも怪しいです。

ただ、私はこれで満足しているので、気にせずに進めます。笑

本題1.目的とゴール

技術書・専門書を読む目的

目的は

  • 新たな考え方・知識を得ることで、より良いアイディアや工夫が行えるようになること

です。

技術書・専門書を読むゴール

ゴールは

  • 1.読了後に本に立ち返らずとも = 自身の脳にアクセスするだけで、
  • 2.本から得た重要な学びが具体的な行動や思考へ明確に表れていること

としています。

自身の脳にアクセスするだけで知識が取り扱え、具体的なアクションへと起こせることで、初めてその本が自身のモノになったといえる。

その積み重ねで、目的としている「良いアイディアや工夫」が実現できると考えるため、このようなゴールを設定しています。

本題2. 本の特徴を理解

書籍の構造

  • 「前半」と「中盤以降」で分けて考える

本の「前半」

  • その書籍の幹となる「概念や定義」が述べられている
  • 前半を半端な理解で進めると、その後も半端な理解 = 扱えない半端な知識となる

本の「中盤以降」

  • 知識を補足する枝葉の事例やニッチだが複雑な課題解決に必要な深い話などがある

イメージ図

アドベントカレンダー_2023_画像.png

補足

  • 各章毎にテーマがぱきっと分けられている本もある(技術書で自分はよく見る)

アドベントカレンダー_2023_画像 (1).png

本題3.読み方の方針

STEP1. 「前半」に多くの時間を割いて、知識の土台をつくる

「前半」について

  • 前半とは
    • 書籍の「前半」 or 章の「前半」のこと
    • 大体 20%〜30%くらい が「前半」に該当すると考えます
  • 前半に投資する時間
    • 私はその書籍に投資する時間のうち「前半」へ 70%~80% を使うことが多いです

「前半」で目指すこと

  • 出てくる専門用語に関する「参考書(ex.言葉の定義、周辺知識との関係性、事例)」を作成
    • 本を「中盤以降」へ読み進める時の、参考書を作成する意識で取り組む
  • 自分の言葉で自信を持って説明できる状態にする
    • 自分で作った「参考書」を読めば自信をもって伝えられる状態を目指す
    • 最終的には参考書なくても口頭でも自信を持って伝えられる状態を目指す

実践のプロセスとポイント

  • フェーズ1.書籍に記載されている内容をメモに残す
    • 1-1. 読みながら大事そうなワードや言葉をメモする
      • 大事とは「太文字や表題にある単語、メインテーマに関係ありそう」な箇所
      • 「前半」は重要なパートが多いので私は結構メモ取ります(書籍全体の5~10%)
      • 迷ったらメモに残します。情報は被っても良いです
    • 1-2. メモは本の流れのままではなく、最低限構造的にまとめる
      • だらっ書くと何も頭に何も残らないので、最低限情報のまとまりを意識します
      • 「◯◯の単語に関する情報、◯◯のテーマに関する情報」くらいの粒度で良いです
      • 私はmarkdown形式でインデントで情報のまとまりを表現します
    • 1-3. まとめながらどういう内容か、どの内容を理解する必要があるか見通しを立てる
      • ここでは、情報の全体観を知るのみ、詳細の理解は不要
      • 必要そうな所を一箇所にメモすることで、まとめや非常にしやすい
  • フェーズ2. 1をもとに参考書を作成する
    • 2-1. まず本書に関係ある用語の定義と理解からはじめる
      • 自身の事前知識に過信しすぎず、基本はここで関係する用語を定義する
      • ここを丁寧に行うほど、書籍から学べることは何倍にも変わると考えます
      • 知っていると思っていても、改めて定義を整理しだすと曖昧だなと気づくことが多いです
    • 2-2. 2-1の定義を軸に、フェーズ1のメモを構造的に最低限の情報へ整理
      • この時、コピペしてサマリーを作らない、ただの写経もしないです
      • 一度頭で理解をして、その結果を記載していきます
      • 結果同じ表記になっても、頭で噛み砕きながら、書くことで理解がぐっと進みます
  • フェーズ3. 一定粒度(章や節)が終わる毎に、整理をおこなう
    • 「調べる→まとめる」を小スパンで繰り返すことで、記憶定着が高まります
    • 記憶定着の話は本記事の最後で記載します(エビングハウスの記憶曲線)
    • 数日や数週間かけて本を読む時にも区切りをつけることが出来ます

全体の流れのイメージ

アドベントカレンダー_2023_画像.png

他補足(ChatGPTの活用)

  • このフェーズではChatGPTに頼ることで学習効率が向上
    • 特に、個別定義はGoogle検索や公式ドキュメントいけば良いが、近しい概念の比較(メリデメ)や事例を出すことで理解の速度がぐっと上がります
  • ChatGPTの活用事例として「NoSQL」を事例に以下プロンプト例を記載
    • ex.プロンプト1:リレーショナルデータベースと、NoSQLデータベースについての違いを其々の概要、メリット、デメリット、活用事例、他重要な補足があれば教えて下さい
    • ex.プロンプト2:NoSQLの中でドキュメント指向型、キーバリュー型、カラム指向型、グラフ型でそれぞれの定義、特徴、メリット、デメリット、活用事例を比較しやすいように教えてください、またもし他の型があれば追記して下さい

STEP2.「中盤以降」は理解に深入りしすぎず気付き等を残す

「中盤以降」の判断

  • 「具体的な事例が多く出てくる」「結構入り組んだ知識で理解が大変と感じる」は自身にとっての「中盤以降」と判断して良い(人の前提知識によって異なる)

「中盤以降」で深入りしすぎない理由

  • 深い知識に入るため、ここでの完璧な理解を目指すと、「投下時間 対 活用できる取得知識」で見た時のROIが悪くなることが多いです
  • その書籍で得る専門性に関して実務で深い問題解決に取り組むことになった場合に、どこをどう調べれば良いかの引き出しになれば良いです

「中盤以降」で目指すこと

  • 前半の知識を前提に述べられることが基本なため、前半の理解度を測る復習パートを主とします
  • なんとなく言っている内容のイメージがわく状態になっていれば良いです

実践のポイント

  • 気になる・面白いなと思ったポイントのみメモに残し、定義の理解を深める
    • 全理解を追求すると大変だが、何も考えずに読み進めても、それは勿体ない
    • メモや整理の仕方は前半と同じようなやり方で良い
  • 私の実践例でいうとメモのボリュームは「前半」が70~80%、「中盤以降」が20~30%
    • たまに深入りしすぎたと反省することもあるので、なんとなくの参考値を用意しておくと、ブレない
  • 体系的知識とは別途「気づいた事、思った事、感じたこと」は雑多にメモを残す
    • 特に「実務でここに関係あるかも」「あの課題はこうかも」「ここに活かせるかも」という感想や気付きは、実践との接続に大変生きる重要な情報となる
    • 「前半」でも気付きや感じたことのメモは重要だが、特に中盤以降に入ると基本知識が身についた後での実践例や深い知識にはいるので、紐づく気付きが訪れるタイミングが増える

STEP3.読み終わった後にすること

行うこと1.「前半」で作成した参考書の最終確認を行う

  • 概要
    • 改めて読み直す、理解や整理のヌケモレが無いかを確認する(復習を兼ねている)
  • 補足
    • これは書籍読了後にも定期的に使うものである

行うこと2.具体的アクションを定義する

  • 実践する理由
    • 実践で更に深まるし、せっかくなら仕事で直接的に生きたらお得なので検討を行う
  • 具体的アクションとは
    • 粒度や内容は以下のようにで様々で良いが具体アクションを1つは頑張って掲げる
  • 具体アクションの事例
    • ex. ◯◯の会議で提案をする、◯◯で勉強会を開く、◯◯の開発で扱ってみる、◯◯について勉強する
  • 具体アクションの考え方
    • 「中盤以降」などで記載した「気づいた事、思った事、感じたこと」がここのアクションを考えるときの良い材料になる。

行うこと3.本書の感想や要約を記載

  • 「感想」
    • 取り組む理由
      • これが直接的に生きるというより、折角なら感想を言語化することは自己理解や新たな気付きにも繋がることが一定あるので取り組んでいる
    • 記載のポイント
      • 自由に改めて全体を読んでどう思ったか、どういう本と感じたか、どこで活かせそうと思ったか、などを折角なので書いている
  • 「要約」
    • 取り組む理由
      • どういう本かを要約することで、本の本質を一言で自分の理解として整理できるし、この抽象度高い最後の整理が、理解の品質を上げると考えるため
    • 記載のポイント
      • 要約の投げ先として自分はX(旧Twitter)やSlackの分報チャンネルで投下
        • Xの140文字を意識すると結局なんの本なのかをシャープにできてちょうど良い
      • サマリを開発するときにChatGPTなどに要約させても意味がない
        • 目的は「自身の脳にアクセスするだけ」で思考や行動に反映できることなので、ここはテクノロジーでの効率化より、自身の頭でまとめる必要性は避けられないと考える

行うこと4.毎月末、その月に読んでまとめてきた参考書や感想や要約を見返す

  • 取り組む理由
    • 少し時間をおいて改めてサマリを読むことで、さらに追い打ちをかけるように知識を定着させる

1つの書籍をまとめた時の全体の構造

アドベントカレンダー_2023_1記事目.png

書籍の前半と中盤以降の各視点での分量

アドベントカレンダー_2023_画像.png

本題4. その他TIPS

読書やまとめる時の環境

  • 専門書はスマホと相性悪い
    • 結構な分量のメモや検索が多いので、スマホ1画面はだいぶ非効率
  • PCやディスプレイで幾つか画面を配置するとかなり効率的
    • 私は以下のような環境で行っています。

アドベントカレンダー_2023_画像.png

人間の記憶に関する研究の活用

概要

  • 「エビングハウスの忘却曲線」の時間軸はある程度意識しています

エビングハウスの忘却曲線とは

  • 「一度記憶した内容を再び完全に記憶し直すまでに必要な時間(または回数)」は記憶に取り組む回数を重ねるほど、短くなる。と解釈しています
  • 参考:忘却曲線

エビングハウスの忘却曲線の活用

  • 新しい領域の専門知識を身につけることは結構難易度が高いと考えています、一発でスパッと覚えることは特に難しい
  • よって何度も何度も調べる、考える、覚えることの繰り返しが重要と考えて、エビングハウスの忘却曲線の時間軸に合わせて、上記のような手法を確立しています

参考図

アドベントカレンダー_2023_1記事目.png

最後に

自分が行っている手法を実際文字に起こしたら、少しややこしく、分かりづらいものになってしまいましたorz

読んで頂いた方々に活用できるポイントがあるか不安ですが、改めて学習習慣のあるべきを整理出来たので、少なくとも自分にとって価値ある整理になったなと思い満足しています。

人類最大の発明の1つが文字と認識していますが、自身の人生においても文字は幸福を支える中心にある重要な要素です。文字に日々感謝しながら、これからも頑張っていきたいと思います。

それでは、明日(2日目)のLITALICOのアドベントカレンダーは

の2記事です。
引き続き、LITALICOをよろしくお願いいたします!

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