こんにちは!このアドベントカレンダーでは、Nim言語で実装されたタプルスペースライブラリ「Ninda」について、初学者の方でもステップバイステップで学べるよう、25日間かけて解説していきます。
このアドベントカレンダーの対象読者
- 並行・分散プログラミングに興味がある方
- 従来のメッセージパッシングやロックベースの同期に疲れた方
- Nim言語に興味がある方
- マイクロサービスやワーカーシステムを構築したい方
- 小規模なバッチ処理から大規模分散システムまで対応したい方
Nindaとは?
Nindaは、1980年代にYale大学のDavid Gelernter教授が提唱した「Linda」という協調言語モデルをNim言語で実装したライブラリです。「Nim」+「Linda」で「Ninda」というわけですね。
タプルスペースは、従来のメッセージキューやアクターモデルとは異なるアプローチで、プロセス間の通信と協調を実現します。その特徴は:
- 匿名通信: 送信者と受信者が互いを知らない
- 連想メモリ: アドレスではなくパターンでデータにアクセス
- 時間的疎結合: データは取り出されるまで残り続ける
- 空間的疎結合: プロセスは同じマシンにいる必要がない
25日間の学習ロードマップ
このアドベントカレンダーは、以下の5つのフェーズに分かれています。
第1フェーズ: 基礎編(Day 2〜8)
タプルスペースの概念を理解し、基本的な操作を習得します。
| Day | タイトル | 内容 |
|---|---|---|
| Day 2 | Lindaモデルとは | タプルスペースの歴史と基本概念 |
| Day 3 | 環境構築 | Nimのインストール、Nindaのセットアップ |
| Day 4 | 基本操作 | write, read, takeの3つの基本操作 |
| Day 5 | パターンマッチング | ワイルドカードと条件検索 |
| Day 6 | 非同期プログラミング | async/awaitとNinda |
| Day 7 | 名前付きスペース | 複数スペースによる整理術 |
| Day 8 | タイムアウト処理 | ブロッキング操作の制御 |
第2フェーズ: 機能編(Day 9〜12)
Nindaの高度な機能を学びます。
| Day | タイトル | 内容 |
|---|---|---|
| Day 9 | イベント通知 | リアクティブなタプルスペース |
| Day 10 | 有効期限(TTL) | 自動的に消えるタプル |
| Day 11 | バルク操作 | 大量データの効率的な処理 |
| Day 12 | 型安全API | マクロで実現するコンパイル時型チェック |
第3フェーズ: 実践パターン編(Day 13〜15)
実際のアプリケーションで使われる設計パターンを学びます。
| Day | タイトル | 内容 |
|---|---|---|
| Day 13 | Producer-Consumer | 生産者・消費者パターン |
| Day 14 | Master-Worker | マスター・ワーカーパターン |
| Day 15 | Blackboard | 知識共有パターン |
第4フェーズ: 永続化・分散編(Day 16〜21)
大規模システムに必要な永続化と分散機能を学びます。
| Day | タイトル | 内容 |
|---|---|---|
| Day 16 | 永続化とWAL | クラッシュからの復旧 |
| Day 17 | 分散システム基礎 | 複数ノードへの展開 |
| Day 18 | CRDT入門 | 結果整合性の仕組み |
| Day 19 | Raft合意 | 強整合性が必要な時 |
| Day 20 | クラスタ構成 | Gossipとメンバーシップ |
| Day 21 | パーティショニング | 大規模データの分散 |
第5フェーズ: 運用・発展編(Day 22〜25)
本番運用のためのベストプラクティスと発展的な話題です。
| Day | タイトル | 内容 |
|---|---|---|
| Day 22 | 障害対応 | 障害検知と復旧戦略 |
| Day 23 | パフォーマンス | チューニングと最適化 |
| Day 24 | 技術比較 | 他の技術との使い分け |
| Day 25 | まとめ | 振り返りと今後の展望 |
各記事の構成
各記事は以下の構成で統一しています:
- 今日のゴール: この記事で学べること
- 背景・概念: 理論的な説明
- 実装: 実際のコード例
- 実践課題: 手を動かして学ぶ課題
- まとめ: 要点の整理
- 次回予告: 次の記事への橋渡し
前提知識
このアドベントカレンダーを読み進めるにあたり、以下の知識があると理解がスムーズです:
- プログラミングの基礎(変数、関数、制御構文)
- 基本的な非同期処理の概念(async/await)
- コマンドラインの基本操作
Nim言語の詳しい知識は不要です。必要な構文は都度説明します。
サンプルコードについて
すべてのサンプルコードは、実際に動作することを確認しています。コードは以下のリポジトリで公開しています:
https://github.com/jasagiri/ninda
それでは始めましょう!
明日からいよいよ本編がスタートします。Day 2では、タプルスペースの歴史とLindaモデルの基本概念について深掘りしていきます。
並行・分散プログラミングの新しいパラダイムを一緒に探求していきましょう!