##はじめに
インフォシェア株式会社です。
この度弊社は、**経済産業省の「行政手続PaaS環境の導入実証・調査事業」に参画し、ローコード・ノーコードのツールを用いてアプリとWebのポータルサイトを構成することでDX(デジタルトランスフォーメーション)**を実現するプロジェクトを進めています。
現在、経済産業省における下記の2つの申請業務について、デジタル化の検討を行っています。
後援名義申請:※現在、検討を進めています
各種イベント等で、経済産業省の後援名義を使用するための申請
オープンイノベーション促進税制申請:※申請の利用を開始しています
オープンイノベーション促進の基準を満たす企業への出資を行った企業が行う税控除申請
プロジェクト全体の概要に関しては下記の記事をご覧ください。
→①経済産業省が進める、「行政手続きのデジタル化」とは。~ Gビズフォームの展開について~
今回の記事のテーマは、ローコード、ノーコードでDXを加速させる試みの全体像です。
超えるべき障害が多くなかなか進まない行政におけるDXですが、DXのメリットはただ入力や処理が効率化するだけではありません。
また、工夫次第では一度作ったシステムの一部をテンプレートとして別の業務を電子的に行うためのシステムに構築に再利用することもでき、ひとたびDXをしてしまえばそれを横展開していくことで加速度的に幅広い業務をDXしていくことも可能です。
行政機関におけるDXを検討している方はぜひ参考にしてみてください。
##Power Platformによるスピード感と柔軟性のあるDX
Power PlartformはMicrosoft社が提供しているローコード・ノーコードの開発プラットフォームです。
詳しくは下記の記事で紹介していますのでぜひご覧ください。
→③【行政のDX】ローコード・ノーコードでのシステム構築を実現するPower Platformとは?
Power Platformに代表されるローコード・ノーコードによるDX実現の利点は
開発のスピードとシステムの流用性の高さです。
通常短くても数か月~1年以上の期間を設けて行う従来のコーディングを基礎としたシステム開発と異なり
ローコード・ノーコードでのシステム構築やアプリ開発は、開発期間に話を絞ると短い場合は2~3週間で開発が完了するケースもあります。
また、標準機能のみで実装されたシステムであれば開発物をテンプレートとして活用することで、データベースや接続先を変更し各業務のニーズに合わせた入力形式やデータ表示を実装するだけで、他の業務用に横展開していくことも可能です。
すでに作成されている別のシステムを参考にシステムを構築していく場合、開発にかかる工数のさらなる圧縮が期待できます。
ローコード・ノーコードならではの開発速度の流用性の高さは、行政におけるDXの加速を実現させる一手になります。
さらに、実際のサービスイメージが湧くような見本となるモックアップも手軽に作成でき、開発中の成果物を触りながらフィードバックループを繰り返し、認識をすり合わせ改善しながら開発を進めることができるというのも魅力です。
「システム開発に慣れておらず、どのようなシステムを作りたいのかボンヤリとしたイメージしかないのでどう実現できるのかよくわからない」という場合でも、実際にシステムが目に見える形で出来ていく過程を見ながら「もっとこうしてほしい」「このような機能はどうか」など相談ができるのは、変化への柔軟な対応が可能なローコード、ノーコードツールによるアジャイル開発の利点です。
イメージがクリアでないままに要件定義を行い、完成した成果物をみて「こんなはずじゃなかった」という思
いをするようでは誰でも幸せになりません。
その点、こまめにフィードバックを繰り返しながら修正を行ってイメージをすり合わせていくことが可能なアジャイル開発では、DXに対する心理的な障壁も軽減されるのではないでしょうか。
##テンプレート化を想定したソリューション~キャンバスアプリ~
今回の経済産業省「行政手続PaaS環境の導入実証・調査事業」における後援名義申請手続きのDXには以下のテーマがありました。
- キャンバスアプリを使用した申請処理のテンプレートとなるアプリを作成すること
- キャンバスアプリを使用した申請処理の業務プロセスを確立すること
Power Appsではキャンバスアプリ・モデル駆動アプリ・ポータルアプリの3種類のアプリを作成することができます。
なかでもキャンバスアプリは最もデザインや機能の柔軟性が高く、一般的に「アプリケーションを作成する」と聞いて想像されるイメージと近いと思います。
今回作成したアプリでは「申請の提案作成」「受付と承認」「全申請の一覧」という申請承認を含む業務プロセスで一般に必要となる機能を実装しました。
↑ ステップバイステップで作業できる申請伺い作成画面 表示されているギャラリーのデータソースやステップ ↑ 申請内容を確認と受付・承認などのタスク実行を一画面で実現申請承認のという業務では**「誰が」「いつ」「何を」「どうしたのか」**を記録していくことが重要となります。
今回の実装では、承認処理を視覚的にわかりやすく実現し、情報の一覧へのアクセスを備えたキャンバスアプリによって「何を」「どうする」についてのミスや混乱を防ぎ、「誰が」「いつ」といった情報はログインユーザーや処理が行われた時刻を自動で取得し記録するという電子申請のメリットを最大限に活かしたソリューションを提示しています。
##テンプレート化を想定したソリューション~モデル駆動アプリ~
本プロジェクトでは、オープンイノベーション促進税制の申請システムをモデル駆動アプリを使用して実装しました。
キャンバスアプリを使用した後援名義申請と同様に以下のテーマを意識して実装を行っています。
- モデル駆動アプリを使用した申請処理のテンプレートとなるアプリを作成すること
- モデル駆動アプリを使用した申請処理の業務プロセスを確立すること
モデル駆動アプリは上記画像のようなデザインで、ビューと呼ばれる一覧リストやレコード内容の詳細確認や変更ができるフォームをベースとしてデータを処理します。
登録されているレコードを一覧で確認したり、フィルターを使って情報を絞り込んだり、ビジュアル化してデータを分析したりする機能に優れます。
キャンバスアプリと比べてデザインと機能の自由度は制限されますが、リッチな標準機能が搭載されておりキャンバスアプリよりも大量のデータを処理することに向いています。
さらにWordやExcelへのデータの吐き出しも標準機能で行うこともできます。
大量のデータをハンドリングする、データ入力はモデル駆動で簡易化するが後でWord文書に吐き出し別の部署にまわす、Excelでデータを分析する、などの業務がある場合は、モデル駆動アプリを選択するのが適切といえます。
Power Appsではローコードでポータルサイトを作成することができます。
ローコードでページ構成やフォーム・ビューの表示を設定でき、サイトとしてWeb上に一般公開することが想定されています。
一般公開されているサイトである以上、URLさえ知っていればだれでもアクセスすることができますが
ポータルでは独自のアクセス制御ルールがあることに加えて、外部の認証基盤を使用可能であり、柔軟なセキュリティ設定が可能となります。
本プロジェクトでは行政サービス向けに特化した認証システムであるgBizIDを使用しました。詳しくは下記の記事をご覧ください。
→⑤行政手続きのデジタル化に最適な認証基盤 -GビズIDとは
ポータルでは、上記にキャンバスアプリを紹介した後援名義申請と、モデル駆動アプリを紹介したオープンイノベーション促進税制申請という2つのサービスについて異なる認証設定をあてることで、利用できるユーザーの区別を明確にする実装を施しました。
認証されたポータル利用者はWeb上で申請作業を行い、必要な情報を書き込みます。
入力された内容は、内部的には省内担当者が使用するキャンバスアプリやモデル駆動アプリに接続されたデータソースに直接書き込まれます。
実際の内部担当者の業務上とユーザーの申請作業上では、ポータルをハブとして情報を相互的にやり取りする感覚でシンプルに申請作業を実施することができます。
ここまでに紹介したキャンバスアプリ・モデル駆動アプリ・ポータルサイトは上記のような関係を構成し、全体のシステムとして申請者と経済産業省内担当者が情報を電子的にやり取りするプラットフォームを提供します。
省内担当者側のインターフェースとしてキャンバスアプリとモデル駆動アプリのどちらを選択するかは、DXを行う実際の常務の性質を踏まえて、自由に選択していただくことができます。
今回は、キャンバスアプリ・モデル駆動アプリそれぞれのテンプレート化をテーマとしていたので、DXを行った2つの業務を各アプリケーションを使用して実現しました。
ポータルサイトには今後増えていくDX事案の受け口として拡張していける構成がなされています。
新たなシステムを横展開していく際には、下記の図のように今回作成したプラットフォームに追加で載せる形で実装することが可能となります。
DXを加速させる布石として作成された今回のプロジェクトは以下のような拡張手順を想定しています。
- テンプレート化されたキャンバスアプリとモデル駆動アプリをベースに新たな省内用アプリを作成する
- ポータルサイト側に新しいシステムの機能を追加し、省内用アプリと合わせて既存のプラットフォームに載せる
この手順では、イチから何かを調査・設計・作成するという手間をかけずにDXの範囲を展開させていくことができます。
上記のような展望をもってをローコード・ノーコードによって加速的にDXを実現していくというのが、今回のプロジェクトの全体像となります。
本プロジェクトをさらに深堀りした具体的な仕組みや、要求機能の実現のためにどのような技術を使用したかという点に関しては、下記の記事で紹介していますので、ぜひご覧ください。