連休最終日は昨日の中国の算数学習用電卓 JOINUS JS-127Kの機能紹介に引き続き、算数学習用電卓の記事。
分数計算のできる算数学習用電卓について調べてみたの記事で紹介したように、現在日本では分数計算のできる算数学習用電卓は販売されていないが、中国では分数計算のできる算数学習用電卓が7セグタイプ・ドットマトリクスタイプとも複数のメーカーから販売されている(中国では小学校計算器の名前で販売されているものが多い)。
今回、中国の7セグタイプの1機種を入手できたことから、過去に販売されていた日本・アメリカの7セグ算数学習用電卓(フリマサイトで入手)と合わせ、動作を比較することにした。
今回扱う4機種
- NU-60(日本) カシオ製、8桁(うち分数表示部4桁)
- AZ-90J(日本) カシオ製、8桁(うち分数表示部4桁)
- fx-55(アメリカ) カシオ製、8桁(うち分数表示部4桁)
- JS-127K(中国) JOINUS製、10桁(うち分数表示部4桁)
分数入力の順序
- 123の後に帯分数キー([と][a])を押し、続けて456と入力した時
- NU-60とAZ-90J(日本)は分母から入力、fx-55(アメリカ)とJS-127K(中国)は分子から入力。
- NU-60とAZ-90Jがこの入力順になっているのは、分数キーの表記が[分の]となっていることから明らかである(読み上げと同じ順序で入力できるようになっている)。
- fx-55とJS-127Kがこの入力順になっているのは、分数キーの表記が[b/c]や[$ \frac{b}{c}$]となっていることから類推できる。関数電卓のキー表記は先に入力するものからアルファベット順に割り当てられていることが多い。
約分
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$ 123\frac{456}{789} $ と入力して[=]を押した時
- AZ-90Jは手動約分機能がない。自動的に約分され、既約分数で答が表示される。
- それ以外の3機種は手動約分機能があるため、勝手に約分はされない。「約分」「Simp」「SIMP」の表示が出て、さらに約分ができることを示す。
約分キーを押して手動約分をするか、[=]キーを押して一気に既約分数の答を出すことができる。
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約分キー([約分][SIMP][SMIP])を押す(AZ-90Jを除く)
- 約分キーを押すと、いくつで約分したかが1秒ほど左詰めで表示される。その後、約分した後の分数が表示される。
- 一度でも約分キーを押すと、[=]表示は消える。
- さらに約分できる分数の場合、「約分」「Simp」「SIMP」の表示が残る。既約分数になったところで「約分」「Simp」「SIMP」の表示が消える。
帯分数の分数部分に仮分数を入力した場合
- $ 1\frac{234}{57} $ と入力して[=]を押した時
- AZ-90Jは自動的に約分、分数部は真分数に直されて答が表示される。
- それ以外の3機種は入力された状態で「約分」「Simp」「SIMP」表示が出る。
- 約分キー([約分][SIMP])を押す(AZ-90Jを除く)
小数分数変換
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0.5と入力して分数小数変換キー([分⇆小][F↔D][F⇆D])を押した時
- 全ての機種で分数表記になる。
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- JS-127Kのみ分数表記になり、カシオ機は小数表記のまま。
- カシオ機は表示桁数の範囲で割り切れない小数は、割り算の直後であっても分数に直せない。
- JS-127Kは直接0.333333333と入力しても分数に変換できないことから、関数電卓のように内部桁数で分数にできるか判断しているようだ。
分数計算
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- AZ-90JとJS-127Kは約分された答を出す。
- NU-60とfx-55は約分されていない答を出す。
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$ \frac{4}{7} + \frac{5}{7} $ と $ 1\frac{1}{7} + \frac{1}{7} $
- AZ-90JとJS-127Kはどちらも帯分数で答を出す。
- NU-60とfx-55は、前者の式は仮分数、後者の式は帯分数で答を出す。
円周率
商とあまり(AZ-90Jを除く)
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12を入力した後、÷あまりキー([÷あまり][÷R])を押して5を入力した時
- NU-60とfx-55は右端に「あまり÷」「R÷」と大きめの表示
- JS-127Kは下部に「÷R」と小さく表示
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- 3機種とも左端から左詰めで商、あまりは「あまり」「R」の文字とともに分数表示上段に左詰めで表示。
まとめ
- アメリカや中国の算数学習用電卓が日本でも無理なく使えるか確かめるために今回比較をしてみたが、分数の入力順序が日本の機種とアメリカ・中国の機種で異なっているため、日本の算数学習用電卓としては使いづらいことが予想される。分子→分母の順に入力するのであれば(キーの数が多いものの)関数電卓でも可能であり、わざわざ海外からこれらの電卓を取り寄せるほどではないかもしれない。
ちなみに今回は7セグタイプで比較したため、アメリカの算数学習用電卓として生産終了モデルのfx-55を紹介したが、後継現行機種のfx-55 PLUSも分数の入力は分子→分母の順である。 - アメリカの分数入力の順序が分子→分母となっているのは、分数の読み上げ順からだろうか(分子→分母序数の順に読み上げ)。動画サイトで英語圏での分数の書き方の動画をいくつか見たが、分数単体では分子→横棒→分母と書くものが多かった(分数の四則演算の途中では分母を先に書く例が見られる)。
- 中国の分数入力の順序が分子→分母となっているのは、fx-55を模したからだろうか。
中国の分数の読み上げ順は日本と同じく分母→分子の順(参考サイト)であり、分数入力も本来は分母→分子の順が理にかなっているはずだ。
Baiduで「数学教师用书 分数」と検索したところ、小学数学人教版三年级教学习用书.pdfのようなページが見つかり、ここには「分数的读写方法:分子 分数线 分母」(分数の読み方と書き方:分子、分数線、分母)と記載がある。この順番で書かれているということは、分子→横線→分母の順に書くということ?
さらに「分数的读写方法」で検索を続けると、Baidu知道の分数的读写法?や分数的写法が見つかった。日本と同じように分数線→分母→分子の順に説明しているものが複数あり、やはり発音通り、分母→分子の順に書く方が一般的と考えた方が良さそうである。
あえて書き方と順序の異なる入力順になっているということは、fx-55や関数電卓の入力方法に準拠したと考えるのが自然であろう。 - カシオ機の小数分数変換の弱さには若干驚いた。関数電卓よりも一般電卓に機能を付加したものに近いソフトウェアなのかもしれない。
一方、JS-127Kは関数電卓のソフトウェアに近く、割り算直後等であれば分数表示桁数の範囲内で分数に変換することが可能である。 - NU-60とfx-55の帯分数処理はよく似ており、不完全な形の分数表示が約分操作後も残ってしまうことがある。算数学習用電卓としては望ましくない。
- JS-127Kは分数計算や小数分数変換で答が出るまで1秒程度かかることがあった。カシオ機が瞬時に答を出すのと比べもどかしさを感じる。