日本ではすでに廃番
かつて日本では分数計算のできる算数学習用電卓がカシオから発売されていた。
一般販売と学販専用で様々な型番の機種が販売されたが、把握できた範囲では4種類に分類できる。
- NU-10 カタログ / AZ-40F(1993) 年表
- AZ-90J(1994) 製品ページ1 製品ページ2 年表
- NU-15 カタログ / AZ-50F(1994) 年表 レビュー / NU-50(2002) 製品ページ1 製品ページ2 ニュースリリース / AZ-51F 製品ページ1 製品ページ2
- NU-60 製品ページ1 製品ページ2 / AZ-60F 製品ページ1 製品ページ2
いずれも8桁で、後ろ4桁が分数表示できるような液晶デザインとなっている。
全ての機種に[と](帯分数入力)[分の](分数入力)[分↔小](分数小数変換)[帯↔仮](帯分数仮分数変換)[%]のボタンがあり、機種によっては[÷あまり][√][1つ消す][円周率][逆数][約分][商のけた][x2][xy][(][)][RAN#]などの機能もある。
アメリカでは別タイプの学習用電卓が販売中
カシオは国別に電卓のラインナップが異なり、アメリカでは分数計算のできる学習用電卓を販売している。
- fx-55 PLUS Fraction Calculator
見た目の形状は関数電卓の初代ES機と同じであり、ディスプレイも同様のドットマトリックス。ES機の機能縮小版とも言えそうである。
日本の学習用電卓にない機能として、Ans(アンサーメモリー)と度分秒計算がある。
この電卓は型番にPLUSという語が付いているが、PLUSの付いていないfx-55もある(画像とマニュアル)。一度リデザインをしたようで、同じfx-55が2種類存在する(画像ページ)。
このfx-55については後で再び触れる。
なお、米アマゾンで fraction calculator と検索すると、TIや地元メーカーと思われる会社の学習用電卓も出てくる。品切れだったりやや高価だったりするので今回は商品ページの紹介のみに止める。
- TI-15 Explorer Elementary Calculator 商品ページ
- Educational Insights See 'N' Solve Fraction Calculator 商品ページ
中国の学習用電卓
さて、この記事を書くことになったきっかけだが、韓国の通販サイトGmarketで電卓を探していたところ、偶然JS-127Kという機種を見つけたことによる。
以前購入したfx-82MSクローンであるJS-82MS-Aと同じメーカー、JOINUSの学習用電卓。
液晶画面がカシオの学習用電卓と同じく、末尾4桁のみ分数表示可能となっている。
ただしカシオ機が8桁に対してJOINUSは10桁。機能もカシオ機と全く同じというわけではなく、平均計算、時間計算、時計・タイマーの機能がある。
JOINUSは中国メーカー。中国では他にも同じタイプの電卓を複数のメーカーが出しているに違いないと中国の輸入代行サイト経由で調べてみたところ、案の定同じ形状の学習用電卓が複数見つかり、加えてドットマトリックスタイプの学習用電卓も見つかった。
で、よくよく調べていくと…。
教科書を作っている人教社(人民教育出版社)から教科書に準拠した電卓が販売されていることがわかった。
小中学生用としては
さらに関数電卓タイプの学生計算器として
が存在する(調べきれていないので他にもあるかもしれない)。
以下、各社が出している関数電卓タイプではない電卓に関して、通販サイトの写真を参考に分類してみる。
PEP-150準拠の7セグタイプ小学計算器
PEP-150と同一デザイン、または色違い・キー形状の違い程度で同一レイアウトのもの。
- 天雁 TY-127 公式ページ 商品ページ例 画像 使用説明書
- JOINUS JS-127K 商品ページ例 画像
- TAKSUN TS-127K(JS-127Kと同色) 商品ページ例 画像
- TAKSUN TS-150 商品ページ例 画像
- TAKSUN TS-190(5色あり) 商品ページ例 画像
PEP-150非準拠の7セグタイプ小学計算器
PEP-150とキー配列等が異なるもの。
PEP-190準拠のドットマトリックスタイプ小学計算器
PEP-190と同一デザイン、または色違い・キー形状の違い程度で同一レイアウトのもの。
PEP-190非準拠のドットマトリックスタイプ小学計算器
PEP-190とキー配列等が異なるもの。
deli旧型に比べてdeli新型の方が退化しているように見えるのだが…。
PEP-290準拠のドットマトリックスタイプ中学計算器
PEP-290と同一デザイン、または色違い・キー形状の違い程度で同一レイアウトのもの。
PEP-290非準拠のドットマトリックスタイプ中学計算器
PEP-290とキー配列等が異なるもの。
deli旧型と比べdeli新型は行列や複素数の計算ができるとの売り文句。
PEP-150の元ネタはfx-55か
さて、このPEP-150だが、中国のとある計算機フォーラムでfx-55が元ネタではないかと指摘する声があった。
Google翻訳した上で該当箇所を引用する。
その原型がCASIOのfx-55であることをご存知ない方もいるかもしれません。
fx-55は、カシオ初の分数計算機能を搭載した電卓です。 1行表示のみですが、右半分は特殊な表示方式を採用しており、分子と分母(最大4桁)を表示できます。
fx-55は比較的充実したスコア計算機能を持っています。これには、帯分数の入力、分数から小数への変換、帯分数から仮分数への変換、分数の約分などが含まれます。計算結果が最も単純な分数でない場合、計算機自体は分数を自動的に約分しませんが、ユーザーに Simp ボタンを押して分数を約分するように促します。 当時、カシオは分数計算に対応した単行表示の電卓fx-65も販売していた。
(中略)
fx-55は、その後のアップグレード版であるfx-55 PLUSでナチュラルVPAM表示スコアを採用し、fx-ES PLUSシリーズの一員となりました。
PEP-150とfx-55、それに国産モデルのAZ-90Jを並べて比較してみよう。
fx-55の方がPEP-150に近い。
機能の追加削減はあるものの、キー表記といい、キー数といい、fx-55を元ネタにした可能性は高そうである。
海外ではまだニーズあり?
実質アメリカと中国の状況を見ただけだが、韓国にも輸入されているところを見ると、分数計算のできる学習用電卓はそれなりにニーズがあるようだ。
中学生くらいになれば関数電卓を使うことができるだろうが、小学生でも気軽に電卓で分数計算をしようとすればこの程度に機能を制約したものの方が使いやすそうである。
日本では分数計算のできる学習用電卓は販売されなくなったが、教育現場で電卓が使われなくなったわけではない。算数では一時期筆算の桁数を減らしたこともあって、桁数の多い数や項数の多い計算を中心に電卓活用が始まり、現在も続いている。
しかしながら、日本における電卓活用はあくまで補助的な位置づけで、試験に使えるわけではない。分数計算も途中の過程を大事にする教育方針となるだろうから、たとえ電卓に分数計算の機能があっても積極的に使われないだろうし、むしろ計算習得の妨げと感じる教員もいるに違いない。そんなこともあって日本で分数計算のできる学習用電卓は普及しなかったと考える。
さて、せっかくここまで調べたので上記の電卓を取り寄せてみることにした。以前中国製の関数電卓を購入する時に使った輸入代行業者を使っていくつか注文。無事受け取ることができたらレビューする予定である。
余談:中国の小学校教科書は計算尺にも触れている
中国の小学計算器を探している過程で、電卓が使用される小学校4年の数学の教材と思われるページを見つけたのだが、何と電卓の導入でそろばんとともに計算尺にも触れているのである(先ほどリンクを貼ったfx-55との類似について言及した計算機フォーラムにも同じページの画像が載っていたので、すでに気づいた方もいるでしょうが)。
実物もない紹介でどれだけの意味があるかはわからないものの、昔の計算道具から計算に興味を持つ子供もいるかもしれない。計算尺マニアが泣いて喜びそうな中国の教科書である。
追記
Xからいくつか拾ってみる。
こういう子供向けに分数計算のできる学習用電卓は必要かもなあ。
進研ゼミ、なかなか侮れない。
これらのことかな。
https://grapers-hill.com/product/214/
https://grapers-hill.com/product/197/
進研ゼミは色々なガジェットを作っていたみたい。