ドコモ先進技術研究所アドベントカレンダー20日目の記事です。
ドコモの中村と申します。この記事では,通信用電源分野の国際会議に参加してきた感想について記載しています。本分野の最新のトレンドなどご興味ある方はご覧いただけますと幸いです。
PEDS2019 (Power Electronics and Drive Systems)
PEDSは、IEEEが主催する2年毎に開催されているパワーエレクトロニクスとドライブシステムに関する国際会議。今回、Toulouse(France)で開催された PEDS 2019は第13回目にあたります。
本会議は、最新の研究成果を議論する技術プログラムと、展示会から構成され、太陽光発電システムからモータードライブなど幅広い発表が行われました。
印象に残ったキーワードについて下記に列記してみます。
- 再生可能エネルギー関連
・ 自律型マイクログリッドシステム(蓄電池群の運転計画)
・ 負荷エミュレータ(再エネの並列接続を想定した整流器のテスト環境)
・ MPPT(予測制御)
・ DSTATCOM(VSIとスーパーキャパシタ適用)
- EMI/EMC
・ GaNトランジスタ適用のカスケードマルチレベルインバータ(全高調波歪み改善)
・ 三相単スイッチBoost PFC(5次高調波抑制)
・ コモンモード伝導ノイズのモデリング(ターミナルポート理論)
・ 2相インターリーブ方式ブーストコンバータ(追加の巻線とダイオード)
- 特定領域への適用
・ IH応用:ソフトスイッチング三相商用周波数交流 - 単相高周波交流直接電力変換器
・ 三相独立型インバータ:Lyapunov関数を用いてモデル化
・ AFER:LCLフィルタの静電容量値を推定
・ ナノサテライト:COEPSAT-2にてマグネットコイルの電流制御を検証
- 電源技術
・ LLC共振コンバータ(カレントダブラ整流回路によるリプル抑制)
・ リバースH3IMC(軽負荷状態改善)
・ グリッド接続VSC(FS-MPCによるAC電圧制御)
ICRERA2019 (International Conference on Renewable Energy Research and Applications)
ICRERAは、IJRER主催・IEEEが共催する毎年開催の再生可能エネルギーシステムやエネルギー源に関する国際会議。今回 Brasov(Rumania)にて開催された ICRERA2019は第8回目にあたります。
本会議では、世界38カ国から296の論文が採択され、オーラルまたはポスター形式で再生可能エネルギー関連の最新の研究成果の発表が行われました。
印象に残ったキーワードについて下記に列記してみます。
- RESs
・ 三相カスケードHブリッジマルチレベルインバータ(比例共振制御)
・ DigSILENTシミュレーションモデル(グリッドに流れるバックグラウンド高調波を考慮)
・ PCS(マルチレベルカスケードインバーターベース)
・ PCS向け L型、L-C型およびL-C-L型のパッシブフィルター(THD分析)
- AI・機械学習
・ 太陽光発電の部分影対策(粒子群最適化アルゴリズム)
・ A/Dコンバータの分解能改善(Nelder–Mead法)
・ 温室効果ガス削減に向けた再エネ発電設備設置の最適化(k平均法)
- スマートグリッド
・ DC-DCブーストコンバータ(MPPTとPIコントローラー)
・ 消費者が気づかない負荷抑制(リビアで実証)
・ 電気自動車向けのワイヤレス電力伝送システム(Maxwell・ANSYS Simplorer使用)
・ 二次増幅器調整システム(Cuttlefish Algorithm)
・ 風力発電システムのための二重給電誘導発電機(無効電力抑制)
・ エアコンに組み込まれたアクティブフィルター(軽負荷時の歪み補償)
- グリーンエネルギーシステム
・ ブラジルにおける太陽光発電と蓄電池の最適化検討(周期的自己回帰モデル)
・ 社会経済的パラメータの検討(損失電力値"VOLL"、活用されないエネルギー"EENS")
・ 西アフリカにおける農村地域向けマイクログリッドシステム(分散型電源)
・ ソーラーパネルとインバータの最適化検討(系統連系インバーターの過剰投資抑制)
最後に
通信用電源技術は、通信技術の進歩、エネルギー需要に占める情報機器の割合の増加、再生可能エネルギーの活用、災害時の早急な復旧の重要性といった時代の要請に基づき、ソフトウェアデファインド電力や直流給電、災害復旧電源といった新たな広がりを見せてきています。これからも世の中の役に立てるような研究に取り組んでまいります。