きっかけ
私が所属している組織はよくあるSlerで、新規Webサービスを利用するのにあたっては、都度社内のセキュリティ部門にリスクアセスメントをしなければならない。そのためかリスクアセスメントを嫌い、サービスの利用を断念する人が続出していました。
その中でやはり巷で流行っているSlackを使ってみたいということ3年前(2015年あたり)にチーム内で勝手に使うことからスタートしました。幸いなことにチームの部門長からは「いいんじゃない?使ってみたら?」という了承を得ていた。近年ではChatOpsで様々な成功事例が出てきたこともあり(最近は働き方改革で注目されている)、組織の上層部にもその重要性が認識され始めてきた。そのため今年度(2017年度)から部門全体で導入することになりました。
導入することにあたっての取り組みや効果などについて以下に綴っていきます。これから導入を考えている方の参考になれば幸いです。また、こんな取り組みもいいですよっというのもありましたら、共有して頂ければ幸いです。
ちなみに全社導入に向けた「500人(全社)規模にSlackを導入する道のり」も記録として残しましたので、ご参考になれば幸いです。
大事なこと
Slackはあくまでもコミュニケーションツール(正式にはコラボレーションツールです)の1つでしかありません。導入にあたって最終的なゴールとして組織文化にしていかなければならないと思います。
また、Slackの広報も言っていますが、Slackはコラボレーションツールであるので積極的にコラボレーション(グループ企業間、部門間、チーム間など)を実施していく組織文化を目指すのであれば、導入してみる価値は十分はあるかと思います!
以降の実践事項を実行していく上で、音頭を取っていく方に対する周りの理解が必要不可欠です
まずは「チャットしている」=「仕事していない」というような先入観は捨てましょう!
導入に向けて
これから導入しよう(したい)と考えている方は、最低限部門やチームリーダークラスの方に了承を得て始めると後の展開がスムーズに進むかと思います。組織全体に導入するのはやはりハードルが高い場合は、まず小さく始めることをお勧めします。Slackに限らずこうしたWebサービスを実際に使ってみないとどうなのか?って判断できないですし、使うからには組織にあった使い方を考えてトライしてみるのがいいと思います。こうしたこともあってか、今年度(2017年度)になって半ばノリで全体で導入しましょうっと提案したところあっさりとやることになってしまって、逆に大丈夫かな。。。って心配しちゃったぐらいですw
なので、組織に導入するためにはそのサービスの価値を認めてもらわないといけない。ただ、字面で事例紹介するよりも身をもって体感することが一番理解を得られる近道ではないかと思います。
取り組み
使ってもらうためにやったこと
- 利用規約を明文化した
自由にどうぞ!と言われても人は困るので、ある程度の規約を明文化することでその範囲内なら大丈夫なんだなという安心感を与えることができる。規約はgistに掲載し、新規参加者には一読してもらうようにしています。また、使い方についてはトピックだけを記載し、マニュアルは作らずに外部リンクで参照してもらっています。
最低限のルールだけを定めましょう!問題がありそうな段階で増やしていけば良いと思います!文化として根付いていない段階であれこれルールがあると使う人の気持ちを削ぐので、結果的に使われないシステムになると思います・・・最初はなによりも「コミュニケーションをする」文化を育てることが大事です!*
【規約サンプル】(ほぼ原文w)
```
目的
チーム間のコミュニケーションの促進を目的とする
また、プッシュ型のコミュニケーションツールとして主体的な情報発信力の醸成を図る
※Slackでのコミュニケーションを強要する目的ではなく、コミュニケーションのきっかけとして利用して気軽にお使い頂ければ幸いです
効果
・散在しているコミュニケーションツール(メール、Googleチャット、Chatter、IPメッセンジャー)を一元化
・チーム間の情報共有を加速させる
・開発チームと非開発チーム間(サポート、営業)のコミュニケーションロスを減らす
・途中参加でも過去の状況を追える
・システム連携やBOTを通して、作業の効率化(ChatOps)
・氾濫した情報をフィルタリングしやすい(特定のキーワードを含む場合のみに通知)
・いつでもどこでも使える(モバイルアプリもある)
・ワークライフバランスには効果的
・絵文字で簡単に返信できるので、気軽にコミュニケーションできる
権限
・MG以上に管理者権限を付与しています
・各チームメンバーの増減に応じて、メンバーの権限付与・凍結を行う
また、各チャネルごとのシステム連携(アドオン)の設定は必要に応じて追加できます
・メンションをしやすくするためにユーザ名は会社メールの@の前の文字列とする
セキュリティ
・すべてのアカウントは2段階認証を必須とする
・顧客提供の資源は投稿しないこと
必要な場合は、ファイルパスのみにしてください
・重要情報を扱う場合はプライベートチャンネルを活用する
・無料WiFiなどのアンセキュアな環境での利用は禁止する
添付ファイル
・ソースコードの添付はOK
ただし、パスワード、認証キーを含むコードを投稿する際は、マスキングしてから投稿してください
・顧客提供の資源や個人情報はNGとする
使い方
・社会人としてマナーを守って利用しましょう
・プライベートな話題、特定の分野の話題などは専用チャンネルを立ててお楽しみください
独り言を垂れ流すチャンネルを作って頂いてもOKです!
・話題が広がりそうな時はスレッドに切り出して討論してください
・ほしい絵文字があれば、自由に追加してください(不快のない範囲)
・BOTやシステム連携がしたい場合は、要望チャンネルに投稿するか管理者にご相談ください
・通知は全体、チャネル別、デバイス別にレベル設定が可能ですので、必要に応じて通知レベルを設定してください
・多数決がしたい時はこちら(絵文字またはPolly)をご利用ください
利用シーン
部門ごとの利用シーンをずらずらと(詳細は割愛)
```
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必要そうなチャンネルをあらかじめ作る
コミュニケーションの場を提供してあげることで、話題を提供しやすくしてくれる【主なチャンネル】 - チームごとの業務用のチャンネル - 技術別のチャンネル - ごはんチャンネル - プロジェクトチャンネル - 全体通知チャンネル(general) - 改善・質問・要望チャンネル
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他社さんの様々な事例を真似てみた
先人の知恵や経験は様々です -
個人がつぶやくための専用のチャンネルを作ってみた
5人チームで、メンバーそれぞれが個人のつぶやきチャンネルを設けたことで、業務連絡以外の個人の状態を把握しやすくなった
オフィスのレイアウト上横並びでメンバーが1席離れただけで、心理的なコミュニケーションコストが上がっていく(文化によるが)ので、このコミュニケーションの障壁を取り除くだけでも十分な効果を発揮していきます -
自分から積極的に利用する
自分をきっかけにして利用者がこのレベルの話ならしてもいいんだという安心感が得られて、コミュニケーションをとるようになる -
使えそうな絵文字をあらかじめ追加しとく
ゲーム好きやアニメ好きの人のためにあらかじめキャラクターの絵文字を登録すると結構反応してくれる!
そしてさらに反応を求めて追加する無限ループw -
自分とは関係ない公開チャンネルにさりげなく参加し、改善できそうな業務があったらBOTやSlack APPの利用を提案する(勝手に作って使ってもらう)
例えば、スプレッドシートで日報を入力していたのをSlackに投稿することでスプレッドシートに日報が保存されるようにする -
困っている人がいたら積極的に助ける(レスポンス速度が大事!)
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ちょこちょこ利用者に「Slackどう?」って聞くことで、たいていSlackに関する質問が返ってきます
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女性社員が使いやすいようにする(積極的に使ってくれるようになる)
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絵文字で即レスポンスする
メールだと見たのかどうかのレスポンスがわからないけど、絵文字でレスポンスすることで他メンバーも追従してレスポンスするようになる -
勝手にチャネルに招待する
特定の話題の話をしているのを漏れ聴きして、勝手にその話題のチャネルに招待するとその場で質問するようになる
ストーカっぽいですがw
結果
本格導入してまだ浅いですが、ざっと感じられた効果は以下になります。
まもなく1年になります
- 普段あまり共通の話題で話す機会がない人とコミュニケーションするようになった
- プライベートチャンネルで人に言えないことを発散している(らしい)
- 普段あまり話さない人がチャットでなら話すようになってた
- アイデア出しをする際に活発に意見が出せるようになった
- 在宅勤務の方の仕事の幅が広がった
- 様々な話題でコミュニケーションの機会が増えてきた
課題
導入まではGoogleのハングアウトメインのコミュニケーションだったため、1:1のチャットが盛んでした。そのため、Slackに移行しても1:1のプライベートチャットが全体の半数以上を占めている。どのようなコミュニケーションを交わされているのかはわかりませんが、オープンなコミュニケーション文化にシフトしていくにはまだ時間がかかりそうです。
また、営業部門がSalesforceのコミュニケーションツールのChatterをメインに使っていることもあり、Slackへの参加率が悪いように感じる。利用シーンを明確にして導線を整理してあげなければならないと感じた。 (グループ全体がSlackをメインで使うようになったので、自然とSlackを使うようになりました)
emoji
コミュニケーションを活発にする上で欠かせないのが、emojiです
使うタイミングを誤ってしまうと大変ですが、使い方次第で思わずクスっとさせ、場を和ませてくれます
また、上司の立場が積極的に使うことで部下も気軽にコミュニケーションしてくれるようになります
※ダークモードでは黒文字の絵文字が見えないこともあるので、そこも考慮しておきましょう
Slackには好きなemojiを登録する機能があります。規定のサイズとフォーマットであれば何でも登録できます
emojiの登録を助けてくれるサービスを紹介します
BOT機能
- 翻訳
翻訳チャンネルを設けて、入力文字を翻訳する
最初はそんなに使われないだろうと思っていたが、思いのほか英文ドキュメントを読んだりする人やコーディング(変数名)している人に使われます - メモ
スレッドに特定の絵文字でリアクションすることでスプレッドシートにそのスレッドの内容が転送される
チャットでフローな情報が飛び交っているが、ストックしたい時に既存のSlackの機能だと管理しづらいこともあって、外部に退避させています - QA
製品のQAをMS QnAMakerでQAチャットボットを作成した
製品を利用する顧客向けに活用する予定だったが、自社内でも製品知識不足があるときに使っています - 勤怠打刻
- 毎月の業務連絡のリマインダー
- 新規作成チャンネルのお知らせ
- 新規参加者にSlack利用規約の読み込みを通知
導入して(まもなく)1年になって
変わったことを箇条書きに書きます
- Slackがすっかり定着し、なくてはならない存在に
「んじゃ、それSlackで送ってください」をよく耳にするようになった - 部門内でのメールはほぼゼロ(他部門からのメールが転送されてくる程度)
- 仕事のこと、プライベートのことも含めてコミュニケーションが捗っている
- 無料プランを利用中のため、過去分が見れなくなって困っている(全社導入まで我慢・・・)
有料プランに加入も検討していた - 共通の話題をチャットベースで話せるので、忙しい合間でも情報共有できるようになった
- 幸いなことにアクティブ人数は50人中48人と高い利用率を誇っている(有料プランなら年払いがいいかも)
- 公開チャンネルも68まで増えた
- プライベートチャットの数は相変わらず高い。うん。。。話したいことを誰かに話せているならそれはそれでいいかな・・・
- チーム間(開発と運用)の連携がスムーズになった
- 新しいチャネルを作ると即参加するような方が増えた