概要
以前の「50人規模の部門にSlackを導入してみた結果」に引き続き、Slackの全社導入に向けた活動内容を紹介させて頂きます。
スタートアップ企業であれば、トップダウンに「Slackを導入します!」のひとことで導入できるかもしれないが、企業規模が大きくなるのにつれて、導入するための理由、コストや効果などの細かいところを説明して、調整していかなければならない。そのような企業文化の中で全社導入を目指す方の参考になれば幸いです。
目次
きっかけ
以前の投稿と多少重複していますが、弊社は独立系Slerで顧客の業種別に部門があるような組織構成になっています。
そのため以下のような問題点があがっています。
- 部門間の情報共有が不足している
- 部門ごとに技術的な格差が広がっている(例:システム保守部門はレガシーな技術のまま)
- 顧客先常駐社員は自社に対する関心が少ない(帰属意識の低下)
- 部門間の知識共有が少ないため、各部門で同じようなことをゼロから始める
- 技術的にわからないこと、案件で相談したいことを気軽に話せる場がない
- 誰に相談していいかわからない
これらの問題に対して現場レベルで改善するべく様々な取り組み(ワークショップの開催、部門間交流会、部門ごとにチャットツールの導入)を行ってきましたが、全社を巻き込んだ動きになりませんでした。
ただ、現場レベルで声をあげ続けたこととちょうど事業方針が変わったこともあり、現状の組織運営のままでは事業方針に沿った活動は困難だという認識を経営層も認識したことで、今年度の初めに改善チームが発足されました。そして、私もその一員として参加することになりました。
ちなみに事業方針をそのまま書くわけにもいかないので、ちょーーー意訳して今風に書くと「イノベーティブに顧客に価値提供していこう」とでもしておきましょう
やったこと
導入するのにあたって、Slackありきで話をせずに回りくどいですが、細かいところの根拠作りをしました。
役職付き以上の社員でやったこと
- 事業方針に沿って、現状の組織課題を確認し、「情報共有」が必要だと再確認した
改善チーム内でやったこと
- 様々なロール(開発者、営業、マネージャ)の情報共有シーンとその価値を洗い出した
例)- マネージャー層は提案や案件の相談をしたいから、相談できる手段があるとうれしい
- 開発者は技術的な相談をしたいから、共通の技術で相談できる場があるとうれしい
- 共通の話題を話したいから、そういった場があるとうれしい
- ほしい情報を選別して得られるとうれしい
- その価値を機能に落としこむ(要件定義w)
例)- いつでも、どこでもコミュニケーションがとれる機能
- テーマ別にコミュニケーションができるチャット機能
- 自由に参加できるチャットルームのような機能
- 大事な話はクローズドにできる機能
- 製品比較
代表3社のチャットツール(Slack、LINE、Chatworks)の特徴と我々が求めている機能と照らし合わせるために、実際に体験版で検証し、評価した。比較結果は「slackとchatworkの機能比較」になります(LINE Worksは未記載) - 中間報告
役職付き以上の社員に途中経過の報告と、方向性の確認をした。
合意を得て進んでいますよっというアピールにつながります - 社内セキュリティ要件の適合
Slackが公表しているセキュリティポリシーだけでは、社内基準を満たせずに、
様々な協議をした上で、以下の条件ということで許可されました- 私物端末にモバイルアプリ版を利用する場合は申し込みが必要
-
ファイルアップロードを禁止(ファイルのリンクのみにすること)
→Botでファイル投稿時に自動削除する - 私物端末のセキュリティの強化(パスワードの複雑化、2段階認証)
- 顧客名、顧客情報の投稿を禁止
- 役員への説得
チャットコミュニケーションよりも直接会ってコミュニケーションをするべきという考えが根強く、Slackなどのチャットサービスに否定的な方がいました。そのため、メールじゃないとダメなの?メールとの違いはなに?などをよく聞かれます。
回答例としては以下になります- チャットはあくまでもコミュニケーションのとっかかりですよと説明する
必要であれば、直接コミュニケーションをすることは変わりはない - 気軽に社外組とコミュニケーションできます
- 後から参加した人も過去の会話履歴が見れる
→顧客からの問い合わせ連絡とかの履歴が残るので、担当者が入れ替わったとしても過去の履歴から対応方法を探すことができる(メールだとできない) - 普段LINE使ってますよね(必殺技)
- チャットはあくまでもコミュニケーションのとっかかりですよと説明する
- コストの算出
予算を確保しなければならないので、年間どのぐらいのコストがかかるのかを算出しました。
Slackはアクティブなユーザに対して課金するプランと年間一括プランと2つありますが、現時点どちらのプランで行くかは決定していないが、おそらくアクティブユーザ数でスタートし、利用状況が多い場合は年間プランに移行すると思います - スケジュール
全社導入に向けたスケジュールの作成 - 段階的に利用開始(←今ココ)
試用部門を募集し、段階的に利用部門を増やしていく
試用期間中に細かい運用ルールの変更をしていく予定 - 利用規約の作成
大事なこと(セキュリティとマナー)だけを規約に盛り込んで、使い方等は別にした
あれもこれも載せると見る気なくすので - 主管部門の配置(システムの運営を管理する部門)
- サクラの配置
質問に回答してくれる、話題作りしてくれるサクラ役を配置し、利用者に心理的安全を与える
改善チームの作業期間
主要メンバーは現在も活動中ですが、前述の要件定義みたいなフェーズは5月~9月にかけて、週一回(約3時間)の活動です
Slackにした理由
機能面ではChatworksやLINEで日本企業文化にフィット(セキュリティ機能)しているが、我々が掲げている目標を達成するためには、SlackがもっともフィットしたことでSlackにしました。
具体的に、SlackとChatworks、LINEで徹底的に異なるのが、コミュニティへの参加しやすさです。
ChatworksとLINEは基本チャットルームへは招待制になっています。そのため、招待されるまでどんなチャットルームがあるのかはわからない。
一方Slackは公開チャットルームと非公開なチャットルームがあるため、誰に聞いていいかはわからないが、とりあえずこの公開チャットルームで聞いてみようといったことができます。また、自分の趣向に合うチャットルームに気軽に参加できるので、自発的なコミュニケーションを形成できると期待できる。
現に以前の投稿にもありましたように、適切なコミュニケーションの場を与えると人は自発的にコミュニケーションを取り、様々な価値を生み出すようになる。これが全社レベルで展開できるのは企業価値を高める大きな効果になると思います。
※Slackはチャネル、LINEWORKSはトークルーム、Chatworksはグループチャットをチャットルームに統一して表現しています
まとめ
いろいろと書きましたが、まとめると以下になります
- 導入目的を明確にすること
- 関係者に説明しづらい場合は、小さい単位で使いながら理解を得る
- 組織文化によりけりですが、ボトムアップよりもトップダウンのほうが物事が進むので、できれば上の方を味方につけて、プッシュしてもらえるように根回ししておく
- 困難に立ちはだかった時は、尻込みせずにどうやってその問題を解決できるのかを考える(妥協案を出せるか)
- お金がないって言われたら、とりあえず無料範囲内でトライしてもらって、ほかの利用者にその必要性を感じてもらい、一緒に声を出してもらおう
まだ導入途中ですが、状況が変化次第また更新させて頂きます!
Slack導入をはじめ、組織改革に取り組む時の心を私なりにまとめました「組織改革をする上での私なりの心得
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