3
4

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

More than 5 years have passed since last update.

Neural Networkで論理演算を実装する

Last updated at Posted at 2018-01-06

Deep Learning」という本(著者 Ian Goodfellow / Yoshua Bengio / Aaron Courville。まもなく日本語訳が出版されるらしい。以下、この本をGYCと呼ぶ)はとても分かりやすい。この本の6.1節で、XORを扱っている。これにヒントを得て、順伝播型ニューラルネットワーク(Feedforward Neural Network)を使って、XORを含むいくつかの論理演算を実現する。

これは、とてもつまらない問題だ。機械学習を行うわけではない。表題に実装という言葉を使ったが、条件を満たすネットワーク構造(変換行列)を頭の中で考えるだけである。しかし、ちょっと面白い。簡単な論理演算をNeural Network(以下ではNNと略する)上に展開することは、NNの理解の大きな助けになる。

問題の定義

規則

ここで、規則を決めておく。

  1. 2個のブール値を$a$、$b$としたとき、2項演算 $c = a \bigtriangleup b$ を求めるのが目的である
  2. ブール値を実数の{0, 1}で表現する
  3. 各層は、前の層に線形変換とバイアス付加を施したのち、活性化関数を施して導出する
  4. 活性化関数はReLU関数を用いる
  5. 複数の解があるときは、層の数が少ない方を正解とする

ここで、活性化関数としてReLU関数

$$ ReLU(x) = max(0, x) $$

を用いたのは、シグモイド関数などを用いるのに比べて、演算結果を正確に{0, 1}に一致させることが出来るからである。隠れ層の活性化関数としては、一般にReLU関数が最も優れているとも言われている。

アフィン変換

線形変換$w$とバイアス$\boldsymbol{b}$を別々に表わすのは煩雑なので、アフィン変換行列$W$で表現する(正確に言うと、アフィン変換ではなくアフィン写像)。すなわち、

$$ \boldsymbol{x}w + \boldsymbol{b} = (\boldsymbol{x},, 1)W = \tilde{\boldsymbol{x}}W$$

である。ここで、入力$x$は左側から作用させている。そのため、$\boldsymbol{x}$も$\boldsymbol{b}$も行ベクトルである。これは、TensorFlowの演算に合せたからである。また、$\tilde{\boldsymbol{x}}$は、$\boldsymbol{x}$を拡張して定数1の成分を加えたベクトルである。

アフィン変換行列 $W$ は形式的に、

$$ W = \left( \begin{array}{c|c} w & 0 \\ \hline \boldsymbol{b} & 1 \end{array} \right) $$

と表せる。要素で表すと、$w$を$n \times m$行列としたとき、

$$ W_{ij} = \left\{ \begin{array}{cl} w_{ij} & (i<=n, j<=m) \\ b_j & (i=n+1, j<=m) \\ 0 & (i<=n, j=m+1) \\ 1 & (i=n+1, j=m+1) \end{array} \right.$$

である。入力ベクトルを左から作用させるため、通常のアフィン変換を転置した形になっている。これにより、$k+1$層 の拡大ベクトル $\tilde{\boldsymbol{x}}_{k+1}$ は、

$$ \tilde{\boldsymbol{x}}_{k+1} = g_{k+1}(\tilde{\boldsymbol{x}}_{k}W_{k+1})$$

と表せる。ここで、$g_{k+1}$ は$ReLU$関数である。出力層の場合は、活性化関数が必要ない場合($g()=1()$)もある。

入力

2個のブール値{0, 1}の演算のパターンは4通りしかない。従って、その4通りの結果を再現できれば正解である。その4通りをまとめて入力とすると(入力パターンを新たな次元とした)

$$ \boldsymbol{x}_{0} = \left( \begin{array}{cc} 1 & 1 \\ 1 & 0 \\ 0 & 1 \\ 0 & 0 \end{array}\right) \tag{1}$$

と表すことができる。アフィン変換のために(1)を拡大book:したベクトルは

$$ \tilde{\boldsymbol{x}}_{0} = \left( \begin{array}{ccc} 1 & 1 & 1\\ 1 & 0 & 1\\ 0 & 1 & 1\\ 0 & 0 & 1\end{array}\right)$$

である。

論理演算

XOR

GYCにならってXORを考える。入力 $(1)$ に対して、XORの出力は、

$$ \boldsymbol{x}_{N-1} = \left( \begin{array}{c} 0 \\ 1 \\ 1 \\ 0 \end{array} \right) \tag{2}$$

とならなければならない($N$は層の数)。

GYCの6.1節では、XORを隠れ層を1つ含む3層で実現している。GYCの結果をアフィン行列で表すと

$$ W_1 = \left( \begin{array}{ccc} 1 & 1 & 0 \\ 1 & 1 & 0 \\ 0 & -1 & 1 \end{array} \right), \quad W_2 = \left( \begin{array}{c} 1 & 0 \\ -2 & 0 \\ 0 & 1 \end{array} \right) \tag{3}$$

と表される。なお、活性化は出力層(第2層)には施さない。この過程を具体的に見てみよう。まず、入力に$W_1$とReLU関数を作用させると、

$$ \tilde{\boldsymbol{x}}_{1} = ReLU(\left( \begin{array}{ccc} 1 & 1 & 1\\ 1 & 0 & 1\\ 0 & 1 & 1\\ 0 & 0 & 1\end{array}\right) \left( \begin{array}{ccc} 1 & 1 & 0 \\ 1 & 1 & 0 \\ 0 & -1 & 1 \end{array} \right)) = ReLU(\left( \begin{array}{ccc} 2 & 1 & 1 \\ 1 & 0 & 1 \\ 1 & 0 & 1 \\ 0 & -1 & 1 \end{array} \right)) = \left( \begin{array}{ccc} 2 & 1 & 1 \\ 1 & 0 & 1 \\ 1 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 1 \end{array} \right) $$

次に、$W_2$を作用させると、

$$ \tilde{\boldsymbol{x}}_{2} = \left( \begin{array}{ccc} 2 & 1 & 1 \\ 1 & 0 & 1 \\ 1 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 1 \end{array} \right) \left( \begin{array}{cc} 1 & 0 \\ -2 & 0 \\ 0 & 1 \end{array} \right) = \left( \begin{array}{cc} 0 & 1 \\ 1 & 1 \\ 1 & 1 \\ 0 & 1 \end{array} \right)$$

上式の定数成分である第2列を取り除けば、式(2)が得られる($N=3$)。

ところで、XORには別の解がある。それは、

$$ W_1 = \left( \begin{array}{ccc} 1 & -1 & 0 \\ -1 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{array} \right), \quad W_2 = \left( \begin{array}{c} 1 & 0 \\ 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{array} \right) \tag{4}$$

である。(4)の別解の方が、GYCの解(3)より少し簡単な形をしているので(バイアスベクトルがゼロである)、実際に使うときには便利だろう。これが解になることは、みなさんに確かめてもらいたい。

論理演算の表

以上のようにして求められた基本的な論理演算について、変換行列を以下の表にまとめる(これが最適な解とは限らない。もっと良い解があれば教えて頂きたい)。論理回路の回路記号も示す(後の記事で使用する)。

演算 $W_1$ $W_2$ 出力 回路記号
AND $\left( \begin{array}{cc} 1 & 0 \\ 1 & 0 \\ -1 & 1 \end{array} \right)$ - $\left( \begin{array}{c} 1 \\ 0 \\ 0 \\ 0 \end{array} \right)$ and.png
OR $\left( \begin{array}{cc} -1 & 0 \\ -1 & 0 \\ 1 & 1 \end{array} \right)$ $\left( \begin{array}{c} -1 & 0 \\ 1 & 1 \end{array} \right)$ $\left( \begin{array}{c} 1 \\ 1 \\ 1 \\ 0 \end{array} \right)$ or.png
XOR $\left( \begin{array}{ccc} 1 & -1 & 0 \\ -1 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{array} \right)$ $\left( \begin{array}{c} 1 & 0 \\ 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{array} \right)$ $\left( \begin{array}{c} 0 \\ 1 \\ 1 \\ 0 \end{array} \right)$ xor.png
NAND $\left( \begin{array}{cc} 1 & 0 \\ 1 & 0 \\ -1 & 1 \end{array} \right)$ $\left( \begin{array}{c} -1 & 0 \\ 1 & 1 \end{array} \right)$ $\left( \begin{array}{c} 0 \\ 0 \\ 0 \\ 1 \end{array} \right)$ nand.png
NOR $\left( \begin{array}{cc} -1 & 0 \\ -1 & 0 \\ 1 & 1 \end{array} \right)$ - $\left( \begin{array}{c} 0 \\ 1 \\ 1 \\ 1 \end{array} \right)$ nor.png
NXOR $\left( \begin{array}{ccc} 1 & -1 & 0 \\ -1 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{array} \right)$ $\left( \begin{array}{c} -1 & 0 \\ -1 & 0 \\ 1 & 1 \end{array} \right)$ $\left( \begin{array}{c} 1 \\ 0 \\ 0 \\ 1 \end{array} \right)$ nxor.png
NOT $\left( \begin{array}{c} -1 & 0 \\ 1 & 1 \end{array} \right)$ - $\left(\begin{array}{cc} 0 \\ 1\end{array}\right)$ not.png

ここで、活性化関数$g_1$は全てReLU関数であり(NOTを除く)、$g_2$は1(活性化しない)である。NOTは単項演算子なので、この場合だけ入力として$\left(\begin{array}{cc} 1 \\ 0\end{array}\right)$を使用している。また、XORにはGYCではなく(4)式の別解の方を示してある。

AND / NORは隠れ層なしの2層だけで表現できるが、OR / NANDには3層が必要であることに注意してほしい。これは、活性化関数にReLU関数を使っていることによる特徴である。

カウンタ

これだけでは面白くないので、上の表を使ってカウンタを実装してみたい(これを、実装と言うのだろうか?)。答えは別の記事(「Neural Networkでカウンタを実装する」)にするが、ここで問題の要件だけを提示しておく。興味のある方は考えていただきたい。複数の実装があるが、最も層の数が少ないものを正解とする。

  1. 1ビットのカウンタ
  2. 入力は、信号ビットとカウンタビット
  3. 出力は、桁上り信号ビットとカウンタビット
  4. 信号ビットが0ならば、カウンタビットは変化せず、桁上りビットは0
  5. 信号ビットが1で、カウンタビットが0ならば、出力カウンタビットは1、桁上りビットは0
  6. 信号ビットが1で、カウンタビットが1ならば、出力カウンタビットは0、桁上りビットは1

これをまとめると、次のようになる。$\boldsymbol{x}_{0}$が入力、$\boldsymbol{x}_{N-1}$が出力である。

$$ \boldsymbol{x}_{0} = \left( \begin{array}{cc} 0 & 0 \\ 0 & 1 \\ 1 & 0 \\ 1 & 1 \end{array} \right), \quad \boldsymbol{x}_{N-1} = \left( \begin{array}{cc} 0 & 0 \\ 0 & 1 \\ 0 & 1 \\ 1 & 0 \end{array} \right) $$

ここで、第1列が信号/桁上りビットであり、第2列がカウンタビットである。

変更履歴

  1. カウンタを作成する問題の解答となる記事を作成して、この記事内にリンクを張った
3
4
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
3
4

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?