こんにちは!
AXLBIT株式会社の@yangです。
本記事はプロジェクトマネージャーを目指している方や、PMP(Project Management Professional)資格を取得したい方を対象に、PMI(プロジェクトマネジメント協会)が発行したガイドブックPMBOKに記載するプロジェクトマネージメントに活用できる知識を説明する【PMP資格保持者が教える】シリーズの第5回です。第4回はこちら
ここでは、PDM(Precedence Diagramming Method:優先関係図法)の基本概念、アクティビティ依存関係、活用方法、そしてスケジュール遅延の対策について説明いたします。
PDMの基本概念
PDMとは、アクティビティ(作業)間の依存関係を定義し、ネットワーク図として表現する方法です。これにより、作業順序を視覚的に把握でき、クリティカルパスの抽出や日程の最適化が可能になります。
アクティビティ間の依存関係
アクティビティ間の関係の異なる特徴に注目し、様々な関係に分類できます。
作業内容の重複部分
- 直列(Sequential):先行作業が完了したときにのみ後続作業が開始されます。
- 重複(Overlapping):先行作業が終了する前に後続作業を開始します。この状況でリスクレベルが高まります。
関連の強さ
- 強制(Mandatory):ハード・ロジックとも呼びます。契約で要求されていたり、或いは作業の性質上内在していたりする関係です。順序を変更することができません。
- 任意(Discretionary):ソフト・ロジックとも呼びます。プロジェクトの特定の適用分野またはある局面において、特定の順序が望まれるというベストプラクティスの知識に基づいて確立される関係です。順序を変更することが可能です。
包括関係
- 外部(External):プロジェクトアクティビティと非プロジェクトアクティビティとの関係です。例えば部品の納入などはこの種類になります。
- 内部(Internal):プロジェクト・アクティビティ間の依存関係。通常はプロジェクト内でコントロールします。
時系列
- 終了-開始関係(FS):もっとも一般的で、前のアクティビティが終了したら、次アクティビティを開始しても良いです。前が終わらないと、次は開始できません。
- 終了-終了関係(FF):前のアクティビティが終了したら、次アクティビティを終了しても良いです。前が終わらないと、次は終了できません。
- 開始-開始関係(SS):前のアクティビティが開始したら、次アクティビティを開始しても良いです。前が開始しないと、次は開始できません。
- 開始-終了関係(SF):前のアクティビティが開始したら、次アクティビティを終了しても良いです。前が開始しないと、次は終了できません。
PDMの活用方法
アクティビティを抽出し、その依存関係を分析した後、日付情報付きプロジェクト・スケジュール・ネットワーク図を作成できます。
作成する前、まず図の中で重要なパラメーターの意味を頭に入れましょう。
- ES:最早開始日
- EF:最早終了日
- LS:最遅開始日
- LF:最遅終了日
- DU:所要期間
所要期間(DU)を使ってクリティカル・パスを確定します
まずアクティビティの時間上の関係でネットワーク図を作成します。
ここは簡単に説明するため、全部のアクティビティが最も一般的な終了-開始の内部直列関係になります。
プロジェクトを完了するため、二つのパスがあります、それぞれの所要期間(DU)の合計が以下計算になります。
パス1:A→B→C→D→E→H:6+8+4+7+5+9=39
パス2:A→B→F→G→H:6+8+13+10+9=46
パス2のアクティビティがパス1より少ないですが、実際は所要期間が長いです。このようなプロジェクト全体の最短所要期間を得られるような最長経路をクリティカル・パスと呼びます。
最早開始日(ES)と最早終了日(EF)を埋めます
次に最初のアクティビティAの最早開始日(ES)を0に設定し、所要期間(DU)の6を加え、最早終了日(EF)が6と分かります。そしてAとBは終了-開始関係のため、Bが最早でも6から開始することになります。このようにすべての作業のESとEFを埋めましょう。
ここでアクティビティHの最早開始日(ES)に注目しましょう。実際にHの開始は二つのアクティビティEとGに依存しますが、その中より遅く終了するのはGになりますから、Gが終わらないとHが開始できまない点を考えると、Hの最早開始日(ES)はGの最早終了日(EF)の37になります。
最遅開始日(LS)と最遅終了日(LF)を埋めます
今回は最後に終了するHから遡って最遅の場合を計算しましょう、Hの最遅終了日(LF)をプロジェクト全体の所要期間の46に設定し、Hの所要期間(DU)の9を除いて、最遅開始日(LS)が37と分かります、そしてプロジェクトが順調に進むため、Hの最遅開始日(LS)が遅れないように、EとGの最遅終了日(LF)に入れます。このようにすべての作業のLSとLFを埋めましょう。
フロートを計算します
ここでアクティビティC、D、Eに注目しましょう。この三つの作業はクリティカル・パス上のものではありませんから、最早の開始日及び終了日は最遅の開始日及び終了日の間に7のずれがあります、この余裕の期間をフロートと呼びます。プロジェクト終了日を遅らせたり、スケジュールの制約条件を逸脱したりすることなく、最早開始日(ES)からスケジュール・アクティビティの開始を遅らせることができる期間をトータル・フロートと呼んで、TFと書きます。
つまり、クリティカル・パスがトータル・フロートが0になるパスです。スケジュール上遅延の余裕がないため、特に注意が必要です。
遅延対策
プロジェクト・スコープを変更せずにプロジェクト・スケジュールを短縮し、スケジュール目標などを満足させるための手法が二つあります。
- クラッシング(Crashing):コストとスケジュールのトレードオフを分析し、リソースの追加などにより期間短縮を図る方法。簡単に言えば同じ作業の担当者を増やし、早めの終了を目指す方法です、この場合はコストの増加に注意すべきです。
- ファスト・トラッキング(Fast tracking):後続アクティビティの開始を早めて並行で実施し、期間短縮を図る方法です。この場合アクティビティ間が重複関係になり、手直しの可能性が高まるためリスクに注意すべきです。
まとめ
PDMは、予測型プロジェクトにおけるスケジュール作成・管理において非常に有効な手法です。アクティビティ間の依存関係を明確にし、ネットワーク図によって作業の全体像と影響関係を可視化することで、納期遵守の可能性を高めることができます。
プロジェクト計画において、なんとなくガントチャートを作るのではなく、「なぜその順序か」「どこがクリティカルか」を論理的に把握するためにも、PDMを積極的に取り入れていきましょう。
本シリーズ集
第1回:【PMP資格所持者が教える】見積手法の解説
第2回:【PMP資格保持者が教える】開発アプローチの比較と選定
第3回:【PMP資格保持者が教える】アジャイル開発フレームワーク・スクラム入門
第4回:【PMP資格保持者が教える】アーンド・バリュー・マネージメントの活用方法の解説