こんにちは!
AXLBIT株式会社の@yangです。
本記事はプロジェクトマネージャーを目指している方や、PMP(Project Management Professional)資格を取得したい方を対象に、PMI(プロジェクトマネジメント協会)が発行したガイドブックPMBOKに記載するプロジェクトマネージメントに活用できる知識を説明する【PMP資格保持者が教える】シリーズの第2回です。第1回はこちら
プロジェクトの開発アプローチを選定することは、プロジェクトの成功において非常に重要です。ここでは、現在主流になっている開発アプローチそれぞれの特徴について解説します。
1. 適応型アプローチ
適応型アプローチ(Adaptive Approach)は、動的な要求事項に対して柔軟に対応できるように設計されており、特に不確実性が高いプロジェクトに適しています。
適応型アプローチは、要求変更に対応する柔軟さや納品の頻度によって、さらに漸進型、反復型、アジャイル型に分類できます。
1.1 漸進型
概要
漸進型(Incremental)は、製品やシステムを段階的に完成させる手法です。部分的な成果物を早期に提供し、段階を追って機能を追加していきます。
特徴
- 動的な要求事項
- 完成前にプロダクトの一部が使用可能
- 頻繁で小規模な納入を繰り返す
- 各納入で顧客からフィードバックを得られる
- 速度を重視
1.2 反復型
概要
反復型(Iterative)は、設計・開発・テストのサイクルを繰り返し、徐々に完成度を高めていく手法です。プロジェクト・スコープが一般的にプロジェクト・ライフサイクルの初期に決定されるが、プロダクトに関する理解がプロジェクトチーム内で深まるにつれ、時間とコストの見積が定期的に修正されます。
特徴
- 動的な要求事項
- 正しくなるまで設計・開発・テストのサイクルを繰り返す
- プロトタイプを使用して確認と改善を行う
- 成果物の納入は一回だけ
- ソリューションの適切さを重視
漸進型との違い
一つの肖像画を描くことを例として違いを説明します。
漸進型においては、まず手を細かく書いて、それをお客様に確認してもらって、問題なければこの段階の絵を直接ファイル化してお客様に納品します、そして同じように胴体を細かく書いて、お客様に確認して更に納品して、最後に顔を書いて、その絵を最終的に納品します。
しかし反復型はそれと違って、まず大体のレイアウトを先に書いて、それをお客様に確認してもらって、お客様の意見を聞いた後、そのまま絵を持ち帰って色を付ける、そしてもう一度お客様の意見を聞いて、最後に細かいレンダリングをして、その完成した絵のみをお客様に納品します。
1.3 アジャイル型
概要
アジャイル型(Agile)、別名「変更駆動型」、は迅速な納入と柔軟な変更対応を重視する手法で、チームの協力とフィードバックのループを中心に進められます。要求事項の変化に対応していく方法で、短い期間で反復を繰り返します。
アジャイル型は最終プロダクトが十分に把握されておらず、ユーザーからのフィードバックを非常に重要視して、複雑性の高い環境のプロジェクトに適しています。
特徴
- 動的な要求事項
- コストと納期が決まって、それに合わせてスコープを決定
- チームの自己組織化を促す
- 変更が比較的容易で、高額なコストは発生しない
- 顧客価値を重視
アジャイル型の価値観
- プロセスやツールよりも人との対話を重視
- 包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを重視
- 契約交渉よりも顧客との協力を重視
- 計画に従うことよりも変化への対応を重視
アジャイル型が求める人物像
- T字型スキル(幅広くて特定分野く深い理解があるスキルタイプ)の持ち主
- チームでの協力を重視する
- 顧客やステークホルダーとの密なコミュニケーションが得意
2. 予測型アプローチ
予測型アプローチ(Predictive Approach)、別名「計画駆動型」「ウォーターフォール型」、は計画を詳細に立て、段階を追って進める手法です。
予測型は要件が明確で、変更が少ない、予測可能性が高いプロジェクトに適しています。
特徴
- 固定された要求事項
- スコープが決まって、それに合わせてコストと納期を見積る
- 成果物の納入は一回だけ
- 変更に対して費用がかかる場合が多い
- コストのマネジメントを重視
プロセス群
PMBOKでは予測型のプロジェクトマネジメント・プロセスを以下の五つに分類し、これらの分類をプロセス群と呼びます。
- 立ち上げ(IN)
- 計画(PL)
- 実行(EX)
- 監視・コントロース(MC)
- 終結(CL)
予測型開発において、プロジェクトライフサイクルをフェーズに分けて、フェーズ内で各プロセス群は重ね合いながら、全体的にPDCA(PLAN計画-DO実行-CHECK確認-ACT処置)サイクルに則って繰り返します。
知識エリア
PMBOKでは予測型のプロジェクトマネジメント・プロセスをその内容によって、更に10の知識エリアに収まります。
- 統合 - 全体の調整と統制
- スコープ - 作業範囲の定義と管理
- スケジュール - スケジュールの策定と管理
- コスト - 予算の計画と管理
- 品質 - 成果物の品質の確保
- 資源 - チームと人的資源の調整
- コミュニケーション - コミュニケーションの管理
- リスク - リスクの識別、評価、対応
- 調達 - 外部リソースやサプライヤーの管理
- ステークホルダー - 利害関係者との関係管理
漸進型、反復型、アジャイル型、予測型の特徴比較
以上の内容をまとめて、適応型の漸進型、反復型、アジャイル型と予測型を表で並べて比較すると、以下の特徴があります
アプローチ | 要求事項 | アクティビティ | 納入 | 重視する点 |
---|---|---|---|---|
予測型 | 固定 | プロジェクト全体で一回実行 | 一回のみ | コストのマネジメント |
反復型 | 動的 | 適切になるまで反復 | 一回のみ | ソリューションの適切さ |
漸進型 | 動的 | 増加分ごとに一回実行 | 頻繁で小規模 | 速度 |
アジャイル型 | 動的 | 適切になるまで反復 | 頻繁で小規模 | 顧客価値 |
3. ハイブリッド型アプローチ
ハイブリッド型アプローチ(Hybrid Approach)は、適応型と予測型を組み合わせたアプローチで、プロジェクトの状況に応じて柔軟に選択します。
特徴
- 一部は予測型で計画し、他は適応型で柔軟に対応
- プロジェクトの要件が一部は固定されているが、一部に変更が見込まれる場合に有効
- 見積やリソース管理は予測型で行い、開発の一部をアジャイル手法で行うなど、状況に合わせた対応が可能
まとめ
プロジェクトの性質やフェーズに応じて、最適なアプローチを選択することが重要です。複雑で変化が多いプロジェクトには適応型が、明確な要件があるプロジェクトには予測型が、両方の特徴が必要な場合にはハイブリッド型が適しています。
この記事が、開発アプローチの選定に役立てば幸いです。
本シリーズ集
第1回:【PMP資格所持者が教える】見積手法の解説
第2回:【PMP資格保持者が教える】開発アプローチの比較と選定
第3回:【PMP資格保持者が教える】アジャイル開発フレームワーク・スクラム入門
第4回:【PMP資格保持者が教える】アーンド・バリュー・マネージメントの活用方法の解説