こんにちは!
AXLBIT株式会社の@yangです。
本記事はプロジェクトマネージャーを目指している方や、PMP(Project Management Professional)資格を取得したい方を対象に、PMI(プロジェクトマネジメント協会)が発行したガイドブックPMBOKに記載するプロジェクトマネージメントに活用できる知識を説明する【PMP資格保持者が教える】シリーズの第4回です。第3回はこちら
ここでは、EVM(Earned Value Management:アーンド・バリュー・マネージメント)の基本概念、主要指標、計算、そして活用方法について説明いたします。
EVMの基本概念
EVMとは、プロジェクトの進捗状況とパフォーマンスを査定するために、スコープ、スケジュール、資源の測定値を組み合わせた方法論です。
EVMはプロジェクト成果物のスケジュール実績とコスト実績の二点を同一の測定尺度(例えば金額など)で、PMB(Performance Measurement Baseline:パフォーマンス測定ベースライン)に基づいて、統合的に評価する手法です。
この評価で現状の分析と将来の予測を把握できます。
EVMの主要指標
EVMの計算の根拠になるため、以下の指標が必要となります。
PV(Planned Value:プランド・バリュー)
予定作業に割り当てられた承認済の予算です。
例:スケジュール上、50%の進捗が求められるタスクの計画コストが100万円であれば、PVは50万円です。
EV(Earned Value:アーンド・バリュー)
その作業を計上された予算で表す遂行作業量です。出来高とも言えます。
例:タスクの計画コストが100万円で、40%完了した場合、EVは40万円です。
AC(Actual Cost:実コスト)
所定の期間においてアクティビティの作業実行時に実際にかかったコストです。
例:作業を完了するために60万円を費やした場合、ACは60万円です。
BAC(Budget at Completion:完了時総予算)
プロジェクト全体に割り当てられた予算を表します。
例:プロジェクト全体で1000万円の予算が割り当てられている場合、BACは1000万円です。
EVMの計算
以下は、EVMで使用される主な計算の結果と関連する計算式の紹介です。
SV(Schedule Variance:スケジュール差異)
\displaylines{
SV=EV-PV
}
計算する時点までに実際に完了した作業と、計画上本来完了しているはずだった作業との差を表したものです。
SV>0の場合、計画より進んでいる状況となります。
SV=0の場合、契約通りの進捗になります。
SV<0の場合、契約より遅れている状況になります。
SVが高ければ高いほど、プロジェクトが順調に進んでいると考えられます。
SPI(Schedule Performance Index:スケジュール効率指数)
\displaylines{
SPI=\frac{EV}{PV}
}
計算する時点におけるスケジュール上の効率を表したものです。
SPI>1の場合、計画より進んでいる状況となります。
SPI=1の場合、契約通りの進捗になります。
SPI<1の場合、契約より遅れている状況になります。
SPIが高ければ高いほど、プロジェクトが順調に進んでいると考えられます。
CV(Cost Variance:コスト差異)
\displaylines{
CV=EV-AC
}
計算する時点までに実際に完了した作業と、実際にかかったコストとの差を表したものです。
CV>0の場合、出来た成果より、コストが少ないことになります。
CV=0の場合、出来た成果通りの実コストが発生したことになります。
CV<0の場合、出来た成果より、コストが多いことになります。
CVが高ければ高いほど、プロジェクトのコストは節約できていると考えられます。
CPI(Cost Performance Index:コスト効率指数)
\displaylines{
CPI=\frac{EV}{AC}
}
計算する時点におけるコスト上の効率を表したものです。
CPI>1の場合、出来た成果より、コストが少ないことになります。
CPI=1の場合、出来た成果通りの実コストが発生したことになります。
CPI<1の場合、出来た成果より、コストが多いことになります。
CPIが高ければ高いほど、プロジェクトのコストは節約できていると考えられます。
EAC(Estimate at Completion:完了時総コスト見積)
\displaylines{
EAC=\frac{BAC}{CPI}=\frac{BAC \times AC}{EV}
}
プロジェクトの現在のコスト効率に基づいて、予測する最終コストです。
ETC(Estimate to Complete:残作業見積)
\displaylines{
ETC=EAC-AC
}
プロジェクトの完了に今後必要な金額です。
EVMの活用方法
EVMは、以下のような場面で役立ちます。
進捗のモニタリング
EVMは、プロジェクトの進捗状況を数値で可視化します。例えば、SPIが0.8であれば、スケジュールが20%遅れていることが分かります。
コストの管理
CPIやCVを使用して、現在のコスト状況を確認し、将来的な予算超過を予測します。
予測と意思決定
EACやETCを使用して、完了時の予算超過や遅延を予測します。これにより、プロジェクト計画の見直しや資源の再分配を行う判断材料を得ることができます。
まとめ
EVMを活用することで、プロジェクトのリスクを管理し、より効率的で成功率の高いプロジェクト運営を実現できます。プロジェクト管理者やチームメンバーにとって、EVMは非常に有用なツールです。
本シリーズ集
第1回:【PMP資格所持者が教える】見積手法の解説
第2回:【PMP資格保持者が教える】開発アプローチの比較と選定
第3回:【PMP資格保持者が教える】アジャイル開発フレームワーク・スクラム入門
第4回:【PMP資格保持者が教える】アーンド・バリュー・マネージメントの活用方法の解説