背景と目的
文化や開拓は、その時代の人々を生き生きとさせる。
長期思考で求められることは、その時代と未来の時代、どちらも生き生きとさせることを狙う。
1. 未来への影響
1.1. よき祖先(グッド・アンセスター)
文化思想家のローマン・クルツナリックは「グッド・アンセスター」で、
時をめぐる綱引きとして、短期思考と長期思考の6つの綱引きを示した。
時をめぐる綱引き
下記表は、グッド・アンセスター P24を一部加工
| 視点 | 短期主義に引きずり込む6つの力 | 長期思考の6つの方法 |
|---|---|---|
| 時間軸 | 数分〜5年 | 百年〜数世代~1万年 |
| 時計 | 時計の専制 中世以来の時間の加速 |
ディープタイムの慎み 宇宙時間における瞬きの存在である自覚を持つ |
| マインドセット | デジタル・ディストラクション テクノロジーに乗っ取られる注意散漫な意識 |
レガシー・マインドセット 後世によく語り継がれる |
| 公共性 | 場当たり的政治 次の選挙ばかり気にかける近視眼 |
世代間の公正 7世代先まで考える |
| プロジェクト | 投機的資本主義 景気の浮き沈みの大きい金融市場 |
大聖堂思考 人間の寿命を超えたプロジェクトを計画する |
| 変化 | ネットワーク化された不確実性 世界的リスクや汚染の上昇 |
全体論的な未来予測 文明のための複数の道筋を描く |
| 目標 | 永遠の進歩 終わりのない経済成長の追求 |
超目標 かけがえのない地球の繁栄のために努力する |
今、みずからに問いかけなければいけない。
"僕らははたして、よき祖先であろうか"と。
ジョナス・ソーク
グッド・アンセスター P9
現在の私たちは、"未来を植民地化しているのではないか"と警鐘をならしている。
1.2. 時間の意識レベル
ここでいう意識とは、自分で管理して行動する時間の長さを指す。
長期思考では、L18以上を指す。
"短期主義に引きずり込む6つの力"は、多くの人の意識レベルを下げる力となっている。
その力に抵抗し、押し上げるために"長期思考の6つの方法"を提案している。
[00] 10秒 赤ちゃん
[01] 15分 子供(4才ぐらい)
[02] 45分 小学生入学時
[03] 90分
[04] 6時間 小学生低学年
[05] 1日 小学生の目標最低レベル
[06] 3日
[07] 1週 中学生の目標最低レベル
[08] 2週 高校生の最低レベル
[09] 1月 大学生の最低レベル
[10] 3月 社会人の最低レベル、企業の決算期間(四半期)
[11] 6月
[12] 1年 社会人全員に欲しいレベル、企業の決算期間(FY)
[13] 3年
[14] 5年 親が持って欲しいレベル、多く企業の中期計画
[15] 10年
[16] 30年 人生の達人、木を育てるスパン
[17] 50年 文化ができるスパン
[18] 100年 森を作るスパン
[19] 300年 多くの文明が終わるスパン
[20] 1000年
[21] 1万年
[22] 10万年 遺伝子が進化するスパン
[23] 100万年 種が分かれるスパン
[24] 1000万年 地質学者のスパン
[25] 1億年
[26] 100億年
[27] 未来永劫
1.3. 論語と算盤
2025年現在の1万円札に描かれている渋沢栄一(1840-1931)は、
儒教の"論語"と資本主義"算盤"をバランスが大事だと説いた。
(渋沢栄一が内閣を辞職した経緯)
わたしの辞職の原因はこうだ。当時のわが国は政治でも教育でも、着々と改善していくべき必要があった。しかしなかでもわが日本は、商売がもっとも振るわなかった。これを振興していかないと、日本は豊かになっていくことができない。これは何としても、他の方面と同時に商売を進行させなければならないと、と考えたのだ。
現代語訳 論語と算盤 P22より
"長期思考の6つの方法"での"全体論的な未来予測"をもとに、変化を起こした事例だろう。
論語と算盤は1916年に発行された。栄一が実業家として活動し始めたのは1873年。
日本は経済的には1970年ごろには先進国の仲間入りをした。約100年の期間である。
2. 未来と「ロングナウ(長い今)」
今と未来の分かれ目は、何があるのだろうか。
農業の多くは、1年を周期とする営みである。
稲の実りを翌年のために残すことは、"今"のことであり"未来(あと)"のことである。
全ての実りを食べてしまうと今すぐは困らないが、後で困る。
周期の中に含まれる行為として、”残す”ことが習慣となる。
現代の人類は、世界への強い影響力を持ってしまっている。
"今"の周期の中に含める期間を、より長く持つことが求められる。
簡単に回復周期が長い資源を、枯渇させることができるためである。
「グッド・アンセスター」では、ロングナウ財団の事例が紹介される。
1万年を感じるための工夫だ。
日付を書くたびに、年の前にゼロを置くというものだ。例えば、私はこの文章を「02019年」に書いている、というように。たった一つ数字を増やしただけで、何万年も先の未来を想像し始めることができるのだ。
グッド・アンセスター P78
昔、データのけた数を設計するときに、2桁余裕をもたせることが常にあった。
(例えば、現時点で1000の数値が扱われるなら、100000と2桁を足すことで変化に耐えられるようにする)
現在は、UUID(128bit)のように百年では溢れないようなサイズを用いる。
1000年の単位を"今"の周期に含めることができれば、その範囲で困ることは避けることになるだろう。
9. リンク
URL
論語と算盤オンライン
超長期で見た日本の経済成長の源泉:1885〜2015年
wikipedia:先進国
wikipedia:UUID
書籍
ローマン・クルツナリック, 松本 紹圭 (訳)(2021).グッド・アンセスター わたしたちは「よき祖先」になれるか.あすなろ書房.
渋沢 栄一, 守屋 淳(訳)(2010).現代語訳 論語と算盤.筑摩書房.
変更履歴
2025/12/13 新規作成
2025/12/20 2.追加