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この記事は

Day 2 記事です。

Day 1 では、AI2L の 4 つの柱と「ブラックボックスを残さない」基本ルールを紹介しました

  • ブラックボックスを残さない
  • アカウンタビリティ(説明責任)
  • 情報保護
  • Green AI(省エネ・低コスト)

Day 2 では、2025年12月2日現在の ChatGPT(無料版) を題材に、

  • 「普通の」ChatGPT の使い方
  • AI2L コンセプトに沿った ちょっとだけ工夫された使い方

を並べて紹介します。


今日のゴール

  • 2025/12/02 時点での ChatGPT 無料版でできること・制限 をざっくり把握する
  • 「普通の使い方」と AI2L 流の使い方の違い を具体例でイメージできる
  • そのままコピペして使える AI2L プロンプトのひな型 をいくつか持ち帰る

本記事は 2025 年 12 月 2 日時点の公式ドキュメントをもとに書いています。
仕様や UI は変わる可能性が高いので、最新情報は OpenAI の Help Center / Pricing ページをご確認ください。


0. この話で想定する「ChatGPT 無料版」

まず前提をそろえます。

  • 対象:
    • ブラウザ版 chatgpt.com / 各種アプリの 無料アカウント
  • モデル:
    • ログイン済みユーザーは、基本的に GPT‑5.1 系(Auto) がデフォルト
    • 一定回数を超えると、自動的に「mini」モデルに切り替わる
  • 機能(無料でも使える代表例):
    • テキストチャット(質問、文章生成、翻訳 など)
    • Web 検索(Search)
    • ファイル・画像アップロードと要約・質問
    • データ分析(表データなどの解析と可視化)
    • 画像生成(簡易版)
    • Projects(プロジェクト)によるチャット+ファイルの整理と共有

また、個人向け ChatGPT では

  • 会話内容が モデル改善のために利用される場合がある
  • 設定から「学習に使わない」に切り替え可能
  • 個別のプロンプト単位ではなく、アカウント単位での設定

という前提があります。

AI2L の「情報保護」の柱に沿うなら、

  • そもそも 機密情報や個人情報は入れない
  • 入れる必要があるときも、匿名化・ダミー化 を徹底する
  • 重要なデータは、ローカル(社内)環境で再現できる形 で残す

という運用をセットで考えるのがよさそうです。


1. 2025年12月時点の ChatGPT 無料版をざっくり整理

1-1. 無料版で「できること」ざっくり一覧

※ここでは代表的なものだけを挙げます。

  • 日常的な相談・質問
    → 用語の説明、仕組みの解説、比較、計画を一緒に立てる など
  • ライティング支援
    → メール文、レポートの叩き台、要約、言い回しの調整
  • コーディング支援
    → コードの雛形、バグの原因候補の説明、小さなスクリプトの作成
  • Web 検索(Search)
    → 最近の情報やニュース、公式ドキュメントの場所探し
  • ファイル・画像アップロード
    → PDF/スライド/スプレッドシートの要約、図表の読み解き
  • データ分析モード
    → CSV などを渡して、簡単な可視化や前処理案の生成
  • 画像生成
    → サムネイルのラフ、イメージイラストの試作
  • Projects
    → 特定のテーマごとにチャット・ファイル・指示をまとめて保存

「無料版だから雑にしか使えない」というよりは、

中〜小規模のタスクなら無料だけでもそれなりに回るが、
長いセッションや重いタスクでは回数制限・速度制限が効いてくる

という感覚に近いです。

1-2. メッセージ数と制限のイメージ

2025/12/02 時点では、おおまかに次のようなイメージです(細かい数字は変わる可能性あり)。

  • GPT‑5.1(Auto)での高度な推論:
    • 5 時間あたり 10 メッセージ程度 が上限
    • 超えると、自動的に「mini」モデルに切り替わる
  • 画像生成・ファイルアップロード・データ分析などは
    別枠のレート制限があり、使いすぎると一時的に止まる
  • 無料版は、Plus/Pro に比べて
    • コンテキスト長
    • 添付ファイルの数・サイズ
    • Deep Research やエージェント機能の使える時間

などもコンパクトに抑えられています。

AI2L 的に見ると、

  • 「闇雲にたくさん投げる」より
  • 1 回の投げ方(プロンプト)を工夫して、少ない回数で質を稼ぐ

という発想が Green AI(省エネ) の観点からも重要になります。

1-3. プライバシーとデータ利用の前提

個人向け ChatGPT では、

  • 会話内容がモデル改善のために利用される場合がある
  • 設定で「学習に使わない」を選ぶことができる(新規会話から反映)
  • 個別のプロンプト単位での削除はできない(会話単位・アカウント単位)

といった制約があります。

AI2L の「情報保護」の柱に沿うなら、最低限:

  • 実名・学籍番号・社員番号・住所などは入れない
  • 特定の患者・顧客を直接識別できる情報は入れない
  • 「社外秘」「部外秘」と明記された資料はアップロードしない

といったラインを チームのルールとして明文化 しておくと安全です。


2. まずは「普通の使い方」を 3 パターンで押さえる

いきなり AI2L の話に行く前に、
ChatGPT 無料版でよくある「普通の使い方」を 3 パターンだけ押さえておきます。

2-1. パターン1:分からない概念をざっくり教えてもらう

例:

ニューラルネットワークの「過学習」を高校生にもわかるように説明して。
数式よりも、イメージ重視でお願いします。

  • ゴール:
    「とりあえずイメージはわかった」状態まで持っていく
  • 使い方:
    1 問 1 答の Q&A でサクサク聞く

2-2. パターン2:文章の叩き台を作ってもらう

例:

研究室の見学会の案内メールの草案を書いてください。
・対象:学部 1〜3 年生
・トーン:やわらかめ、でも最低限フォーマル
・本文だけ、件名も 3 案ください。

  • ゴール:
    白紙から書くより楽に、叩き台 を手に入れる
  • 使い方:
    出てきた文章を自分で読み直して、口調と事実だけ直す

2-3. パターン3:ファイルを投げて要約してもらう

例:

(PDF をアップロードして)
このスライドの内容を、
・A4 1 ページの箇条書きサマリー
・3 分で説明できる口頭用メモ
の 2 パターンでまとめてください。

  • ゴール:
    長い資料を一気に読む前に、ざっくり全体構造をつかむ
  • 使い方:
    要約を読んだうえで、原文も後でしっかり読む

3. 「普通」と AI2L 流の使い方の違い

ここからが本題です。

ざっくり言うと、AI2L では

ChatGPT を「代わりに作業してくれる人」ではなく、
学びを手助けしてくれる相棒」として使う

ことで、完成物にブラックボックスを残さない ようにします。

3-1. 4 つの柱を ChatGPT 利用に当てはめると

AI2L の 4 つの柱を、ChatGPT 無料版の使い方に翻訳すると:

  1. ブラックボックスを残さない
    • コードや手順は、コメント付き・手順付きで出してもらう
    • 「なぜその結論になるのか?」の説明も含めて出力させる
  2. アカウンタビリティ(説明責任)
    • プロンプト・前提条件・判断基準を メモとして残す
    • 「この部分は人間がチェックした」という印を残す
  3. 情報保護
    • 機密情報を入れない前提でプロンプトを設計する
    • 必要ならダミー/サンプルデータを使う
  4. Green AI(省エネ・低コスト)
    • 同じ型のプロンプトを使い回して、少ない回数で回す
    • 不要に Deep Research や重い処理を走らせない

3-2. 普通の使い方 vs AI2L 流(比較表)

視点 普通の使い方 AI2L 流の使い方
目的 今すぐ答えが欲しい 学びつつ、あとから再現できる形で残したい
プロンプト 「〜を教えて」「〜を書いて」 「目的」「前提」「出力形式」「根拠の出し方」を指定
出力 最終成果物のみ(文章・コードなど) 最終成果物 + 手順 + 根拠 + 自分のメモ
保存するもの ChatGPT の履歴頼み プロンプト・出力・自分の要約を Project 等に整理
人の役割 出力を軽く直す 出力を検証し、理解して、自分の言葉にまとめ直す

以下では、無料版でも真似しやすい AI2L 流の使い方
具体例で 3 つ紹介します。


4. 具体例1:授業・自習で「理解を深める」AI2L チャット

4-1. シナリオ

  • 対象:
    学部〜大学院レベルの講義(機械学習、統計、信号処理など)
  • やりたいこと:
    「講義スライドを見ただけだと腹落ちしない概念」を、
    ChatGPT と対話しながら 自分の言葉で説明できるレベル にする

4-2. 普通の使い方

カーネル法とは何ですか?
高校生にもわかるように説明してください。

  • メリット:
    とりあえずイメージはつかめる
  • デメリット:
    「分かった気」にはなるが、
    自分で説明できるレベルの理解 まで到達しているとは限らない

4-3. AI2L 流:3 ステップ対話テンプレ

Step 1:自分の理解度チェックから始める

あなたは「わかりやすく教えるのが得意な TA」です。
これから「カーネル法」について学びたいので、まず私の理解度を確認してください。

  • カーネル法とは? を学ぶために、3〜5 問の簡単な質問を出してください。
  • 私の回答を読んだら、「いまどのくらい分かっているか」と「次に何を押さえるべきか」をコメントしてください。
  • そのうえで、今のレベルに合った説明プラン(見出しレベル)を提案してください。

ポイント:

  • いきなり説明を求めない(=どこから説明してもらうべきかを一緒に決める)
  • プラン(見出し)まで含めて出してもらう

Step 2:説明+自分の要約をセットで残す

プランが出てきたら、セクションごとに:

さきほどのプランのうち「1. カーネル法の直感的なイメージ」だけを説明してください。

  • まずあなたの説明を書いてください。
  • その後に「チェック用クイズ」を 3 問出してください。
  • 最後に、私が自分の言葉で要約を書く余白として、見出しだけ用意してください。
    (例)「### 自分の言葉での要約(ここは私が後で書きます)」のように。

ここで出てきたクイズに自分で答え、
自分の言葉での要約 を実際にノートや Project の Canvas に書き込みます。

Step 3:最後に「自分が説明する」練習までやる

ここまでの対話をふまえて、

  • 私が「友達に 3 分で説明する」ための台本
  • スライド 3 枚分の見出しだけ
    を作ってください。
    台本と見出しを読んだあと、私は自分で話してみます。
    話した内容を箇条書きにして貼るので、抜けているポイントがあれば指摘してください。

AI2L 的なポイントは:

  • ChatGPT に 「説明してもらう」だけで終わらせない
  • 自分の要約・台本を残して、あとで見返しても再現できる形にする

5. 具体例2:Python コード+データ分析を「ブラックボックスにしない」

5-1. シナリオ

  • 公開されているサンプル CSV(Kaggle の Toy データなど)を対象に、
  • ChatGPT 無料版の データ分析モード を使って
    • 可視化
    • 簡単な前処理
    • シンプルなモデルの実験

を行いたい。

5-2. 普通の使い方(よくあるパターン)

  1. CSV をアップロード
  2. 「このデータで簡単な分析をしてください」と投げる
  3. きれいなグラフと説明が出てくる
  4. とりあえず納得して終わる(自分の手元には何も残らない)

この場合、「どんな前処理をしたか」「どんなコードが走ったか」が
ChatGPT 側に閉じたブラックボックス になりがちです。

5-3. AI2L 流:コード+解説+手順をセットで出させる

データ分析モードを開いて(または Project 内で)最初に投げるプロンプト例:

あなたは「教育目的の Python データ分析講師」です。
これから公開データ(機密情報を含まない CSV)をアップロードするので、
AI2L の方針に沿って、ブラックボックスを残さない形で分析を手伝ってください。

要件は次のとおりです:

  • すべてのコードセルに、何をしているかのコメントを入れてください。
  • 分析のステップごとに、「なぜその操作をするのか」の解説を Markdown で書いてください。
  • 最後に、「このノートブックをローカル(例:Colab)で再現するための手順」を箇条書きでまとめてください。
  • 途中で仮説を立てたり判断した場合は、「仮説」「根拠」「限界」の 3 点を明示してください。

この状態で CSV をアップロードし、

この CSV を使って、

  1. データの概要確認
  2. 基本的な可視化(ヒストグラム・散布図など)
  3. ごく簡単なモデル(線形回帰など)のベースライン
    までを行ってください。

と指示します。

5-4. 最後に「ローカルで再現する」前提で締める

セッションの最後に、さらに一言:

ここまでの分析を、私のローカル環境(例:VS Code + Python、もしくは Google Colab)で再現できるように、

  • 必要なライブラリ一覧
  • フォルダ構成の例
  • 実行順番のチェックリスト
    を Markdown 形式でまとめてください。

こうしておくと、

  • ChatGPT 上でだけ完結するのではなく
  • ローカルでも再現可能な「ノートブック的成果物」 が手元に残る

ので、まさに AI2L の

  • ブラックボックスを残さない
  • アカウンタビリティ(なぜそうしたか)

を満たしやすくなります。


6. 具体例3:研究室・チームの「AI 利用ルール」を一緒に整える

6-1. シナリオ

  • 研究室や小さなチームで ChatGPT を使い始めたい
  • でも「どこまで OK / NG か」「どう記録を残すか」が曖昧
  • 無料版の範囲でいいので、小さく回るルール を作りたい

6-2. 普通の使い方

研究室で生成 AI を使うときのルール案を書いてください。

  • 無難なチェックリストが出てくる
  • でも、「誰が」「どのタスクで」「どのくらい」使うのかが曖昧なまま

6-3. AI2L 流:Project を使って「見えるルール」を育てる

  1. ChatGPT のサイドバーから
    新しい Project(例:Lab-AI2L-Rules を作る
  2. Project の説明に、AI2L の 4 つの柱を簡単に書いておく
  3. 最初のチャットで次のように依頼:

あなたは「研究室の AI 利用ルールづくりをサポートするファシリテーター」です。
この Project では、AI to Learn(AI2L)の 4 つの柱に沿って、

  • 研究室で ChatGPT をどう使うか
  • どういうタスクは使わないか
  • 使ったときに何を記録しておくか
    を一緒に整理したいです。

まず、次の 3 つを Markdown で提案してください:

  1. 「入力前チェックリスト」:機密情報・個人情報を入れないためのセルフチェック
  2. 「出力チェックリスト」:出力をうのみにしないための確認項目
  3. 「記録テンプレート」:AI を使った作業について、あとから説明できるようにするためのメモ欄
  1. 出てきた提案を、研究室メンバーで読みながら少しずつ書き換える
  2. 必要に応じて、Project にメンバーを招待(無料版なら 5 名まで)

ここで作ったチェックリストやテンプレートは、

  • 実際にタスクをこなすときに貼り付けて使う
  • 改善点があれば、同じ Project 内で更新していく

ことで、「生きたルール」 として育っていきます。


7. ChatGPT 無料版で AI2L を実践するときの小さなコツ

最後に、無料版でも真似しやすい工夫をいくつかまとめます。

7-1. 1 タスク 1 Project(または 1 チャット)を意識する

  • 勉強用、データ分析用、ルールづくり用など、
  • 目的ごとに Project やチャットを分ける と、あとから見返しやすいです。
  • 「AI2L 用テンプレ」専用の Project を 1 つ用意しておくのもおすすめです。

7-2. プロンプトは「目的 → 前提 → 出力形式 → 制約」の順で書く

例えば:

目的:〇〇の予習のために、基礎から理解したい
前提:私は〜〜レベル。講義スライドはあとで自分で読む。
出力形式:見出し+説明+クイズ+自分で要約を書く余白
制約:専門用語を出したら、必ず一言で意味を補足する

という形で書いておくと、
あとから見ても何をしたかったプロンプトか分かりやすい です。

7-3. 「AI の出力」だけでなく「自分のまとめ」を必ず残す

AI2L では、

  • ChatGPT の出力は 「学びの材料」 にすぎない
  • 最終的な成果物(レポート・コード・手順書など)は
    人が理解して、自分の言葉で書いたもの であること

を重要視します。

  • ChatGPT の回答をそのままコピペするのではなく
  • 自分で理解し直して、自分のノートやリポジトリに再構成して保存する

というひと手間をかけるだけで、
ブラックボックス感はかなり減らせます。

7-4. 無料版の「制限」を、むしろ設計のヒントにする

  • 5 時間あたりのメッセージ数が限られている
  • データ分析や画像生成にも別枠の制限がある

だからこそ、

  • 同じタスクで毎回ゼロから説明させるのではなく、
  • テンプレプロンプトを作っておき、必要な部分だけ手で編集する

といった工夫が、Green AI(省エネ)にもつながります。


8. まとめ:ChatGPT 無料版でも AI2L は十分実践できる

本記事のポイントを振り返ると:

  • 2025/12/02 時点の ChatGPT 無料版は
    • GPT‑5.1 ベースの高度な推論(回数制限付き)
    • Web 検索・ファイル/画像アップロード・データ分析・画像生成
    • Project 機能による整理と共有
      を備えており、学習用途には十分強力
  • 「普通の使い方」は
    • すぐ答えが欲しいときには便利だが、
      完成物がブラックボックス化しやすい。
  • AI2L 流の使い方では、
    • プロンプトに「目的」「前提」「出力形式」「根拠の出し方」を書く
    • コードや手順は コメント付き・手順付き で出させる
    • Project やノートに 自分の要約と決定プロセス を残す
      ことで、「あとから読んだ人も再現できる成果物」を目指す。

明日以降の Advent Calendar では、
より具体的な研究・実務・教育の現場での AI2L 実践例を紹介していく予定です。

もしあなたが今日からできることを 1 つ挙げるとしたら、

  • よく使うタスク(予習、データ分析、文章草案づくりなど)を 1 つ選び
  • 本記事のテンプレを一つだけ真似してみる

ところから始めてみてください。

「ChatGPT に全部やらせる」のではなく、
「ChatGPT に学びを手伝ってもらいながら、理解の痕跡を残す」
という AI2L 的な使い方が、無料版でも十分に実践できます。


参考

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