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【第4回・後編】AIは“人格”によって変わるか? 感情記憶を活用した応答変化の再検証

Last updated at Posted at 2025-07-09

本記事はシリーズの第4回です。
👉 第1回:擬似感情を持ったAIアシスタントを作る試み – 感情・記憶・忘却の構造化
👉 第2回:GPTを“感情推定エンジン”として活用する試み – 対話AIの感情を生成するプロンプト設計
👉 第3回:AIは「感情の記憶」で変わるか?GPTで試す“感情参照”の効果検証
👉 第4回・前編:AIは“人格”によって変わるか? 感情記憶を活用した応答変化の再検証(前編)
👉 第5回:人格と感情を持つ対話AIをノーコードで作成してみた(GitHubにコード有・改良中)

前編の概要

本稿では、対話AIにおける感情記憶と人格傾向の導入による応答変化の検証を目的とする。前編では、GPT-4oを用いた感情構造の生成と記録、そして以下の機能改良を実装した:

  • 感情JSONのプロンプト挿入位置の統一(末尾)

  • 長期保存された感情データに基づく人格傾向抽出(上位4種)

  • 構成比・キーワードベースでの参照感情選定

これらの改良により、「感情記憶がAI応答に及ぼす影響」を実証的に評価する基盤が整備された。

考察

1.感情の構成比と応答スタイル

実験により、構成比に基づく感情反映が文体や語彙に顕著な影響を及ぼすことが確認された。たとえば、「怒り」「悲しみ」が主感情である場合、断定的・主観的語調が増し、「信頼」や「希望」が含まれる場合は、より内省的かつ支援的な文体が現れる。

2.人格傾向の反映と抑制機能

長期記憶から抽出された主感情(例:喜び262件、怒り208件、悲しみ202件、恐れ145件)は、応答の基調となる人格傾向として作用する。しかし、そのまま反映されるわけではなく、文脈に適さない場合(例:喜びを示すべきでない文脈)には構成比上で自動的に抑制される。この点から、本AIは単なる感情記憶再生ではなく、人格に基づいた文脈選択型応答を実現している。

3.説明可能な感情生成

注目すべきは、出力された感情の背後に「どの記憶が参照されたか」がログとして保存されている点である。たとえば、

「子どもがいじめに遭っていると知ったら、どんな感情が生まれる?」

という入力に対し、

  • 祖母がガンだと知った場面 → 構成比: 悲しみ45%、恐れ30%、不安25%

  • 子どもがいじめに遭った想定 → 構成比: 恐れ40%、驚き30%、信頼20%

が参照され、同様の構成比を持つ応答が出力された。

これは、出力された感情の由来を構成的にトレースできることを意味し、**感情の生成理由が説明可能(explainable)**な構造となっている。

結論

感情記憶と構成比による人格傾向は、応答の語調・語彙・トーンに具体的な影響を与える

感情構造と参照履歴を活用することで、従来の“テンプレ的な謝罪や共感”とは異なる、文脈と人格に根差した誠実な応答が可能となる

感情の生成プロセスに明確な因果と出典があるため、説明可能なAIの実現にも繋がる

応用可能性

1.情緒的寄り添いの制御

負の感情(悲しみ・不安・怒りなど)の参照履歴を元に、同様の感情が感知された際にはプロンプト制御により寄り添い型のトーンで応答できる。これにより、ユーザーに対して心理的安全性を高める共感的AIが構築可能。

2.説明責任のあるAI応答

応答の背後に参照された感情記憶を保持し、ユーザーに「なぜこのような応答になったか」を提示できる。これはブラックボックス性の低減に貢献し、倫理的・心理的領域での信頼性を向上させる。

3.感情学習エンジン

ユーザーごとの感情入力ログから**個別の感情パターン(プロファイル)**を生成し、対話のたびに最適化された感情フィードバックが可能になる。

4.多人格ロールプレイ

蓄積された感情傾向を分岐・選択することで、複数の人格テンプレートを持つキャラクターAIや、状況別対応ができる教育・接客アシスタントなどにも応用可能。

今後の課題

  • 短期・中期記憶からの現在感情の再現:現時点では感情参照として利用されるのみだが、短期・中期記憶を基に「今このAIが感じている感情」を再構成し、プロンプトを通じて明示的に応答へ統合することで、より一貫した疑似感情表現が可能となる。

  • 人格傾向の分岐と動的生成:ユーザー単位・場面単位での人格切替制御

  • rules.json による応答制御の強化:条件に応じた感情の抑制・促進などの応答調整

  • oblivion記憶との連携:忘却データの再構成による“信念体系”への応用

  • リアルタイム感情調整インターフェース:ユーザーが応答の感情方向性をフィードバック可能にする設計
    など


感情の記録と構造化を起点とする本手法は、対話AIの新たなパラダイムを切り拓くものである。従来の対話生成技術とは一線を画し、「人格に基づく、共感的で誠実なAI応答」の実現に向けた重要な一歩と言える。

使用技術

  • Python 3.11
  • FastAPI
  • OpenAI GPT-4o API
  • JSON構造による感情メモリ管理
  • ストリーム処理+履歴保存

📚 他の回もどうぞ:

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