※前編の続きになります
SapeetでSWEをやっている渡辺です。
最近は社内メンバーとARC Raidersにハマっています。
自分も自作ARC(機械生命体)を作ってみたいと思い、Artificial Life(人工生命)に興味を持ちました(TheGameAwards2025受賞おめでとうございます🎉)。
続 ALIFE試してみた
④ Karl Sims の Evolved Virtual Creatures(1994年)
グラフィックスアーティスト兼研究者のカール・シムズが開発した、3D仮想空間で進化する人工生命です。
SIGGRAPH 1994で発表され、人工生命研究にも大きな衝撃を与えました。
Evolved Virtual Creaturesの重要性
- 遺伝的アルゴリズムにより「体の形」と「動かし方」を進化させる研究
- コンピュータの中に「環境」と「進化のルール(タスク)」だけを用意したら、勝手に奇妙な生物が生まれ、勝手に動き方を覚えた
- 人間が解法を教えるのではなく、コンピュータが試行錯誤の末に独自の解を編み出した
- 昨今の進化ロボティクス分野にも多大な影響を及ぼしており、ドローンやロボットの急成長につながっています。
Evolved Virtual Creaturesの仕組み
- 形態の表現: ブロックの組み合わせで体を構成
- 神経回路: 各関節の動きを制御するニューラルネットワーク
- 物理シミュレーション: 重力・摩擦・衝突を考慮した物理エンジン
- 進化: 進化のルール(タスク)をできた個体が生き残り子孫を残す
Evolved Virtual Creaturesを試してみる(Evolution Gym)
Karl Simsの研究を試せるツールとして、MITが開発したEvolution Gymがあります。
- Evolution Gymの特徴:
- ソフトボディロボット: 柔らかいボクセル(立方体)で構成された生物
- 形態と制御の共進化: 「体の形」と「動かし方」を同時に進化
- 進化のルール(タスク): 歩行、登坂、ジャンプ、物体操作など
| 第0世代 | 第1世代 |
|---|---|
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| うまく歩けない... | 跳ねて前進できる個体が現れた! |
フィジカルAIとALIFE(人工生命)
Evolved Virtual Creaturesの「シミュレーション環境で「体の形」と「動かし方」を同時に進化させる」というアイデアは、今日のフィジカルAIブームにも影響を及ぼしており、フィジカルAIの現場では、「シミュレーション環境で成長させるアプローチ(Sim2Real)」が増え、様々な大企業が研究開発をしています。
NVIDIA
Omniverse(仮想世界を作成できるプラットフォーム)やIsaac Sim(Omniverse上で動くロボット開発用のシミュレータ)などにより、Sim2Realを推進しています。

📎 公式: NVIDIA Omniverse / NVIDIA Isaac Sim
Genie 3(シミュレーション環境を生成するAIモデル)やSIMA 2(シミュレーション環境で自律的に動くAI)の研究開発を行なっており、これらを組み合わせることで様々な環境に適応したAIの成長が期待できそうです。

📎 公式: Genie 3 / SIMA 2
まとめ
| 時代 | マイルストーン | 重要な点 |
|---|---|---|
| 1970 | ライフゲーム | 単純ルール → 複雑パターンの創発 |
| 1986 | Boids | 3つのルールだけで群行動を再現 |
| 1990 | Tierra | デジタル生物の自発的進化 |
| 1994 | Evolved Virtual Creatures | 「体の形」と「動かし方」の共進化 |
| 昨今 | NVIDIA/GOOGLE | 仮想世界でのフィジカルAI訓練 |
前編後編にわたりALIFEの知見を深めてきました。
LLMが大きなブームですが、ALIFEのアプローチもAGIへと飛躍するにあたって必要不可欠になっていくとわかりました。
海外の大企業では、ALIFEのアプローチのヤバさに気づいて導入する準備が進んでいます。自分たちも動向に注視しつつ負けないように精進していく所存です。


