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はじめに

COVID-19が日本にも大きな影響を与え始めて、リモートワークを推奨・強制する会社が増えてきました。
チームの成長の要である「ふりかえり」の活動にも、リモートの波が押し寄せ、「リモートだとうまくいかない」「リモートでどのようにすればよいのか分からない」といった相談を受けることが多くなってきたため、こちらに「リモートふりかえり」の考え方を纏めようと思います。

本記事は、以下のような構成になっています。
必要だと思う部分をお読みいただき、あなたのチームに適用してみてください。

  • リモートふりかえりの前提となるもの
  • リモートふりかえりで準備すべきもの
  • リモートふりかえりをはじめよう
  • リモートふりかえりのファシリテーション
  • TIPS:リモートふりかえりの手法
  • 参考

また、本記事で以下の内容については触れません。

  • ふりかえりとは何か
  • ふりかえりの目的や進め方
  • ふりかえりの様々な手法

もし、これらについて知りたい場合は、

をご参照ください。

リモートでのふりかえりの前提

リモートでふりかえりをする上で、理解しておきたい前提が3つあります。

  1. 環境の違い
  2. 関係性が影響する
  3. 時間が必要

まずは、環境の違いです。これまで物理環境で対面で行っていたふりかえりをリモートで行うことになる際、出来る限り物理の時と変わらない環境を用意することが大事です。
物理環境では、「顔が見える」「声が聞こえる」「身振り・手振りが伝わる」「ホワイトボードに自由に書ける」「付箋に自由に書ける」「バラバラに議論できる」などの状態が揃っています。この環境をいかにリモート側に持っていけるかが鍵になります。こちらについては、「リモートふりかえりで準備すべきもの」に記載します。

次に、関係性が影響するです。関係性があまり醸成されていない状態のチームでは、リモートふりかえりのマイナス面が表出しやすくなります。物理環境でうまくふりかえりができていたチームであれば、リモートふりかえりをしたとしても、悪い側面を関係性でカバーできます。マイナス面とは、物理環境とリモート環境とのギャップによって生まれるコミュニケーション不全のことで、上述の「環境」面での差分が如実に表れます。関係性が低い状態では、どうしても効率が悪いものとなりやすいですが、そのマイナスは時間やファシリテーションによってカバーできます。

最後に、時間が必要です。リモートに慣れていなければ慣れていないほど、また、人数が多ければ多いほど、物理環境のふりかえり以上に時間がかかります。練度にもよりますが、物理環境とリモート環境で同じ結論を出すに至るまで、1.1倍~1.5倍程度の時間がかかるということを理解しましょう。物理環境の時と同じ時間でふりかえりをしたら、どうしても物理環境よりも意見の広がりが浅くなったり、意見の深堀が足りなくなります。

こうした前提事項を理解したうえで、リモートふりかえりを最大限楽しむために、出来ることを少しずつ取り入れていきましょう。

リモートふりかえりで準備すべきもの

リモートふりかえりでは、以下のものを準備しましょう。

  1. リモート環境
  2. ふりかえりの前準備

1. リモート環境

リモート環境では、物理環境時にはなかった難しさが出てきます。

1つ目がノンバーバルコミュニケーションの劣化です。メラビアンの法則で言われるように、人は視覚から多くの情報を得ています。人の身振り手振りから感情を読み取ったり、間・空気を感じ取り、チームの場における対話の中で自然に利用しています。人の顔が見れなくなるだけでも、不安感を感じやすくなったり、発言するタイミングが掴みにくくなります。

2つ目が指示語が利用できないことです。物理環境では指差しで「あれ」「これ」という指示語が使えません。全員の視点が同じ場所にあるわけではないので、指示語を使うと、「どこだどこだ」と確認するための時間が発生します。

3つ目が情報の可視化のためのタイムラグです。「付箋をはがして書く・貼る」という動作に比べて、リモート環境では「付箋を生成する」「付箋にポインタを合わせる」「付箋に入力する」「(状況によっては)付箋の色・大きさを変更する」「付箋を適切な位置に移動する」という複雑な手順が発生します。1枚付箋を書くだけでも、物理環境とリモート環境とでは、効率に大きな差が出ます。

4つ目が視認性の低さです。物理環境では、ホワイトボードを眺めれば、全体像をすぐにつかむことができます。ただし、リモート環境では、視覚情報はディスプレイのサイズやソフトウェアに依存します。何度もスクロールしないと欲しい情報にたどり着けなかったり、タブを切り替えないと情報が開けない場合もあります。

これらの問題が、リモートふりかえりを難しくする要因であり、これらをいかに軽減できるかがリモートふりかえりを楽しく行うための肝です。
ツールを活用することによって、これらの問題を少しずつでも解消することはできますので、事前にリモートでふりかえりをするための環境(ツールなど)を準備しておきましょう。

問題 対応 ソフトウェア ガジェット
ノンバーバルコミュニケーションの劣化 顔の表示が出来るソフトウェアを使う Skype, Zoom, apper.inなど マイク, イヤホン, カメラ
指示語が利用できない マウスポインタの可視化が出来るツールを利用する Confluence, Miro, Box, Googleスプレッドシートなど -
情報の可視化のためのタイムラグ 各種ツールで事前にテンプレートを用意する、または入力効率を上げる 同上 PC, タッチパネル, ペンタブ
視認性の低さ 視認性の高いツールを利用する Google Drawer, Miroなど 高解像度のディスプレイ

会社によって使えるツールに制約はあると思いますので、使えるツールの中で、出来る限り物理環境時との差分をなくすような環境を作れるようにしましょう。

2. ふりかえりの前準備

これは、物理環境でもリモート環境でも同じです。時間になったら全員がすぐにふりかえりを始められるように、道具や環境を準備し、事前にログインなどをして動作確認を済ませておきましょう。
物理環境と比べ、ふりかえりの途中に新しい付箋を用意したり、新しいボードを用意したり、ということがスムーズに行えなくなるため、付箋やドットシール、ふりかえりを行うためのボードなどを、事前に準備しておくとよいでしょう。

リモートふりかえりをはじめよう

実際にリモートふりかえりを始めてみましょう。

ふりかえりの流れは、以下の記事で詳しく載せていますので、よろしければご参照ください。
ふりかえりのファシリテーションを考えてみる
基本的には、物理のふりかえりと同様の流れで進めます。

  1. 場を作る
  2. データを収集する
  3. アイデアを出す
  4. アクションを決定する
  5. ふりかえりを終了する
  6. ふりかえりをふりかえる

image.png

写真は、Miro + Zoomで実施している例です。
Miroでホワイトボード&付箋として利用し、Zoomで常に顔が見れる状態でノンバーバルコミュニケーションが出来るような状態にしています。

リモートふりかえりの序盤において特に大事なのは最後の「ふりかえりをふりかえる」です。チームメンバーの環境・状況や、チームの練度によってもふりかえりのやりやすさは大きく変わっていきます。ただ、進め方をふりかえることで、少しずつ改善していくことはできます。
リモートふりかえりをよりよいものにしていくために、全員でリモートふりかえりについて真摯に向き合う時間を作ってみましょう。

リモートふりかえりのファシリテーション

物理のふりかえりと比べて、リモート時に特に意識しなければならない点を載せていきたいと思います。

自発的な発言を促す

物理のふりかえり以上に、「誰が発言するか」という牽制する時間が発生しやすくなります。「この付箋、誰が書いたの?」といった問いかけが発生する前に、自分から発言してもらうように全員に促しましょう。ファシリテーターに指示されなくとも、自発的に発言するように全員に共有しておくとよいでしょう。
もし、誰が書いたのかを分かりやすくしたいのであれば、付箋に名前のタグをつけるようにするのもよいでしょう。

ポインタを使う

誰がどの付箋の話をしているのか、リモートふりかえりでは分かりにくくなります。MiroやGoogleスプレッドシートのように、マウスポインタが表示されるツールを使って、「マウスポインタ上にあるものを発言する」というルールにすれば、自然と誰が何の話をしているのかが分かるようになります。また、こうしたルールを活用すれば、指示語も使えるようになります。

タイムボックスを意識させる

リモートふりかえりでは、物理でのふりかえり以上に、入力や共有のために時間がかかります。何も意識しないと、ずるずると時間を浪費してしまいがちですので、ホワイトボード上に時間を明記するなどして、「あと〇〇分で付箋を共有する」といった意識付けをするとよいでしょう。

付箋のメモを書く

物理と違うリモートの利点は、「付箋を修正しやすい」という点です。付箋の内容を話すとき、多くの人は書いている内容以上のことを話すものです。誰かが話している内容を、別の付箋で書いたり、今話している付箋そのものを修正したりして、情報を追記していきましょう。

情報の共有の仕方を使い分ける

全員の付箋を一つ一つ話しながら共有するやりかたと、全員で付箋を黙って眺めてコメントを書いていくやり方の2つをうまく使い分けましょう。どうしても共有のための効率も落ちるため、普段の時間の中で収めようとすると、すべての付箋を話して共有するやり方をとっていると、時間が足りなくなってしまうこともあります。
もちろん、共有することによって得られるメリットも大きいため、時間とのトレードオフとなりますが、共有する情報の重要度によっては、全員で眺める時間を2-3分作るだけでも良い場合がありますので、うまく使い分けましょう。

人数が多い場合は、誰が話しているかを明確にする

人数が多くなってくると、誰が話しているのかが分かりにくくなります(6人以上だとその傾向が強いように感じます)。
こうした問題が発生した場合は、発言の前に名前を言うようにするとよいでしょう。

TIPS:リモートふりかえりの手法

リモートならでは、という手法はありませんが、リモートだからといって出来る手法が限られるわけではありません。
基本的に物理環境と同じ手法がそのまま使えます。
絵をかくような手法も使えますので、色んな手法にチャレンジしてみてください。

image.png
写真:「ロケット」によるふりかえり。「熱気球」「帆船」「スピードカー」などの亜種です。
左下にロケット、左上に人口衛星、中央上に太陽、右上に土星があります。(みんなで汚く書くのも一興ですね)

image.png
写真:YWTによるふりかえり。あまりフォーマットは気にせず、付箋の色で区別しています。

image.png
写真:パワーポイントでのふりかえり。やろうと思えばできます。可視化が重要。

image.png
写真:TrelloでのKPT。Trelloの場合は、視認性が低くなりやすいので注意が必要です。

ふりかえりの手法を知りたい方は、ふりかえりを拡張する「ふりかえりチートシート」をご参照ください。

参考

下記の記事やPodcastでも、リモートのふりかえりについて色々言及しています。併せてお読みください。

おわりに

リモートでも、楽しくふりかえりはできます。この機会をいい機会ととらえ、リモートでのふりかえりスキルを高めていきましょう!

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