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ふりかえりのファシリテーションを考えてみる

Last updated at Posted at 2017-12-07

はじめまして、こんにちはこんばんは。
びば(viva_tweet_x)です。
普段はスクラムマスターとか、カンバンとか、ふりかえりとか色々やっています。
twitterではふりかえりのふりかえりをよくやっています。

私のファシリテーションの師匠、gaoryu師匠から「ファシリテーター Advent Calendar 2017やってみない?」というありがたいお誘いを受けましたので、この期にQiitaを始めてみました。
(基本的にtwitterに全て吐き出しているので、Qiitaが続くかは微妙ですが…)

よろしくお願いいたします。

はじめに

皆さん、ふりかえりはやっていますか?
ふりかえりで「とりあえずKPTやっとけ」になっていませんか?(※1)
今回はふりかえりにおける「ファシリテーション」について、私が過去50回以上実践してきた経験から、学び、実践してきた内容をふりかえり、「こうあるといいよね」というのをぶつけてみようと思います。

ふりかえりにおけるファシリテーションとは

ふりかえりの目的は、プロセスのカイゼンです。プロセスのカイゼンのためには良質かつ具体的な「アクション」が必要であり、そんなアクションをチーム全員で導き出すのをお手伝いするのがファシリテーターの役目だと考えています(スクラムをやっていれば、スクラムマスターの役目もこちらにあたります)。
ふりかえりにおけるファシリテーションとは、「ふりかえりを通じて、チームがカイゼンを行い、成長させること」だと考えています。ただふりかえりの進行をするだけではなく、カイゼンに結びつけることが出来て、はじめて「ファシリテーション」ができた、といえるでしょう。
アドベントカレンダー8日目となる本日の記事では、ふりかえりのファシリテーターとして、

  • ふりかえりのファシリテーターは何をするか?
  • ふりかえりの中でどんなことを意識するか?

というのを私という個人の視点で語らせていただきます。
以下の10つのステップに分けて語らせていただきます。

  1. 目的を考える
  2. 構成を考える
  3. 事前準備をする
  4. 空間を創る
  5. 場を作る
  6. データを収集する
  7. アイデアを出す
  8. アクションを決定する
  9. ふりかえりを終了する
  10. ふりかえりをふりかえる

何かしら参考になりましたら幸いです。

1. 目的を考える

まずは、ふりかえりの目的を考えます。
ふりかえりの目的は

  • チームに課題があり、その課題を解消したい
  • チームにカイゼンがみられたので、その要因を探ってより伸ばしていきたい
  • チームワークが悪いので、チームの仲をよくしたい
  • 学びが多かったので、それを共有したい

など、いろいろ考えられると思います。
チームの状況によって、どんなことをしたらチームの成長に結びつくか、は異なります。毎週ふりかえりを行っているチームでも、目的は毎週少しずつ異なってくるでしょう。ふりかえりは、ふりかえり参加者の全員の時間を1時間~2時間と贅沢に使って立ち止まって考える場ですので、「今回はどんなことを目的にふりかえりをするのか」を考え、時間を無駄にしないようにしましょう。
目的を大分類してみると、以下の7つに分けられるのでは、と考えています。

  1. 学習を共有・活かしたい
  2. 失敗を共有・カイゼンしたい
  3. 成功を共有・活かしたい
  4. 課題を共有・対策を考えたい
  5. 成果を共有・活かしたい
  6. チームビルディングをしたい
  7. 過去のアクションができているかを確認したい

目的ごとに、ふりかえりの中で皆で話し合うべき内容は違うはずです。
となると、その目的にあったやり方を選んであげる必要があります。

2. 構成を考える

目的によってやり方を変える、といっても、自分で0からやり方を考えるのは難しいと思います。そのため、先人の知恵を借りましょう。
私は以下の書籍やページを参考に、ふりかえりの構成を考えています。

alt

アジャイルレトロスペクティブズのやり方に踏襲するのがやりやすいと感じていますので、紹介します。(※2)

  1. 場を設定する
  2. データを収集する
  3. アイデアを出す
  4. アクションを決定する
  5. ふりかえりを終了する

書籍では、各フェーズごとにいくつかのアクティビティが紹介されています。アクティビティを組み合わせて実施するよう記載されているので、それに習いましょう。
ふりかえりの目的によって適切なアクティビティは異なりますので、どのアクティビティがよいかをじっくり考えてみる必要があります。
アクティビティに関しては私が経験したものを以下にまとめていますので、参考にしていただけると幸いです。


どんな目的がありそうか、をチームの状況から判断して、複数の目的がありそうな場合は、複数のアクティビティの候補を用意しておくとよいと思います。
また、構成を考えるうえで重要になるのが「時間」です。ふりかえりは仕事をストップして行っているため、決められた時間内でアクションを出すことが重要です。
※時間を守ること、に関しては12/7にmitsuruogさんが素敵な記事を書いてくださっていますので、是非ご参照ください。

アクティビティによってかかる時間も異なりますので、どのアクティビティにどれくらいの時間をかけると、どんな効果が出そうか、いうのを想像したうえで構成を決めていきましょう。
上記の5ステップにしたがって、各アクティビティの流れ(シーケンス)を決めましょう。もちろん、アクティビティ間でアイデアなどの連携が出来、うまくつながるかまでを確認したうえで、構成は完成です。

3. 事前準備をする

構成を決めたら、そのアクティビティに必要な道具をそろえます。
たとえば、「KPT」を行うと決めたのであれば、「K/P/T」が書かれたフリップチャートや、「K/P/Tを出す際に鍵となる質問の一覧」が書かれたフリップチャートを事前に用意しましょう。
あるいは、「ブレインストーミング」を行うのであれば、「ブレインストーミングのルール」をアクティビティの前に説明する必要があります。ルールは説明するだけだと頭から抜けていってしまうため、ふりかえりの参加者がいつでも確認できるように、ルールを大きな字で書いたフリップチャートを用意する、といった工夫が必要です。

ふりかえりの準備、以下の道具があれば大体は問題ないでしょう。

  • ホワイトボード / フリップチャート
    • 会議室備え付けのものでもOK
    • どこでもシートなど、移動できるものだと直良い
  • ホワイトボードマーカー
    • 黒・赤・青の3色
    • 人数にもよりますが、4ペア以上あれば困ることはありません
  • 付箋
    • 強粘着のもの
    • 50mm×50mm, 75mm×75mmの2つの大きさ
    • 3色以上
  • マーカー
    • 黒・中字のもの(ProckeyやPentel SignPenなど)
    • 人数分+α
  • カラードット
    • 2色程度あればOK
  • タイマー
    • 時間がハッキリ見えるものがよい

必要な道具を全てそろえたら、構成(アジェンダ)を書いた紙も準備しましょう。
以下のようなアジェンダを事前に用意します。



ここまでやったら、あとは会議室の予約とオヤツの購入も忘れずに!

4. 空間を作る

ふりかえりに最適な空間を作ります。予約した会議室の中で、意見が出しやすく、かつ、楽しい空間に変えましょう。たとえば、椅子と机が並んだ会議室をぶちぬいて、このような構成にしたりします。
ふりかえりの様子_20171101_2.jpg

ふりかえりでは意見の共有・交換による相互作用でよりよい意見が出ることがよくあります。そのため、

  • みんなの意見(付箋)が見やすい
  • 会話がしやすい
  • 個人ワークによる作業のみにならない

構図にするのがよいでしょう。
上記の写真では、以下のことを意識して空間を創っています。

  • 意見をすべて眺めることができるよう、円状にホワイトボードを配置
  • 動きながら会話できるよう、広めにスペースを確保
  • 中央に台座を配置し、台座の上に色んな種類の付箋とペンを配置
  • 全員が座ると個人ワークになりがちなため、疲れたメンバーのみが座れるよう、メンバーの半分の数の椅子を円状に配置

会議室によって広さや使える道具も違いますので、会議室に応じて、「その会議室内で取りうる最適な空間」を形成します。この空間を創る作業をするためには、当然のことながら時間がかかります。そのため、ふりかえりをする15~30分前には会議室に入り、どういう空間にするか、を考え、創る必要があります。
ここまでで準備は完了です。
さあ、ふりかえりを始めましょう!

5. 場を作る

ふりかえりをするには、発言がしやすい、前向きな考えができる、といった空気を作り出すことがもっとも重要です。こういった空気については、12/3に河原あずのさんが「ファシリテーターは「空気」をつくる仕事〜心地いい「場」をデザインする5つの要素。」という素敵な記事を書いていますので、そちらもとても参考になります。
発言を促す効果として、お菓子を食べながらやったり、飲み物を飲みながらやったり、音楽をかけるのもいいですね。アクティビティとしては、どんな雰囲気でふりかえりをやりたいか、を共有する「Design the Partnership Alliance(DPA)」や、よかったこと・新しい発見を皆で共有する「Good & New」などがシンプルかつ効果が高く、オススメです。
あと5ステップありますが、ここまでがふりかえりのファシリテーターの仕事の9割です。お疲れ様でした。
ここまでうまくいけば、ファシリテーターが全力で支援をしなくても、参加者がファシリテーターの手を離れ、勝手に自走し始めます。

6. データを収集する

目的に応じて、データを収集します。基本的には

  • 時系列データ
  • 事実
  • 感情

の3つを収集し、分析するとよいでしょう。これらを収集することで、いつ、どんな課題/成功/発見/学びがあったのか、というのを収集でき、カイゼンのアクションへつなげる道が開けます。時系列データを収集したいのであれば「Timeline」をやってみればよいですし、最初から課題が見えており、それをなんとかしたいのであれば、課題の原因を深堀する「Five-whys」や、複数の課題を洗い出し、最もコアな課題を解決する「FMEA」などが最適です。まんべんなく収集したいのであれば、「ORID」などもオススメです。
ファシリテーターとしては、一歩引いてチームの意見を見ながら、「抜けモレはないか」「重要な問題を見落としていないか」「意見が出ていないポイントはないか」などを質問して意見を促進していけばOKです。

7. アイデアを出す

収集したデータに応じて、どんなアクションをしていきたいか、に繋がるアイデアを出していきます。学習から得られたことにフォーカスさせたいのであれば「学習マトリックス」や「Celebration Grid」、たくさんのアイデアを出したいのであれば「ブレインストーミング」や「Marginal Gain」などがよいでしょう。
このフェーズでも、ファシリテーターは意見を促進するように、メンバーや意見を観察して働きかけます。

8. アクションを決定する

アイデアのなかから、次に取り組むアクションを皆で決定します。
注意すべきなのは、アイデア全てを「アクション」としないことと、具体的なアイデアに落とし込むことです。一度に多くのことを変えようとすると、それだけでストレスが溜まってしまううえ、それぞれのアクションがどういい方向に結びついたのかが観測できなくなってしまいます。最もコアな問題から、だれが、どのように、いつまでに変えていくのか、を出来る限り具体的に落とし込んでいきましょう。
ファシリテーターは、最初に目的としていたものが達成できるようなアクションか、を考えながら、チームが間違った方向に進んでいると感じたら軌道修正してあげましょう。

9. ふりかえりを終了する

これでふりかえりはおしまいです!お疲れ様でした!
このフェーズでは、「ふりかえりそのもの」や「ファシリテーター」に対するフィードバックを貰ったり、お互いに感謝を言い合ったりして、気持ちよくふりかえりを終わらせましょう。チームビルドをしたいのであれば、「感謝」のアクティビティを利用したり、ファシリテーターとしての改善点を貰いたいのであれば、「プラス/デルタ」や「費用対効果(ROTI)」などを使うとよいです。
ここで得られたフィードバックは次回の改善点として、ふりかえり自身のカイゼンに繋げていってください。

10. ふりかえりをふりかえる

ここまで頑張ったら、是非自身のふりかえりを、一度見つめなおしましょう。
「どんな目的をもって、どのような構成にしたか。それはうまくいったか」「それぞれのアクティビティの特性はなんだったか。次はどこを改善すればよりよくなるか」など、ふりかえりを行うことで、自身のファシリテーションスキルも上がっていくと思います。
ふりかえりの写真を残しておくだけでも、自分の成長が定性的に測れます。

おわりに

ふりかえりのファシリテーションをするうえでやることは、考えるべきことはとても多いです。ただ会議を進行するだけがファシリテーターではないことがご理解いただけたと思います。
ただし、これらをやることによってチームのみならず、自身が得られる恩恵も計り知れません。慣れればなれるほどファシリテーションが楽しくなりますし、目的に達成するために何をすればいいのか、を考えるスキルが上がっていきます。
是非、取り入れられるところを取り入れていただければと思います。
皆さんも、よいファシリテーターライフを。

ここまでご読了いただき、まことにありがとうございます。

(※1) 適切なアクティビティを選びましょう、というお話でKPTをディスっているわけではありません。「これだけ!KPT」は良著ですので是非。
(※2) アジャイルレトロスペクティブズに記載されているアクティビティは、やってみるとクセのあるものが多いです。基本はおさえつつ、自分達にあったやり方でカスタマイズするのをオススメします。

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