本記事は Engineering Manager Advent Calendar 2022 の4日目です。
自己紹介
わたしは、合同会社DMM.comで二次元事業のエンジニアリングマネジメントに携わっています。
ここ数年、毎年何らかの外部登壇をする機会があるのですが、今年は夏にBASE株式会社さんと共同開催された勉強会『「不確実性」にどう立ち向かう?アジャイル開発現場のリアル【BASE・DMM】』で発表し、その内容がログミーTechさんで書き起こし記事になったりしました。
今年は自身が不惑の年ということもあり、リスキリングにコツコツ取り組んでいます。
はじめに
EMアドベントカレンダーには今年で3年目の参加なのですが、1年目はコロナ禍に入った初年度だったこともあり「リモートワーク&副業時代のエンジニアマネジメント」というテーマ、2年目は心理的安全性を誤解している空気を周辺から感じていた時期だったことがあり「安全性のヒント」というテーマでした。
これまでは1つのテーマを軸に、自身の経験や見聞きしたことを知見としてまとめる形が多かったのですが、より自身の経験と感じたことや考えを素直に書きたいと思い、今回はエッセイのようなポエムのような散文の形で書いていきますので、カジュアルに眺めて頂けますと幸いです。
まえがき(いいたいこと)
マネジメントを担う人同士で上下関係だけでなく色んな得意分野(専門性)を持った人が互いに協力し合って物事を成し遂げていくのは楽しいので、複数の小さなチームに属している意識を持つと仕事がスムーズに進み易いです。
マネジメント3.0の以下の考えに、私も賛同し共感しています。
多くのチームは, 複雑な組織のコンテキストの中で働いており, だからコミュニケーションを強化する構造を考えることが重要だと私は確信している(第16章 p414より引用)
エンジニアリングマネージャーのしごとの以下の記載も、わかりみが深いです。
政治はたいてい、異なる種類の社会構造のあいだにある緊張によって起こります。
- 組織図
- 結束の強い非公式なグループ
- 影響力の強い人たち
マネジメントの役割に費やす時間が増えるにつれて、意思決定が簡単なタスクではないと気づくでしょう。物事を建設的な方法で前進させるために、前述の構造や人にうまく対処しなければいけません。(12章 p224-225より引用)
1人で出来ることは限られている
もしあなたが何でもできるスーパーマンでも、考える作業が必要な複数のことは、同時に出来ないです。
ある人が複数のことを同時にこなしているように見えた場合は、以下のいずれかでしょう。
- (一部または全てを) 他の人に任せている
- (一部または全てを) 機械に任せている
- 過去の自分がやった結果をいま見せている
- 無意識下の自分に任せている
- 現在の考える作業を一時中断して応答している
1人が1日に使える時間や滞在できる場所は有限なので、1人に集中すると待ちが発生します。
ビジネスにおいて時間は、先行者利益が得られたりタイミングが重要なため、発生した待ち時間の分だけ競争に負ける確率が上がってしまいます。
全員が何でもできるスーパーマンになり得ない理由
広い世の中には、何でもできるスーパーマンも一定程度存在すると思います。
何でもできるスーパーマンが集まった場合、適切な住み分けが出来ていないと争いが起きます。
争いが起きるメカニズムや歴史を、現代の何でもできるスーパーマンは恐らく分かっているため、一箇所に集めないのだと考えています。
オールスターが勢ぞろいしているように見える組織では、住み分けが出来ています。
また、能力の高い人と低い人の割合は統計的に正規分布となるので、絶対数が少ないです。
翻訳の必要性
限りがあること、出来ることのバラツキは仕方がないものとして捉えた時に、何が出来るでしょうか。
機械または他の人に任せる際には、それぞれに分かる(通じる・伝わる)言葉を使う必要がありますが、必ずしも自分自身が直ぐにその言葉を使いこなせる訳では無いと思います。
任せたいタスクの依頼を出す側と依頼を受ける側の間に入って、双方が通じる言葉に置き換える行為を翻訳と考えると、日本語から英語などの人間が使う言語の変換のほか、機械に対する指示(プログラミング)も翻訳ですし、一般ビジネス用語から専門用語(エンジニアリング以外にも、経営/会計/マーケティングなどの用語)への言い換えも翻訳、抽象度の高いビジョンや目標から具体的なアクションへのブレークダウンも翻訳と言うことが出来ると思います。
今年は画像生成AIがオープンソース化されたり、直近ではChatGPTが話題だったりと、実用的なAIを活用したサービスの進化スピードが目まぐるしいですが、そのAIへの指示(プロンプト)も含めた、これらの翻訳スキルを高めることは、すごく重要だと考えています。
重なる領域を作る(歩み寄る)ための学習の必要性
自身が依頼を出す側だった際、依頼を受ける側に正しく伝える翻訳には、どのようなやり方があるでしょうか。
1つは、依頼を受ける側が依頼を出す側に寄り添って、ヒアリングすることでしょう。
ただ、これは一般的な顧客とサービス提供者の関係であれば常に成り立っているやり方だと思いますが、同じ社内組織の中において正式な発注費用などが計上されない対等な関係性においては、アンフェアな状態は長続きしません。
「あの人の頼みだったら」や「◯◯の件でお世話になったから」など、直接の人間関係がある場合には通じていたものが、担当が変わると依頼が通じなくなることが起きたりします。
また、仮にヒアリングしてくれる側がAIだった場合に、その領域の知識をAIを使う側が知らないと最終的に出力されるものの正否を判断できないため、概念・用語・業務上の勘所(セキュリティやレギュレーションで禁止されていること)などを全く理解せず用いることは危険です。
もう1つは、依頼を出す側(自身)が寄り添って、依頼を受ける側が普段良く使っている言葉や仕様や業務の流れを理解することです。
職種によっては新しく入った方のための導入資料やタスク一覧を用意していることもあると思いますので、自身の職種とは直接的に関係が無い職種においても秘匿情報で無い限り見せてもらうことで、理解が深まるのは言うまでもなく、他職種や他部署から携わっている仕事について興味関心を持って貰えたことに対して悪い気はしないものです。
仲介の必要性
公私共に、面識が無い人と繋がる時、お互いの知り合い(法人含む)から紹介してもらうことが多いのではないでしょうか。
人となりがまだ分からない場合、何らかの形で信用できることを証明する必要があるためです。
すでに面識を得た後でも、誰かを介してやりとりすることがあると思います。
契約上の理由の時もあるでしょうし、業界によっては商慣習もあるでしょう。
何も制約が無いのに誰かを介することが必要になっている場合、その誰かは翻訳の役割を担っている可能性があります。
調整の必要性
各々の専門領域は、綺麗に役割が分かれていると、他方の事情をあまり考慮せず進めてしまうことがあると思います。
業務の流れと繋がりを常に意識しお互いに情報交換をすることで、影響の有無や、トレードオフの判断が必要になった時の相談がスムーズに行くことが多いです。
個人と組織の生存戦略
エンジニアやマネージャーに限らず、個人が生き延びようとする時、他者から求められる仕事や役割を得られた後は、本人が飽きるか他の魅力的な選択肢が出るまで自ら手放すことはなく属人化する傾向にあると感じています。
これは自分以外の他者は出来ないという差別化戦略であり、生存戦略だと理解しています。
一方でどのような組織においても、何か1つの人や物やことに依存してしまうのはリスクなので、ロックインされないように分散する手段を取ると思います。
この際、源流や接続点(優秀な翻訳)を担っているのはどの部分なのかを見誤ると途端に業務がうまく回らなくなるので要注意です。
他のマネージャーが知り得ている視点から、重要性を発見や再認識できることがあります。
あとがき
この1年は、マネジメントレイヤーのオンボーディング・引き継ぎ・組織編成(改変、組成)について取り組む事が多かった1年間でした。
会社内の研修を通じてバリューチェーンを本格的に学び、ビジネスプロセス全体への関心がより広がったことも本記事を書くキッカケになっていた気がします。
おわりに
DMMでは毎日、採用中です。
特に現在、同人サービスで一緒に組織を作っていく新しい仲間を募集しています。
少しでもご興味を持って頂けましたら、ご応募お願いします。