Stripe Taxが日本でもGAになりましたね!早い!
https://stripe.com/jp/tax
この記事では、SaaSの海外展開を目指す経営者・プロダクトマネージャ・エンジニアの方々に向けて、私の体験談を交えつつ、Stripe Taxの可能性についてお伝えしようと思います。
おことわり
私は会計士でも弁護士でも無く、SaaSを海外展開しているだけのフルスタックエンジニアです。SaaSの海外展開には会社規模に応じて様々なハードルがありますので、現地国に精通した会計/弁護士事務所に相談するのが最短ルートです。
参考程度に読んでくださいね!
では本題に入ります。
Stripe Taxとは?
Stripe Taxの導入メリットと機能については、Stripe岡本さんの記事がどこよりも詳しいです
Stripe Taxは「税額計算とレポーティング」を担う、アドオン的なサービスです。
Stripe CheckoutやPayment Linksなどの決済サービスと組み合わせて使用します。
例えばレストランでお会計すると消費税10%、弁当をテイクアウトすると消費税8%になりますよね。
このように、オンライン決済で扱うモノやサービスの種類に応じて、消費税率をズバリ特定してくれるのがStripe Taxの税額計算機能、その履歴をダウンロードできるのがレポーティング機能です。
SaaS事業者のあなたは「え?それだけ?」と思われたかもしれません。
それもそのはず、日本だと軽減税率が適用されるのは「酒類・外食を除く飲食料品」と「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」だけなので、SaaS事業者は決済額に消費税10%を掛ければオッケーです。
しかし、海外展開を視野に入れると、Stripe Taxの真価が見えてきます。
Stripe Taxの凄み
Stripe Taxの税額計算機能は、36カ国を対象に、自社SaaSが請求すべき税率※を、事業者の事業拠点と消費者の所在地から割り出してくれます。この36カ国とは日本、米国、カナダ、EU加盟国(27カ国)、英国、ノルウェー、香港(Hong Kong SAR China)、オーストラリア、ニュージーランド。今後もStripeの拠点拡大に伴って増えていくと予想します。
※ Stripe Taxは、SaaS以外の有形物(Tangible)にも対応しています。詳しくは公式ドキュメントをどうぞ!
https://stripe.com/docs/tax/tax-codes
例えば米国の場合、日本の消費税に相当するのはSales Tax(小売売上税)なんですが、日本の一律10% or 8%のような統一ルールはありません。税率は各州や地方自治体が自由に決めていて、モノやサービスの課税/非課税区分も州によって異なります。つまり、同じSaaSを販売していても、そのコンテンツや、事業者の事業拠点と消費者の居住地によって計算する税率がバラッバラなんです。
EU加盟国も同様で、日本の消費税に相当するVAT(付加価値税)は27カ国それぞれで異なります。各国の税法にてモノやサービス毎に区分が定められています。
Stripe Taxが驚異的なのは、36カ国の超絶ややこしい税制ルールを網羅しつつ、SaaS事業者の事業拠点と消費者の居住地に基づいて税額計算してくれることです。各国税法のアップデートにも追随してくれる。
しかも、**決済額のたった0.5%**だけで利用できる。絶大な恩恵があります。
もし、この税額計算システムをスクラッチ開発するとしたら。。
例えエンジニアが経年変化に強い柔軟なデータベースを設計できたとしても、肝心の税率が分からずに現地に詳しい会計事務所のヘルプが必要になりますよね。
(どれだけカネがかかるんだろう)
私は、Stripe Taxを、SaaS事業者の海外進出の実現可能性をグッと高めてくれる画期的なサービスと捉えています。
試しに経営者やプロダクトマネージャの目線でStripe Taxを眺めてみましょう。
Stripe Taxで、いざ海外展開だ
弊社には「SaaSを海外展開したいけど、どうすれば良いの?」というご相談がたまに入ります。皆さんSaaSを開発・運用するエンジニア力はあるけど、海外展開は未経験。法人規模を問わず、こんな感じでお困りです。
- 技術は何とかなりそう) SaaSにi18n・l10nを施して、Stripeで多通貨決済対応して、海外のAWSリージョンにサーバを置く
- マーケティングも何とかなりそう) リスティング広告か、グローバルな広告代理店に頼む
- セールスは事業次第) ロータッチSaaSはマーケティングドリブン、ハイタッチSaaSは何から手を付けたら良いのやら
- 税務・法務) さっぱり分からん
世界に売るぞと思い立っても、日本の外には195カ国あるわけで。マーケットエントリーする候補国を絞り込めたとしても、各国のデジタルサービス系の税務・法務となるとお手上げ。
でも、Stripe Taxがあれば一歩前進できるかもしれません。
Stripe Taxが36カ国、10億人強のマーケットを対象に、税率計算とレポーティングをやってくれるのですから。(Hong Kong SAR Chinaは人口カウント対象外)
後はどうやって現地国に納税するかという算段が付けば、税務の壁を乗り越えられます。
さて、企業規模で分けて、Stripe Taxの導入パターンを想像してみます。詳細はボカしていますが、弊社の相談例を元にした実話です。
1. 創業したてのITスタートアップ
創業したてのITスタートアップはSaaSの海外展開のハードルが一番低いと思います。もちろんSaaSの内容によりけりですが(例: 医療系は厳しい)、プロダクトが成熟していない分、国内・海外両対応するためのリファクタリングのコストが低いし、何よりも「とりあえず遠隔でマーケットエントリーして、ダメなら引き返す」という作戦が使える。
具体的には、以下のステップを踏めば海外展開(EU/米国への市場参入)の道が開けると思います。
- SaaSを i18n, l10n 対応する
- Stripeで多通貨決済を実装する
- EUにマーケットエントリーするならOne-Stop Shop制度で課税事業者になり、米国ならStripe Atlasで現地法人を設立する
- Stripe TaxでVATやSales Taxを請求し、One-Stop Shopや米国法人で納税
さらに簡単なのは、App Storeのプラットフォームを軸にSaaS(アプリ)を事業展開すれば、VATやSales Taxを気にする必要が無くなります。
Stripe Taxも、いずれApp Storeのように各国のStripe支社とのトランザクションで完結できるようになれば、日本のITスタートアップがさらに海外展開しやすくなるはずです。アップデートに期待!
2. 未上場のITスタートアップ
例えば日本国内でトップシェアのSaaS事業者が、海外展開を目論むケース。フットワークは軽いはずなのに、創業者の思うように進まないことがあります。
- SaaSがガチガチの日本仕様になっていて、i18n・l10n・多通貨対応するためのリファクタコストが高すぎる
- 社内メンバーや、付き合いの深い会計士・弁護士に越境SaaSのノウハウが無い
- 海外展開は上場してから考えよう!とにかく今は国内シェアが最優先!という経営上のプレッシャー
対策としては、まず日本仕様のコードをフォークして、海外版を作ってしまいましょう笑
後は「創業したてのITスタートアップ」と同じアプローチで海外展開できるかご検討ください。
3. IT系上場企業 (国内本社/支店のみ)
上場するとSaaSの海外展開のハードルが格段に上がると思います(個人の感想です)
SaaS事業と言うよりも、コンプライアンスどうする問題が浮上し、正門からマーケットエントリーするには現地法人・現地採用が必要だよねという結論になったりします。EUのOne-Stop Shop制度や、Stripe Atlasがマッチしない。
むしろ海外進出済みの企業とのナレッジ共有が大きなドライバーなのかなと思います。
Stripe Japanに相談すると、何か解決策が見えてくるかもしれませんよ?
4. 老舗のグローバル企業
世界中に支社を持つ日本企業からも、SaaS事業を海外展開したいというご相談を頂きます (相談件数としては一番多い)
例えばメーカーの場合、現地販売しているデバイスのクロスセルで有料SaaSを売りたいというケースで、開発は日本のエンジニアチーム(というかSIer)が担当し、販売は現地子会社でという商流。
グローバルな会計処理は慣れたものだと思いきや、実はクロスボーダーかつ消費者課金のSaaSとなるとノウハウが無く、どの支社の誰に相談すれば良いのか分からないという状況が。
この場合、Stripe Taxはぴったりフィットすると思います。
- 日本のエンジニアはStripe CheckoutとStripe Taxで実装しておく → Stripe Taxなら、もしSaaSを米国とイタリアの2カ国にクローン配置することになっても、Stripe Taxが事業拠点と消費者の居住地を元に税額計算してくれるのでコードのリファクタが最小限で済む
- 現地の経理担当者とのやり取りがスムーズになる
まとめ
Stripe Taxは越境オンライン決済の悩みを解決してくれる画期的なサービスです。
無料のテストアカウントは数分で開設できますので、ぜひ触ってみてくださいね!
https://stripe.com/jp/tax