目次
- EPSG を紐解く (1) 〜 はじめに
- EPSG を紐解く (2) 〜 基準系、楕円体、本初子午線
- EPSG を紐解く (3) 〜 座標参照系(測地座標参照系、鉛直座標参照系)、座標系
- EPSG を紐解く (4) 〜 座標参照系(投影座標参照系)、投影演算
- EPSG を紐解く (5) 〜 座標参照系(複合座標参照系)
- EPSG を紐解く (6) 〜 座標変換、 towgs84 句
基準系 (Datum)
JGD2011 関係では測地系 (Geodetic Datum) として Datum:1128 が、鉛直基準系 (Vertical Datum) として Datum:1131 がそれぞれ定義されています。
EPSG に登録されている内容を、各テーブルごとに整理すると下記のような構造になっています。
測地系 (Geodetic Datum) の方は楕円体 (Ellipsoid) と本初子午線 (Prime Meridian) を参照しています。 JGD2011 の場合は Ellipsoid:7019 の GRS 1980 と、 PrimeMeridian:8901 の Greenwich となります。
鉛直基準系 (Vertical Datum) の方は楕円体等への参照はありません。これは JGD2011 (vertical) に限らず、 datum_type:vertical
のレコード全般です。代わりに標高決定の実現方法を保持しており、 JGD2011 の場合、潮位計を基準とした水準測量ネットワークによる決定を意味する Levelling-based となっています。
JGD2024 はどうなる?
この記事では書くことがあまりないので、 EPSG における JGD2024 対応について個人的な意見を書いておきます。
2025年4月に標高における測量成果の改定(元期:2024年6月)が行われ、その基準系を「日本測地系2024」とされました。ただし、緯度経度および緯度経度を投影した平面直角座標系について本質的には改定されていません。名称としては「日本測地系」すなわち測地系 (Geodetic Datum) の内容については改定なしで、鉛直基準系 (Vertical Datum) に対する改定となります。
北米では North American Datum 1983 と North American Vertical Datum 1988 のように Datum と Vertical Datum を使い分けています。
日本の場合、一つ前の改定が東日本大震災の影響で同時に測地系と鉛直基準系(水準原点の標高値)両方であったため、どちらも「日本測地系2011」とみなされており、さほど問題にはなりませんでした。個人的には、 Verical Datum に対し「日本測地系2024 / JGD2024」という名称を使ったり、改定していない Geodetic Datum に対し「日本測地系2024 / JGD2024」とするのはやめて欲しかったなあ。と思います。
EPSG の対応については、鉛直基準系の改定ですので Datum:1131 の後継を追加する必要がありますが、測地系は改定されませんので Datum:1128 や、 Datum:1128 から派生する CRS:6668 などの座標参照系については後継を追加する必要は本質的にはありません。
EPSG Dataset の管理方針に関わるので可能かわかりませんが、「JGD2011 (JGD2024)」のような名称にリネームを行い、 Datum:1128 や CRS:6668 のコード自体は使用し続けるのとよいような気がします。
訳語について
Datum をなんと訳すか問題。
一般的には「測地系」と訳される Datum ですが、今回に関しては Datum の中に Geodetic Datum と Vertical Datum があり、そのそれぞれを区別したいわけです。 JIS X7111 などでは「原子」という訳をしていますが、さすがにそれは馴染みないしニュアンスすら伝わりにくいと思い却下。「データム」とカタカナで表すのも違う気がするので却下。
とりあえず Geodetic Datum を「測地系」と訳すとして、何かよい訳語がないか ChatGPT に聞いたところ「基準系」という訳を使っており、まあ悪くないかなと思い採用しました。 Vertical Datum は「鉛直系」としてもよかったのですが、「鉛直基準系」にしてみました。(なら Geodetic Datum も「測地基準系」でよかったのではという気もしますが)
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次の記事では座標参照系について扱います。