こちらは、マイクロマウス Advent Calendar 2025に参加しています。
前回までのあらすじ
前回は、AC信号の注入ではシミュレーションが難しいスイッチングコンバータの安定判定を、LTSpiceのFRA機能を用いて確認しました。
その結果、昇圧型コンバータの発振は、
- 出力Cが小さい場合
- インダクタが大きすぎる場合
場合に起きやすいことがわかりました。実際にそうなるのか、回路を作って実験してみます。
テスト回路
回路図
LT8337のデータシートの回路を参考に、抵抗やコイルやコンデンサを変更しやすいよう、部品を余計に直並列させています。なお、LT8337の16番ピンはPG(PowerGood)端子なのに対し、LT8337-1ではアンプの位相補正用出力端子となっています。プルアップとRCを切り替えることでLT8337/LT8337-1どちらにも対応可能な設計としました(今回はLT8337-1を使用しました)。

PCB
こちらはPCBです。コイルが異様にでかいのは、部品交換をしやすくするためです。(インダクタの定格電流をだいぶ盛ったという面もあります)

ちなみにこちらは実験中の様子です。何度もリワークしていて中々汚いです。最近のJLCPCBはレジストが強いようで、結構助かりました。

インダクタンスを増減させる
負荷を約0.5A、出力Cを10μFに固定して、コイルのインダクタンスを1.1μH→2.2μH→4.4μH→27μHと変化させました。FRAではインダクタンスが小さい方が安定するはずですがどうなるでしょうか?
波形
出力C=10μF、コイル=1.1μH

出力C=10μF、コイル=2.2μH

出力C=10μF、コイル=4.4μH

出力C=10μF、コイル=27μH

結論
- インダクタンスが小さい場合変動は大きい
- データシートで紹介されているインダクタンス(2.2μH)では一番安定
- インダクタンスが大きすぎると暴れてしまう
FRA解析結果からすると、1.0μHでも安定するはずでしたが、実回路ではそうでもなさそうです。これがインダクタンスが小さすぎることによるリプルなのか、それとも位相余裕が小さいためなのかはわかりませんでした。
キャパシタンスを変化させる
負荷を約0.5A、インダクタンスを2.2μHに固定し、出力のコンデンサを変化させました。FRAによれば出力のキャパシタンスが大きい方が安定するようですが、どうなるでしょうか?
波形
コイル=2.2μH コンデンサ=MLCC10μF

コイル=2.2μH コンデンサ=MLCC10μF + 電解47μF

コイル=2.2μH コンデンサ=MLCC10μF×2 + 電解47μF

結論
- キャパシタンスが大きい方が安定する
- 電解コンデンサは容量の割に効果が小さい
こちらは、FRAでの解析結果と一致しました。
応用事例
負荷を約0.5Aの状態から、NFP-D0812の通電をONすることで、瞬間的に約2Aの負荷をかけてみます。
コイル=4.4μH コンデンサ=MLCC10μF×2 + MLCC4.7μF×2 + 電解47μF

黄色の波形が出力電圧。青色が入力電圧です。瞬間的に電圧がドロップしているものの、電圧は4ms程度で安定しています。(そのあとしばらく電圧がギザギザしているのは位相余裕が無いのか、モーターのノイズなのかは謎)
ちなみに、以前実験に使った1cellのバッテリーで同様の実験をしましたが、電源の能力が低いためか入力電圧が暴れ、中々電圧が収束しませんでした。

総評
- 一応シミュレーション通り、大きすぎるインダクタンスや小さすぎるキャパシタンスで不安定となることが確認できた
- インダクタンスが小さいときに不安定気味な理由が分からなかった
- FRAを用いないことには定量的な位相余裕がわからず、シミュレーションと実機の一致性が確認できなかった
- 小型LiPoの電源性能は思ったより低くかった
- ICの縁にピンが露出していないので、はんだ付けが難しかった