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AIで紐解くAI-DLC v2:スコープ

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Last updated at Posted at 2026-06-29

本記事の位置づけ — 本記事は、awslabs/aidlc-workflows リポジトリの規範ルールおよび利用ガイドを素材として、筆者が AI を活用して読み解き、まとめた解釈です。AWS が公式に発表した方法論ではなく、一次資料の翻訳・要約でもありません。

シリーズ — 本記事は AIで紐解くAI-DLC v2 シリーズの一部です。

参照した版Claude Code 実装を対象に、2026 年 6 月時点の v2.1.3(コミット c95070ecore/)を参照しています。Kiro・Codex 実装は対象外で、記述が異なる場合があります。OSS 実装は更新が続いているため、最新の状態は公式リポジトリをご確認ください。


概要

スコープ(scope)は、ワークフローでどのステージを実行し、どれをスキップするかを決める選択です。AI-DLC v2 の工程は全32ステージありますが、案件によって必要な工程は違います。バグ修正に市場調査はいらず、PoC(概念実証)に運用設計もいりません。スコープは「今回はどんな作業か」を一語で宣言し、それに応じて工程を絞り込みます。poc から enterprise まで9種が用意され、いずれもコードではなくファイルで定義されます。

スコープは、工程の絞り込みと深さの既定を決める起点です。本記事では、9種のカタログ、各スコープが実行/スキップするステージ、自由文からの自動推定、そしてコード変更なしで増やせるファイル定義という仕組みを読み解きます。

スコープとは

AI-DLC v2 の工程は全32ステージありますが、毎回その全部を通すわけではありません。スコープは「今回の作業はどういう種類か」を一語で宣言し、それに応じて工程を絞り込む軸です。

AI-DLC v2 には、ワークフローの振る舞いを調整する独立した軸が3つあります。スコープはその一番外側で、「どこを実行するか」を受け持ちます。

決めること
スコープ どのステージを実行するか(+深さの既定)
深さ(depth) 各ステージをどこまで作り込むか
テスト戦略(test strategy) テストをどこまで作り込むか

深さとテスト戦略の段階そのものは別記事「深さ」で扱います。各ステージが何をするかは別記事「工程とエージェント」で扱います。スコープの全体像での位置づけは別記事「概念マップ」で扱います。本記事は、そのうちどれを実際に走らせるかに集中します。


スコープが決める2つのこと

スコープを1つ選ぶと、連鎖して2つが決まります。

  1. EXECUTE / SKIP の絞り込み ― 全ステージのうち、どれを走らせ、どれをスキップするか。
  2. 深さの既定 ― 走らせるステージをどこまで作り込むかの初期値。これは人が後から --depth で上書きできます

9種のスコープ・カタログ

スコープは core/scopes/aidlc-<name>.md として9本定義されています。各ファイルのフロントマター(ファイル冒頭のメタ情報)が、その名前・深さの既定・自動推定に使うキーワードを持ちます。

スコープ 深さの既定 キーワード(自動推定のトリガ) 用途
bugfix Minimal fix, bug, broken 既存コードの特定バグを直す
refactor Minimal refactor, clean up, simplify 振る舞いを変えずに整理する
poc Minimal proof of concept, prototype, poc, spike 実現可能性を素早く確かめる
security-patch Minimal security, CVE, vulnerability, patch 脆弱性に急いで対応し、デプロイまで通す
mvp Standard mvp, minimum viable 運用を省き、コアを最短で出す
infra Standard infrastructure, deploy, infra インフラ変更
feature Standard (なし) 新機能の既定。実務的な深さ
workshop Standard(テストは Minimal) workshop, lab, training ゲート付きの集合演習
enterprise Comprehensive (なし) 規制対応。全工程+完全な監査証跡

featureenterprise だけキーワードを持ちません。enterprise は「速さと引き換えに省く」ことをしない、意図的に手で選ぶスコープだからです。feature は後述するとおりキャッチオール(取りこぼしの受け皿)で、どのキーワードにも当たらなかった入力が最後に落ちてくる既定値です。


実行するステージと削るステージ

スコープ別に、32ステージのうち何本を EXECUTE するか、そして何を削るか・なぜ削るかを一次資料の説明文から要約したのが次の表です。全32×9のマトリクスは末尾の付録に置きました。

スコープ EXECUTE 何を削るか/残すか(なぜ)
enterprise 32 / 32 何も飛ばさない。未文書化の判断のコストが、ステージを走らせるコストより高いため全工程を保持
feature 32 / 32 実行範囲は enterprise と同一。違いは深さ(Standard)だけ。作法は軽いが端から端まで通す
workshop 25 / 32 発想(ideation)を7ステージすべて SKIP。題材はファシリテーターが事前に決めるため。設計から運用まではそのまま見せ、テストだけ Minimal
mvp 22 / 32 発想の市場調査・チーム編成・承認引き継ぎ、および運用フェーズ全7ステージを SKIP。MVP は製品を証明するが、まだ運用は背負わない
infra 13 / 32 製品機能側(発想すべて・アプリ設計・コード生成)を SKIP。NFR(非機能要件)/インフラ設計とデプロイ・可観測性を実行。9種で唯一 reverse-engineering を SKIP(インフラはデプロイ構成から始まり、アプリのソースから始まらないため)
security-patch 9 / 32 設計の手順はほぼ全 SKIP。ただし bugfix と違い deployment-pipelinedeployment-execution は EXECUTE(デプロイされない修正は脆弱性を塞がない)。要件は requirements-analysis でなく nfr-requirements で記録
poc 8 / 32 動くコードまでの細い道だけ。bugfix の構成に intent-capture(仮説の意図をとらえる)を足した形。設計・運用・計画は省く(スパイクは使い捨て)
refactor 8 / 32 bugfix とほぼ同じ+functional-design(保つべき振る舞いの目標形を描く)。新製品も新デプロイ面もないので発見・運用はスキップする
bugfix 7 / 32 最小。初期化+reverse-engineeringrequirements-analysiscode-generationbuild-and-test。既知システムへの増分作業なので、それ以外は不要

bugfixrefactorsecurity-patch の3つは「ブートストラップするものが無い」増分系で、いずれも最初の試作(別記事「ウォーキングスケルトン」で扱います)の手順をスキップする点が共通します。

補足(一次資料内の食い違い)
core/scopes/aidlc-enterprise.md の説明文は「全32ステージを EXECUTE するのは enterprise だけ」と書いていますが、実際には feature も 32/32 です(aidlc-feature.md 自身が "runs every stage" と明言)。両者の差は実行範囲ではなく深さだけ、というのが実ファイルから読める正確な姿です。
また stage-protocol.md §8 のスコープ表は概数("~25" など)で、実数とわずかにズレます(mvp は実22、bugfix は7、refactor は8、security-patch は9、workshop は表に未掲載)。本記事の数値は各ステージのフロントマターの scopes: を全数集計した実数です。


スコープの決まり方

スコープの確定には「自動で見当をつける」段と「最終的にどの値を採用するか」の段があります。

キーワードによる自動推定

ユーザーが /aidlc 〜を直して のように自由文で頼んだとき、aidlc-utility.tsinferScopeFromText() が各スコープの keywords を照合して見当をつけます。ルールは決定論的です。

  • 単語境界マッチbugdebugfixture には当たりません。
  • スコープをアルファベット順に走査し、最初に当たったものを採用(呼ぶたびに結果が同じになるよう)。
  • 入力文がキーワードを含んでいても5語を超える(6語以上の)場合、またはどのキーワードにも当たらない場合は feature にフォールバック。説明文に偶然キーワードが混ざっただけのプロジェクト記述を、誤って狭いスコープに落とさないための保険です。

こうして自動推定は出発点の提案にとどまり、迷ったら一番広い feature に寄せる設計になっています。

最終的に採用される値

実行時に実際のスコープを決めるのは aidlc-orchestrate.tsresolveScope() で、優先順位は次のとおりです。

  1. state ファイルに記録済みのスコープ(ワークフロー進行中はこれ)
  2. --scope フラグ
  3. 環境変数 AWS_AIDLC_DEFAULT_SCOPE
  4. 既定値 DEFAULT_SCOPE = "feature"

人が最初に選ぶ流れ

新規プロジェクトでスコープを明示するとワークフローが作成されます。

  • /aidlc --scope <name>(または /aidlc <name>)でそのスコープのワークフローを開始。
  • bugfix / feature / mvp / security-patch にはキーワードの自動推定を挟まず固定で走る専用ランナー /aidlc-<scope> があります。それ以外のスコープは --scope で到達します。

人が --scope や専用ランナーで明示すれば、自動推定よりそちらが優先されます。


深さの既定値との関係

スコープが決めるもう一方が、深さの既定値です。stage-protocol.md §8「Depth Guidance」が scope→depth の対応を定めています。

深さの既定 スコープ
Minimal poc, bugfix, refactor, security-patch
Standard feature, mvp, infra, workshop
Comprehensive enterprise

スコープが決めるのは深さの「既定値」までで、深さの段階そのもの(質問量や成果物の作り込み)には踏み込みません。その中身は別記事「深さ」で扱います。本記事に関わるのは、次のとおりです。

  • 深さはスコープで初期値が決まるが、人が --depth で後から上書きできる
  • テスト戦略は通常は深さに従うが、スコープが独自の既定を宣言していればそれが優先される(workshop は深さが Standard でもテストは Minimal)。--test-strategy で独立に上書きもできる。
  • だから「Standard の作り込み+Minimal のテスト」のような組み合わせも作れる。

スコープのファイル定義

スコープの実装は、「スコープを増やすのがどれだけ簡単か」に直結します。

スコープは他の部品(センサーやエージェント)と同じファイル定義です(追加にコードは要りません)。定義は2か所に分かれます。

  • アイデンティティcore/scopes/aidlc-<name>.md 1ファイル(深さ/キーワード/説明+説明文)。
  • メンバーシップ … 全32ステージそれぞれのフロントマターにある scopes: リスト。「このステージはどのスコープで走るか」を各ステージ側が宣言する。

ビルド時に aidlc-graph.ts compile各ステージの scopes: を転置して EXECUTE/SKIP グリッド(scope-grid.json)を生成します。実行時はこのグリッドと .md のフロントマターを合成して、スコープ定義を復元します。結果として、

スコープを増やすのは「aidlc-<name>.md を1つ置き、対象ステージに scopes: タグを足す」だけ。コード変更は不要。

新しいスコープを足すと /aidlc --scope <name>--doctor・キーワード自動推定がすべて自動的に拾います。本記事の EXECUTE/SKIP 数値が「スコープ定義ファイルの説明文」ではなく「各ステージのフロントマターの集計」を真とするのは、まさにそこが唯一の源泉だからです。


EXECUTE / SKIP フルマトリクス

全ステージ × 9種。● = EXECUTE、・ = SKIP。各ステージのフロントマターの scopes: を集計したものです。列はおおむね広い順。

フェーズ ステージ ent feat work mvp infra sec poc ref bug
initialization state-init
workspace-detection
workspace-scaffold
ideation approval-handoff
feasibility
intent-capture
market-research
rough-mockups
scope-definition
team-formation
inception application-design
delivery-planning
practices-discovery
refined-mockups
requirements-analysis
reverse-engineering
units-generation
user-stories
construction build-and-test
ci-pipeline
code-generation
functional-design
infrastructure-design
nfr-design
nfr-requirements
operation deployment-execution
deployment-pipeline
environment-provisioning
feedback-optimization
incident-response
observability-setup
performance-validation
EXECUTE / 32 32 32 25 22 13 9 8 8 7

略号:ent=enterprise/feat=feature/work=workshop/mvp=mvp/infra=infra/sec=security-patch/poc=poc/ref=refactor/bug=bugfix。


参照元

ファイル 内容
core/scopes/(9ファイル) 9種のスコープ定義。各フロントマター(name / depth / keywords / description / testStrategy)と「なぜそのステージを EXECUTE/SKIP するか」の説明文
core/aidlc-common/stages/(32ファイル) 全32ステージ。各フロントマターの scopes: リストが EXECUTE/SKIP の唯一の源泉(付録マトリクスはこれを集計)
core/aidlc-common/protocols/stage-protocol.md §8 Depth Guidance に scope→depth 既定の対応表、テスト戦略の既定・上書きルール
core/tools/aidlc-utility.ts inferScopeFromText():キーワードの単語境界マッチ・アルファベット順 first-match・5語超→feature フォールバック
core/tools/aidlc-orchestrate.ts resolveScope():state → --scope → 環境変数 → 既定 feature の優先順位
core/tools/aidlc-lib.ts loadScopeMapping():グリッド(.stages)+ .md フロントマターを合成してスコープ定義を復元
CHANGELOG.md 0.5 系:scope-mapping.json 廃止 → scopes/*.md +各ステージ scopes: タグの file-authored 化、compile での転置、/aidlc-<scope> ランナー

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目次: AIで紐解くAI-DLC v2

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