はじめに
2026年7月15日に開催されたMCP Developer Lab | MCPで切り開くAgentic AIワークフローにて、「DatabricksにおけるMCPソリューション」というタイトルでLTをさせていただきました。ご参加いただいた皆さま、運営の皆さま、ありがとうございました!
LT後にはブースに多数の方にお越しいただき、たくさんのご質問をいただくことができました。MCPとガバナンスの組み合わせに対する関心の高さを肌で感じることができ、大変嬉しい機会となりました。ブースでお話しできた皆さま、改めてありがとうございました。
当日の資料はこちらです。
本記事では、LTでお話しした内容を振り返りつつ、5分のLTではお伝えしきれなかった実機検証の詳細を補足します。
登壇の様子はこちらです。
なぜ今MCPなのか
LTの冒頭では「エージェントにデータ/ツールを繋ぐたび、独自インテグレーションを書いていませんか?」という問いかけから始めました。エージェント活用が本格化すると、次のような課題に直面します。
- N×Mの接続地獄: ツール×エージェントの組み合わせごとに実装が必要で、保守コストが膨張する
- ガバナンス不在: 誰が何にアクセスしているのか、監査ログはあるのか、権限はどう効くのかが見えない
- 標準がない: ベンダーごとに作法が違い、再利用できず、学習コストが高い
MCP (Model Context Protocol) は、AIエージェントとデータ/ツールをつなぐ標準プロトコル、いわば「AI界のUSB-C」です。接続の標準化はMCPが解決してくれますが、2つ目の課題であるガバナンスはプロトコルだけでは解決しません。ここがDatabricksならではの強みで、繋ぐだけでなく、Unity Catalogのガバナンスがそのまま効くという点をLT全体を通じてお伝えしました。
DatabricksのMCPは大きく2系統
DatabricksにおけるMCPソリューションは、大きく2つの系統に整理できます。
A. Managed MCP serversは、フルマネージドですぐ使えるMCPサーバー群です。URL指定だけで接続でき、以下のDatabricks資産をエージェントのツールとして公開できます。
- Unity Catalog Functions
- Genie Spaces (自然言語Q&A)
- AI Search (ベクトルストア)
- Databricks SQL
B. Custom MCP serversは、Databricks Apps上でホストする自社固有のMCPサーバーです。streamable HTTPで実装し、権限はDatabricks Appsで制御、監視はUnity AI Gatewayに集約されます。数十行のコードで自社のツール/ワークフローをMCP化できます。
両者に共通する差別化ポイントは、ユーザー権限を自動尊重すること、すべて監査可能であること、そして数クリックで接続できることです。エージェントは「誰かの資格情報」ではなく、呼び出したユーザー本人の権限でデータやツールにアクセスします。
DAIS 2026: Unity CatalogにMCPがネイティブ統合
Data + AI Summit 2026 (2026/6/15–18, サンフランシスコ) で発表された目玉の一つが、MCPのUnity Catalogへのネイティブ統合です。ポイントは3つあります。
- 承認済みツールの中央カタログ: カスタムMCPをUnity Catalogに登録することで、組織の「承認済みツール一覧」ができあがります。管理者がアクセスを管理し、開発者は再利用するだけです
- 承認済みMCPの検索と利用: Genieやコーディングエージェントから、カタログ化されたMCPをそのまま利用できます
- 外部ソースへの安全な接続: Google Drive、Slack、Jira、GitHubなどのSaaSアプリにも、Unity Catalogのガバナンス下で接続できます
MCPは「繋ぐ標準」ですが、Databricksはそこにとどまらず、Unity Catalogで承認・カタログ化するところまで一気通貫でカバーする、というのがこの統合の位置づけです。
Unity AI Gateway: AI資産のコントロールハブ
この統合を支えるのがUnity AI Gatewayです。Models / Providers / MCP / Skills / Agentsの5タブで、AI資産を一元統制するコントロールハブとして機能します。
- Models (既存): モデルサービングの統制。権限、レート制限、ロギング
- MCP (新規): MCPサーバーの呼び出しを監視・制御
- Agents / Skills: エージェントやスキルもガバナンス対象に
-
監査・観測:
system.ai_gateway.usageシステムテーブルに呼び出しを記録
従来からモデルの統制をサポートしてきたAI Gatewayが、MCPやエージェントへと守備範囲を広げたのがDAIS 2026の新規機能です。データに対して培われてきたガバナンスの流儀が、そのままAI資産に適用される構図になっています。
実機で確かめる: MCPサービス
LTのデモパートでは、AI Gatewayでモデル+MCPを繋いで動かす流れをご紹介しました。自然言語の質問からMCPツールが呼ばれ、Unity Catalogの権限が自動適用され、Gatewayにログが記録される、という一連の動きです。
この内容は先日の記事DatabricksのMCPサービスを試す — エージェントのツールもUnity Catalogで統治するで実機検証していますので、ポイントを振り返ります。
-
ビルトインMCPサービス: GitHub、Slack、Google Driveなど一般的なSaaSアプリ用のMCPサービスが
system.aiスキーマ配下に最初から用意されています - サービスは共有、認証は個人ごと: Unity CatalogがユーザーごとにOAuthトークンを管理するため、エージェントは呼び出したユーザー本人の権限で外部ツールにアクセスします。ユーザーがトークンを目にすることはありません
- ツールの供給側制御: 公開するツールをサービス側でフィルタリングでき、エージェントに渡す機能を絞り込めます
-
エージェント体験: Playgroundから「自分のリポジトリにはどんなものがありますか」と聞くだけで、
get_meとsearch_repositoriesという2つのツールが自律的に連鎖し、コードを1行も書かずに回答が返ってきます -
ツール単位の監査: 使用状況は
system.ai_gateway.usageにMCP_SERVICEとして記録され、mcp_metadata.tool_nameでどのツールが発火したかまで追跡できます
「誰がどの外部ツールを、どのツール単位で使ったか」までデータと同じガバナンスの流儀で見える、というのがMCPサービスの本質だと考えています。
Agent Bricks: オープン・マルチハーネス
LTの終盤では、これらのMCP基盤の上で動くエージェント構築基盤Agent Bricksにも触れました。旧Mosaic AI (構築・評価・デプロイ) を内包した統合基盤で、ノーコードとコードファーストの両方をカバーします。
- LangGraph / CrewAI / Claude Code SDKなど、任意のハーネスで開発可能
- Lakebaseによるマネージドなエージェントメモリ
- Databricks Sandboxでの隔離実行
- OpenAI / Anthropic / Gemini / Kimi / Grokなどモデル選択肢の拡大
- Unity Catalog登録済みMCPをワンクリック接続 (Supervisor Agent)
「MCPで繋ぎ、Unity Catalogで承認・カタログ化し、AI Gatewayでガバナンスし、Agent Bricksで構築する」という一気通貫のストーリーが揃ってきています。
まとめ
LTでお伝えしたメッセージを一言でまとめると、標準プロトコル×ガバナンス×ワンクリック接続です。MCPという標準で繋ぎ、Unity Catalogで承認・カタログ化し、AI Gatewayでガバナンスする。エージェント時代のツール統制の形として、ぜひ押さえていただきたい構成です。
ブースでは想像以上に多くの方にお越しいただき、たくさんのご質問をいただきました。MCPを「動かす」フェーズから「組織で統治する」フェーズへの関心の移り変わりを実感するイベントでした。今後も実機検証の記事を継続していきますので、ご興味のある方はぜひフォローいただければ幸いです。
Databricksに興味のある方は、ユーザーコミュニティJEDAIにもぜひご参加ください。Meet Upやもくもく会を定期的に開催しており、情報交換のためのDiscordもあります。
参考リンク
- MCP Developer Lab | MCPで切り開くAgentic AIワークフロー
- DatabricksにおけるMCPソリューション (登壇資料)
- Databricksのモデルコンテキストプロトコル (MCP)
- MCPサービスの登録
- Unity AI GatewayによるAIガバナンス
- DatabricksのMCPサービスを試す — エージェントのツールもUnity Catalogで統治する

