はじめに
Databricksがエンタープライズアプリ開発のための新しいツールを次々とリリースしています。2026年2月17日に公開された公式ブログでは、Databricks AppKitとReplit連携が発表されました。
ただ、これと似たツールとしてAI Dev Kitも存在しており、さらにDatabricks CLIにはMCPサーバーも組み込まれています。それぞれ何が違うのか、実際に試してみたので整理します。
3つのツールの全体像
Databricksのアプリ開発・AI開発支援には、現在以下の3つのツールが存在します。
| ツール | リポジトリ | 一言で言うと | 言語 |
|---|---|---|---|
| AppKit | databricks/appkit | アプリの「骨格」(フレームワーク) | TypeScript |
| AI Dev Kit | databricks-solutions/ai-dev-kit | AIコーディングアシスタントの「知識」(スキル集) | Python中心 |
| aitools MCP | Databricks CLIに組み込み | AIコーディングアシスタントの「目と手」(データアクセス) | CLI |
これらは排他ではなく補完関係にあります。
ツール間の関係についての補足
AppKitはデプロイ後もユーザーに使われるプロダクトの一部(アプリの中身)ですが、aitools MCPとAI Dev Kitはどちらも開発時にAIコーディングアシスタントを支援するツールです。つまりaitools MCPとAI Dev Kitは同じ「開発支援」レイヤーに位置しており、MCPツール/データアクセスの領域では機能的な重複があります。
両者の違いは主に出自と提供形態です。aitools MCPはDatabricksプロダクトチームが開発しCLIに組み込まれているのに対し、AI Dev KitはField Engineeringチームが提供するコミュニティ寄りのツール(SLA対象外)です。AI Dev Kitにはスキルファイル(Spark Declarative PipelinesやDatabricks Jobsなどのベストプラクティスを記述した静的なドキュメント群)が含まれており、この部分はaitools MCPにはない独自の価値です。
いずれもプレビュー/実験段階であり、今後統合や棲み分けが進む可能性があります。
Databricks AppKitとは
AppKitは、Databricks Apps上で動作するアプリケーションを構築するためのNode.js + ReactのフルスタックTypeScript SDKです。
特徴
- プラグインアーキテクチャ: 認証、キャッシュ、ストリーミング、テレメトリなどをプラグインとして提供
- 型安全なSQLクエリ: SQLファイルを書くとTypeScriptの型が自動生成される
- 本番対応機能: リトライ、エラーハンドリング、OpenTelemetryによるオブザーバビリティを組み込み
-
AI開発最適化:
llms.txtやCLAUDE.mdが同梱されており、AIコーディングアシスタントでの開発を明確に想定 - Databricksネイティブ: SQL Warehouse、Unity Catalog、Lakebase(PostgreSQL)、Model Serving Endpointsとシームレスに統合
2つのパッケージ
@databricks/appkit(コアライブラリ)
createApp()でアプリをブートストラップし、Express + Viteベースのバックエンドを構成します。Lakebase接続(createLakebasePool())やUnity Catalog連携も組み込まれています。
@databricks/appkit-ui(UIライブラリ)
ReactベースのUIコンポーネント群です。AreaChart、BarChart、LineChart、DataTableなどのデータ可視化コンポーネントに加え、Button、Card、Dialog、Sidebarなど約60種類のUIプリミティブを提供します。
注意点
現在プレビュー段階(v0.5.3)で、本番環境での使用は非推奨です。APIは実験的で、破壊的変更が予告なく発生する可能性があります。
AI Dev Kitとは
AI Dev Kitは、Databricks Field Engineeringチームが提供するAIコーディングエージェント向けツールキットです。
Claude Code、Cursor、Windsurfなどのコーディングアシスタントに、Databricks開発の「スキル」(ベストプラクティスやコンテキスト)を注入します。
含まれるスキル
- Spark Declarative Pipelines(ストリーミングテーブル、CDC、SCD Type 2、Auto Loader)
- Databricks Jobs(スケジュールワークフロー、マルチタスクDAG)
- AI/BI Dashboards(可視化、KPI、分析)
- Agent Bricks(Knowledge Assistant、Genie Space、Multi-Agent Supervisor)
- Lakebase
- Databricks Apps(Python、APX)
- その他多数
AppKitとの違い
AppKitが「アプリそのものを構築するSDK」であるのに対し、AI Dev Kitは「AIコーディングアシスタントがDatabricksの正しい書き方を理解するためのナレッジ集」です。AppKit以外の開発(ノートブック、ジョブ、パイプラインなど)にも広く使えます。
aitools MCPサーバーとは
Databricks CLIに組み込まれた実験的なMCPサーバーです。AIコーディングアシスタントにワークスペースのテーブル参照やCLIコマンド実行能力を与えます。
AppKitやAI Dev Kitの「知識」とは独立して動作し、AIコーディングアシスタントに「Databricksのデータを直接見て操作する能力」を提供する役割です。
AppKitを試してみる
前提条件
- Node.js v22以上
- Databricks CLI v0.287.0以上
# Databricks CLIのアップグレード(mac)
brew upgrade databricks
# バージョン確認
databricks -v
方法A: CLIでの手動セットアップ
# アプリの初期化(対話形式)
databricks apps init
# ローカル開発
npm run dev
# デプロイ
databricks apps deploy --profile DEFAULT
databricks apps initがAppKitベースのプロジェクトをスキャフォールドしてくれます。
ローカルで動作確認します。
cd taka-app
npm run dev
方法B: AI-first(MCPサーバー + Claude Code)
1. MCPサーバーのインストール
databricks experimental aitools install --profile DEFAULT
対話形式でどのAIコーディングアシスタントに設定するか聞かれます。
Which coding agents would you like to install the MCP server for?
Install for Claude Code?: yes
✓ Installed for Claude Code
Install for Cursor?: no
MCPサーバーはユーザーレベルで動作します。そのプロファイルに紐づいたユーザー自身の認証情報・Unity Catalogのアクセス権限がそのまま適用されるため、管理者権限は不要です。
2. Claude Codeでアプリを生成
新しいディレクトリを作成してClaude Codeを起動します。
mkdir ~/my-appkit-app
cd ~/my-appkit-app
claude
最初にAppKitのドキュメントを読ませるのがおすすめです。
Read the AppKit documentation by running: npx @databricks/appkit docs
Then use this knowledge to help me build apps.
その後、アプリの生成を依頼します。
Create a new Databricks AppKit app that:
- Connects to my SQL Warehouse
- Queries the samples.nyctaxi.trips table
- Shows a bar chart of trip counts by hour of day
- Shows a summary table of average fare by pickup zone
Use --profile DEFAULT for all databricks CLI commands.
MCPサーバーが入っているので「Show me what tables are available in my workspace」のようにデータの探索もClaude Codeに任せられます。
3. ローカル開発とデプロイ
# ローカルで動作確認
npm run dev
# Databricksにデプロイ
databricks apps deploy --profile DEFAULT
デプロイ後はDatabricks認証、Unity Catalogのガバナンス、ワークスペースのネットワーク制限が自動的に適用されます。
複数プロファイルがある場合の注意
~/.databrickscfgに同じホストを指す複数プロファイルがある場合、以下のようなエラーが出ます。
Error: cannot resolve bundle auth configuration: resolve:
multiple profiles matched: DEFAULT, e2-demo-tokyo, tokyo
この場合は--profileフラグで明示的に指定してください。
databricks apps deploy --profile DEFAULT
3つのツールの使い分け
| やりたいこと | 使うツール |
|---|---|
| TypeScriptでDatabricks Appsを構築したい | AppKit |
| AIコーディングアシスタントでDatabricksの開発全般を効率化したい | AI Dev Kit |
| AIコーディングアシスタントからワークスペースのデータを直接参照・操作したい | aitools MCP |
| AIコーディングアシスタントでAppKitアプリを自然言語で生成したい | aitools MCP + AppKit |
| 全部盛りで最強の開発環境を作りたい | aitools MCP + AppKit + AI Dev Kit |
まとめ
Databricksのアプリ開発エコシステムは急速に進化しています。
- AppKitはDatabricks Appsの開発体験を、従来のPython/Gradio/Streamlit系からTypeScriptのフルスタック開発へと拡張するSDK
- AI Dev KitはAIコーディングアシスタントにDatabricks開発全般のベストプラクティスを教えるナレッジ集
- aitools MCPはAIコーディングアシスタントにワークスペースへの直接アクセス能力を付与するツール
いずれもまだプレビュー/実験段階ですが、特にMCPサーバー + AppKitの組み合わせによるAI-first開発は、vibe codingでエンタープライズアプリを素早く構築する未来を垣間見せてくれます。
参考リンク
- Databricks Blog: Ship Enterprise Apps Faster with Databricks AppKit and Replit
- AppKit ドキュメント
- AppKit GitHub
- AI Dev Kit GitHub
- Databricks MCP ドキュメント
- 外部クライアントからDatabricks MCPサーバーへの接続





