本記事では、「良い文章」を書くための重要スキルである「パラグラフライティング」について、内容の解説、実践方法、学び方を紹介します。
【※NEW】22年6月新記事:スクラム関連の研修・資格のまとめ & おすすめの研修受講方法
残念ながら日本の大学では、良い文章を書くための重要なスキルである「パラグラフライティング」について、ほとんど教えてもらえません。
しかし新人に限らずですが、パラグラフライティングを意識し、読み手に伝わりやすく、読んでいて苦にならないような良い文章を書くことができると、仕事の早さや質は劇的に変化します。
パラグラフライティングのスキルを知り、少しでも意識していくだけで、文章力は大きく変化します(偉そうに書いていますが、私もいまだに完全な習得に向けて、日夜、改善の日々です)。
本記事は、私の「新人&新人メンター向け記事シリーズ」の第2本目となります。
(1本目はこちら)「効果的で継続される1on1のコツ【2022年版】」
本記事の目次
[1] 読みやすい、伝わりやすい日本語とは
[2] 書籍「The Elements of Style」とは
[3] パラグラフライティングの概要と3要素
[4] PREP法との違い、パラグラフライティングの重要な4つのルール
[5] パラグラフライティングの具体例が掲載されたサイトやおすすめ書籍の紹介
[1] 読みやすい、伝わりやすい日本語とは
読みやすい、伝わりやすい日本語とはずばり、「パラグラフライティング」のルールが守られている文章です。
[2] 書籍「The Elements of Style」とは
書籍「The Elements of Style」とは、英語圏の大学の学部生の大半がパラグラフライティングを学ぶ際に使用する書籍です。
この「The Elements of Style」[Amazonリンク] を使用して、徹底的にパラグラフライティングを学びます(7,352レビューの4.6評価)。
[3] パラグラフライティングの概要と3要素
それでは、パラグラフライティングとはいったいどんな内容なのか?ですが、
それを理解するために、最初に以下のサイトを見るのをおすすめします。
「世界に通用する英文を!パラグラフ・ライティングの基本と勉強法を徹底解説
英語圏では当たり前!パラグラフ・ライティングとは?」
一部上記サイトから引用します。
パラグラフ・ライティングは、パラグラフつまり段落を、大きく分けて3つの構成にすることを目標とします。
1.”Topic Sentence”
段落の1番最初の文章にあたります。ここでは、その段落で伝えたいことの主張を、簡潔にまとめます。ほとんどの場合、1文だけで表すことが多いです。
2.”Reasoning”
ここでは、”Topic Sentence”で行った主張をサポートするための理由を述べる部分になります。ここで注意していただきたいのが、必ず主張をサポートする文章だけを書くことです。Topic Sentenceとは無関係な文は、書かないようにして下さい。1文だけとは限らず、必要に応じて増えることになります。
3.”Evidence”
”Reasoning”を相手に納得してもらうために具体例やその妥当性を挙げる部分になります。”Reasoning”と同様、複数の文章で表すことができます。
上記の記載の通り、パラグラフライティングでは、「トピックセンテンス」、「リーゾニング」、「エビデンス」の3要素で1つの段落を構成します。
(正確には一つのパラグラフを構成します。一つのパラグラフが複数の段落から構成される場合もあります)
パラグラフライティングはPREP法(「Point(結論)」、「Reason(理由)」、「Example(実例・具体例)」、「Point(結論)」の順で書く文章作成術)や、SDS法などと似ている部分もあります。
一方でPREP法などとは違う点もあり、次にその違いを説明します。
[4] PREP法との違い、パラグラフライティングでの重要な4つのルール
上記の[3]の説明だけでは、パラグラフライティングは、ほぼPREP法と同じように感じます。
しかし、パラグラフライティングの場合、パラグラフ内の各文章の書き方にもルールが存在します。
ただし、そのルールは解説書籍や解説する人によって少々異なり、パラグラフライティングの3要素ほど明確なものではありません。
以下にて、私の言葉で、良い文章を書く際に重要となる、パラグラフライティングの4つのルールを解説します。
(1)パラグラフで扱うトピックは一つだけにする
文章を読んで、書いた人に対して、「えっと結局、この段落(パラグラフ)では何を言いたいの?」と聞いてみたときに、回答が、
「〇〇が□□であること、と、△△がXXであることです」や、
「〇〇が□□であること、と、ただし例外として〇〇がhogehogeの場合もあること、そして今回重要なのは後者のhogehogeであることを言いたいです」
みたいな状況は、望ましくありません。
ですが、意外と上記のような状態(とくに後者のような状態)になりがちです。
「パラグラフで扱うトピックは一つだけにする」はスライド作成における「1スライドでは1主張」に通じるものでもあります。
(2)先頭のトピックセンテンスだけを読んでいくと全体概要が伝わる
パラグラフライティングができていれば、先頭のトピックセンテンスを読むだけでそのパラグラフで伝えたいことが理解できます。
そのため博士課程卒で英語論文の執筆・投稿などを通じてパラグラフライティングに馴染みがある人は、英語論文や書籍などを読む際、パラグラフの先頭に着目して読むので、読むスピードが早いです。
なお、「この読むスピードが早い」とは、先頭の1行だけ読むから早いケースと、先頭を読んだ後、次以降の文はそのリーゾニングだよねという前提で読んでいるので理解が早いという、2パターンのケースがあります。
「先頭のトピックセンテンスだけを読んでいくと全体概要が伝わる」はスライド作成における、各ページで主張したい内容をページ上部に目立つように1文で記載する、そしてスライドの各ページのその主張文を前から読むだけでスライド全体で伝えたい内容が把握できる、に通じるものでもあります。
(3) 読み手が読んでいる途中で「??」とならない
文章を読んでいて、読み手が「あれ、この専門用語の意味はなに?」であったり、「えっと今何の話をしているの?」など、途中で読み手が「??」と感じ、その「??」がその次の文章を読むと解決される!、という流れにはしない、という意味です。
読みながら、一瞬たりとも途中で「??」な気持ちになることなく、一気通貫して読めるようにします。
(これは文章を読む側のメンタル負荷を下げるとも言います)
これが実現できるようになるには、文章を書くことに慣れるのと、書いた文章にフィードバックをもらう経験を積んで習熟する必要があります。
しかし、読み手が「??」になるような文章を避けるために、一人でもできる工夫もあります。
私も実践している手法は、一度文章を作成した後、ひとまず2、3日間、その文章を見ずにほっておきます。
そして2、3日経ってから、フレッシュな頭の状態で、自分が書いた文章を前から読みます。
すると、「あれ、ここは前から読んでいていて??に感じるな。文章構成を変えよう」と気付くことができます。
文章を寝かせる、というプラクティスを取り入れてみてください。
とくに新人の方は文章や文書、スライドを作って完成すると、すぐに「できました!」と持ってきがちです。
あまり自分一人で頑張ることに時間をかけ過ぎるのはムダですが、作ってすぐのものではなく、早め早めの行動を心がけ、一度作成したものを寝かせて、再度自分で見直してから提出するだけで、質はかなり変わります。
「読み手が読んでいる途中で「??」とならない」はスライド作成においても同様です。
一度スライドを作成してから、寝かせて、2、3日後に、スライドを前から順番に見ていると、スライドのページの順番や構成を変えた方が良いな、といった点に気付きやすいです
(4)できるだけ接続詞を減らしてスラスラと読める文章にする
これは簡単に言うと、接続詞が使用される場面は、「文章の流れの変化をあえて強調するとき」、というくらいの強い意識を持つ、という意味になります。
パラグラフライティングで書かれた英語の文章の場合、日本語のように頻繁に接続詞は使用されません。
なぜなら、「また、」や「そのため、」みたいな接続詞は、使用しなくても通じるように文章を構成し直すことが可能だからです。
接続詞を極力減らした構成の文章はストレートであり、とても読みやすいです。
一方で、「しかし、」みたいな逆接の接続詞を排除するのは難しいです。
こうした逆接は、文章の流れの中で読者に対して、「意識、頭の中をくるっと変えて、この先続きの文章を読んで欲しい」という意図があります。
そういう意味でも、接続詞は文章の流れの変化をあえて強調するために使用する、というくらいの、強い意識がちょうど良いです。
ただし無理をして接続詞をなくす必要はありません(本投稿記事も接続詞がまずまず存在します)。
「ほんのちょっと構成を変えるだけでなくせる接続詞については、なくしてみるように修正する」という一工夫を入れるだけで、文章の読みやすさは大きく変わります。
「できるだけ接続詞を減らしてスラスラと読める文章にする」はスライド作成においても同様です。
スライドの各ページ内の文章に接続詞は使用せず、そして文字数も少なくして、ページ全体をシンプルにします。ゴチャゴチャしたスライドになるのは避ける、に通じるものでもあります。
[5] パラグラフ・ライティングの具体例が掲載されたサイトやおすすめ書籍の紹介
以下の二つのサイトには、パラグラフ・ライティングで書かれた文章と、そうでない文章の具体例があり、おすすめです
パラグラフライティングの作法 -書き手にもメリットのある文配置ルール-
上記のサイトもおすすめですが、しっかりとパラグラフ・ライティングに慣れていくために書籍を一読しておくことをおすすめします。
冒頭で紹介した書籍「The Elements of Style」の日本語翻訳版は出版されていません。
また、原著を読んでも英語圏の文章での解説なので、英語論文を書くような博士課程の学生にしかおすすめしていません。
日本語でパラグラフライティングに関して解説してくれている書籍は少ないのですが、私は倉島保美さんの書籍をおすすめしています。
「改訂新版 書く技術・伝える技術」 がおすすめです
https://www.amazon.co.jp/dp/B07VDTBQ9T/
(403レビューの4.1)
また、本記事のコメントにて、追加で
サイト「エリート的な文章の書き方」および、関連書籍についてアドバイスとおすすめ情報をいただきました。
[本記事コメントへは下にスクロールするか、こちらリンクより]
以上、「良い文章」を書くための重要スキルである「パラグラフライティング」について、内容の解説、実践方法、学び方の紹介でした。
まずは知識としてパラグラフライティングを学び、その後で実践してみて、書いた文章を先輩に推敲、修正していただいてフィードバックをもらいながら、徐々に、伝わる良い文章が書けるように成長すると良いと思います。
社会人生活において、良い文章を書くためにパラグラフライティングを意識できているかどうかの差は非常に大きいです。
何十年にもわたる社会人生活の財産になるスキルですので、ぜひ新人や若いうちから意識できると良いでしょう(偉そうに書いていますが、私もいまだに完全な習得に向けて、日夜、改善の日々です)
以上、ご一読いただき、ありがとうございました。
【記事執筆者】
電通国際情報サービス(ISID)AIトランスフォーメーションセンター 製品開発Gr
小川 雄太郎
主書「つくりながら学ぶ! PyTorchによる発展ディープラーニング」
自己紹介(詳細はこちら)
【情報発信】
Twitterアカウント:小川雄太郎@ISID_AI_team
IT・AIやビジネス・経営系情報で、面白いと感じた記事やサイトを、Twitterで発信しています。
【免責】
本記事の内容そのものは執筆者の意見/発信であり、執筆者が属する企業等の公式見解ではございません