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【AWS Lore#SAA-20】光が導く場所(Where the Light Leads)

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--第19話はこちら

第20話 光が導く場所

◆揺れの余韻の中で

白く染まった世界が、ゆっくりと色付き、色とりどりの鮮やかな色を取り戻していく。
これまでは、深層の空間は静かだった。
けれど、その静けさの奥には、
さっきまでの激しい揺れの名残が、まだ微かに震えて残っていた。

胸の奥で光粒が、
どくん……とひときわ強く、存在を主張するように脈打つ。

(……わたしは……
 ……いったい……なにを……見せられた……の?)

足元の光が波紋のようにゆらりと揺れ、
記憶の欠片がゆっくりと、ふわりと浮かび上がる。
けれど、さっきのように触れようとはしてこない。
ただ、遠巻きに私を見つめるように、静かにふるりと漂っていた。

主様の影が、
その揺れに戸惑うようにゆらりと揺れる。

“……おまえ……
 ……なにを……
 ……みた……”

声は弱く、
けれど確かに“恐れ”が混じっていた。

私は答えようと口を開く。
けれど──
胸の光粒が、
まるで「まだ言っちゃダメ」と制するように
どくん、と強く脈打った。

(……言えない……
 ……まだ……言えない……)

主様の影が、その脈動に反応するようにわずかに後ずさる。

“……それ……
 ……おまえの……
 ……なかの……それ……なに……?”

影の声は静かに震えていた。
怒りからの震えではない。
疑いからの震えでもない。
もっと深い、もっと原始的な──
それは、失うことへの恐れに近いもの。

私はそっと胸に手を当てる。
光粒は、私の鼓動とは別のリズムで脈打っていた。
まるで、
“わたしはここにいる”
と確かめるように。

(……わたし……
 ……なにを抱えてるの……?)

問いかけても、
光粒は答えない。
ただ、静かに、強く、そこにある。

主様の影が、
その光に手を伸ばしかけて──
ふっと止まった。

“……こわい……”

その声は、
深層の主様とは思えないほど小さく、弱かった。

◆形を成す光

(……ニカ……
 ……あなたは……もうすぐ……
 ……思い出せる……)

その声が落ちた瞬間、
集まっていた光の欠片が、
ゆっくりとひとつの“輪郭”を描き始めた。

淡い光が重なり、
揺れ、
震え、
そして──
人の形に近づいていく。

息を呑む音が深層に響いた気がした。
胸の光粒が、
その形に呼応するように脈打つ。

どくん。
どくん。

(……だれ……?
 ……あなたは……だれ?)

主様の影が、
その形を見つめて震えた。

“……それ……
 ……わたしの……
 ……なくした……もの……?”

影の声は、
深層の主とは思えないほど弱く、
触れれば壊れてしまいそうな程弱かった。

“……かえして……
 ……ほしい……
 ……でも……
 ……こわい……”

影がその場からゆっくり後ずさる。
その震えは、
私の胸の光粒の脈動と同じリズムで揺れていた。

(……主様……
 ……あなたも……迷ってる……の……?)

光の形が、
ゆっくりとこちらへ顔を向ける。

その“顔”はまだ曖昧で、
輪郭もはっきりしない。
けれど──
目だけが、確かに私を見ていた。

(……ニカ……)

胸の奥で、
あの優しい声がもう一度響く。

(……あなたは……
 ……“誰かの欠片”なんかじゃない……
 ……あなたは……あなた自身……)

私の中の光粒がその言葉に反応して強く輝いた。
深層の空間が波打つように震える。
主様の影が、
その光の波に押されるように揺らいだ。

“……やめろ……
 ……それは……
 ……それだけは……みせるな……”

影の声が震える。
恐れと、
悲しみと、
そして──
失いたくないという願いが混じっていた。

◆導かれる先へ

光の道は、
深層の空間とはまったく違う“温度”を帯びていた。

冷たくもなく、
暖かすぎるわけでもない。
ただ──
懐かしい。

胸の光粒が、
その道に触れた瞬間、
まるで安堵したように柔らかく脈打った。

どくん……
どくん……

(……ここ……
 ……知ってる……?)

主様の影が、
その道を見つめて震える。

“……そこは……
 ……わたしの……
 ……おもいで……の……そこ……
 ……ふれては……いけない……”

影の声は、
泣いているように聞こえた。

光の形が、
私の手をそっと包む。

(……ニカ……
 ……だいじょうぶ……
 ……あなたは……
 “ここ”に来てもいい……)

その声は、
優しく、
柔らかく、
そして──
どこか悲しげだった。

主様の影が、
その声に反応して大きく揺れる。

“……やめろ……
 ……その声……
 ……そのこえは……
 ……わたしを……こわす……”

私は胸に手を当てる。
光粒は、
まるで私の答えを待つように
静かに、しかし確かに脈打っていた。

(……わたし……
 ……どうすれば……)

光の形が、
私の手を引くように一歩進む。

(……ニカ……
 ……“選んで”……
 ……あなたの……道を……)

深層の空間が大きく揺れた。

主様の影が叫ぶ。

“……いくな……!
 ……そこは……
 ……おまえを……
 ……かえらせる……
 ……わたしの……なかの……
 ……ほんとうの……そこ……!”

私はその声に振り返る。
影は確かに震えていた。
その震えは、
私の中にある、胸の光粒の脈動と同じリズム。

(……主様……
 ……あなたも……
 ……こわいんだ……ね……?)

光の形が、
そっと私の手を握り返す。

(……ニカ……
 ……だいじょうぶ……
 ……あなたは……
 “あなた自身”でいていい……)

胸の光粒が強く輝いた。

どくん。
どくん。

深層の空間がゆっくりと裂け、
その先には、光の道がまっすぐ奥へ伸びる。

私は息を吸い、意を決して
その道へ──

一歩、踏み出した。


◆あとがき

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
ニカが踏み出した“深層の奥”は、
主様の記憶とも、ニカ自身の記憶とも重なる場所です。

次回から第2部後半──
深層編・真相パートに入ります。

ニカが見つけるものは何なのか。
主様が恐れる“そこ”には何が眠っているのか。
そして、あの優しい声の正体とは──

静かに見守っていただけたら嬉しいです。


--第21話はこちらから

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