最近「仕様駆動開発(Spec-Driven Development)」という言葉を耳にする機会が増えてきました。これは コードを書く前に仕様を整理し、その仕様を軸に設計・実装・テストを進める 開発手法です。GitHub が公開した spec-kit
は、このスタイルをスムーズに始めるためのオープンソースツールキットです。
特に AI を組み合わせた開発(例:GitHub Copilot を使ったコーディング)との相性が良く、「仕様 → 実装」という自然な流れを支援するのが特徴です。
なぜ仕様駆動開発が必要か?
従来のプロジェクトでは「とりあえずコードを書いてから仕様を整理する」ケースも少なくありません。しかし、それだと以下のような問題が起きがちです:
- 実装と設計が食い違う
- 新メンバーがキャッチアップしにくい
- テストやドキュメントが後回しになりがち
仕様駆動開発では、先に「作るもの」を明確化しておくことで、こうしたギャップを最小化できます。
spec-kit
の役割
spec-kit
は「仕様を書くためのベース環境」を提供するリポジトリです。難しい設定は不要で、クローンしてすぐに「仕様ファイルを書き始める」ことができます。
具体的には、以下のようなフォルダ/ファイル構成を持ち、要件や設計、タスクを整理するテンプレートを提供します:
.spec/
├── requirements.md # 要件定義
├── design.md # 設計仕様
├── tasks.md # 実装タスク一覧
この仕組みを使うと「仕様を中心にした開発フロー」が自然にスタートできます。
実践イメージ
例えば、ログインAPIを作る場合、まず .spec/requirements.md
に要件を書きます。
# requirements.md
- ユーザーはメールアドレスとパスワードでログインできる
- JWT を使って認証情報を返す
- ログイン失敗時は 401 を返す
次に設計ファイルに API の詳細を落とし込みます。
# design.md
POST /api/login
Request: { email: string, password: string }
Response: { token: string }
最後にタスクファイルでやることを分解します。
# tasks.md
- [ ] ログイン用エンドポイント作成
- [ ] JWT 発行処理
- [ ] エラーハンドリング
- [ ] 単体テスト追加
ここまで準備できれば、AI ツールを使ってコードを書かせたり、自分で実装を始めたりする流れがスムーズになります。
実際に使ってみて感じたこと
-
仕様の粒度が重要
あまり細かすぎると管理が大変になりますし、ざっくりすぎると実装に落とし込めません。プロジェクトやチームの規模に合わせて調整するのがコツです。 -
仕様は「生き物」
書いたら終わりではなく、実装や要件の変更に応じて更新し続ける必要があります。タスクや設計ファイルを放置するとすぐに陳腐化します。 -
AI との相性が良い
「この仕様に従ってテストコードを書いて」と AI にお願いすると、一貫性のある出力が得られやすい印象でした。
まとめないけど一言
spec-kit
は特別な仕組みを提供するわけではありません。むしろシンプルに「仕様を書く文化」を根付かせるためのスタートラインです。
「コードの前に仕様を書く」ことに価値を感じているなら、まずはこのツールキットを触ってみるのがおすすめです。数ファイルを埋めていくだけで、開発の進め方がガラッと変わるはずです。