2026年9月28日、フランス発のAI企業H Company(H社)が、コンピューター操作向けモデル群「Holo4」を公開しました。
この発表で面白いのは、単に「画面をクリックできるAI」が強くなったことではありません。Holo4は、同じモデルが状況に応じてGUI操作・コード実行・MCP・API呼び出しを横断する設計です。
人間の仕事は、ブラウザーだけでも、APIだけでも終わりません。画面しかない古い業務ソフトを触り、必要なら端末でデータを加工し、MCPやAPIで別システムへ渡す。Holo4は、この混ざり合った現実の仕事へ寄せてきました。
何が変わったのか
従来のコンピューター操作AIは、「画面を見るのは得意だがAPIを使えない」「ツール呼び出しは得意だが画面しかないアプリで止まる」といった分断がありました。
Holo4は、次の4つを同じモデルで扱います。
- GUI:スクリーンショットを見てクリックや文字入力を行う
- コード:端末でコードを生成・実行する
- MCP:共通規格を通して外部ツールを呼ぶ
- API:サービスへ直接アクセスする
H社は、Web・デスクトップ・Android・コードサンドボックス・業務APIで、同じモデルを同じ呼び方で使えると説明しています。操作面ごとに別モデルを選ぶ手間を減らせる点は、複数AI協働や業務自動化で大きな意味があります。
2つのモデルと、見落とせないライセンス差
Holo4には、27BのDenseモデルと、総パラメーター35B・稼働3BのMoEモデルがあります。両方ともH社のAPIで利用でき、重みもHugging Faceで公開済みです。
ただし、ライセンスが違います。
- Holo4 27B:CC BY-NC 4.0。重みの商用利用には制約がある
- Holo4 35B-A3B:Apache License 2.0
公式サイト記載のAPI価格は、100万トークン当たり次の通りです。
| モデル | 入力 | キャッシュ入力 | 出力 |
|---|---|---|---|
| Holo4 27B | $0.40 | $0.04 | $3.00 |
| Holo4 35B-A3B | $0.30 | $0.03 | $2.00 |
最大コンテキスト長は、どちらも設定上262,144トークンです。無料枠では旧モデルが案内され、Holo4のAPI利用はクレジット追加が必要と公式Quickstartに記載されています。
性能はどこまで確認できたのか
H社の発表では、長時間のコンピューター操作を測るOSWorld 2.0で、Holo4 27Bが61.7%、35B-A3Bが30.9%とされています。27Bは、H社が引用するGPT-5.6 Solの66.2%に近い数字です。
しかし、ここは慎重に読む必要があります。
H社自身も、モデルごとにリリース、ハーネス、タスク部分集合が異なると明記しています。さらに、AutomationBenchではHolo4を自社ハーネスの公開セットで測り、他モデルは非公開セットの公式順位を参照しています。数字を横一列に並べても、完全な同条件比較ではありません。
一方で、H社は公開ベンチマークの全実行軌跡を公開しました。最終スコアだけでなく、各ステップを再生・ダウンロードできるのは、AIエージェントの評価を「自己申告」から検証可能なEvidenceへ近づける動きです。
なお、モデルカードにあるOSWorldの85.2%/80.8%と、OSWorld 2.0の61.7%/30.9%は別の評価です。記事内では混同していません。
どうやって作ったのか
H社は、製品マニュアルやWeb画面、公開ソフトウェアから、検証器つきの操作課題を自動生成する「Agentic Task Factory」を構築しました。
公開情報では、約1万件の課題を作成し、内訳はWebアプリ約4,000件、MCPサーバー約3,000件、デスクトップ/OS約3,000件です。手つかずの初期状態では失敗し、正解状態では成功し、惜しい誤答を拒否できる検証器だけを残す設計です。
学習は、1270億トークンの教師あり学習に加え、長時間タスクの強化学習を実施。デスクトップ/Web担当と、端末/MCP/API担当の2つのLoRA専門家を作り、最後に1モデルへ統合したと説明しています。
ここでも重要なのは、モデル単体ではありません。数百ステップの文脈を管理するメモリや、デスクトップ上のシェルを含む実行ハーネスも作り直しています。
MORIにとって、なぜ面白いのか
Human OSで重視してきた「役割に合わせてモデルを選ぶ」「モデルとハーネスを分離する」「完了をEvidenceで検証する」という考え方と、Holo4はよく響き合います。
特に面白いのは、Work Pattern Portabilityです。操作先がGUIからMCPへ変わっても、仕事の目的と検証条件を持ったまま同じモデルが移動できるなら、人間がツール間をつなぐ負担を減らせます。
一方で、モデルが多くの操作面を横断できるほど、権限境界は重要になります。Holo4が「何でも触れる」ことと、「触ってよい」ことは別です。外側のハーネスで、許可されたファイル・通信・API・認証情報だけに絞り、操作ログと結果を検証する設計が必要です。
まとめ
Holo4の新しさは、GUI専用モデルのスコア更新ではありません。画面・コード・MCP・APIを、1つのモデルと共通ハーネスで横断しようとしたことです。
さらに、重み、API、ハーネス、評価軌跡まで公開されました。これは、実装と検証を始められる状態になったという意味があります。
ただし、性能値は主にH社の測定で、独立した再現検証はまだ確認できていません。この記事ではモデルカードと公開資料を読みましたが、重みのダウンロードやローカル実行、API課金・導入は行っていません。
「1つのAIが仕事の道具を渡り歩く」未来は、かなり近づきました。次に問われるのは、どこまで動けるかだけでなく、誰が権限を与え、何をEvidenceに完了と認めるかです。



