「オーケストレーション・モニター」とは
本記事ではIBM Workload Scheduler(以下IWS)10.2 の新機能である「オーケストレーション・モニター」をご紹介します。
厳密に言うと、IWSのUIである Dynamic Workload Console(以下 DWC )の新機能です。(が、Dynamic Workload Console の新機能と言ってもピンとくる方は少ないかと思うので...)
IWS 10.1までは、IWSでスケジュールしたジョブ・ストリームやジョブの状況は「ワークロードのモニター」で確認することが一般的だったかと思います。
こちらのような画面です。

IWS 10.2 でも引き続き「ワークロードのモニター」はご利用いただけますが、ジョブ・ストリームやジョブの状況を確認するための機能として新たに「オーケストレーション・モニター」が追加されました。
こちらのような画面です。

「ワークロードのモニター」と比較するとよりシンプルになった印象です。
この「オーケストレーション・モニター」でどのようなことができるかをご紹介します。
オーケストレーション・モニターへのアクセス
「オーケストレーション・モニター」へは、「モニターおよびレポート」メニューからすぐにアクセスできます。DWCのその他のページと同じようにお気に入り登録もできますし、ピン留めすることで、次回ログインから、画面左側の「ピン留めされたページ」から素早くアクセスできるようになります。

オーケストレーション・モニターのレイアウト
画面上部には「オーケストレーション・モニター」で表示するオブジェクトを選択するプルダウンメニューがあります(赤枠部分)。ここで「ジョブ・ストリーム」、「ジョブ」、「ワークステーション」のいずれかを選択すると、画面右側(青枠部分)に選択したオブジェクトのリストが表示されます。こちらの画面は「ジョブ・ストリーム」の一覧を表示していますが、それぞれのジョブ・ストリームの状況が色のついた丸いアイコンで表現されており、パッとみて状況がわかるようになっています。

画面左側には「ツリー・ビュー」が表示されています(オレンジ枠部分)。これがオーケストレーション・モニターの特徴的な点です。IWS 9.5で「フォルダー」という概念が登場し、ジョブ・ストリームやジョブを「フォルダー」に分けて管理することができるようになりましたが、この「フォルダー」構造が画面左側に表示されるようになりました。画面左側でフォルダーを選択すると、画面右側には選択したフォルダー内のオブジェクトが表示されます。この画面ショットではルート・フォルダーを選択しているので、全てのスケジュール済みのジョブ・ストリームが表示されています。

ツリー・ビューで「DEMO1」フォルダーを選択すると、下記の画面ショットのように「DEMO1」フォルダーのジョブ・ストリームのみが画面右側に表示されます。見たいフォルダーへドリルダウンして状況を確認する、といったことが可能となります。
ロケーション毎、組織毎、業務毎など任意の単位でフォルダーを作成し、ジョブ・ストリーム等をそれらのフォルダーに分けておくと、このように「オーケストレーション・モニター」でもフォルダー単位で管理することができます。フォルダーは階層化できます。またアクセス権限もフォルダー単位で分けることができます。

オーケストレーション・モニターの操作
「オーケストレーション・モニター」で確認できるのは「ジョブ・ストリーム」、「ジョブ」、「ワークステーション」の3つのオブジェクトです。普段からDWCを使ってジョブ運用を行なっている場合、大体この3つを「ワークロードのモニター」で確認しているのではないかと思います。
いずれのオブジェクトについても、画面レイアウトや操作の方法は基本的に同じであるため、ここでは「ジョブ・ストリーム」に対する操作を行う場合を例にして説明します。
「ジョブ・ストリーム」を参照している画面のレイアウトです。
画面左側で選択したフォルダーに含まれるジョブ・ストリームの一覧が表示されています下図(オレンジの枠線部分)。また、一覧のカラム名の箇所にはカラム毎に矢印が表示されており、矢印をクリックすることで昇順・降順でデータをソートできます(緑枠部分)。さらにその上には、各ジョブ・ストリームに対して実行可能なアクションのボタンが表示されています(青枠部分)。リストで操作対象のジョブ・ストリームを選択し、上のアクションボタンを使用してジョブ・ストリームに対して操作を行います。

ではここで「ジョブ・ストリーム」を一つ選択して操作してみます。リストで「/DEMO_ROOT/DEMO1」フォルダーの「JOBSTREAM_D」を選択し、上部のアクションボタンから「依存関係」をクリックします。

選択したジョブ・ストリームの依存関係が表示されます。(下図)
「先行ジョブおよびジョブ・ストリーム」のセクションには、選択したジョブ・ストリームの先行ジョブ・ストリームがカード形式で表示されています。先行が複数ある場合はここにカードが複数枚並ぶイメージです。また、カードの下部に2つのアイコンが表示されており、左側のゴミ箱のアイコンをクリックするとこの先行依存関係を削除することができ、右側のアイコンをクリックするとこの先行依存関係を解放(リリース)することができます。一方で画面右上の「先行ジョブの追加」ボタンをクリックすると新たな先行ジョブやジョブ・ストリームを追加することもできます。元のジョブ・ストリームの一覧に戻るには、画面左上の「オーケストレーション・モニター」をクリックします。
このように基本的に「ワークロードのモニター」と同じ操作が可能ですが、より直感的にわかりやすくなっていると感じます。

表示列の変更とクエリーの保存
表示する列を変更したり特定のフィルターをかけた状態を保存することは「ワークロードのモニター」でも可能でしたが、「オーケストレーション・モニター」では表示列の変更やフィルターの保存、共有をしやすくなっています。
表示列の変更は、各種アクションが表示されている青いバーの右端にあるアイコンをクリックすると表示される「テーブル構成」から行います。

「テーブル構成」ダイアログが表示されるので、ここで表示したい列を取捨選択して「保存」ボタンをクリックすると一覧に反映されます。表示列の変更はジョブ・ストリームの一覧全体に対して設定されます。(フォルダ毎に表示列を変えることはできません。)
「ワークロードのモニター」では一覧を表示する前にクエリーを編集して列を選択する必要があり、また一覧表示後に表示列を変更するということができなかったので、「オーケストレーション・モニター」ではこの辺りの変更がしやすくなったと感じます。

続いて、特定フォルダのジョブ・ストリームの一覧に対してさらにフィルターをかけ、そのフィルターを保存しておいて再利用したり、他のユーザーへ共有することも可能です。
ここで例えば「/DEMO_ROOT/DEMO1」フォルダー内で、ステータスが「エラー」となっているものだけを表示するとします。

「エラー」状態のジョブ・ストリームだけを表示したいので、「汎用フィルター」タブの「状況」セクションで「エラー」を選択し、「適用」をクリックします。

フィルターが適用され、「エラー」状態のジョブ・ストリームだけが表示されます。また、画面上部の「フィルター」フィールドにエラー状態のジョブ・ストリームのみを表示するためのフィルター定義が表示されています。

このフィルターを再利用できるようにする場合は、「フィルター」フィールド上の「保存」をクリックします。

「名前をつけて保存」ダイアログで名前を指定します。下図のように「共有先」チェックボックスをオンにしてユーザーやグループを選択すると、選択したユーザーやグループにこのクエリーを共有することができ、他のユーザーが同じクエリーを設定する手間を省くことができます。(DWCユーザー全員に共有することも可能です。)

設定したクエリーは「フィルター」フィールドのクエリーを削除し、履歴から「/@/@#/@/@」(全てのジョブ・ストリームを表示するクエリー)を選択または直接入力すると解除できます。

一度保存したクエリーを再利用したい場合は、画面左側の「保存された照会」タブから該当クエリーを選択すると再利用できます。

まとめ
「オーケストレーション・モニター」は従来バージョンからの「ワークロードのモニター」よりも操作の対象を「ジョブ・ストリーム」、「ジョブ」、「ワークステーション」に絞り込みつつも、同様の操作をより直感的でわかりやすいUIで行えるようになっていると感じます。特にマニュアルなどを読み込む必要はなく、画面を少し触れば操作できる作りになっています。これまでにDWCを使用した経験があったり、IWS固有の用語の知識があればすぐに使用できそうです。
IWS 10.2を使用予定の場合は、ぜひ日々のジョブ運用において「オーケストレーション・モニター」をご利用いただければ幸いです。
本記事は以上です。
