🎄 本記事は ZOZO Advent Calendar 2025 シリーズ 8 の 12 日目です。
はじめに
こんにちは!データシステム部 MA推薦ブロックのるー(@rabbit-313)です。
Google Cloud でアプリやデータ基盤を作ろうとしたとき、「どのデータベースを選べばいいの?」と迷う場面は多いはず。
本記事では、代表的なデータベース 6 種の特徴とユースケースを整理しました。
まずはざっくり全体像をつかんで、そのあとに個別のサービスを深掘りしていきます。
Google Cloud の代表的なデータベース
Google Cloud には大きく 2 系統のデータベースがあります。
OSS / 商用データベースをマネージド化したサービス と Google がクラウドネイティブに設計したサービス です。
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OSS / 商用系: Cloud SQL(MySQL / PostgreSQL / SQL Server)、AlloyDB(PostgreSQL 互換)
- 既存アプリの移行に向いています
- 慣れたエコシステムをそのまま使い続けられます
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クラウドネイティブ系: Cloud Spanner(分散 RDBMS)、Bigtable(ワイドカラム NoSQL)、Firestore(ドキュメント NoSQL)、BigQuery(サーバーレス DWH)
- Google のインフラに最適化されたアーキテクチャです
- グローバル規模の分散や分析処理などに強みがあります
以下では各サービスの特徴と公式ドキュメント、ユースケースを6つ順番に見ていきます。
OSS / 商用のマネージド DB
Cloud SQL
DB の特徴
Cloud SQL は MySQL / PostgreSQL / SQL Server をフルマネージドで提供するサービスです。
自動バックアップ、フェイルオーバー、パッチ適用、接続管理といった面倒な運用タスクを Google Cloud が肩代わりしてくれるため、開発チームはアプリケーション開発に集中できるのが大きなメリットです。
インスタンスは Google Cloud の VM 上で稼働し、パブリック IP / プライベート IP の両方に対応しています。
接続方法も柔軟で、Cloud SQL Auth Proxy や IAM データベース認証を使えば安全にアクセスできます。
さらに高可用性構成(HA)を選択すれば、99.99% SLA を享受できるため、本番環境でも安心して利用できます。
ユースケース
既に MySQL / PostgreSQL / SQL Server を使用しているアプリをクラウドに移行する場合に最適です。
既存の SQL 方言や OR マッパーをそのまま利用できるため、学習コストを抑えながらクラウドのメリットを享受できます。
また、RDB の標準的な機能を使いたい小〜中規模の業務システムにも適しており、運用負荷を減らしたいチームにとって良い選択肢となります。
AlloyDB
DB の特徴
AlloyDB は PostgreSQL 互換のフルマネージド データベースです。
最大の特徴は、クエリエンジンと永続ストレージを分離したアーキテクチャで、ストレージレイヤは自動で冗長化・圧縮されます。
この設計により、コンピュートノードは需要に応じて柔軟にスケールでき、トランザクション処理と分析クエリの双方を高速に捌けるよう最適化されています。
ベースは PostgreSQL 15 相当のため、標準のエコシステム(拡張 / ドライバー)をそのまま活用できるのも魅力です。
ユースケース
PostgreSQL 互換性を保ちながら、オンプレミスより高いスループット・可用性を求めるミッションクリティカルなシステムに向いています。
特に、高負荷な OLTP と同一データに対するリアルタイム分析(HTAP)を両立させたい場合に威力を発揮します。
コンピュートとストレージが分離されているため、ピーク時のみリソースを増やして柔軟にコストをコントロールしたい場合にも最適な選択肢です。
クラウドネイティブ DB
Firestore
DB の特徴
Firestore はドキュメント指向のサーバーレス NoSQL データベースです。
Firebase SDK を使えばモバイル / Web アプリから直接アクセスでき、リアルタイムリスナーやオフラインキャッシュも組み込まれているため、ネットワーク状態に左右されにくいアプリを構築できます。
Firestore には Firebase アプリ向けの Native モード と、App Engine 互換の Datastore モード の 2 種類があり、どちらも自動スケール・自動インデックス作成を備えているため、インフラ管理の負担がほとんどありません。
ユースケース
モバイル / Web アプリを高速に立ち上げたい個人開発や、小規模〜中規模のリアルタイム性が必要なサービス(チャット、ドキュメント共有など)に向いています。
Firebase Authentication や Cloud Functions と組み合わせれば、サーバーサイドの実装を最小限に抑えながら、認証やビジネスロジックを実装できるため、開発スピードを大幅に向上できます。
BigQuery
DB の特徴
BigQuery はサーバーレスなフルマネージド DWH(データウェアハウス)です。
ストレージとコンピュートを分離したカラム型ストレージを採用しており、標準 SQL で ACID 対応の分析クエリを実行できます。
オートスケールするクエリエンジンによって数テラバイト〜ペタバイト級のデータを短時間で処理できるため、大規模データ分析でもインフラを気にせず集中できます。
最近は Gemini in BigQuery のような生成 AI 補助機能も登場し、データ探索からクエリ作成まで支援してくれるので、SQL に不慣れな方でも扱いやすくなっています。
ユースケース
アプリのトランザクション DB には適していませんが、データウェアハウス / データマートとしては真価を発揮します。
ログ、行動履歴、売上、ML 特徴量などを大量に蓄積し、BI ツールでの可視化や機械学習のトレーニングデータとして活用する用途に最適です。
Cloud Spanner
DB の特徴
Cloud Spanner は Google が設計したグローバル分散 RDBMS です。
リージョンや大陸をまたいで水平スケールしながら、強整合トランザクションと最大 99.999% の可用性を提供するという、従来の RDBMS では実現困難だった要件を満たしています。
SQL 方言は GoogleSQL と PostgreSQL Dialect から選べるため、既存ツールとの連携もスムーズです。
ノード追加でスループットを伸ばせる一方、データ分散やレプリケーションは自動で行われるため、運用負荷を抑えながらグローバル展開できます。
ユースケース
グローバル規模のユーザーを想定し、データ整合性を犠牲にせず世界中から低レイテンシで書き込みたいサービスに最適です。
例えば、決済システム、サプライチェーン管理、旅行予約など、データの正確性と可用性が極めて重要な領域で力を発揮します。
個人開発にはコスト面でオーバースペックですが、スケールや SLA が絶対条件になるエンタープライズ用途では検討する価値があります(旅行会社 Sabre などが実際に採用しています)。
Bigtable
DB の特徴
Bigtable はワイドカラム型 NoSQL データベースです。
単一桁ミリ秒のレイテンシと高スループットなスケーラビリティを備えており、数十億行・数千列規模のデータでも自動スケールで対応できます。
テーブルはスパースに保存されるため、列が空のセルはストレージを消費しません。
また、Apache HBase API 互換を持つため、既存の HBase エコシステムからの移行もスムーズに行えます。
ユースケース
タイムスタンプ付きイベントや IoT センサーデータ、クリックストリームなど、連続的で巨大なデータセットを低レイテンシで記録する用途に向いています。
ただし、複雑な分析を行いたい場合は BigQuery などへデータを連携し、Bigtable は高速な書き込みと読み取りに専念させる構成が一般的です。
DBとそのユースケース
| サービス | カテゴリ | 主な特徴 | 代表的なユースケース |
|---|---|---|---|
| Cloud SQL | マネージド RDB(MySQL / PostgreSQL / SQL Server) | 運用タスクを自動化し HA で 99.99% SLA、既存 SQL/ORM をそのまま利用可能 | 既存 RDB アプリのクラウド移行、小〜中規模業務システム |
| AlloyDB | PostgreSQL 互換マネージド DB | コンピュートとストレージの分離で HTAP ワークロードに最適化、高スループット & 高可用性 | 高頻度トランザクション + 分析を同一 DB で処理したいミッションクリティカルシステム |
| Cloud Spanner | グローバル分散 RDBMS | 強整合トランザクション、99.999% 可用性、リージョン分散スケール | 世界規模のユーザーを持つ決済 / 旅行予約 / サプライチェーンシステム |
| Bigtable | ワイドカラム NoSQL | 単一桁ミリ秒レイテンシ、数十億行規模へ自動スケール、HBase 互換 | IoT センサー、タイムシリーズ、クリックストリームなど連続的な巨大データの蓄積 |
| Firestore | ドキュメント型サーバーレス NoSQL | Firebase 連携、リアルタイム更新、Native / Datastore モードを選択可能 | モバイル / Web アプリ、リアルタイム共有アプリ、個人開発での MVP |
| BigQuery | サーバーレス DWH | カラム型ストレージ、標準 SQL、オンデマンドでペタバイト級分析が可能 | BI / データ分析、ML 特徴量管理、全社データウェアハウス |
おわりに
Google Cloud が提供するデータベースとそのユースケースについてまとめてみました。
それぞれにメリット・デメリットがあり、上記のユースケースが 100% 適しているとは限りませんが、技術選定の際の指針にはなるはずです。
今回は記載していませんが、データベースごとにかかる費用も大きく異なるため、コストとのバランスも重要な検討ポイントです。
実際のプロジェクトでは、性能要件・可用性・運用コスト・開発チームのスキルセットなど、多角的な視点から総合的に判断することをおすすめします。
この記事が、皆さんのデータベース選定の参考になれば幸いです!