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Slack × Notion × GPT連携で実現する OODA自動回転エコシステム

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🧭 はじめに

前回の「KPTのように形骸化させない。OODAループを“再現性ある習慣”にした現場の工夫とAI連携」からの続きです。

OODAループ(Observe → Orient → Decide → Act)は、軍事分野で生まれた意思決定のフレームワークとして知られていますが、近年はソフトウェア開発やプロジェクト運営においても有効な手法として注目されています。
特に、変化が激しく不確実性の高い現場においては、「計画通りに進める」ことよりも、「状況に応じて素早く判断・行動を変えていく」柔軟性が求められます。
まさにこの点において、OODAは非常に効果的です。

しかし、実際に導入してみると、以下のような課題に直面します:

  • 書くのが面倒で定着しない
  • 書いたものが活用されず溜まるだけになる
  • 書き方が人によってバラバラで比較・振り返りが難しい
  • アウトプットがKPTのように抽象的・主観的になりがち

本記事では、これらの課題を乗り越えるために、Slack・Notion・ChatGPT(およびClaude)を組み合わせて構築した「OODA自動回転エコシステム」の仕組み・実例・プロンプト・他AI比較・KPI活用まで幅広く紹介します。


🎯 ゴール:「OODAが“自然に始まり”、継続して“回り続ける”状態にする」

OODAは、導入するだけでは意味がありません。
テンプレを配布して「やってね!」だけでは定着しないのです。
本記事が目指すのは、以下のような状態です:

  • Slackから週次でテンプレートが自動投稿される
  • GPT系AIが“Orient”記述を支援(要因整理や選択肢提案)
  • 書いた内容はNotionに蓄積・可視化され、次のActへ反映される
  • チーム内で自然にOODAが循環する設計(対話・KPIも含む)

🔧 構成フロー

この図が示す通り、Slackから起案されたテンプレートがGPTによって思考支援され、Notionに記録。Slackで共有されてコメントがつき、数値的KPIに繋がる流れを自動化しています。


📝 テンプレ生成例(Notion)

### 🔍 Observe(何が起きたか)
- 2025/09/30に本番環境でサーバレスAPIが一時停止
- DB接続数が通常の2倍以上となり、Lambdaがタイムアウト

### 🧭 Orient(なぜ起きたか)
- 深夜バッチがメイン処理と時間帯で競合していた
- クエリが非効率(JOIN + ORDER + LIMITなし)だった

### ✅ Decide(どう判断したか)
- バッチ処理はピーク帯から深夜2時に移動
- クエリをLIMIT付きの集約処理に変更
- サーバリソース増強案はコストと継続性から除外

### 🚀 Act(何を実行するか)
- crontab修正とPRレビュー(完了)
- SQL修正を開発環境に適用(リリース待ち)
- 1週間後に再発有無を監視し、次週OODAへ接続予定

🤖 ChatGPT・Claudeのプロンプトと比較例

📌 プロンプトテンプレ(共通)

以下はOODAフレームワークのOrient(なぜ起きたか)に関する要因を洗い出したい文脈です。
以下のObserveを元に、原因候補をMECEに出力してください。

【Observe】
- 9/30 13:00にAPIが応答しなくなった
- Lambdaがタイムアウトしていた
- 直前にDB接続がスパイク

出力フォーマット:
1. 根本要因(仮説)
2. 発生条件
3. 対応オプション(複数)

🤖 ChatGPTの出力例

1. 根本要因(仮説): DBのスロークエリがバッチと競合していた
2. 発生条件: 同時実行数の増加、クエリの非最適化
3. 対応オプション:
   - クエリのLIMIT指定
   - バッチ処理時間の調整
   - Lambdaメモリ増加 or 再試行戦略追加

🧠 Claudeの出力例

1. 根本要因(仮説): APIとバッチが同じテーブルをロックし合っていた
2. 発生条件: 並列アクセスがピーク時に集中し、書き込み遅延を招いた
3. 対応オプション:
   - テーブル分割(Read/Write分離)
   - 曜日別のバッチ実行分散
   - アーキテクチャ変更(DBクエリのキャッシュ導入)

🪞 ChatGPT vs Claude 比較表

比較観点 ChatGPT Claude
思考の深さ 広く網羅する傾向 仮説・洞察が鋭い
出力スピード 高速 やや遅いが丁寧
日本語精度 非常に高い 少しぎこちない場合あり
構成案の数 複数案をすぐ出す 選択肢に重みを持たせる
柔軟性(プロンプト依存度) プロンプト精度が重要 少ない情報でも補完強い
おすすめ利用場面 多人数レビューや構成のたたき台 重要な意思決定やレビューコメント起草時

💬 Slack連携の活用ポイント

Slack機能 活用内容 効果
/ooda-start テンプレートを自動生成 “書き出し”のハードルを下げる
GPT補助 Orient記入を支援 比較思考・選択肢の提示が自然に入る
通知チャンネル 投稿内容を共有 チーム内レビューの起点になる
👍 / 📝 リアクション Actの進捗・感想共有 軽く参加できる文化が定着

Slackを通じて「ちょっと見た」「ちょっとコメントした」が積み重なって、OODAが“書いて終わり”ではなく“対話の起点”になる状態を目指しています。


📊 KPIへの連携:改善ループを数値で可視化する

OODAループを定着させる上で重要なのは、**「回した結果、どのようにチームが改善されているのか」**を見える化することです。
ただの思考ログで終わらせず、組織改善のエンジンとして活かすには、OODAの実践状況とその質を継続的に測定するKPI設計が欠かせません。

以下は、筆者が実際に設定したKPI項目とその活用方法です。

指標名 内容 意義・活用ポイント
OODA実施数(週次/月次) 1週間/1か月あたりのOODA登録件数 チームの「思考回転力」の測定。数が減っていればSlack通知頻度の見直し対象。
Orientの選択肢数 Orient内で提示された原因候補や選択肢の数 思考の深さと広がりを定量化。1件1原因より、複数案ある方がチームの視野は広い。
Decideのリードタイム Observe日時 → Decide記述までの平均所要時間 問題→判断のスピード感。迅速性の定量指標。
Actの完了率 Decideに対してActが記述され、実行完了チェックがされた割合 実行力の指標。未完が多ければ見直しポイント。
再発傾向率 Observeが「前回と同様」と記載されている割合 抜本的な改善に繋がっていない傾向を見つける。再観察ループが重要。
コメント/リアクション率 Slack通知に対するチーム内コメント数、リアクション数 チーム巻き込み度合いの把握。反応が少なければ投稿タイミングや内容改善を。

これらは、Notion上で「OODA DB」として集約し、CSVエクスポート → Google Sheets → Looker Studio等でダッシュボード化してみるのも手です。


💡 事例紹介

① プロダクト開発チーム

  • 構成:10名規模、週次スプリント
  • 活用方法:スプリント終盤にOODAを起案、自動でSlack通知&Notion記録
  • 成果:意思決定の質の変化(選ばなかった案含め記録)、過去回との比較が容易

② 受託開発プロジェクト

  • 構成:複数社連携、リモート中心
  • 活用方法:週1の報告OODA+各社の課題や認識差をOrientで統一
  • 成果:プロジェクトリスクの先読みがしやすくなった、文書文化が育った

③ 営業部門

  • 構成:3名のインサイドセールスチーム
  • 活用方法:週次の振り返りとしてOODAを活用、リード獲得施策ごとのOrient分析
  • 成果:属人的な判断から脱却、思考の構造化&改善PDCAが回りやすくなった

✅ まとめ

OODAは単なる思考フレームではなく、「チーム改善の駆動力」です。
しかしながら、それを“自然に回り続ける状態”にまで落とし込むには、以下のような設計が必要です。

✅ 成功のための要諦:

  • 起点が明確であること
    /ooda-start などSlackからの一言コマンドで“始まる”設計が重要。

  • 思考を支援する設計
    → ChatGPTやClaudeを通じて、Orientに多様な因果や視点が加わるように。

  • 行動が次につながる構造
    → Actだけでなく、「なぜその選択をしたのか」を残すことで次のOODAに繋がる。

  • 定量化でふりかえりを促進
    → KPIで“見える化”することで、抽象的な活動が改善サイクルに昇華する。

  • Slack文化と融合する
    → 書く文化、読む文化、気軽にコメントする文化が徐々に根づいていく。

OODAを単発イベントにせず、**「毎週、自分たちが進化している実感」**にまで落とし込む。
そのためには、GPTなど生成AIとの組み合わせが非常に相性が良く、OODAの“習慣化”に貢献します。

ぜひ、Slack・Notion・生成AIを組み合わせて、あなたのチームでもこの「OODA自動回転エコシステム」を体験してみてください。

🔗 参考リンク集

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