🧭 はじめに
ふりかえり施策としてよく使われる「KPT」。
導入ハードルが低く手軽な一方で、「形骸化」や「続かない」問題も数多く見てきました。
- 「毎回Tryが同じ」「何も変わらない」
- 「言いたいことがあっても空気を読んで出しにくい」
- 「会は開くが、アクションが実行されたかどうか誰も確認しない」
そんな悩みを持つ現場で、次に期待されるのが「OODAループ(ウーダ・ループ)」。
OODA = Observe(観察)→ Orient(状況判断)→ Decide(意思決定)→ Act(行動)
OODAは、単なるふりかえりではなく、思考と意思決定のフレームワークです。
しかし、これも仕組み化せずに導入するとKPTと同じ轍を踏みかねません。
この記事では、OODAを現場に定着させ、チームの思考と行動に変化を起こした実践的な方法論と、
AI(ChatGPT)と連携することで“深い状況判断”を支援する仕組みについて詳しく紹介します。
⚠️ KPTとOODAの“形骸化あるある”比較
項目 | KPTでの課題 | OODAで同様に起こりがちな課題 |
---|---|---|
思考の深さ | Tryがその場の思いつきに偏る | Orientが「なんとなくの感想」になる |
アクション管理 | Tryが実行されたか分からない | Actの進捗が記録されない |
継続性 | 会の開催が目的化して続かない | OODAが1周して終わるだけになる |
KPTが悪いのではありません。
仕組みと文化設計がなければ、どんなフレームワークも“テンプレ運用”になってしまうのです。
📌 現場事例①:Notionテンプレ進化でOODAを定着させた話
最初に導入したのはシンプルなNotionテンプレ:
- Observe:今週何が起きたか(事実)
- Orient:なぜ起きたか(背景や要因)
- Decide:何をどう判断したか
- Act:具体的に何をやったか、やるか
しかし運用してみると、下記のような問題に直面。
🧯 課題例
- Orientが「〜と思いました」「〜な気がする」など主観的で曖昧
- Decideが「改善したい」など抽象的
- Actが書かれても“完了したか”が不明
✅ 改良したテンプレ設計(現場で定着した工夫)
ステップ | 改善内容 | 狙い |
---|---|---|
Orient | 選択肢記入欄(表形式)+比較軸の明記 | 判断基準が明確になりチームレビューがしやすく |
Decide | 「なぜその選択肢を選んだか/他を選ばなかったか」記載欄追加 | 意思決定プロセスの可視化・再利用 |
Act | 再観察すべき指標(KPI)欄を追加 | 次週のObserveにつなげる“観察設計” |
📝 実際には、Notionテンプレを複製するだけでこれらが自動で含まれており、
記入者が自然と「考える流れ」に入れるように設計しました。
🤖 現場事例②:ChatGPT × OODA連携でOrientの質を底上げ
OODAで最も悩ましいのが「Orient」ステップ。
- なぜそれが起きたのか
- どのような構造的背景があるのか
- どんな打ち手が考えられるのか
ここに**生成AI(ChatGPT)**を組み合わせた結果、大きな変化がありました。
🔍 利用プロンプト例
【状況】
A社からの要望変更が重なり、開発チームが工数オーバーで疲弊しています。
納期は厳守条件で、チームは2名のみ。
【質問】
似たような事例・OODAパターンがあれば提示し、それぞれの意思決定パターンと利点/懸念点を教えてください。
💡 ChatGPTから返ってくる内容例
- 類似事例1:要望凍結 → スコープ確定優先
- 類似事例2:タスク見える化 → 顧客巻き込み型合意形成
- 類似事例3:仕様変更パターンを分析し、発生時点で事前調整できる運用へ変更
各案の「判断軸(納期/満足度/品質)」が提示されることで、Orientに比較と構造が生まれる
🛠 現場事例③:“OODAを回す文化”を作った仕組み化の実例
テンプレを改善し、AIで補助しても、使われなければ意味がありません。
そこで、実際に行った“運用設計”の工夫がこちらです。
項目 | 工夫内容 |
---|---|
通知設計 | OODA記録 → Slack通知 → チームが軽くリアクション/コメント |
レビュー習慣 | 毎週のOODA共有会でランダム5件レビュー(各5分)を“軽めに”開催 |
評価制度連動 | 「Actの数」や「再観察の精度」を評価項目に一部連携(数値化) |
📊 「評価のために書く」ではなく、「思考の質が上がったことが評価につながる」構造が大切
🔄 OODA + AI活用の仕組み図
✅ まとめ
- OODAは「プロセスを振り返る道具」ではなく、「思考と行動を連鎖させる設計図」
- 定着にはテンプレだけでなく「運用の仕組み」「AIによる補助」「文化設計」が必要
- Orientの質を上げると、Decideも深くなり、Actが確実になり、Observeが洗練されていく
🔭 次回予告
Slack AgentからOODA作成を自動起案、要約+Notion格納+定期フィードバックまで含めた
“回るOODA仕組み”の完全自動化フローをご紹介予定です!