IBM watsonx Orchestrate とは
IBM watsonx Orchestrate は、IBM が提供する AI Agent プラットフォームです。開発者が簡単かつ柔軟に AI Agent を構築・運用できる環境を提供しています。
本記事では特に、 watsonx Orchestrate に付属するエージェント開発キットである watsonx Orchestrate Agent Development Kit (ADK)について説明します。
IBM watsonx Orchestrate 3 つの特徴
1. 爆速 Agent 開発
Web 管理画面から Agent や Tool を直感的に作成し、チャット画面で即座に動作確認できます。プロトタイピングや簡単な Agent 構築に最適です。
2. 柔軟な Agent 開発
YAML で定義した Agent や、Python・OpenAPI・MCP で定義した Tool をデプロイできます。より複雑で本格的な Agent 開発に向いています。
3. 組み込み トレーサビリティツール
IBM watsonx Orchestrate には分散トレースシステムの OSS Jaegerが組み込まれており、複雑になりがちな Agent の動作を詳細にトレースできます。これにより、デバッグやパフォーマンス最適化を簡単に実行できます。
IBM watsonx Orchestrate ADK の構成要素
ADK(Agent Development Kit)は以下の要素で構成されています:
- Python ライブラリ: Python ツール用ライブラリ
- API: Agent や Tool のデプロイメント用 API
- watsonx Orchestrate Developer Edition: ローカル開発環境用コンテナ群
- CLI: デプロイのためのAPIアクセスとローカル開発環境管理のコマンドラインツール
以下で詳細を説明します。
Python ライブラリによるツール開発
Python ライブラリを使用することで、関数にアノテーションを追加するだけで Tool を作成できます:
# Pythonツールの例(参考)
from ibm_watsonx_orchestrate.agent_builder.tools import tool
@tool
def calculate_sum(a: int, b: int) -> int:
"""2つの数値の合計を計算します"""
return a + b
デプロイ時にrequirements.txt
もアップロードすることで、外部パッケージも利用可能です。
注意: 実際の開発には適切なライブラリのインストールとセットアップが必要です。詳細は公式ドキュメントを参照してください。
API 経由でのデプロイメント
専用 CLI を使用することで、簡単なコマンドで Agent や Tool をデプロイできます:
# Agentのデプロイ(参考)
orchestrate agents import -f agent.yaml
# Toolのデプロイ(参考)
orchestrate tools import -k python -f my_tool.py
注意: 実際の利用には事前のセットアップが必要です。詳細は公式ドキュメントを参照してください。
IBM watsonx Orchestrate Developer Edition - ローカル開発環境
ローカル環境で watsonx Orchestrate と同等の環境を構築できます。CLI が Docker Compose のラッパーとして機能し、開発用コンテナの管理を簡素化します。
# 開発環境の起動(参考)
orchestrate server start
# チャット開始(参考)
orchestrate chat start
# 環境の停止(参考)
orchestrate server stop
特徴:
- クラウド版と同じ UI で動作確認可能
- LLM はクラウド上の watsonx.ai や IBM watsonx Orchestrate を利用
- OSS LLM アプリ監視ツールLangfuseが含まれる
注意: 実際の利用には Docker 環境や環境変数の設定が必要です。詳細は公式ドキュメントを参照してください。
CLI の機能
一部、上記でも説明しましたが orchestrate CLI は以下の役割を持ちます:
- API ラッパー: IBM watsonx Orchestrate への api アクセスを簡素化
- Docker Compose ラッパー: Developer Edition の管理
- その他独自機能: Evaluation Framework 等の独自機能が含まれます
# CLIのインストール(参考)
pip install ibm-watsonx-orchestrate
# 複数環境への対応(参考)
orchestrate env add -n production -u https://my-service-instance-url
orchestrate env add -n development -u https://dev-service-instance-url
orchestrate env activate production
注意: 実際の利用には環境変数設定等の詳細なセットアップが必要です。正確な手順は公式ドキュメントを参照してください。
まとめ
IBM watsonx Orchestrate ADK は、簡単な Web UI 操作から本格的な開発まで、幅広いニーズに対応する AI Agent 開発キットです。組み込まれた可観測性ツールと充実した開発環境により、効率的な Agent 開発が可能です。
実際の開発を始める際は、環境設定や認証情報の準備など詳細なセットアップが必要となります。また、開発が盛んで毎週のようにアップデートがあります。本記事のコードやコマンドは参考程度に留め、必ず公式ドキュメントで最新の手順を確認してください。