AIサービスには2つのタイプがある。1つは「他の人も機能を足せる土台」。もう1つは「そのメーカーだけの完成品」。この見分け方を覚えると、どのAIを選ぶと長く得かが分かる。
なぜ今か。この見分けが役立つ新しい動きが、2024年から続いているからだ。
この考え方を広めたのは、有名な社内文書だ。書いたのは、元アマゾンで当時グーグルにいた技術者スティーブ・イエギ。2011年、社内向けのつもりが手ちがいで世界に公開された。本人はすぐ消した。今読めるのは、他サイトに残ったコピーだ(下にリンク)。
目次
- アマゾンの命令とAWS
- 「土台」と「完成品」のちがい
- いま起きている新しい動き(MCP)
- あなたへの持ち帰り
アマゾンの命令とAWS
イエギの文章によると、2002年ごろ創業者ベゾスが全社員に命令した。どのチームも、自分のデータや機能は「窓口」ごしにしか渡すな、という内容だ。
窓口とは、決まった頼み方をすれば答えが返る受付のこと。技術用語でAPIと呼ぶ。
条件はきびしい。裏口やこっそりの共有は禁止。窓口は将来そのまま社外にも開ける形で作れ、と。従わない人はクビ、とまで書かれていた。
数年後、アマゾンはこの窓口を商品として売り出す。2006年に始まったクラウドサービスAWSだ(開始はアマゾンの公式発表で確認できる。下記)。社内の土台が、そのまま世界の土台になった。
「土台」と「完成品」のちがい
イエギの見方はこうだ。アマゾンは「他の人が上に乗せて使える土台」を作った。グーグルは完成品作りは得意でも、土台作りは後回しにした、と。
完成品タイプ
会社 →[製品]→ あなた(使うだけ)
土台タイプ
会社 →[土台/API]→ 外の開発者 →[新機能]→ あなた
図の読み方。完成品タイプは、会社が作った物をあなたが使って終わり。土台タイプは、あいだに「外の開発者」が入る。会社が土台を開けておくと、外の人が新しい機能を勝手に足す。だから便利さが早く増える。
2つを並べると、ちがいがはっきりする。
| 見る点 | 土台タイプ | 完成品タイプ |
|---|---|---|
| 更新の速さ | 外部が足すので速い | メーカー次第 |
| 機能追加 | 誰でもできる | できない |
| 頼る相手 | 多くの開発者 | メーカー1社 |
いま起きている新しい動き(MCP)
ここが今の新しさだ。これまでAIを他のツールにつなぐには、つなぎ先ごとに専用の部品を作る必要があった。手間がかかり、作り方もバラバラだった。
2024年11月、アンスロピックが「MCP」という共通ルールを公開した。MCPは、AIと外のツールをつなぐ共通の決まり(プロトコル)だ。1つのルールに合わせれば、いろんなAIといろんなツールがつながる。つまり「外の人が上に作る」が、一気にやりやすくなった。
ここからは私の見方だ。これは、イエギの言う「土台」が、AIで実際に形になった例に見える。
さらに2025年、OpenAIも動いた。MCPの上でアプリを作れる仕組み(Apps SDK)を出した。OpenAIは公式に「MCPの上に作った」と説明している(下記)。土台の取り合いが始まっている、と私は見ている。
反対に「完成品タイプ」もある。あるアプリに内蔵された、他社が触れないAI機能だ。便利でも、外の人はその上に何も足せない。
あなたへの持ち帰り
AIサービスを選ぶとき、こう見てほしい。外に窓口(API)を開けているか。他の人がその上に機能を作れるか。
私の見方では、土台タイプは外の開発者が増えるほど便利になりやすい。完成品タイプは、そのメーカー1社の速さで止まる。長く使うなら、窓口が開いている側が後で得をしやすい。
今日覚えること
- AIは「土台タイプ」か「完成品タイプ」かで見分ける。
- 迷ったら「外の人が機能を足せるか(API/MCPがあるか)」を見る。
出典(事実は下の各ソースで確認し、因果の結び付けは筆者の解釈):
- イエギの文章(2011年Google+へ誤公開後、本人が削除。下は他サイトに残ったコピー): https://gist.github.com/chitchcock/1281611
- 誤公開の経緯とイエギ本人がその後も公開で言及した点(二次・GeekWire): https://www.geekwire.com/2011/classic-rant-google-engineer-rips-google-describes-jeff-bezos-micromanager/
- AWSの開始(2006年、アマゾンの公式発表): https://press.aboutamazon.com/2006/3/amazon-web-services-launches
- MCPの公開(アンスロピック公式、2024年11月): https://www.anthropic.com/news/model-context-protocol
- OpenAIのApps SDK(OpenAI公式、2025年。「MCPの上に作った」と明記): https://openai.com/index/introducing-apps-in-chatgpt/