エンジニアは『フリーナンス』を使うべき?独立1年目の技術者がCTOに直撃!

経済産業省の「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果~ 報告書概要版 ~」によれば、エンジニア人口は2020年の時点で37万人が不足すると言われている。

また、直近でも話題に挙がった「老後資金2000万円」の件を受けて、プログラミングスクールのニーズが急増し、20代〜40代までの受講者が殺到しているという声もある。

フリーランスや副業において、エンジニアへと転身するメリットは大きい。シンプルに言えば、独立と同時に会社員自体とは比べ物にならないほどの報酬を得るチャンスが溢れていると言っても過言ではない。

ただし、だ。フリーランスになるということは、勤め先の後ろ盾がなくなるということ。そして、仕事をしながら請求書や税金を含めた部分も全て自身で担う必要がある。

また、仕事を獲得することも全て自己の能力となる。いい案件とは単価が高いというだけでなく、確実に支払いがあるという安心も意味するのだ。

そこまで心配しながら働くのはあまりに負担が大きい。であれば、転ばぬ先の杖を願うのが自然の摂理だろう。

『FREENANCE(フリーナンス)』は、2018年10月にスタートしたフリーランス(個人事業主)のための損害賠償保険&即日払いサービスだ。

インターネット上でのファクタリングビジネスが注目を浴びる中、同社はフリーランスに特化し、安心と安全を届けることを目的に顧客数を増やしているという。

今回、『フリーナンス』を開発したGMOクリエイターズネットワークでCTOを務める田村佳也さんに取材の機会を得た。自身の会社を持ちつつ、フリーランスのエンジニアとして10年活躍してきた田村さんにインタビューを行ったのは、Webエンジニアとして独立1年を迎えた村上昴平さんだ。

10年目と1年目。2人のフリーランスエンジニアに、『フリーナンス』というサービスはどのように映っているだろうか。開発責任者とユーザー。それぞれの目線から『フリーナンス』に迫る。

目次

フリーランサーが『フリーナンス』のCTOへ
開発秘話。こだわりの技術
フリーランスにある2つのタイプ
エンジニアは『フリーナンス』を使ったほうがいい?

プロフィール

田村 佳也(たむら よしや)
大学卒業後、フリーランスのエンジニアとしてWeb系の受託開発を開始。2013年に株式会社くむ創業。 2018年から『フリーナンス』の開発に携わり設計、開発を担当。その後CTOに就任。

 

村上 昴平(むらかみ しょうへい)
東京都渋谷区で活動しているフルスタックエンジニア。2019年に会社員からフリーランスへ転身。ウェブサイト制作やソフトウェア開発を行う傍ら、QiitaやSNSで日夜情報発信を行っている。

 

フリーランサーが『フリーナンス』のCTOへ

村上昴平さん(以下、村上):本日はよろしくお願いします。田村さんはフリーランスのエンジニアとして、『フリーナンス』の開発に携わっていますが、その経緯をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?

田村佳也さん(以下、田村):GMOクリエイターズネットワークと僕が出会ったのは、大学卒業後、1年のアルバイトを経て、独立1年目の時でした。僕が業務委託で入っていた企業がGMOクリエイターズネットワークとお取引があって。

そこから僕が「未踏IT人材発掘・育成事業」に採択されまして。

しばらく間が空いていたのですが、GMOクリエイターズネットワークの次松武大さん(同社:執行役員フリーナンス事業責任者)から直接お声がけをいただいて、今回『フリーナンス』の開発を担当することになりました。

「こういうサービスを作ろうと思っている」とお話いただいて、「なるほど…」という感じで。

村上:そうだったんですね。

田村:はい。少なくとも僕はフリーランスの人間なんです。法人も持っていますが、社員は1名ですので。ほぼフリーランスとして活動している人間にお声がけいただいたのはビックリしましたね。

村上:僕も独立する時に「フリーランスは人脈が大事だぞ」と色んな方から聞いたのですが、ここまで長い関係でつながっているのは本当に素晴らしいですね。

田村:ありがとうございます。でも、僕は本当にお客様に恵まれているので、フリーランスと名乗るのもおこがましいんですよね。だって、これまで全く関係がない、知らないお客様とも折衝したり上手くビジネスをしたりしているフリーランスの方もいらっしゃるじゃないですか?

僕の場合、仕事をしているのは基本的に知人。遠くても、知人からのご紹介です。なので、新規のクライアントとお取引を広げている方は素直に凄いなって思います。

村上:自分に近い範囲で仕事をするというのは、何かキッカケがあったんですか?

田村:そうですね。以前にお仕事で苦い経験がありました。これを続けていくのはどうだろう?と思ったんです。

それでも当時は仕事を選べるほどの余裕はなかった。とは言え、フリーランスとして食べていかなくてはならない。そんなギャップがある中で、いいお客様に恵まれたのは本当にありがたいことだと感じています。

なので、胸を張ってフリーランスと名乗るというよりも本当に“自分、フリーなんです(ボソッ)”という少し申し訳ないくらいの感覚がありますね。

村上:いやいや。そうした謙虚な気持ちを持つことはやっぱり大事ですよね。ちなみにCTOになられたのは『フリーナンス』の開発中からだったんですか?

田村:いえ、リリース後です。2018年10月にリリースしたのですが、やっぱり残タスクってあるじゃないですか。そこで、中長期的なチーム作りを考えた時に、僕がずっとコードを書いているのもありなのですが、違った立ち位置の方が成果が出ると考えました。

このままリリース前と同じ進め方をしていると、僕がSPOF(Single Point of Failure)になる可能性が高い。であれば、全体を見つつ、サポートで加わる方を支援するポジションに回りたいと思ったんです。

村上:確かに『フリーナンス』は金融のサービスですしね。CTOの打診を受けた時はどう思いましたか?

田村:光栄なことですよね。フリーランサーの僕が『フリーナンス』のCTOをやっているって。実際、僕自身もユーザーのひとりという気持ちで開発に臨んでいます。

村上:他のお仕事もある中で、CTOに就任するのは簡単ではないと思います。どんな気持ちで『フリーナンス』にコミットしているのでしょう?

田村:そうですね。すごく月並みな言葉になってしまうのですが、やっぱり使っている方も作っている方もハッピーになれるサービスって素晴らしいと思うんです。

この記事を読んで下さっているエンジニアの方には伝わると思うのですが、開発は恵まれた環境じゃないと辛いんですよね。そういった座組や予算を提供してくださっているGMOクリエイターズネットワークさんには本当に感謝しています。

言葉は悪いですが、糞尿地獄な現場だって世の中にあることを僕も知っています。恵まれた環境から生まれている『フリーナンス』だから、当初の予想よりもかなり速いペースでユーザーを獲得できているのだと思いますね。

誰が使ってもハッピーになれるサービス。それが『フリーナンス』である

開発秘話。こだわりの技術

村上:『フリーナンス』には『GCP(Google Cloud Platform)』を使用しているとお聞きしました。

田村:そうですね。ただ、『GCP』を技術採択したのは、Kubernetesを前提に考えていたためです。当時は、『Google Kubernetes Engine』しかなかったので。2019年に『Amazon Elastic Container Service for Kubernetes 』が発表されたので、今もう一度構成を考えて欲しいと言われると、どちらにしようか頭を悩ませるところではあります。ただ、それでもやっぱり、新しい取り組みになりすぎるので『AWS』ではなく『GCP』を採択していたと思います。
そもそも「新しい」という理由だけで採用するのは、エンジニアとしての興味はともかく、あんまりいいやり方ではないですよね。といいつつ『フリーナンス』の技術構成だけを見ると、それなりに新しい技術を採用しているので「あれ、矛盾してない?」と感じる方もいるかもしれません(笑)。

サーバーサイドはPHP7 + CakePHP3、Go + Revel、フロントエンドはVue + Vuex + TypeScript、インフラはDocker、Terraformなどを使用しています。

これらの採用理由はまず第一に、僕を含めた開発陣が慣れているということ。そして、スクリプト言語のような書き味で、かつ静的型付けをサポートしてくれるもの。この二つの必須条件を兼ね備えたものとして、自然とこのような選択となりました。

村上:田村さんの中で特にこだわって作ったのはどの点になりますか?

田村:アーキテクチャです。短期的な都合でコロコロと修正が効くものではないというのと、「コンウェイの法則」により自然と開発チームの組織構造がソフトウェアの構造に似ていくという点から、中・長期的な視点を持つことを重視しました。

村上:「コンウェイの法則」ですか?

田村:はい。コンウェイの法則はメルヴィン・コンウェイが提唱した概念です。「システムを設計する組織は、その組織構造に似たソフトウェアの設計を生み出してしまう」というものです。その逆もしかりだと考えていて、いま設計しているソフトウェアが、将来どのような開発組織構造を生み出すのか?ということをイメージしながら検討しました

村上:なるほど。勉強になります。田村さんが開発哲学として大切にしていることをお聞きしたいです。

田村:そうですね…。『達人プログラマー』を書いたデビット・トーマスの格言で「プログラミングとはアプリケーションのDSLを作ることである」ですね。

これを平易に表現すると、プログラミングとはそのサービスや業務に特化した「専用プログラミング言語」を設計し、その「専用プログラミング言語」によって記述されたものがアプリケーションである、となります。

僕は、この考え方が数あるプログラミング論の中でも、とてもしっくりきていて。この思想の元で開発を進めていくと、きっと良いものができると信じながら開発を行ってきました。

実際、僕自身は言語設計者ではありませんが、言語設計者になりきってコードを書いていくうちに自然と良い実装になっていることが多いんですよね。

村上:ありがとうございます。勉強になります…!

自身の開発哲学を語る田村佳也さん

 

フリーナンスのサービスを詳しく見てみる

 

フリーランスにある2つのタイプ

田村:ちなみに村上さんって独立されてどれくらいなんですか?

村上:僕は約1年ですね。全然まだまだぺーぺーという状況で…。

田村:いやいや。今っぽいフリーランスの動きをされていて凄いなって思いますよ。僕はTwitterもやってないですし。自分の会社のホームページもちゃんと作ってないですし。

村上:お客様の仕事が詰まっているとSNSもホームページも運営する目的薄くなっちゃいますよね。実際、仕事を獲得するツールとして機能している面もありますし。

田村:そうですね(苦笑)。折角セルフブランディングをするのであれば、しっかりと計画して設計してからやりたいじゃないですか。中々時間がとれない現状ですが、やる時はしっかりとした形でスタートしたいですね。そうそう。僕、村上さんのQiitaの記事を拝見していたんです。

▼村上さんのQiita記事
vimって極めればvscode並のIDEになるんじゃないの? – 最強のvimrcを晒す。

フリーランスってこうした情報発信すごく大切ですよね。

村上:僕はフリーランスの方って2種類の方が居ると思っています。まずは、純粋に技術力を高めて案件を獲得していくアウトバウンドなタイプ。次に自分でQiitaやTwitterなどで情報発信を行い認知を高め、お客様から依頼が来るようにするインバウンドなタイプ。
前者は仕事の成果が自然と次の仕事につながっている印象を受けます。表には出ない口コミで仕事を獲得してるというか。こういう方って、技術レベルが高く、人にも恵まれているなって傍から見ていても感じます。

僕は完全に後者のタイプで。本当だったら田村さんとこうして対談ができる立場ではないにも関わらず…。

田村:いえいえ、そんなそんな。

村上:ありがとうございます。インバウンドで情報を発信したことで、こうした貴重な機会を掴むこともできていますので、後者も多くのメリットがあると思っています。

ただし、僕と同じタイプで案件を請けている方の中には、トラブルに巻き込まれた方も少なからずいると聞きます。

田村:やっぱりそうなんですか?

村上:はい。人脈ベースでお仕事をしている場合って、そもそも一定の信頼関係がある状態でのスタートじゃないですか。ただし、インバウンドの場合はDMや問い合わせフォームから連絡が届く。全く知らない人と仕事をするわけなので、規模によっては必ずしも全て安心とは限らないと言えます。

なので、僕は『フリーナンス』の存在を知った時にすごくいいなって思ったんです。実際に登録もしていますし。

田村:ありがとうございます。トラブルが起きた時にフリーランスって後ろ盾がないじゃないですか。そこはやっぱり不安ですよね。請求書買取りの即日払いは勿論ですが、あんしん補償があるお陰で、挑戦する気持ちにはなれますよね。

村上:そうですね。ちなみになのですが、田村さんもそういったトラブルのご経験ってありますか?

田村:フリーランスをしてきた以上、ゼロだとは言いません。ただ、そうした経験を糧にして、自分の中で考え方や行動を修正していくしかないですよね。

村上:なるほど。今のお話を聞いて、改めて一つの過ちが大きな失敗にならないよう、『フリーナンス』はあるんですね。

『フリーナンス』はフリーランスのインフラになると予見する

エンジニアは『フリーナンス』を使ったほうがいい?

村上:エンジニアにスコープを当てた場合って『フリーナンス』を使ったほうがいいと思いますか?

田村:僕は立場上、イエスとしか言えません(笑)。ですが、本音でお話しますね。先に村上さんの立場から見てどう思うかお聞きしてもいいですか?

村上:はい。エンジニアがフリーランスになってみると、高額の案件を受注するケースも珍しくないですよね。でも、フィーが支払われるタイミングは数ヶ月先だったりするじゃないですか。長期のモノだとシステムの検証まで終わった後になったり。半年後くらいになることもありますよね。

田村:ですね。支払いタイミングは契約の問題でもあるので、中々難しいところだと思います。

村上:ですよね。案件を受注して仕事もしている。帳簿上だと黒字なんだけど、手元のキャッシュがない…みたいな。中にはそれが原因でフリーランスを廃業した方もいらっしゃると聞いたことがあります。

そういった実例もあるので、長期プロジェクトが頻繁にあるエンジニアは『フリーナンス』を使ったほうがいいと思います。特にフリーランスになりたての方にはオススメだと思います。後は、たまに悪質な案件から身を守ったり、何かトラブルが起きた時の保証という意味でも、利用していて損はないと思いますね。

田村:エンジニアは世間的には売り手市場なだけに、危険な匂いのする案件から身を守りやすい状況ですよね。せっかくフリーランスになったのであれば、選ばない自由を選択できる自分になりたいでしょうし。

ただ、選ばない勇気を持つためには、心理的安全性が必要なんです。『フリーナンス』はフリーランスの方々のインフラとなれるよう、今後もサービスを拡充していきます。

村上:フリーランスになったら、まずは『フリーナンス』のアカウントを取る。そういった世界になると僕みたいな新人フリーランスにも安心な世の中になる気がしますね。
最後にもう一つ質問いいですか?

田村:全然大丈夫ですよ。

村上:ありがとうございます。今って、社会的にフリーランスについて色々と報じられていますよね?僕は自然とフリーランスになったのですが、正社員だけじゃない働き方って経験した方がいいと思いますか?

田村:いい質問ですね。ちょっと意地悪な返し方ですが、逆にどうですか?一年フリーランスを経験してみて。

村上:そうですね、大分違います。1年で感じたことは3つです。まずは、外に出ることで、法律や経理、税金についても勉強しなくてはならない。社会のシステムについて学ぶ機会ができたことはいいことだと思います。

次に会社のネームバリューがない分、求められるレベルが上がった点です。会社という信頼の後ろ盾がない分、完全に実力主義の場所に立っている感じがします。

最後に、いつか正社員に戻ったとしても以前とは違う視座を得ることができたということです。田村さんはいかがですか?

田村:素晴らしいですね。僕の場合は、正社員での雇用していただいた経験がないんです。唯一アルバイトで経験したのもカヤック一社だけですし。ただ、アルバイトの経験だけでも多くの学びがあったので、いきなりフリーランスになるのではなく、組織に属した経験があることも大切だと思っています。

会社勤めをしてると、巻き込まれ感があるじゃないですか?自分ができるのか分からないけど、いきなりスケジュールを引かれてしまうみたいな。僕はそういった環境で多くの学びがありました。

今、自分が独立して得ることができない経験をカヤックでは得ることができたんです。アルバイトだったし、1年限定でしたけど本当に学びが多かったんです。

村上:なるほど。会社勤めの経験は独立してからも大きな糧になると。

田村:はい。もしも独立という道を選んだ方には、『フリーナンス』を使っていただきたいですね。

こうした金融サービスって“貧テック”って揶揄されるケースもあるじゃないですか。ただ、『フリーナンス』の目指すところは、本質的なところ以外でのトラブルを避けながら、自分の力を存分に発揮して活躍するための「インフラ」になることです。独立して頑張っている方に寄り添っていけるようなサービスとして、今後もスケールさせていきたいと思います。

村上:ありがとうございました!

編集後記

インターネットバブルの時代に思春期を過ごし、フリーランスを目指した田村さん。フリーランスに憧れを持ち、会社勤めを止めた村上さん。
それぞれ育った環境や目指している軸は異なるものの、従来の雇用形態から脱し個の道を歩んでいる。
私が『フリーナンス』について取材するのは今回で2度目だったが、改めて成長性を感じさせるサービスだと感じた。フリーランスに特化しているということは、スモールマスマーケティングとして、ニーズを的確に汲み取っていくことにも通じる。アメリカでは2020年にフリーランス人口が50%を超えるというニュースも飛び出してきているだけあって、日本国内でも、今後フリーランサーが増える可能性は高い。
だが、実際、「フリーランスになってみたいな」と思って独立してみたものの、案外相談できる相手はそう多くない。フリーランス需要の報道がなされているが、まだまだ整備する部分は多分にあると思う。
そうした市場の中でフリーランスに特化したインフラを目指している『フリーナンス』は独自のポジションを取る可能性があると実感する取材となった。

フリーナンスのサービスを詳しく見てみる

取材/文:川野優希
撮影:花井智子

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