様々なAIコーディングツールの良いとこ取り!アリババ「Qoder」をQiitaエンジニアが試してみた


近年、AIコーディングエージェントの進化が目覚ましく、エンジニアリング領域を大きく変えつつあります。コード補完にとどまらず、仕様の整理や実装方針の提案、テスト計画の策定、リファクタリング支援、ドキュメント整備まで、様々なタスクで頼れる存在になってきており、エンジニアの「手を動かす時間」だけでなく、「どうするかを考える時間」にも入り込み始めています。

その背景には、大規模言語モデルの性能向上に加え、IDEやターミナル、ブラウザ、GitHubなど開発環境との統合が進み、AIが単なる相談相手ではなく、実際の開発フローに組み込める存在になってきたことが挙げられるでしょう。

こうした流れの中、2025年8月にリリースされたエージェントコーディングプラットフォーム「Qoder」は、インテリジェントなコード補完、AI対話型コーディング、自動コード生成などの機能を備えた次世代AIコーディングプラットフォームとして注目度が高まっています。

今回は、普段からClaude CodeやCodex、GitHub Copilot、OpenCodeなど複数のAIコーディングツールを使い分けているQiitaエンジニアの千葉 知也さんに、Qoderを実際に試して感じた使い勝手や、既存ツールとの違い、どのようなユーザーに向いているのかなどのレビューをしてもらいました。

プロフィール

千葉 知也(ちば ともや)
Qiita株式会社 プロダクト開発グループ
東京大学にてコンピュータサイエンスを専攻する傍ら、Increments(現:Qiita株式会社)でのエンジニアアルバイト、Googleでのエンジニアインターンを経験。東京大学大学院修了後にアプリケーションエンジニアとしてQiita株式会社に入社。現在はQiita、Qiita Teamの開発や、それらの開発環境の改善などを担当している。

まずはテトリス、次にQiita CLI。Qoderで何を試したのか

―― まず、今回のQoderレビューで、千葉さんが行ったことの概要を教えてください。

千葉:前提として、QoderにはデスクトップアプリのQoder Desktopや、CLI、JetBrains IDE開発者向けのプラグイン、さらにはQoder Cloud Agentsというフルマネージド型のAIエージェント実行プラットフォームや、Qoder Work、QoderWakeなど、様々な提供形式やプロダクトがあります。これらの中で今回僕が試したのは、Qoder Desktopになります。

最初に、検証も兼ねて試しにテトリスを作らせてみました。どんな感じで動くのかを見る目的ですね。これは10分ほどで、それなりにちゃんとしたものができました。

千葉:その後は、自分で持っているいくつかのオープンソースのコードや、自社プロダクトのコードに対して、一部機能を足すようなことをやらせてみました。具体的には、マルチエージェント的な機能や仕様駆動でスペックを作って、それをレビューして実装するような、最近のコーディングAIエージェントでよくある開発フローを試した形になります。

―― どのような自社プロダクトで試したのでしょうか?

千葉:主には「Qiita CLI」です。ユーザーが好きなエディタでQiitaの記事を書いてプレビュー出し、そのまま投稿できるツールです。QiitaのWebエディタではなく自分の慣れた作業環境で記事を書きたい人や、GitHubと連携して記事管理から投稿までワークフローを組みたい人に向けて提供しています。

―― 具体的には、どのようなことをQoderにやらせたのでしょう?

千葉:Visual Studio Code(以下、VS Code)の拡張を書かせてみました。通常、Qiita CLIでプレビューを表示するとブラウザが立ち上がるのですが、VS Codeの中で横にQiita CLIのプレビューを表示できると便利だなと思っていたんです。

なので、VS Codeのエディタ上で記事を書きながら、横にプレビューを並べられる拡張機能を作れないか試してみました。以前から「あると良いな」と思っていたものの、優先順位としてはそこまで高くなく、実装には着手していなかったタスクです。

―― 実際にQoderで作ってみて、どの程度まで動きましたか?

千葉:最低限動くレベルのものまでは作れたと思います。「VS Codeのエディタ上で横にプレビューが並ぶようにしてほしい」とお願いすると、VS Code拡張としてパッケージを作るところも含めて、自動で動くものを作ってくれました。

ただ、どうしても細かい仕様まですべて汲み取ってくれるわけではありません。希望としては、記事ファイルを開いたら自動で対応するプレビューが表示されるとか、コードのスクロールに合わせてプレビュー側も連動してほしいとか、細かな要件はいくつかあります。とはいえ、期待していたものにかなり近いところまでは作成してもらえました。

実際にQoder Desktopを使って組んだ画面プレビュー例

―― どれくらいの時間でここまで到達しましたか?

千葉:ざっくりですが、1時間もかかっていないと思います。最初に「こういうものを作ってほしい」と投げると、実装パターンがいくつか提案され、「どれにしますか?」と聞いてくれました。おすすめの進め方も提示してくれたので、それに従って追加のプロンプトを送ったり、自分の方で「こういうこともやりたい」と伝えました。そんな感じでひと通り提案してもらい、「こういう仕様で進めましょう」と伝えたあとは、ほとんど自動で進めてくれました。

各Knowledge機能が面白い(Repo Wiki、Knowledge Card、Memory)

―― Qoderからの実装前の確認や提案の「粒度」についてはどう感じましたか?

千葉:良い感じの粒度感だったと思います。アプローチに対してコード例を出してくれたり、図を使って説明してくれたりしました。計画の出し方も、おそらくQoder側でフォーマットがあるのだと思いますが、構造化されていて見やすかったです。どこにどういう設定を置くか、サンプルはどうなるか、といった説明も整理されており、出力量は多いものの構造化されているので認識合わせがしやすい印象です。質問の返し方も、今回試した範囲ではちょうど良かったですね。

提案の中には「それは少し違うのでは」と感じるものもありました。例えばプレビューを出したいとお願いした時に、VS Codeのエディタではなく独自エディタに置き換えるような案が出たこともあります。ただ、実装がまったく進まないとか、明らかに指示と違うことをする、というレベルまでは今回は確認していません。

VS Code拡張機能の実装が完了した際の画面例

―― 使えるモデルについてはいかがでしょう?

千葉:世界のトップクラスモデルを複数サポートしていることもあり、その実力は普段使っている主要なモデルと比べても全く遜色ありません。実務やプライベートでの感覚から言っても、Claude Sonnetなどの最高峰のモデルに匹敵するスペック感を備えているという印象です。

千葉:もちろん、まれに変な挙動をすることはあると思います。ただ、個人で使う分には十分かなと。GLMなども、サブとして使うモデルとしては全然良いと思います。

―― ずばり、Qoderを使ってみての感想を一言でお願いします。

千葉:様々なエージェントの良いところ取りができる、ですね。

―― どのあたりでそう感じましたか?

千葉:例えばスペック駆動開発です。多くのエージェントでは、スペックを作る場合に「スペックを作ってください」と明示的にお願いしたり、そのモードをオンにしたりする必要がありますが、Qoderの場合、基本的には自動的にスペックを出すかどうかを判断してくれました。あとは、ブラウザやターミナルを開いたり、進捗をToDoリストで見せてくれたりと、GUIツールとして必要な機能がだいたい揃っている印象です。

また、面白いなと思ったのは、プロジェクト内のコードを解析して、アーキテクチャやプロジェクト概要のようなドキュメントを作ってくれる機能です。「Knowledge」という、プロジェクト理解をエージェントに持たせるための知識基盤となるエリアにある、「Repo Wiki(リポジトリWiki)」機能です。コードベースから構造化ドキュメントを自動生成してくれるもので、DeepWikiに似ているなと感じました。

Repo Wikiでは、リポジトリのコードを解析してプロジェクト構造やアーキテクチャ、モジュール間の関係、実装詳細などを自動でドキュメント化してくれる。一度生成して終わりではなく、コードやドキュメントの変更を継続的に追跡する

―― Repo Wikiタブの隣にある「Knowledge Card」と「Memory」はどのような内容になっているのでしょうか?

千葉:Knowledge Cardは、コードから抽出した知識をエージェントが使いやすい形で保持する機能です。公式ドキュメントでは、コードから抽出されたアーキテクチャ文書やコード仕様・スペック、技術スタック情報などを、エージェントが直接利用しやすい形式で保存するものと説明されています。Memoryは、いわゆる長期記憶ですね。

―― Repo Wikiが「人間が読むWiki」に近いのに対して、Knowledge Cardは「エージェントがタスクを実行する時に参照する内部ナレッジ」に近いものなんですね。あと、Memoryも編集しやすそうですね。こういう機能が標準で実装されていると助かりますね。

千葉:Claude Codeでもメモリのメンテナンスはできますが、ターミナルから触るのは少し大変です。QoderのようにGUI上で見えて、編集もできると直感的に扱いやすいと思います。タスク実行時に、そのタスクで参照されているMemoryやKnowledge Cardが明示されるのも助かりますね。

各タスクで参照されているMemoryやKnowledge Cardの表示例

千葉:表示の細かいところにはまだ粗さもありましたが、最近のエージェント系ツールで良いとされている機能を、最初からかなりカバーしているように感じました。できればここも、日本語になってほしいですけどね。

―― そういえば、この画面以外は日本語で表示されていましたね。

千葉:設定などの表示言語は英語か中国語(簡体中文)の二択ではあるのですが、AIとの応答言語は日本語設定ができます。

千葉:今回試した範囲では日本語の意味をちゃんと理解していましたし、簡体字が入るようなこともなく、ちゃんとした日本語で返ってきていました。少なくとも今回の検証では、違和感のある表現になったり、意味を取り違えたりすることはあまりなかったですね。

AIコーディングエージェントのベストプラクティスをパッケージとして体験できる

―― 普段使っているClaude Codeなどと比べて、Qoderの良さはどこにあると感じましたか?

千葉:Claude Codeは最近GUIも良くなってきていますが、どうしてもまだ、最初に開いたときのとっつきにくさがあると思います。どこに何があるのかわからない、という感じですね。その点、QoderはGUIがまとまっていて、最初のとっつきやすさに優れていると感じました。画面上でお願いするだけで進められるので、初めて触る人でも入りやすいと思います。

インストールして最低限の設定を済ませたらすぐにチャット入力から利用開始できる

千葉:また、もうひとつ面白かったのは、自分が書いたプロンプトをAIに直してもらう機能です。コーディングエージェントを試すとき、曖昧な指示を投げてしまうことはよくあると思いますが、Qoderでは、例えば「テスト通りましたか?」のようなざっくりしたプロンプトを、より具体的な確認依頼に整えてくれます。こういうフォローがあるのは良いですね。

―― 業務利用する場合は、プライバシー設定やデータの扱いなども気になるところですが、いかがでしょうか?

千葉:Qoderのデータ取り扱いについては、公式FAQ上、コードは保存・共有されず、補完時に必要なコードコンテキストも保存や別用途利用はされないと説明されています。一方で、Repo Wiki、Knowledge Card、Memoryのようにコードベース理解や長期記憶を前提とする機能では、どの知識がローカルに残るのか、チームに同期されるのか、改善利用の対象になるのかを確認することが大事そうです。また、プランによってもプライバシー設定や管理機能、データの扱いなどが変わってくるようなので、詳細は公式ページなどを個別に確認してもらいたいと思います。

―― 千葉さんとしては、今後Qoderをどのような位置付けで使いたいと感じましたか?

千葉:僕の場合、すでにClaude Code、Codex、OpenCodeなどでだいたいカバーできているので、メインをすぐQoderに変えるかというと、現状はまだ他のツールで十分かなという印象もあります。ですから、サブの選択肢として使いたいと感じました。Claude Codeなどは料金体系や利用制限が今後どうなるか分からないところがありますし、トークン制限で困るシーンもそこそこの頻度で発生しているので、複数のツールに分散させる選択肢の一つにしたいなと。中国系のオープンウェイトモデルを使うツールは他にも色々とありますが、その中でもQoderは、カスタマイズしなくてもデフォルトの機能が揃っている点が強いと感じました。

スキルのマーケットプレイスも用意されている

―― どのような人や組織にQoderをおすすめできそうでしょうか?

千葉:入り口として使うのが一番刺さりそうだと感じました。エンジニアでも、「AIツールが良さそうなのは分かるけれど、どう使えば良いのか分からない」という人はまだまだ多いと思います。エージェントは機能が多すぎて、使いはじめが難しいこともありますからね。そういう人にとって、Qoderは良いと思います。最初からGUIでまとまっていて、スペック作成、ターミナル、ドキュメント生成、Memoryのような機能が揃っているので、AIコーディングエージェントのベストプラクティスを、ある程度パッケージとして体験できるツールだと感じました。

―― プログラミング経験が少ないビジネスサイドの人にも向いていそうですか?

千葉:向いていると思います。プログラミングをあまりやってこなかったけれど、AIコーディングに触れてみたい人にはかなり良いのではないでしょうか。オールインワンで面倒を見てくれる感じがあるので、成功体験を積みやすいと思います。ワークショップなどで初めてエージェントを触る人に使ってもらうのもアリですね。

ちなみに、冒頭にお伝えした通り、Qoderには複数のプロダクトが用意されています。例えば「QoderWork」は、Qoderのエージェント能力を日常業務のデスクトップ自動化に広げたプロダクトです。Claude Coworkみたいな位置付けだと理解しています。

千葉:また、似たような名前の「QoderWake」は、Qoderのエージェント能力を継続稼働するAI社員として扱うプロダクトです。これらのプロダクトを活用するのも良いかもしれません。

―― 逆に、どんな人には向いていないと思いますか?

千葉:自分でしっかりとワークフローを組み立てたいパワーユーザーには、他のツールの方が合うかもしれません。Qoderはパッケージ化されている分、自律的に様々なことをやってくれるのですが、それが逆に邪魔に感じる人もいると思います。ただ、CLIも用意されているので、自分の用途に合わせて使うことはできるはずです。向いていないというよりは、「すでに自分の環境を作り込んでいる人には、他にも良い選択肢があるかもしれない」という感じですね。

「AIコーディングってこう使うんだ」と理解するにはかなり良い

―― 最後に、Qoderを使って良かった点と、今後改善されると嬉しい点を教えてください。

千葉:良かった点は、やはりオールインワンで使いやすいところです。最近のエージェント活用で必要とされる機能を、かなり広く取り込んでいます。初めて触る人が「AIコーディングってこう使うんだ」と理解するにはかなり良いと思います。

一方で、細かい表示の挙動が少し怪しいところや、まだUIに粗さを感じる部分もありました。また、使えるモデルがもう少し広がると嬉しいです。ChatGPTやOpenRouterのような選択肢も含めて、裏側のモデルをより柔軟に選べると、もっと使いやすくなると思います。あとは、せっかくオールインワンをめざすなら、もっと貪欲にオールインワンであってほしいですね。自動実行やスケジュールのような機能も含めて、1つのツールの中で切り替えやすくなると、さらに魅力が増すと思います。

―― ありがとうございます。それでは最後に、Qiita読者の皆さんに向けてメッセージをお願いします。

千葉:AIコーディングは、これまで専門的な知識が必要だったコーディングの敷居をかなり下げてくれるものだと思います。プライベートでもどんどん試していくべきだと思います。その上で、これまでコーディングエージェントがとっつきにくい、よく分からないと感じていた人は、Qoderのようなツールから触ってみるのが良いと、今回触ってみて思いました。自分の好きなアプリを作ってみるなど、まずは小さく成功体験を積む入口として、Qoderはかなり良いのではないでしょうか。

編集後記

実際に自分もインタビュー前後でQoder Desktopを操作してみましたが、千葉さんがおっしゃる通り、UIがAIエージェント初心者にもわかりやすいなと感じました。AIコーディングツールは便利な一方で、環境設定や外部ツール連携、実行権限まわりで最初につまずくことも少なくない印象なので、デフォルトの状態でSpec生成、実装支援、動作確認まで一通りできるという体験は、エンジニアに限らず多くの人の入り口になると感じた次第です。

取材/文:長岡 武司
撮影:平舘 平
提供:アリババクラウド・ジャパンサービス株式会社

「Qoder」公式サイトはこちら

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