ローカルLLMを気兼ねなく動かせる。GeForce RTX™ 5090で試したコーディングと&画像生成のリアルと「クラウドとの賢い分担」

生成AIの活用が広がる一方で、エンジニアの現場では「クラウドAPIにどこまでコードや社内データを渡して良いのか」「推論や画像/動画生成を何度も試したいが、従量課金が気になるし、時間もかかる」といった悩みも増えているのではないでしょうか。
そんな中、心理的・コスト的な制約から解放される選択肢として注目を集めるのが、超ハイエンドな「ローカルAI環境」です。今回、Qiitaエンジニアが「NVIDIA® GeForce RTX™ 5090 Founders Edition」と「インテル® Core™ Ultra 9 プロセッサー 285K」を搭載した100万円級の、クリエイター向けミドルタワーモデルのBTOパソコンを検証しました。
ローカルLLMやコーディングエージェント、画像生成、複数ターミナルでの並列作業などを試したリアルな手応えを、詳しく伺いました。
※ 以下は、今回検証した「iiyama PC SENSE-F189-LC285K-XKNX-Limited Edition」のスペックです
| 【検証機】iiyama PC SENSE-F189-LC285K-XKNX-Limited Edition | |
|---|---|
| OS | Windows 11 Home [DSP版](変更可能) |
| CPU | インテル® Core™ Ultra 9 プロセッサー 285K |
| メモリ | 64GB(32GB×2) DDR5(変更可能) |
| グラフィック機能 | GeForce RTX 5090 Founders Edition |
| ストレージ | 1TB NVMe対応 M.2 SSD(変更可能) |
| 製品ページ | https://www.pc-koubou.jp/products/detail.php?product_id=1226591 |
目次
プロフィール

プロダクト開発グループ
まず試したかったのは、ローカルLLMがどこまで動くか

―― 本日はこちらのマシンレビューということで、まずはどのようなことを試しましたか?
千葉:VRAM 32GBという最高峰のスペックなので、まずはLLMを動かしてどのくらいの速度が出るのか、どのくらいのモデルまで扱えるのかを試してみたいと思いました。
―― 千葉さんのことなので、最初にゲームを試したのかなと思いました。
千葉:もちろんゲームに使ってみたい気持ちはありましたが、今回は仕事での検証なので控えました(笑)。ローカルLLMや画像生成、動画生成のような重い処理を試したくなりましたね。今回は動画生成までは試せていませんが、QwenやGemma系のオープンモデルを入れて、コーディングエージェントから使わせたり、ローカルLLMだけでどのくらい応答できるのかを見たりしました。

「SENSE∞(センスインフィニティ)」は、パソコン工房の「iiyama PC」が展開するクリエイター向けBTOパソコンシリーズ。今回のクリエイター向けミドルタワーパソコン 「SENSE∞ F-Class」は、高性能CPU・GPUを安定して活用するための冷却性能や拡張性、メンテナンス性が重視された構成となっている
―― 実物のサイズ感はいかがでしたか?かなり存在感がありますよね。
千葉:大きいとは思いましたが、よくあるタワー型PCとしてはこのくらいかなという印象です。僕は自作PCを持っているので、驚くほどではありませんでした。ただ、存在感はありますね。デスクの下や横に置く前提で、設置スペースは見ておいた方が良いと思います。
―― セットアップでつまずいたところはありましたか?
千葉:特に問題ありませんでした。届いてから使い始めるまではスムーズでしたよ。
クラウドAPIとは違う、「好きなだけ試せる」安心感

内部で光る「NVIDIA® GeForce RTX™ 5090 Founders Edition」。Blackwellアーキテクチャと32GB GDDR7メモリが搭載されており、NVIDIA社がチップ・基板・冷却機構のすべてを設計したグラフィックスカードとなっている。また「インテル® Core™ Ultra 9 プロセッサー 285K」は、8基のPコアと16基のEコアで構成される24コア24スレッドのデスクトップ向けCPU。最大5.7GHzで動作し、デスクトップ向けCore UltraとしてNPUも内蔵するため、CPU側にもAI処理専用ユニットを備えている点が特徴となっている
―― 実際に使ってみて、どのようなメリットを感じましたか?
千葉:「ほどほどの性能のモデルを、気兼ねなく無限に動かせる」という心理的な楽さが、非常に大きいと感じました。生成AIを使う時は、トークン数や料金、プライバシーがどうしても気になりますよね。コードを書いていても、「これを送っていいのか」「このリクエストはいくらかかるのか」などの緊張感があります。もちろん、ローカルLLMの性能はClaudeのようなクラウドの最先端モデルには及ばないとは思いますが、今お伝えしたような毎回の懸念点を気にせずに叩けるのがすごく楽でした。
―― 開発中の試行回数を増やせるという意味でも大きそうですね。
千葉:はい。フロンティアモデルに投げるほどではないけれど、ちょっと相談したい、ちょっと要約したい、少し実験したいという場面は多いと思います。そういう作業に関しては、ローカルLLMに任せられたらいいなと思います。
―― コーディング用途では、どのような検証をしましたか?
千葉:「Qiita CLI」という、ユーザーが好きなエディタでQiitaの記事を書き、プレビューしたり、そのまま投稿したりできるツールを題材にしました。文章の読み上げ機能のような、実際の開発でもありそうな変更をエージェントにやらせてみました。コード生成については、型が通らないコードを書いてくることもありましたし、指摘してリテイクさせ、最終的に形にするという流れでしたね。
―― ローカルLLMだけで完璧に任せられるわけではなさそうですね。
千葉:そうですね。コーディングはモデル性能がかなり効く作業なので、複雑な実装はフロンティアモデルに任せた方が良いケースが多いと思います。一方で、プライベートなメールや社内データの下処理はローカルLLMに任せて、複雑な実装だけClaude CodeやCodexのような高精度なモデルに委託する、という使い分けはありそうです。ローカルLLMをメインエージェントにして、必要に応じて外部の高性能モデルをサブエージェントとして呼ぶイメージですね。
一瞬で画像生成が完了。試行錯誤のハードルが劇的に下がる!

―― LLM以外では、どのようなことを試しましたか?
千葉:ComfyUIを使って画像生成を試しました。ノードベースで画像生成のワークフローを組めるツールで、インターネットにつなげず、このマシンだけで絵を描かせることができます。今回は、Qiitaのマスコットキャラクター「Qiitan」の特徴を渡して、それっぽいキャラクターを作らせてみました。生成速度はかなり速く、体感では平均3秒くらいで1枚出てきました。
―― すごく速いですね!
千葉:これはかなり気が楽ですね。通常の画像生成や動画生成では、1回の生成で時間がかかるので、最初のプロンプトをかなり慎重に作らないといけません。一方でローカルで速く回せると、プロンプトを少し変えてすぐリテイクできます。試行錯誤のハードルが劇的に下がるのは、大きなメリットだと感じます。
―― クラウドの生成AIでしか画像を作ったことがない僕は、数分の待ち時間が発生するのは当たり前の世界なので驚きです。生成AIは「待ち時間」が体験を左右しますよね。
千葉:そうですね。特にクリエイティブ系の作業は、作って、見て、直して、また作るというサイクルなので、リテイクしやすいことが重要です。今回、動画まではできませんでしたが、画像生成の速さを見る限り、マルチメディア系の生成AIをたくさん試したい人にはかなり向いていると思いました。
―― ブラウザ操作のようなことも試したと聞きました。
千葉:はい。ヘッドレスブラウザを内部的に操作するエージェントを使って、「Qiita」のサイトを見に行かせ、トレンドの記事を調べてもらうようなことを試しました。記事名を教えてくれるところまでは上手くいきました。URLを教えてもらうように頼んだときには、内部のブラウザ操作を少し間違えてしまう場面があったので、一部はこちらが「そうではなく、こうして」と指示を出し直す必要がありましたが。このあたりも、最先端モデルとの差は感じます。ただ、ローカルでここまで試せること自体は面白いですね。
―― クラウドモデルの精度と、ローカル環境の自由度をどう組み合わせるかがポイントになりそうですね。
千葉:そう思います。ローカルLLMは万能ではないですが、自由に試せる環境としては非常に価値があります。高精度が必要なところだけ外部モデルを使い、手元で完結したい処理や、何度も試したい処理はローカルで回す。そういう分担が現実的だと思います。
組み合わせの安定性やサポートなど、BTOパソコンならではの利点がありがたい

―― 千葉さんは、普段の開発でどれくらいの量のターミナルセッションやエージェントを並行して使っていますか?
千葉:最近はターミナルを5〜7個くらい開いていることが多いです。開発タスクを2、3個裏でエージェントに頼んでおいて、自分は別の作業をすることもあります。エージェントも3、4個くらい動かしている時がありますね。
―― このマシンでそうした使い方をした時、遅延やストレスはありましたか?
千葉:ほとんど感じませんでしたし、メモリも64GBあったので余裕がありました。さすがにGPUに複数のLLMを同時に載せようとすると調整は必要だと思いますが、ローカルLLMを動かしながら別の作業をしたり、GPUに画像生成を任せながら通常の開発作業をしたりするのは問題ありませんでした。
―― ビルドやコンテナの並列実行でも効きそうですね。
千葉:そうですね。24コアのCPUとメモリ容量を考えると、重い開発環境をローカルで動かしたい人にはかなり余裕があると思います。スペック不足のPCで毎日ビルド待ちに悩まされている人なら、かなり体験が変わるのではないでしょうか。タイムロスという、かなり大きなボトルネックからの解放と言えると思います。
―― 発熱やファンの音はどうでしたか?
千葉:明確に測れない点ではありますが、冷却はしっかりしている印象です。あと、ファンの音については、かなり静かで驚きました。2〜3時間ほど生成AI系のタスクを動かしていて、モニター上ではGPU使用率が100%に近い状態になっているのに、全くうるさくありません。
NVIDIA社が、チップ・基板・冷却機構のすべてを最適に設計した限定モデル「Founders Edition」だからこそ、このモンスター級のスペックでも発熱や騒音を気にせず、パフォーマンスを最大限に引き出せる安心感がありますね。

リアに120mmファンを1基標準搭載している他、フロントにも140mmの大型ファンを3基搭載しており、内部のパーツを効率よく冷却するためにフロント吸気、トップ・リア排気を採用し、強力なエアフローを生み出している。
―― GeForce RTX 5090のようなハイエンドGPUを扱う上では、電力事情も大事ですよね。
千葉:そうですね。このクラスになるとGPU単体でもかなり電力を使うので、自作する場合は電源容量をかなり気にする必要があります。ただ、今回は完成品BTOとしてきちんと組まれているので、その辺は大きくは心配していません。
―― なるほど。自作PCを使っている千葉さんから見ても、やはりBTOの意味があると。
千葉:もちろん、あります。自作は楽しいですが、パーツ選定、組み立て、トラブルシュートを自分でやる必要があります。今回のような高性能GPUを使う構成だと、電源の他に冷却の相性も大事です。そこをメーカー側で組んだ状態で提供してくれるのは、特に業務用途では大きな安心感があります

オプションで、トップにも120mmファンを3基追加搭載することが可能。より高い冷却性能が要求されるシステムでも、十分なエアフローの確保により安定した動作を実現する
―― 自宅で使う場合、部屋のブレーカーを心配する必要はありそうですか?
千葉:今回は電力を測ったわけではないので何とも言えないのですが、CPUの性能が高い分、フル稼働時の電力はかなり大きくなるかもしれません。1台なら問題ないものの、もしこれを何台もフル稼働させるなら、コンセントは気にしたほうが良さそうです。
10台フル稼働とかは、さすがにしんどそうですね(笑)。誰かが電源を入れるたびに部屋が暗くなる、みたいなことになりかねないので、単独のコンセントにしたほうがいいと思います。家庭で本格的に回すなら、電源環境は一度確認しておくと安心だと思います。
―― なるほど。あと、接続端子まわりはいかがでしたか?
千葉:開発に必要な端子は一通り網羅されている印象で、特に背面の端子は高速な規格のものが充実していると感じました。あとはネットワークまわりですね。このマシンは10Gbps対応の有線LAN(10GBASE-T)を標準で備えているので、大きなモデルやデータを頻繁にやり取りするような使い方でも、ネットワークがボトルネックになりにくいと思います。例えばリモート接続用のサーバーとして常時動かすような用途とも、相性が良さそうだと感じます。
AIとクリエイティブを横断する用途に特に強い一台

―― このマシンは、どんなエンジニアに向いていると思いますか?
千葉:様々な生成AI用途を試したい人に向いていると思います。文章やコーディングはもちろん、画像生成、動画生成、そのほかのマルチメディア系の処理まで含めて、せっかくだから全部ローカルで触ってみたいという人ですね。LLMが好きで、モデルやエージェントをたくさん試したい人にはかなり刺さると思います。
―― 一般的なエンジニアにも必要でしょうか?
千葉:正直にお伝えすると、すべてのエンジニアに必須というわけではありません。日常的なWeb開発だけなら、ここまでのGPUはオーバースペックかもしれません。ただ「ローカルLLMを動かしたい」「生成AIの検証をたくさんしたい」「画像や動画も扱いたい」「技術発信のためにデモや動画を作りたい」という人にとってかなり相性が良いと思います。
―― 「開発」と「クリエイティブ」の両方を扱う人向けですね。
千葉:そうですね。例えば登壇資料用の画像を作ったり、解説動画を編集したり、デモアプリを作りながらその場でAIに素材を生成させたりするような人には合いそうです。GPU性能だけでなくVRAMも大きいので、AIとクリエイティブを横断する用途では強いと思います。

千葉:あと、少しオタク寄りの話になりますが、複数のマシンを組み合わせてLLMを動かす構成も面白いと思います。例えばこのマシンのGeForce RTX™ 5090 には高速な処理を任せて、メモリをたくさん積んだマシンとネットワークで組み合わせることで、巨大なモデルや長いコンテキストを扱うときに役割分担させるイメージです。自分だけの強力な実験環境を作りたい人には可能性があると思います。
―― マニアックで面白いですね。最後に、改めてこのマシンの総評をお願いします。
千葉:圧倒的なパワーで、やりたいタスクをどんどん試せるマシンだと思います。ローカルLLMにしても画像生成にしても、待ち時間が短いと気持ちが楽です。API料金を気にしなくて良い、データの扱いを気にしなくて良い、すぐリテイクできる。そうなると、自然と試す回数が増えます。
―― 試す回数が増えることが、開発体験そのものを変えると。
千葉:はい。生成AIの活用は、1回で正解を出すというより、何度も試して調整するものだと思います。そのサイクルを手元で速く回せるのは大きいです。一般的な開発PCというより、生成AIやクリエイティブを含めて、自分の作業環境を強くしたい人のための実験環境に近いかもしれません。「とにかくいろいろな可能性を試してみたい」という方にはぴったりだと思います。
編集後記
今回のインタビューを通じて、一番印象に残ったのは「気兼ねなく無限に動かせる」という一言でした。スペック表の数字を眺めているだけでは見えてこない、「生成の待ち時間がほぼない」「よって試行回数が増える」などの体験ベースの価値が、千葉さんの言葉の端々から伝わってきました。課金やプライバシーを気にせず好きなだけ回せる環境は、AI活用が当たり前になった今のエンジニアにとって、確かな武器になるはずです。クリエイティブと開発をまたいで一台で完結させたい方は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
取材/文:長岡 武司
撮影:法本 瞳
提供:株式会社ユニットコム
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