Qiita Organizationの利用が、なぜ自社のブランディングや人材採用に繋がるのか? 株式会社ゆめみに聞いた
大手企業・急成長スタートアップのデジタルサービス内製化リーディングカンパニーである株式会社ゆめみ(以下、ゆめみ)は「アウトプット文化」がしっかり根付いた企業として知られています。そのアウトプット活動の一環として活用しているのが「Qiita Organization(キータ オーガナイゼーション)」です。
ゆめみでは、Qiita Organizationを使って情報発信力を高めたことが、自社のブランディングや人材採用に繋がったと認識しているそうです。そこで今回は、ゆめみを代表して、Qiitaで著名な「無職 やめ太郎(本名)」氏と「ふわせぐ」氏に、同社のQiita Organizationの使い方や導入の効果、Qiita記事を書くときのポイントなどをお伺いしました。
目次
多くの読者がいるQiitaで、テック会社としてのブランディングを図った
――はじめに簡単な自己紹介をお願いします。
無職 やめ太郎氏(以下、やめ太郎):株式会社ゆめみでフロントエンドエンジニアをしています。入社から3年半経ちました。最近は社内で社員が使うWEBサービスの開発を中心に取り組んでいます。今までQiitaでは記事を100本ほど書きました。
ふわせぐ氏(以下、ふわせぐ):ゆめみで社内向けアプリを作るチームにいます。入社して1年半ほどです。実は、ゆめみを知ったきっかけは検索して出てきた、やめ太郎さんが書いたQiitaの記事でした。それもあって、やめ太郎さんもQiitaも自分の中で特別な存在になっています。
――やめ太郎さんが入社されたとき、ゆめみは既に「Qiita Organization」を導入していたのでしょうか?
やめ太郎:導入済でした。私がゆめみを知ったのも、所属エンジニアが書いたQiitaの面白い記事からでした。私自身もQiita Organizationがきっかけで入社したことになります。
――おふたりともそうだったのですね!ゆめみがQiita Organizationを導入した理由を教えてください。
やめ太郎:私が入社する前の2018年ごろから、システム開発会社としてテックブランディングをするためにQiita Organizationを使っていました。アウトプットを積極的にするテック会社の発信の場としてQiitaを選んだようです。
――他のサービスを使用して、テックブログを立ち上げるといった選択肢もあったと思いますが、Qiita Organizationを選択した理由を教えてください。
やめ太郎:まず、Qiitaの方が多くの人々に記事を読んでもらえることがあります。Qiitaで書いた記事に「いいね」がたくさんつくとトレンドの上位に入るので、それが嬉しいという承認欲求でやっているところもあると思います(笑)
――Qiita Organizationの方がより多くのエンジニアの目に触れやすいのですね。
やめ太郎:それはあります。プログラミングのことが分からなくてGoogleなどで調べるとQiitaの記事が上位に出てきます。その確率が高いので、みんなQiitaを知っています。くわえて「今日のトレンドに入っている記事は何だろう?」とチェックしているQiitaのファンもいるので、テックブログなどに書くよりもQiitaに書いた方が多くのエンジニアに読まれやすいと感じています。
ふわせぐ:ゆめみとしてテックブログを選ばなかった明確な理由もあります。1つはQiitaで書いた記事は個人に紐づいているということです。テックブログだと会社の資産として記事が残りますが、Qiita Organizationなら、万が一転職してもエンジニア名義の記事としてQiitaに残ります。エンジニアからすると、自分の記事、ポートフォリオとして残せるという点でも書きやすいですね。
もう1点が、テックブログは会社のものとして出すため、社内チェックを行ってから出す必要があり、情報発信までのハードルが高くなってしまう点です。Qiitaでは個人として出せる手軽さがあるので総じてアウトプット量が増えます。ゆめみ代表の片岡もその方がアウトプット量は増えると判断したようです。
短期間でアウトプットする文化が根付き、採用面にも好影響が出た
――最初は、どのように記事を書き始めたのでしょうか?
ふわせぐ:私の1本目の記事タイトルには「備忘録」とつけましたが、その名の通り備忘録でした。もともと自分用にメモしていただけでしたが「ローカルで持っておいても意味ないな」と思いました。アウトプットすれば、同じことで困った人が見てくれるかもしれないと軽い気持ちで上げたのが最初です。
だんだん、それが人に読まれることが分かってきて「ちゃんと書こう」とか「分かりやすく書こう」と思うようになり、バズりそうな記事のネタやタイトルを考えよう……と、読者を意識するように書くことが習慣になりました。ゆめみでも、そうやってアウトプットする文化が根付いていったのだと思います。
やめ太郎:Qiitaの記事を見て「ゆめみってアウトプットに力を入れている会社なんだ」と感じたエンジニアが入ってきて、アウトプットに興味のある人が増え、最近は書けといわれなくても自然と書く人がいるといった感じになってきています。
ふわせぐ:最近は、みんな、ほんとに普通に書きますね。何か「気づき」があれば書くといった感じです。
――記事を投稿する上で意識していることはありますか?
やめ太郎:とにかく読みやすくすることですね。それと間違えたことを書かないように公式ドキュメントなどをよく読み、裏を取ってから出すようにしています。
ふわせぐ:最近、私は、やめ太郎さんの書き方、「ワイ記法」を真似することばかりしているので、ちょっと特殊かもしれませんね(苦笑)
普通に記事を書くときは論理が飛躍しないように気をつけています。あまり詳しくない人が「なんでそうなるの?」と感じることは多いと思います。やはり、そこを知りたい人が読みに来ていると思うので、私は初心者や詳しくない方に分かってもらえるように、細かく刻んで論理が飛ばないように気をつけて書いています。
――読者の「レベル」は意識していますか?
やめ太郎:例えば「この記事はフロントエンドエンジニア1年目の人が読む記事」というように意識はしていませんが、「この技術を知らなかった頃の自分が読んで分かるかな?」といったことは思い浮かべています。
ふわせぐ:私もあまり意識したことはありません。自分のレベルより上のものは書きづらいですし、自分が理解できていることの範囲で書くことになるので、その中で意識をしてまとめるような感じです。背伸びをしてしまうと、説明がふわっとして分かりにくくなったり、間違ったことを書いたりしてしまうので、「自分はこうだ」と言い切れるレベルでしか書かないようにしています。
――「会社を代表して書いている」といったことは意識していますか?
やめ太郎:意識しています。間違いを書いたら「ゆめみのエンジニアはレベルが低い」といわれてしまいますし、会社のイメージが悪くなることは書かないように気を使いますね。
――やめ太郎さんの記事はユーモアが効いていますが、そういった書き方を意識しておられるのでしょうか?
やめ太郎:ふざけるつもりはありませんでしたし、最初は面白い記事を書こうと思っていなかったです。分かりやすい記事を書こうと思っていただけでした。実は、最初の頃は技術レベルの高い記事を書いて、すごいエンジニアだと思われるような正統派エンジニアを目指していました。キャラ芸人はカッコ悪いと思っていたためです。
会話形式の記事を書き始めたのは、分かりやすくしたいという一心だったのですが、お笑い好きなこともあって、いつの間にかキャラ芸人の筆頭みたいな感じになっていましたね(笑)
――社内で投稿をチェックすることはありますか?
ふわせぐ:私は結構お願いしています。ゆめみにはmpywさん(@mpyw)というPHPに詳しい、日本でもトップレベルの方がいます。私がPHPの記事を書くときはSlackでメンションを送ってmpywさんに必ずチェックしてもらっています。Qiita Organizationでそういった社内交流が生まれるのも良いですね。
――Qiita Organizationを導入して、社内、社外でどのような効果があったと感じられていますか?
やめ太郎:私の場合、新卒入社のエンジニアが「やめ太郎さんのQiitaの記事でゆめみを知りました」といってくれるので、なんだか居心地がいいですね。
ふわせぐ:採用の広報効果がすごいと思います。ゆめみの代表も「フロントエンドエンジニアの採用の何割かはやめ太郎の影響だ」と話していました。
――人材採用に関しても良い流れができているのですね。
やめ太郎:そう思います。就活をしている学生さん側からすると、会社の「中の人」が書く文章をQiitaで読むことがインターンの代わりのようになっているかもしれません。
逆の視点の話ですが、私は面接官としてエンジニアの面接に立ち会うことがあります。学生の履歴書に、その方が書いたQiitaの記事が貼ってあると面接の前に記事を読んでいます。Qiitaの記事を読むと1時間の面接だけでは分からないような、その学生のエンジニアとしての“人となり”がよく伝わってきます。Qiitaを通じてお互いについて理解を深めやすいですね。
ふわせぐ:Qiitaは会社としてだけでなく、学生でも誰でも書くことができます。転職してくる方も記事を見るとだいたい技術力のイメージができますし、記事を丁寧に書いていたら丁寧な人なのだろうなと思えます。自分がどんな人かを伝える目的でもQiitaが活用できます。
エンジニア一丸となって「Qiitanのぬいぐるみ」を狙い、盛り上がった!
――ゆめみが「Engineer Festa 2022」に参加されたときの様子を教えてください。
ふわせぐ:「Engineer Festa 2022」は盛り上がりました。私がSlackで皆に「Qiitanのぬいぐるみが欲しいから助けて!」と話したら、まず、やめ太郎さんが記事を書いてくれて、すぐ1位になりました。それもあり「これ余裕じゃん」みたいな楽勝ムードになっていたのですが、他の会社の方々が追い上げてきたので、一気に「やばいやばい」という雰囲気になったのです。それで、みんなで記事を書くことになり、社内がとても盛り上がりました。毎日みんなでランキングをチェックして「まだ大丈夫」とか話し合って楽しかったです。
やめ太郎:楽しかったですね。
ふわせぐ:今回、初めて合作をしました。1つの大きなテーマの記事を私ともう1人で前編と後編に分担して書きました。内容や構成を話し合ってから進めていき、YouTuberのコラボ企画のような感じで出せたのは新しい試みだったと思っています。書いていて楽しかったですし、導線を貼り合うことでどちらの記事も読んでもらうことができました。
個人が発信力をつけることが会社のブランディングに繋がる時代へ
――今後、ゆめみとしてQiita Organizationを活用してアウトプットを増やしていく取り組みはありますか?
やめ太郎:さらに、アウトプットの量を増やしていこうとしています。
ふわせぐ:会社単位のブランディングより、これからは、個人単位で力を持つ時代となり、フォロワー数や「いいね」数で評価される時代になっていくと思っています。個人が発信力をつけて集まれば、自然に会社としての発信力も高まり、ブランディングも成功する風潮があると感じています。
私は、現時点で自分自身に「これ」というものがないので、テストコードに注目していることもあり、Qiitaでは「PHPのテストの人」になろうかなと思っています。
「あの分野ならふわせぐだ」と思われるようになると、その人がいる会社として、ゆめみが知られるようになり、会社に良い影響が出ると考えています。
やめ太郎:Qiitaの記事に「いいね」がついて、トレンドページに掲載されると会社名が表示されます。トレンドの1位に例えば「やめ太郎(株式会社ゆめみ)」と表示されるので、大きな会社の宣伝になると思います。これがQiita Organizationのメリットの1つだと感じています。
Qiita Organizationなら、面白い記事を書けばチャンスがある
――どのような企業にQiita Organizationをおすすめしますか?
やめ太郎:昔のゆめみのようにテック会社としてブランドがなかったり、人数が少なかったりしても、面白い記事を書いてバズらせれば、Qiitaなら知名度獲得のチャンスがあります。そういうチャンスが欲しい会社さんに、まさにおすすめだと思います。
ふわせぐ:個人的には、事業会社よりもゆめみのような受託系のクライアントワークをする会社に向いていると思っています。事業会社の場合、例えば「YouTubeの会社」とか「Qiitaの会社」のように「あのサービスの会社」といわれます。しかし、ゆめみのような会社は自社サービスがないので「○○の会社」の「○○」がないからです。そこで、Qiita Organizationで発信することで「Qiitaで発信力がある会社」だと認識してもらい、ブランディングしていけば良いと思います。
――最後にQiita読者にメッセージをお願いします。
やめ太郎:私はQiitaで記事を書くまでは就活が上手く行かず、自分にあった会社は見つからないと思っていました。ところが、Qiitaの記事を書き始め、自分の良いところを伝えることができ、就職できた経験から、技術記事が最高のポートフォリオになると感じています。これから就職、転職活動をする人たちには、ぜひ、Qiitaで技術記事を書いてほしいですし「書くと良いよ」と思っています。
ふわせぐ:普段、エンジニアはQiitaの記事などネットの情報をもとにコードを書いているので、ネットがないと生きていけません。エンジニアとして、すごくお世話になっている分、アウトプットできるような技術を身につけたら、どんどんQiitaなどで発信して、次の世代の人たちや学生、他のエンジニアが助かる記事を書いてほしいと思っています。
編集後記
株式会社ゆめみは、テックブログではなくQiita Organizationを選択して短期間でテック会社としてのブランディングを成功させました。さらに、自社内に「アウトプット文化」が定着し、新たなエンジニアの採用に繋げることも実現させました。これは、社員の学びのゴールをアウトプットに定め、エンジニアを大切にする同社の社風を広めることにQiita Organizationが少しでも貢献できたからではないかと感じました。これからは、ただアウトプットするだけではなく「プラスアルファ」を考えたブランディングが必要なのだと感じました。
取材/文:神田 富士晴
撮影:平原 克彦