「Trelloストーリー Trelloのこれまでとこれから」/ Increments Welcomes Trello レポート(詳細編)」
Qiita TeamとTrelloの連携に合わせて、2017/11/15に「Increments Welcomes Trello」としてイベントを開催しました。ここではそのイベントでのTrello共同創業者マイケル・プライアー氏による「Trelloのストーリー」の内容をご紹介します。
文/Work:Q編集部
5つのTo DoリストからTrelloは始まった
海野:皆さん、こんばんは。Increments CEO海野です。今日は僕自身もヘビーユーザーのTrelloを作ったマイケルとお話しできるということで、とても楽しみにしています。Trelloについて、これまでのストーリーなどを語ってもらいますので、楽しんでいきましょう。
Michael:こんばんは。ずっと来日したいと思っていまして、今回招待いただいたことはとてもうれしいです、ありがとうございます。Trelloに関しまして、実際に会社のスタート以降、どのように成長してきたのか、Trelloのストーリーについてお話をさせていただきます。
まずTrelloがどこから来たのか、ということからお話します。2001年、友人のジョエル・スポルスキーと私がニューヨークで創業しました。職種はソフトウエアの開発者です。2000年当時、銀行や広告の会社では、開発者としての仕事がありましたが、それ以外ではソフトウエアの開発者として仕事をするという機会は少なかったと記憶しています。会社をスタートした時、自社のプロダクトは持っていませんでした。
会社が誕生してからいろいろな学習、気付きがありました。現在は多くの方に知られているStack Overflowは、創業して10年ぐらいして成功したプロダクトです。それまでは失敗の連続でした。Stack Overflowが成功のきっかけにはなりましたが、その頃、私たちは会社でスタッフがどういうことをやっているのか、それをきちんと把握できないかと思っていたんです。
そこで私の友人のジョエルが新しい製品のアイデアを持ち出したんです。それは「例外なくみんなが必ずTo Doリストを作らなければいけない」というものでした。このリストは必ず5つあって、しかし5つ以上あってはいけないというものです。
5つの内容は、「最初の2つは今自分がやっている仕事に関すること」、「次の2つは次に自分がやりたいと思っている仕事に関すること」、「最後の1つは決してこれはしないということ」 で、構成されていました。チームとして仕事をしているので、一人一人がそのリストを作って、それをすべてWebページに載せたら全員が誰が何をしているのか分かる、とジョエルは考えたんです。
スタートアップを訪問すると、壁いっぱいにポストイットで自分たちのアイデアを貼っていたんですね。まさしくそれをやろうというのが、このリストでした。私たちは当時いろいろな開発者向けのツールを使っていたんですが、実はツールの多くが日本の「カンバン」からアイデアをもらっています。
9カ月、秘密裏にずっとこのリストを開発して、2011年、サンフランシスコで開かれたTechCrunchのコンペに私たちは参加します。ジョエルはTechCrunchで「私たちのこのプロダクトは、世界中で1億人の人たちが使うことになるんだ」と宣言していました。
残念ながらこのコンペで私たちは1位になることはできませんでした。2位だったんですが、これを発表して2日間で5万人の人たちが、Trelloにサインアップしてくれました。
以降もやりたいことは本当にたくさんあり、しかし十分なリソースがない、という状況の中で、Trelloをスピンアウトして独立した企業にしようということになったんです。
この頃、私たちは真剣にリモートワークについて考えるようになりました。優秀な人材はとても大事なんですが、創業当初から仕事をしてもらっていた優秀な開発者の配偶者がハワイで仕事をするということで、彼もハワイに行きたいと言ったんですね。
絶対に彼を失いたくないと思いまして、「分かった。ではハワイに行って仕事を続けてくれないか」と頼んだんです。これをきっかけにして、リモートで人材を採用するというやり方が成功しました。現在、私たちの社員、スタッフの65%は本社のあるニューヨーク以外で仕事をしています。
現在もTrelloをブラッシュアップしており、21の言語に対応していくということで、日本もその中に入っています。2017年に入り、Atlassianに参加するということになり、現在2500万のサインアップまで成長しています。
成功のカギは、エンパシー「共感」にある
それでは私たちの事業内容について、これからお話をします。弊社にとって一番の成功要因は、いかに優秀な人材を見つけることができるのかという点です。そういう意味では私たちは、リモートで優秀な人材をきちんと採用できているということが、重要な成功要因だと考えています。
キーワードとしてエンパシー「共感」というのが重要だと思います。同じ場所、同じ建物で仕事をしていれば、共感は生まれやすいでしょう。毎日、社員がオフィスに行って、お互いの顔を見ていろいろなことをする。当然そこから、人と人の関係が生まれてきます。
会社ならボディーランゲージを含めて、いろいろな深いコミュニケーションが可能です。一方、リモート環境で仕事をしてもら場合、注意しなければ、そういった関係を作ることはできません。
この話題に関するものとして、Googleの「プロジェクト・アリストテレス」というプロジェクトについて話をします。このプロジェクトの目的というのは、「なぜこのチームは成功して、他のチームは成功していないのか」それをきちんと調査しようというものでした。
Googleはたくさんのチームが存在しますが、成功しているチームにおいて、どうして彼らは成長しているのか、そこにはどのような特徴があるのか、それをGoogleは見つけようとしたんです。
結論として「チームが成功する要因というのは、決して個人が持っているIQではない。チーム全体のIQでもない」、「同じ場所でいろいろな体験をすることでもない」、「1人の人が強いリーダーシップを発揮してチームが成功しているのではない」という答えが得られました。
成功のカギは、エンパシー「共感」にあるということが結論付けられました。
私たちも、どのようにしたらその「共感」を作ることができるのか、人々が一緒になってやる気を持ってもらうことができるのかに注目しました。
そこで私たちは、毎週金曜日にリモートチームの方々に、金曜日にビデオ会議に参加してもらって、30分話をしようということになったんです。通常ですと、このような取り組みがなければ、開発者は営業と話をする機会はないと思います。でもこの取り組みを通して、開発者が営業と30分話ができる環境を作りました。
それからTrello Togetherという名前のもとに、1年に1回、全員が同じ場所に集まって、セッションを持つこともやっています。ほかにも仕事の話をしないチャットルームを設けています。仕事以外の話なら何でもいいんですね。例えば子育てだったり、料理だったり、仕事以外のことに関して、このチャットルームで会話を楽しもうということを決めました。
エンパシー「共感」をいかに作り上げるかということのためには、コミュニケーションが重要です。例えばメールだけまたはチャットだけのコミュニケーションで、必ずしも共感が生まれるわけではありません。そのためには、いくつも工夫しなければならないと考えています。
たくさんの人がいろいろな場所で仕事をしていますので、時差があるわけです。ニューヨークを中心として4時間オーバーラップしている時に、オンラインで仕事ができるようにしようということもルールの一つです。
また、例えば10人がビデオ会議に参加しているケースで、9人がニューヨークにいて、1人がリモートで参加しているとすると、ここで気を付けているのは、全員が一人一人例外なく、それぞれのパソコンを持ってオンラインでこのミーティングに参加するというルールもあります。
このやり方を導入する前は、壁に一つ大きなテレビがあって、リモートで参加している人の顔が映っていましたが、同じ部屋にいる人たち、リモートで参加する人たちも公平な立場で参加できないということで、このやり方に変えました。
ここで重要なのは、こうした環境で使うツールだと気が付きまして、ツール=ワークプレイスだと考えています。まさしくTrelloはそれを意識して作ったものです。
ここで皆さんに強調したいのは、こうしたツールはソフトウエアとしての機能面は重要ですが、ソフトウエアでありながら温かみがあるかないか、このソフトを使って人間と人間が本当につながっていけるかどうかが、特に重要だということです。コラボレーションツールというのは、ソーシャルな場所であると考えています。そういう意味では、例えば絵文字はとても重要なツールの一部なのです。
いかに共感を作り上げることができるかという話をさせてもらっていますが、共感という出発点から、私たちはあらゆるものを作っていかなければいけない、共感というファクターを前面に出していきたいと考えています。
Trelloでは、trello.com/teamsというサイトがあり、例えばセールスの方だったらこういうことができますよ、マーケティングの方だったらこういうことができますよ、というガイドを提供しています。仕事でも使えますが、個人も使っていただくことができます。
Trelloにはパワーアップという機能があります。このパワーアップを使っていろいろな機能を連携、統合することができます。数時間前ですが、本日Qiita Teamのパワーアップを発表させていただきました。
以上でお話を終わります。貴重なお時間をいただきました。この場をお借りして、もう一度感謝を申し上げます。
質問タイムの抜粋
マイケル氏の登壇の後、参加者からマイケル氏への質問タイムが設けられました。ここではその一部をまとめてご紹介します。
Q:想定外の使い方はあった?
Michael:YouTubeに投稿されたものがあります。お父さんがご家庭でタッチスクリーンでTrelloを使えるようにしていて、子供たちが使い方を説明している動画があるんですね。今日はこれをやらなければいけないというタスクをボードに出して、終わったらそれをどんどん解消していく使い方をしていて(※)、これは想定外でした。
※編集部注:「歯磨き」や「皿洗い」といったTo Doリストから、着手したらdoing、終わったらdone、最後にchecked by MOMとラベル化して工程になっています(笑)。
Q:いろいろな人がいろいろなことをやりたいという方向性をどのように統一してTrelloの改善に向けている?
Michael:Trello way、Trelloの本来のやり方、考え方を重視していかなければいけません。原則として言葉に書き出していくことが重要だと思っていまして、design.trello.comに私たちの原則、プリンシプルというものが説明されています。この原則は、例えば「アプリのレベルに落とすと、こういうことなんだよ」ということが分かるようになっています。
Q:Qiita TeamとTrelloの連携の使い方は?
海野:Qiita Teamは情報共有を簡単にするプロダクトです。基本的には開発チーム向けの利用を想定していて、エンジニア、デザイナー、プロダクトマネージャーといった方たちが、チームとして仕事を進めるために、メンバー間での意思疎通、知見の共有が重要になってきます。
そういった情報共有を簡単にしていくことで、毎日のように、何か発見や知見があればチームに共有、チームの組織としての学習が進んでいく。そうしたユースケースを想定してQiita Teamを提供しています。
今回のTrelloとの連携ですが、情報共有とタスク管理とをつなぐことでよりチームの生産性を上げられると考えています。タスクを進める中で他の人に共有すべき情報が出てきた場合にTrelloからQiita Teamの記事を簡単に投稿したり、逆にQiita Teamでの情報共有やディスカッションからタスクが出てきたらそれをTrelloのカードで管理するといったことを想定しています。チーム開発では情報共有とタスク管理はどちらも欠かせませんが、Trelloとの連携でそれらを支援できると考えています。
最後に
いかがでしたでしょうか。Trelloのできるまでや現状の話など、マイケル氏から直接、語られる内容は多くの気付きがありました。今後もこういった知見を広げるようなイベントを開催してきたいと思っていますので、その際にはまた皆さんとお会いできるのを楽しみにしています!
関連として、本イベントのダイジェストレポート、TechCrunchでのセッションも記事にしていますので、興味のある方はそちらもご覧ください!
Qiita TeamとTrelloの連携についてはこちらの記事をご覧ください。
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