LINE Fukuokaではじめるエンジニア生活をマネージャー3人に聞いてみた
博多駅から数分の場所にLINE Fukuokaのオフィスがある。同社のサービスを代表する各キャラクターの造形がディスプレイされたオフィスに一歩足を踏み入れると、飛行機に乗って来たのが嘘のように「TOKYO」を感じた。
また、社内ですれ違う人々の大半が外国籍であるのだから驚きだ。
2013年に九州の玄関口である福岡に誕生したLINE Fukuoka。エンジニア組織だけで80人超。会社全体では1000人を超える規模にまで成長を遂げている。
メガベンチャーの進出や新鋭のスタートアップ、ベンチャーキャピタルが次々と誕生している福岡。機運が高まっている土地を選び、LINE Fukuokaで働く意義と意味を同社でマネージャーを務める林康司さん、新田洋平さん、上野英治さんに聞いた。
取材中に「東京よりも福岡の方がいい」という言葉が飛び出した理由とは何か。グローバル展開をしている企業でエンジニアが働く魅力について。そして、今のLINE Fukuokaひいては福岡で働く最大の魅力とは何なのか。
LINE Fukuokaのエンジニア組織を束ねる3人はこう語る。
目次
・エンジニアの6割が外国籍
・プロフェッショナルが集うLINEグループで働くメリット
・福岡のリアル
・今後のLINE Fukuoka
プロフィール
エンジニアの6割が外国籍
——LINE FukuokaはLINEとは別の会社になります。実際、LINEグループ内で具体的にどのような動きを見せている組織なのでしょうか。
林康司(以下、林):エンジニアだけでなく、カスタマーサポートやQA、ゲーム関連のディレクターも所属している組織です。「エンジニアが何をしているのか?」という質問に答えるのであれば、LINEとほぼ同じことをしていると言ってしまって僕は問題ないと思います。
それぞれが担当しているプロジェクトや重要度は全く同じ。LINEのファミリーサービス(LINEバイトや占い)などを主に担当していますが、グローバルで進めているプロジェクトに関して参画しているケースも多いですね。
また、ビジネスサイドでは福岡市との包括連携協定に基づき、LINEの技術をつかったSmart Cityの実現を目指していていたりなど、福岡ならではのプロジェクトも動いています。
——LINE Fukuokaは設立から6年目となりますが、エンジニアの人数が100人規模に成長しています。また、中でも特徴的なのが、外国籍の方も多くご活躍されていると伺いました。
林:はい。約6割が外国籍です。
——約50人の方が外国籍なのですね。なぜ、ここまで外国籍の方から愛され、選ばれる組織になったのでしょう?
林:あはは(笑)。愛されているかは分かりませんけどね。理由としては東京よりも先駆的に外国籍のエンジニアを積極採用したという背景があります。入社当初は日本語がほぼ喋れない方もいますからね。台湾、中国、アメリカ、ドイツ、ブルガリア。様々な方がいますよ。
上野英治(以下、上野):確かに、一番大きな理由は英語のみでOK、日本語の語学力は不問だったことだと思いますね。
——お三方は開発のマネージャーを務められていますが、現状日本語が伝わらない方のマネジメントはどのように行っているのですか?
新田洋平(以下、新田):日本語学校と契約しているのでその辺りは問題ないですね。会議中に通訳の方に入ってもらって重要なことはしっかりと伝えていただいていますし。また、私たちにも英会話の先生が教えてくれるので、歩み寄りつつ成果のある開発を行っているというのが現状です。
プロフェッショナルが集うLINEグループで働くメリット
——それぞれが歩み寄りながらグローバルなチームで開発を行っているのですね。ちなみに、今LINEグループで働く魅力ってどんなところがあると思いますか?
上野:まず、働き方は大きいと思いますよ。エンジニアはフルフレックスでコアタイムもないので、子育てと両立しながら働くことができています。そういった点にも理解のある会社ですので、何かあった時は私が率先して子どもの面倒を見ています。
林:私は、エンジニアの人数が多いことが魅力だと思います。LINEグループ全体で約2300名のエンジニアがいますので。社内のコミュニケーションツールはグループ間でも共有されているので、グローバルで一体感があるイメージがあります。
福岡に居ながら、東京や世界で名を馳せる有名なエンジニアと一緒に仕事できることは嬉しいです。随時ノウハウやナレッジについても情報交換することができますし。
私自身、以前は6人の開発チームで仕事をしていたので、こういった人数、こういった優秀なエンジニアの方々と仕事ができて光栄に感じています。
——LINEグループと言えば、有名なエンジニアの方が多いですが、実際に働いていても刺激を受けることが多いですか?
林:はい。Twitterなどでインフルエンサーになっているようなエンジニアはやっぱり凄いですよね。ただ、結局は会社なので良いところもあれば、カオスなところもありますよ(笑)。
そういった側面もありつつ、LINEグループは良いところが多い気がしています。だって名を馳せているエンジニアのソースコードを読めるんですよ?「この人はこんなコードを書くんだな?」って。とても刺激的な環境だと思います。
新田:確かに人数が多いことのメリットは大きいですね。少人数で開発をしていると、オールマイティーなスキルが求められるじゃないですか。LINEグループはエンジニアのポジションも細分化されていて、自分の得意分野で価値を発揮することができているんです。
私はマネージャーになる以前、バックエンドエンジニアだったのですが、サーバの足支えになる部分に関する知識が曖昧なところもあったんです。そういった自分に足りない点を各領域のプロフェッショナルがフォローしてくれるので、とてもいい経験ができました。うん。エンジニアとしての経験値が非常に大きいと思いますよ。一緒に仕事するだけでも本当に貴重な時間になった気がしますね。
——なるほど。
林:魅力という意味だとやっぱり自社サービスはいいですね。愛着湧きますし。LINEのサービスは規模が大きいので、数十万、数百万、数千万のリクエストを捌ける前提で作るのは緊張感があって好きです。
新田:確かに緊張感ありますよね。サービスの成長もすごく早いですし。LINEバイトがリリースされたのは2015年の2月でしたが、約2年で1000万ユーザー突破したりとか。私もそういったステージで仕事がしたいと思っていたので、いい経験ができていると思います。
——LINEのプラットフォームでリリースされるということは、注目度が高く、成長速度が非常に速いと。
上野:そうですね。大きな規模のユーザーやリクエストが発生することをベースに開発がはじまるので、設計が肝であり醍醐味になっていきます。
小規模のサービスの場合は極端な話、設計に凝らなくてもいけちゃったりするんですよ。ただ、LINEの場合はシビアにパフォーマンスを意識しなくてはなりません。
これは極端な話ですが、LINEのファミリーサービスは大きく成長する確率が非常に高い。なので、事前の設計力が大切なんです。
福岡のリアル
——ありがとうございます。では、今エンジニアがLINE Fukuokaで働く魅力はどんなところがあると思いますか?
林:LINEって自分が率先して動けるプロジェクトが多いんですよ。エンジニアの規模は全体で2300人クラスですけど、ベンチャーとしての動きもあるというか。
一般的に普及しているイメージよりもベストプラクティスを自分で生み出していける職場だと思っています。ただアサインされた仕事だけをやっていくなんてことはほぼないので。
上野:確かに。規模は大きいですけど中身はベンチャーですし、中々カオスですからね。エンジニアがエンジニアリングだけやっていればいいという感じでもないですね。
グレーゾーンを見つけて自分で解決していける。それがとても推奨され、評価される文化は素晴らしいと感じています。ここは働いていて楽しいポイントだと思いますよ。
新田:林さんが言ったベストプラクティスが整備されていない部分もあるので、そこを自分で作っていける。自分が主役になっていけることが面白いですね。
私ってLINE Fukuoka9人目のエンジニアだったんです。やっと1チーム作れるな、みたいな。当時から自分で決めて、自分で進めるということは変わっていません。与えられた仕事を完遂するというよりも、こぼれ落ちてしまった仕事を見つけて、自分が思う一番かっこいいやり方で進められるというか。ここは今でも働いていて楽しいポイントだと思っています。
——なるほど。では、LINE Fukuokaの環境面はいかがですか?
新田:他の会社さんのことまでは分からないんですけど、福岡でグローバルな仕事がしたい、東京と同じ様な環境で働きたいと考えた場合、LINE Fukuokaはとてもマッチする環境なんですよ。
つい、先日も上野さんと一緒に台湾出張に行ったりしましたし。外資の会社に勤めれば話は違うと思うのですが、実際ここまでグローバルな環境で開発ができる職場は福岡では多くないと思いますよ。
——オフィスを構えている博多駅の周辺も整備されて非常にキレイな環境ですしね。
新田:私、東京に住んでいた時は東京23区に住んでいたんですけど、今の方が都会って感じしますからね(笑)。利便性も今のほうが全然良いですし。
——ちなみに今、東京から声が掛かった場合、どちらの方が環境としていいですか?
新田:福岡がいいですね(笑)。やっぱり子育てしやすいですから。会社が徒歩圏内だし、学校にもすぐ行けるし。環境的に福岡の方が今の私には合ってるかなって。何かあれば東京にも行っていますし。
LINEのグループは全拠点が同じ待遇なので、可処分時間と可処分所得が一番多いのは福岡なんですよ。自由な時間ができると好きなことができるので、その点はエンジニアにとっていい環境だと思いますね。
腰を据えて何か新しいことをしたいと思っても仕事が忙しすぎて、手を付けられていない方っているじゃないですか。東京に住んでいたら通勤大変だったりもしますし。博多駅の場合って駅まで徒歩5分圏内に住むことも現実的なんですよね。
何かやりたいことがあったり、今を変化させたい方にとって福岡はかなりいい土地だと思います。
——福岡は空港も近いので、東京との利便性もいいですよね。ちなみにLINEのカンファレンスが開催される時は行ったりされているんですか?
林:グループ会社の枠があるので、参加者を募っています。特に社歴の浅い方に行ってもらっていますね。
新田:LINEのカンファレンス以外でも、東京で何かのカンファレンスが開催される場合は参加していますよ。最近でもDroidKaigiに参加している者がいたり。そういった意味だと、東京に住んでいる方とほぼ変わらない環境で働いているんじゃないかな。
上野:そうだ。LINEの社内でミートアップなどを企画しているチームがありまして。そこがかなり力を入れて活動しているんです。以前から福岡でもDeveloper Meetupを開催していたり。自社の勉強会でも外部の有名なエンジニアの方を招いたりしているので、外とのコミュニティを手伝ってくれる手厚さがあります。
——福岡で働くことを考えると、界隈の盛り上がりも気になることだと思います。皆様から見て、ここ数年で変化はありましたか?
上野:盛り上がってきていると思いますよ。ここ数年で、メガベンチャーが進出してきたこともありますからね。印象的には「福岡でいいんだ」と思っている方が増えている気がします。
今までって、やっぱり東京にいないと大きなプロダクトに携わることができないというイメージがあったと思うんです。でも今は、福岡で全然問題ないですよね?
優秀なエンジニアの方たちが福岡に来たことで、そこに興味を持った方が集まってくる。いい循環が生まれてきていると思いますよ。コミュニティの立ち上げも盛んですし。私が最初に福岡でエンジニアをはじめた10数年前とは全然状況が違いますね。
林:スタートアップも増えましたしね。福岡で起業するという声も聞くようになりましたし。絶対数が少ないのでブームと呼べるほどではないですが、かなり変化は起こっています。
新田:そうそう。今、福岡のエンジニアコミュニティが盛り上がってきていて。
私はこのタイミングで身を置くことをおススメしたいんです。だって、自分も中の人の一人になれますからね。
東京で勉強会に参加しても、参加者の一人で終わっちゃうケースってあるじゃないですか。福岡の場合だと自分が能動的に動けば得られることも多い。人数が少ない分、運営側に回る機会も多いですし。ポジティブに捉えることができる方であれば、自由度が高い分色々と動けると思いますね。
——福岡のエンジニアコミュニティは今、まさに盛り上がっていると。
林:そうですね。福岡市が力を入れていますから。エンジニアフレンドリーシティ福岡のようなネットワークづくりやコミュニケーションをさらに活性化させる動きもありますし。福岡市全体でエンジニアが過ごしやすい環境を作ろうとしているので、とてもウェルカムな雰囲気だと思いますよ。
うーん…。私はもう一歩発展すると、もっと福岡のエンジニア界隈が賑わっていくと思うんですけどね。
——もう一歩とはどんなことでしょう?
林:今は東京と比較するとエンジニアの流動性が低いんですよ。東京だと2〜3年で転職しているケースって一般的じゃないですか。
ただ、福岡の場合だと5〜10年働いている人も全然珍しくない。福岡がもっと盛り上がってくると、ここにも変化の兆しがあると思うんです。
今後のLINE Fukuoka
——ありがとうございます。今後、LINE Fukuokaとしてどのようなことに挑戦してきたいですか?
林:エンジニア組織を拡大して、プロジェクトの量や携わる人数を増やしたいですね。すぐにでも150人規模くらいには成長させたいくらい。組織規模が大きくなることで、技術的に特化したプロジェクトに参画するメンバーも出るでしょうし、サービス寄りの開発に従事する者も出るでしょうし。
また、先程もお話した通り、私は流動性が大切だと思うんです。キャリアを考えたときに他のフィールドで挑戦する選択肢もありますし、他の会社からLINE Fukuokaに加わるのも歓迎しますし。そういった流動性が生まれることが僕の理想です。
——LINE Fukuokaを中心に、エンジニアにとって健康的なマーケットを作っていくと。
林:そうですね。だって、一念発起して福岡に来たのに、次の会社が見つからないなんてことになったら大変じゃないですか。ここが変ればもっと、UIターンの方たちが増えると思うんです。
——なるほど。ありがとうございます。上野さんはいかがでしょう?
上野:大体言われちゃいましたね(笑)。私は新しい開発をもっとやっていきたいです。FintechやAIの領域にも着手したいですし、そういった環境を作っていきたいです。
やっていて楽しい開発をやり続けたい。コードで勝負する人はもちろんですし、まとめるマネージャーもそう。グロースもできれば、ゼロイチもできる環境なので、そういった醍醐味を感じていただけるようなチームを作っていきたいです。自分たちで時代にインパクトを与えるサービスを福岡発で作れたら楽しいと思っています。
新田:今のチームって若いメンバーがプロジェクトをリードしているケースも多いので、今まで通りチャレンジできる環境を作っていきたいです。
ソフトウェアエンジニアって以前と比較すると細分化が進んでいるじゃないですか。このトレンドに乗りつつ、個々のキャリアに向き合えるような組織を作っていきたいです。
——ありがとうございました!
編集後記
取材をしていて度々違和感を覚えることがあった。福岡空港に降り立ち、博多駅を出てオフィスに入ったものの、私の知っている福岡の雰囲気が全くしなかったためだ。
多国籍なメンバーがそれぞれの価値を発揮しながら高め合っている。取材中にテラスを覗いているとそんな印象を受けた。
福岡は大きく変わった。そして、働き方も大きく変わっている。今の環境を変える、移住するという発想すらナンセンスなのかもしれない。
今の自分が本質的に求めているメリットを享受できる場所を探す。ここに土地はもう関係ないのだ。
LINE Fukuokaはそんなことを気づかせてくれる会社になると思う。
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