マイクロサービス化へ舵を切る「doda」、歴史ある巨大プロダクトを「攻めの構成」へ塗り替える挑戦に迫る

生成AIの普及で実装スピードが上がる一方で、歴史が長く影響範囲が広いサービスを担当する現場では、レガシーの刷新やDevOps体制の構築、品質維持の仕組み化など、持続的な開発に向けた基盤の作り直しが目下の課題となっています。特に大規模プロダクトほど、技術だけではなく合意形成や運用設計まで含めた総合力が問われます。

今回お話を伺ったのは、パーソルキャリア株式会社(以下、パーソルキャリア)が運営する、1,000万人以上の登録会員数を誇る中途採用のための転職サイト「doda(デューダ)」にて、サイト領域のグロース開発とリビルド化、品質保証という3つのグループのマネジメントに従事している岡本氏です。

パーソルグループは、「中期経営計画2026」において、経営の方向性を「テクノロジードリブンな人材サービス企業」への進化を明言しています。その言葉は現場でどんな手触り感を持っているのでしょうか。

技術的な難しさから将来的な組織作りに至るまで、ざっくばらんにお話しいただきました。

プロフィール

岡本 直大(おかもと なおひろ)
パーソルキャリア株式会社
プロダクト&マーケティング事業本部 カスタマープロダクト本部 プロダクト開発統括部 dodaグロース開発部 dodaサイト開発第2グループ / dodaリビルド推進グループ/dodaアジャイルCoEグループ/ マネジャー
新卒で印刷会社に入社し、基幹システム開発やコンサルタントを経て、ネット印刷サービスのプロダクト開発、マネジメント、マーケティング、バックオフィス業務に従事。その後、2021年にパーソルキャリアに中途入社し、総合転職プラットフォーム「doda」サイト開発チームのスクラムマスターとして参画。現在は、dodaサイト開発のうち、転職エージェント系の開発・マイページのリビルドなどを担当する組織のマネジャーに従事している。

大企業での意思決定の難しさやもどかしさも含めて、規模が大きなプロダクト開発を経験してみたかった

―― 最初に、現職での業務内容と、これまでのご経歴を教えてください。

岡本:今は「doda」の中でも、特に個人の転職希望者向けのサイト開発や機能開発を担当する部署で、マネジャーをしています。新機能や追加機能の開発、いわゆるエンハンスやグロース領域の開発マネジメントが中心ですね。

新卒で印刷会社に入り、基幹システムや印刷に関わる開発を担当しました。その後、社内でWebサービス型の印刷ECを作るプロジェクトに入る機会があり、そのための子会社へ移籍してサービス開発に従事しました。当時は、ECシステムや、それに紐づく基幹システムを作るだけでなく、経理やバックオフィス、カスタマーセンターなど幅広く担当していました。結果的に本体と子会社で18年ほど印刷業界にいて、2021年にパーソルキャリアへ転職しました。

―― 開発から経理、カスタマーセンターまで、幅広くされていたのですね。

岡本:周囲を見渡せる規模の会社だったので、フルスタック+αという感じで、サービス開発に向けてなんでもやりました。開発についても、Eコマースなのでフロントエンドやバックエンドを含めて担当しました。印刷に関わるビジネスだと、お客さまからお預かりする原稿のデータ量が重くなりがちなので、大容量アップロードや重いデータをいかにスムーズに扱うか、といった技術的な難所も多かったですね。

―― 現在とはたらく環境がだいぶ違う印象なのですが、転職しようと思った理由は何だったのでしょう?

岡本:携わったプロダクトや組織も安定してきたこともあり、やり切った感覚がありました。ECのリプレイスや開発もできましたし、バックオフィス業務に関してもかなり触れました。「規模の大きい会社でのプロダクト作りに携わってみたい」と思ったのが、転職のきっかけです。

―― どのような軸で探されたのですか?

岡本:「規模がある程度大きいプロダクトに携わりたい」という気持ちが一番強くて、業種はあまり絞らずに探していました。ただ、これまで事業会社でやってきて相性が良いと感じていたので、引き続き事業会社が良いとは思っていました。

―― なぜ「規模の大きいプロダクト」にこだわったのでしょうか?

岡本:0→1の立ち上げは、ある程度やり切った感覚がありました。今度はもっと大きな企業の中で、意思決定の難しさや、もどかしさも含めて体験してみたかったというのが正直なところです。

―― 他社も受けられた中で、パーソルキャリアに決めた理由を教えてください。

岡本:率直に、面接した人と一緒にはたらきたいと思えたことが大きいです。開発のゼネラルマネジャーの方だったのですが、大企業っぽくない雰囲気があり、現場のことも分かっていて、ビジネスのことも考えている。そのバランスが「一緒にやってみたい」と思えたポイントでした。あと、人当たりも良かったです。

リビルド・開発・品質保証、3つのグループをマネジメント

―― 最初はどんなことからはじめましたか?

岡本:「doda」の中でも集客を扱う機能開発チームへの配属となり、開発プロセスの理解やOJTをしながら進め方を掴んでいきました。個人の属性や志向性に合わせて相性の良い企業や求人をマッチングするという、求人プラットフォームのコアとなる部分の一つです。検索やスカウトだけでなく、画面上でレコメンドする仕組みなどいくつかバリエーションがあるので、その機能群を開発するチームでした。

そこから半年くらい経て複数チームを見る機会があり、リーダー的に数チームを見ながら開発を推進し、その後、サブマネジャーというプレマネジメント職を経て、2023年にdodaサイト開発グループのマネジャーになりました。その後、dodaリビルド推進グループと品質保証グループのマネジャーにも就任し、今はこの3つのグループを見ています。

―― 3つの組織を見ているんですか! 1人で複数グループを見るのは、パーソルキャリアでは一般的なのでしょうか?

岡本:条件が揃えば、複数組織をマネジメントする場合もあります。ちなみにサイト領域は、マネジャー2人体制で見ています。

―― dodaリビルド推進グループ・dodaサイト開発グループ・品質保証グループ、それぞれどのような組織なのかを教えてください。

岡本:dodaリビルド推進グループは、歴史ある「doda」サイトの技術的負債を少しずつ整理して綺麗にするチームです。dodaサイト開発グループは、機能開発のエンハンスやグロース領域を司るチームです。そして3つ目の品質保証グループは、いわゆるQA組織です。といっても、ソフトウェアテストなど実際のQA業務を担当しているのではなく、品質を高めるためのガバナンスやルール作りをしたり、それをチーム横断でレクチャーしたりするような「旗振り役」を担っています。

―― 開発手法はアジャイルですか?

岡本:はい、アジャイルです。長くスクラム体制で開発チームが品質責任を決めながら開発を進めていましたが、リリース失敗や品質課題が出た時期があり、どう解決するかを考えた結果、QA体制が必要だとなりました。最初は外部の方を招聘したこともありますが、フェーズを切って内製へ移していきました。QAとは名乗っていますが、直接品質保証を行うのではなく、内製メンバーに対してQA的な文化を根付かせて、開発者自身で品質を良くしていくための支援組織になります。

―― 全チームに品質文化を浸透させるのは難しい印象があります。実際進めてみて、いかがですか?

岡本:現在進行形ではありますが、試行錯誤しながら仕組み作りを進めています。特に最初は試行錯誤で、「本当に効果あるのか」「自分たちは自分たちのやり方で大丈夫」といった反応もある中で進めていくのに、苦労しました。ただ、チームごとに伴走してサポートすることで、少しずつ必要性への理解が深まっていった印象です。今も引き続き、リリースのルール整備やCI/CDへの組み込みなど、品質のバラつきを抑え、再現性を上げるための仕組み作りを進めています。

求人メディアとエージェントサービスが同一画面で使える強みと、技術的な難しさ

―― 技術的に苦労されたエピソードを教えてください。

岡本:はい。まず、「doda」サイトの特徴からお話ししますと求人メディアとエージェントサービスを同時に使える点が最大の魅力だと感じています。「doda」サイトでは企業さまが出稿する求人広告と、エージェントが紹介する求人が同じサイト体験で提供されているんです。このようなサイトは珍しく、あまりないはずです。これは元々、別の経緯から生まれたサービスが紆余曲折を経て、結果的に一つの画面で表現されるようになったためです。複雑性が高いがゆえに技術的難度が一気に上がっています。

―― たしかに、両サービスを一つの画面で扱える求人サイトって、他にない気がします! そして、それらが別々で管理されているんですね

岡本:基幹システムが別々だったり、事業部や営業組織も違ったりします。それでもユーザー体験としては「ログイン画面は1つ」にしたいと考えて、応募方法や選考フローは全く違いますが、履歴書・職務経歴書のアップロードなどは共通体験にするという思想で構築されているのが、今の「doda」です。

―― 少し話を聞いただけでも、大変そうですね。

岡本:そうですね。「doda」には昔からある巨大なデータベースがあり、その影響を確認しながら、少しずつ切り離してキレイにしていくのも技術的に難しいですね。

―― テーブル規模はどれくらいなのでしょう?

岡本:非常に多くのテーブルがあります。長く継ぎ足しで作られたことで命名規則の一貫性も薄く、何を管理しているのか類推できないことも多いため、初見だと読み解きの難易度はそれなりに高いです。

―― どのようにリニューアル作業を進めているのでしょうか?

岡本:基本的には画面単位で切り出してリプレイスをしていきます。特定の画面を見て、そこで使っているテーブル・カラムを洗い出し、問題がないかを影響範囲を一つずつ確認しながら新しいシステムへ移していく。dodaリビルド推進グループとして、継続して行っています。

―― 本番への影響が許されない中で、なかなか神経を使う作業ですね…

岡本:おっしゃる通り、利用者が非常に多いので、絶対にサービスを止められません。少しずつ部分的にリリースし、塩梅を見ながら進めています。また、バックエンドとフロントエンドが一体になっている資材を、分離していくという作業も並行して進めています。疎結合化していくための前提作りですね。

「外向き・自分ゴト化・成長マインド」という会社のバリューが体現されている組織

―― 今後、プロダクトや組織としての展望を教えてください。

岡本:まだまだ技術的負債が多いので、できるだけ疎結合になるようにマイクロサービス化したり、データベース分離を進めたりする必要があります。大変な分、やりがいもありますね。

合わせて保守体制も整えたいです。自分たちのサービスは自分たちで保守したいので、DevOps的な形に近づけていきたいです。その実現をめざして、日々取り組んでいます。

―― 現状は、保守チームは別で存在するんですね。

岡本:今はグループ会社と分担しながら保守業務を担当しています。ただ、最近では内製メンバーがログ監視も含めて見ているため、即時に障害に気づける状態にはなってきています。「どこまで保守がやるか」「ここは内製が責任を持つ」という線引きをここ数年で明確にしていきましたね。このように、自社で一気通貫で対応できる点も強みだと思います。

―― 技術的負債の解消に向けたスケジュール感としてはいかがでしょうか?

岡本:前提として、2030年までに綺麗な状態にするという計画があります。ですが基幹システムと密接に連携されている以上、一筋縄ではいかないとも思っています。サイトだけ良くしても効果が薄いので、複数の仕組みをまたいで進める難しさがあると感じています。

―― 「doda」の開発文化についても教えてください。

岡本:非常に連携性が高いと感じています。障害が起きると必ず人が集まってきて、内製メンバーが自分たちで対応する文化があります。自分ゴト化が進んでいる組織だと思いますね。パーソルキャリアは、「外向き・自分ゴト化・成長マインド」をバリューとして定めているのですが、それが体現されている感覚があり、例えばCI/CDの改善や、品質維持の仕組み化など、現場発で進んだ取り組みも多いと感じています。

―― 転職前に期待していたことと、入社後、実際にはたらいてみて感じたギャップはありますか?

岡本:想像していた以上に、コンセンサスをきちんと取らないと進まないと知ることができたのは大きかったですね。前職では人数も意思決定者も少なかったので、何かとスピーディに進んだのですが、今は事業側とも合意を取り、全体的な影響も考える必要があるので、合意形成が大変だなと感じています。

経験者や有識者に確認をしながら、「誰にコンセンサスを取るべきか」を理解して、進めることが、最初の関門でしたね。

―― それでも、大企業ならではの良さがあると。

岡本:そうですね。開発に十分な投資を行いながら、大きな組織を巻き込みプロダクト開発に取り組めることは大きな魅力です。安定した投資基盤があるからこそ、技術的な挑戦が続けられます。また、今はマネジメントの立場として、未来に向けた組織作りに関われるのも醍醐味ですね。一朝一夕でプロダクトは変えられないので、数年後まで成長し続けるためにどういう順番で何を変えていくのか。そこを設計するのが面白いところです。

―― 課題の一つであるスピードアップに向けた取り組みはいかがでしょう?

岡本:直近だとAI活用ですね。内製メンバーが有志でAI活用のワーキンググループを作って、プロダクトにどう活用できるかを色々と創意工夫しながら検証しています。たとえば直近ですと、Claudeの活用が増えていますね。あとは、AI活用を連携することでのリリースまでのリードタイム短縮も意識しています。具体的には、エンジニアと企画メンバーがスクラムの中で一緒に会話する時間を取る、朝会を一緒にやる、などですね。

「自分たちのプロダクトを自慢したい人」と一緒にはたらきたい

―― エンジニアのためになる仕組みなどがあれば、教えてください。

岡本:勉強会は頻繁にやっていますね。AI関連は週1くらいでやっていますし、Javaやデータベースなど、初学者が中級へ上がるための勉強会も月1で開催しています。あとは、書籍購入や資格取得の補助もあって、ありがたいと思っています。

―― 評価制度についても教えてください

岡本:エンジニアに対応した評価制度がかなり注力して整備されており、総合職とはまた違った仕組みで運用されています。例えばエンジニア職種は賞与がなく、年俸の月割りで給与が支給されます。2020年4月からスタートした「PE(プロダクトエンジニア)制度」と呼ばれている制度なのですが、賞与に左右されず、成果と能力で定量的に評価される仕組みになっているので、私自身は納得感が非常に高いと感じています。

―― 組織として、今ジョインする魅力は何でしょう?

岡本:ここまでお伝えしている通り、内製組織としてはまだまだ若いので、変革できる余地が大きいのが魅力だと思います。古い技術を新しいものに置き換えるチャレンジもありますし、理想の状態に向けてプロダクトを磨いていくこともできます。もちろん、歴史あるサービスであるが故に承認フローは存在しますが、自分たちの意思を反映できる感覚があるのは大きいです。

―― 現状のチームのメンバー構成も教えてください。

岡本:現状は中途が多いです。6〜7割が中途で、過去の経験としてはSIer出身者が多い印象です。事業会社での経験を積みたくて入社されるケースが多いですね。

―― 今後、どのような方と一緒にはたらきたいですか

岡本:「外向き・自分ゴト化・成長マインド」に共感できる人は、この会社だと伸びやすいと思います。自分たちのプロダクトを作り上げたい、そして自慢したいと思える人だとより良いですね。技術面では、もちろん難題を解決できることも大事ですが、自分一人で解けなくても、周囲を巻き込んで解決まで持っていく力の方が、より大切だと思います。自分の意思で物事を変えたり見つけ出したりしてきた経験がある方は、うまくいくイメージがあります。

―― 岡本さんご自身のキャリア展望はいかがでしょう?

岡本:AIの加速度的な進化もあって不透明さは増していると思いますが、組織をもう少し大きく変えていきたいと考えています。世の中に価値あるプロダクトを送り出し続けて、自慢できる組織を作りたい気持ちが強いですね。

―― ありがとうございます。それでは最後に、Qiita読者の皆さまへメッセージをお願いします。

岡本:不透明で不確実性の高い時代の中でも、自分たちのプロダクトを良くして世の中に届けていきたい気持ちがある方と一緒にはたらきたいです。そういう方と、「doda」をもっと自慢できるプロダクトにしていけたらと思っています。

編集後記

今回、一番興味深いと感じたのは、求人メディアとエージェントサービスという管理主体やDBが異なるオペレーションフローを、同一画面で破綻なく成立させている点でした。立ち上がった経緯が異なる2つのサービスを、ログイン体験や書類アップロード等のオペレーションを共通化しつつ、止められないサービスとして運用し続ける。これは開発だけでなく、運用設計と合意形成の積み重ねがないと絶対に回らないだろうなと感じた次第です。泥臭い作業も多いが故に、非常にやりがいのある環境だと感じました。

取材/文:長岡 武司
撮影:平舘 平
提供:パーソルキャリア株式会社

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