未経験からインテリジェンス業界へ。日立のディフェンスシステム事業部のSEはどのような仕事をしているのか
昨今のデジタル技術の急速な発達に伴って、ますます重要なトピックになってきている国家の安全保障に関わるインテリジェンス。
そのような領域で現在システムエンジニアとして活躍しているのが、株式会社 日立製作所のディフェンスシステム事業部に所属する月岡 貴聡さんです。月岡さんは、業界未経験ながらインテリジェンス事業に関わるシステム開発プロジェクトを担当することになり、現在は官公庁の安全保障などに関わる業務に携わっているとのこと。
具体的にどのような業務内容で、どのような経緯や思いから現在のキャリアに至ったのか。教えていただける範囲内で、じっくりとお話を伺いました。
目次
プロフィール
ディフェンスシステム事業部 情報システム本部 インテリジェンスシステム部
国家の安全保障などに関わる迅速な判断や意思決定に必要な情報を提供する業務
――まずは月岡さんが所属されている「ディフェンスシステム事業部」がどういうことをされているのかについて教えてください。
月岡:主に防衛・航空宇宙・セキュリティ分野を支える技術を核にして、日立グループがこれまで培ってきた技術を集結させて、安全・安心な社会に向けたシステム開発などをしています。クライアントは官公庁で、サイバー空間などを含めた社会インフラ全体に安全保障の範囲を広げて、課題に対応する仕組みを構築しています。
ディフェンスシステム事業部の中は複数の事業分野に分かれていまして、私はその中の「インテリジェンス情報ソリューション」に携わっています。
――全体的にソフトウェアの知識に加えて、ネットワークやハードウェアの知識も必要になりそうですね。
月岡:もちろん事業によって求められるスキルや知識は変わってきますが、おっしゃる通り、様々なハードの設計に関する知見が求められることもあります。例えばメカトロニクスソリューションでは、車両や橋梁などのメカトロニクス技術や、高強度アルミや高張力鋼といった特殊材料の加工技術など、まさにハードウェアの加工の部分からご支援をしていますね。
ただ、私が携わっているインテリジェンス業務については、主にソフトウェアの知見が必要になるところになります。
――インテリジェンス業務についても、どのような取り組みをされているのか教えてください。
月岡:国家の安全保障などに関わる判断や意思決定を迅速にするために、お客さまはインターネット上の公開情報やその他、衛星画像、通信情報といった様々なソースを組み合わせて、周辺国などに関する情報を収集・分析する必要があります。
情報収集の仕方については様々なアプローチがあるのですが、いずれにおいても昨今ではシステムを活用した高度なオペレーションを実施するので、それを支援するのためのシステム開発を担っているのが私たちのチームというわけです。
インテリジェンスとはいえ、求められる技術スタックは一般的なシステム開発と一緒
――様々なロールの方がいらっしゃるとは思うのですが、月岡さんのチームにはどのような役割のメンバーが在籍しているのでしょうか?
月岡:大きく分けると、製品開発を進める「設計開発者」と、市場や国内外の技術動向、お客さまのニーズなどを調査・分析評価して新規事業の戦略を企画立案・提案する「システムエンジニア」がいます。
とはいえ、明確に役割が区切られているかというと必ずしもそうではなく、私の場合は企画の提案をすることもあれば、実際の開発プロジェクトをマネジメント要員として管理することもあります。
――インテリジェンスシステムの開発に必要な技術スタックがなかなかイメージできないのですが、どのような要件が求められるのでしょうか?
月岡:ベースとしては、一般的なシステム開発と一緒です。WebアプリケーションやIA(Intel architecture server)サーバ、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)、RDBMS(Relational DataBase Management System)などのC/S(Client/Server system)3階層システムに使われる製品と、自社開発アプリケーション、受託開発アプリケーションを組み合わせたソリューション開発に従事することになります。
技術スタックよりも、インテリジェンス業務に必要な特有のドメイン知識や、情報の扱い方の方が大事だと思います。
――なるほど。必要な「能力/マインド」についてはいかがでしょうか?
月岡:やはり一番必要なのは、問題に対してきちんと考え、より良いものが何かを考え抜くことかなと思います。
――ディフェンスシステム事業部のエンジニアとして、仕事の楽しさややりがい、難しさを感じる瞬間なども教えてください。
月岡:個別の事例はお伝えできないのですが、こちらからのご提案に対して評価していただき、無事にプロジェクトとして採用されると、やはり嬉しいなと感じます。
例えばあるプロジェクトでPoC(Proof of Concept)を行ったのですが、その際に「設計として何が言えるのか、どういった考察ができるのか」という部分について、自分自身の考えを出した上でチームでも十分に会話し、推敲を重ねて提示したことで、しっかりとお客さまにご納得いただき採用されました。転職して間もない案件だったのですが、先ほどお伝えした「考え抜く」の1つの成功体験になっていると感じます。
逆に、お客さまの求めることに対して100%回答ができないことが多い中、どれだけ納得してもらえるような提案ができるかが難しいなと感じます。だからこそ、システムエンジニアとして求められているご要望にできるだけ応えられるようにしたいと日々奮闘しています。
いずれにしても、一つひとつきちんと品質を担保しながら進めていっており、お客さまに確かなものを提供していくという点が、非常に日立らしいなと感じながら仕事をしています。
――扱うシステムに対しては、クライアントから要件が降りてくることが多いのか、それともこちらから提案していくことが多いのか、どちらでしょうか?
月岡:これもケースバイケースですが、私の場合はこちらからご提案することが多いですね。特に現在は、サービスインした後の保守フェーズを担当していることもあって、今後のシステム更改なども含めて対応しているところです。
――開発手法は、基本的にはウォーターフォールですか?
月岡:そこも一般的な傾向と一緒だと思います。大規模プロジェクトになるとウォーターフォールでしっかりと組んで開発を進めていきますが、スピードが必要なケースではアジャイルで進めることもあります。
マネジメントに特化したキャリアを築くべく日立に転職
――月岡さんのキャリアについても教えてください。日立は3社目で、最初の会社からエンジニアとして活躍されていたと伺いました。大学の頃から情報関係の学部に通われていたのでしょうか?
月岡:いえ、全然そんなことはありません。大学は生物系の学部にいて、システムに関わるようなものといえば、バイオインフォマティクスの授業くらいでした。
――そうなんですね! エンジニアになろうと思った理由はありますか?
月岡:就職活動でも当初はエンジニアキャリアを意識することなく幅広い視点で会社を見ていたのですが、理系学部だという理由で多くの会社から「システム部分をやってみないか?」とお声がけいただきまして、その時に改めて、ITシステムって社会インフラとしてあるんだなと感じました。
今後自分が社会に出ていく中で、せっかくならば多くの人の助けになるようなことをしたいと考えて、広くシステム開発に携わることができそうなSIerに入社しました。そこでおよそ6年間、主に官公庁向けのシステム開発案件にアサインされていました。
――6年を経て前職にご転職されていますが、転職先はどのような軸で探していったのでしょうか?
月岡:当時、キャリアの大きな方向性としてマネジメントに特化すべきか技術者として成長していきたいかが、まだ定まっていないタイミングでした。ですから両方の側面を経験できるようなポジションを探して、結果として流通小売系の社内SEとしてDXプロジェクトに従事することにしました。
しかし、業務負荷が高まり、ワークライフバランスが取りにくいケースが多々発生したこともあって、昨年の秋ごろから転職活動を始めることにしました。
最初の転職時にはマネジメントも技術も両方経験できるところがテーマだったのですが、これまでの就業経験を経て成果の再現性があるポイントを今一度振り返ってみると、自分はマネジメントの方で成果を出しやすいことがわかってきました。
ですから今回の転職では、マネジメントスキルという長所を活かせるところを軸に探していきました。そんな中で出会ったのが日立でした。
――日立に決めた理由は何だったのでしょう?
月岡:最終面接の時に「チームをマネジメントするときに君はどう対応する?」という質問をいただき、それに回答した際に面接官の方から「それを聞いた上で、月岡さんが日立でどういう動き方をするのがベストなのか考える」と言われました。それを聞いて、個人のスタンスをしっかりと重視した上で業務に当たらせてもらえる会社だと感じ、日立にしようと決めました。
――実際、働いてみてのギャップはいかがですか?
月岡:悪い意味でのギャップは今のところないですね。ストレスなく、快適に働けています。一点、良い意味でのギャップと言いますか、「仕事の性質上、リモートワークは一切できない」と思っていたのですが、実際に配属されたチームに関してはできるということで、働き方の選択肢も当初の想定よりも広がったと感じています。
日立には、良い意味で「真面目」な人が多い
――快適に働けているとのことで、働く場所としての日立の魅力について教えてください。
月岡:これまで日立が携わってきた多くのプロジェクトや研究などで培ってきた知見や品質を元に、「進め方」が整備されているので、とにかく基礎が出来上がっているなと感じます。お客さまに対して説得力をもってご提案できる点は、働く上で非常に魅力だと思います。
また他のメンバーの方も、分からないことに対して気軽に皆さん答えてくれます。会社全体で転職者が多いこともあって、お互いにフォローするような文化があると感じています。実際に、社内手続きのことから技術的なところまで何でも先輩社員に聞けるチャットルームが用意されているので、よくそこから質問をさせてもらっています。
あと、インテリジェンスシステム設計部でも四半期に一回くらいのペースで、独自に交流会を開催してくれるので、顔見知りも増えてありがたいです。
――それは良いですね! ディフェンスシステム事業部に関しては、新卒と中途でどちらが多いですか?
月岡:比率で見ると新卒が多いとは思いますが、私が入社したタイミングでは、6名の中途採用者が同時に入社しました。ですから転職者の比率は着実に増えていると思います。SIerやコンサル会社などといったバックグラウンドが多く、ディフェンス領域はほとんど未経験だと思います。
――実際にどのような人が活躍している印象ですか?
月岡:ディフェンスシステム事業部に限った話ではありませんが、良い意味で真面目な人が多いと感じます。何事もきちんと裏付けをとって、それがない場合は、確認するために自ら動く人が多いと思います。当然といえば当然なのでしょうが、それを当たり前として動けている人が非常に多い印象です。また、日々の業務の中でしっかりと疑問を持ち、改善が必要であれば自らが立ち上がって改善を進めようとする人も多いと感じます。
キャリアコースも多様で、例えば私のメンターは、もともとは研究所から異動してきた人だったりします。ここはケースバイケースですね。
――ご自身のキャリアに対する中長期的なビジョンとしてはいかがでしょうか?
月岡:基本的なスタンスとしては、やはりマネジメントをやっていきたいと考えています。新卒の会社から官公庁向けのプロジェクトにアサインされることが多かったこともあるので、現在のインテリジェンスはとても自分にフィットしていると思います。この領域に長く携わって、お客さまと信頼関係を築きながら進めていければと思っています。
もちろん、一切技術をやらないとなると今後の技術動向をいずれはキャッチアップできなくなっていくので、個人の趣味レベルではPythonを使って機械学習まわりのことをしています。実際、楽しいですからね。
―― ありがとうございます。最後に、これからどのような仲間と働いていきたいですか?
月岡:転職者であれば、自分のスタンスを持ちつつも日立の文化・進め方を受け入れ、それぞれの良いところをうまく融合する形で、より良い進め方を模索していけるような人とご一緒できたら良いなと思います。
お客さまに寄り添って仕事をしていく上で非常に恵まれている環境だと思うので、お客さまと共により良いシステムを作り上げていきたい人がいれば、ぜひ応募してみてください!
編集後記
インテリジェンスに関わるエンジニアへのインタビューということで若干身構えてオフィスに伺いましたが、インタビュイーの月岡さんが非常に物腰柔らかく優しい方で、ほんわかとした雰囲気でお話を伺えました。独特な業界ではあるものの、お話にもあった通り、キャリアとしては未経験からでも問題なく着任できるとのこと。国家の安全保障などに関わる業務に携わってみたいエンジニアの方は、ぜひ応募してみてはいかがでしょうか。
取材/文:長岡 武司
撮影:法本 瞳
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