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ブックマークレットをTypeScriptで書く(rollup編)

Last updated at Posted at 2022-12-07

rollupを用いて、ブックマークレットをTypeScriptで書く環境を構築する手順を示します。

ブックマークレットをTypeScriptで書きたい

私は、日々のウェブブラウジングを快適にするためのブックマークレットを自作しています。
ブックマークレットの魅力は、なんといっても1行でさくっと書けるお手軽さにあります。
しかしながら、ある程度の規模を超えたブックマークレットを素のJavaScriptで、それも1行の中に書いていくのは、なかなかつらいものです。
そこで、ブックマークレットをTypeScriptで書きたいと思いました。

ブックマークレットをTypeScriptで書くには

ブックマークレットをTypeScriptで書くには、おおむね次のようなことをおこなう必要があります。

  • TypeScriptをJavaScriptにトランスパイル
  • ファイルが分かれている場合は1ファイルにバンドル
  • グローバル空間の汚染を避けるために、スクリプト全体をIIFEでラップ
  • 複数行に渡る場合は1行に圧縮
  • ファイルの先頭にjavascript:を付与

これには様々な手法がありますが、今回はモジュールバンドラーのrollupを採用しました。

特徴

この記事で紹介する手法には、次のような特徴があります。
これらの特徴によって、快適なDX(開発者体験)がもたらされることでしょう。

ファイル分割

適切にファイルを分割することで、大規模なブックマークレットでもメンテナビリティを高く保つことができます。
また、ブックマークレット間で共通する処理を切り出して共用することもできます。
たとえば、クリップボードにコピーする処理をよく使うのであればcopy.tsのようなファイルに関数を定義しておき、それを各所でインポートするとよいでしょう。

Jestによるテスト実行

テストを書くことで、ブックマークレットの品質を担保することができます。
もちろん、テストコードの中でDOMを扱うこともできます。

ウォッチモード

開発時に使用するウォッチモードではソースコードを保存する度にビルドが走り、ブックマークレットが更新されます。

ディレクトリ構成

この記事で紹介する手法では、次のようなディレクトリ構成になります。

.
├── .eslintrc.js
├── .gitignore
├── dist
│   └── foo.min.js
├── jest.config.ts
├── package-lock.json
├── package.json
├── rollup.config.ts
├── src
│   └── foo
│       └── main.ts
└── tsconfig.json
  • .eslintrc.js:ESLintの設定ファイル
  • .gitignore:Gitの除外設定ファイル
  • dist:ブックマークレットが出力されるディレクトリ
    • dist/**/*.min.js:ブックマークレット
  • jest.config.ts:Jestの設定ファイル
  • package-lock.json:npmのパッケージ情報のロックファイル
  • package.json:npmのパッケージ情報ファイル
  • rollup.config.ts:rollupの設定ファイル
  • src:ブックマークレットのソースコードを配置するディレクトリ
    • src/**/main.ts:ブックマークレットの本体にあたるエントリーファイル
  • tsconfig.json:TypeScriptの設定ファイル

このようにファイルパスのルールを定めることで、新たにブックマークレットを追加する場合はsrcディレクトリ以下に任意のディレクトリを切り、最低限main.tsの1ファイルさえつくればいい状態になります。

使用環境

記事執筆時点で使用している環境について、記載しておきます。

開発環境

ブックマークレットの開発には、次のような環境を使っています。

  • OS:macOS Monterey 12.6
  • JSランタイム:Node.js v16.11.1
  • パッケージマネージャー:npm v8.0.0

実行するコマンドやインストールするパッケージは、使用するNode.jsのバージョンやパッケージマネージャーに応じてよしなに読み替えてください。

実行環境

ブックマークレットの実行には、次のような環境を使っています。

  • OS:macOS Monterey 12.6
  • ブラウザ:Google Chrome v108.0.5359.94

環境構築

ブックマークレットを開発するための環境を構築します。

パッケージをインストール

開発に必要なパッケージをひととおりインストールします。

npm i -D \
  @munierujp/eslint-config-typescript \
  @rollup/plugin-terser \
  @rollup/plugin-typescript \
  @tsconfig/node16 \
  @types/glob \
  @types/node@^16.11 \
  eslint \
  eslint-plugin-jest \
  glob \
  jest \
  jest-environment-jsdom \
  rimraf \
  rollup \
  rollup-plugin-bookmarklet \
  ts-jest \
  typescript

ただし、使用するパッケージやバージョンは状況に応じて適切なものを選んでください。

  • @tsconfig/node16:使用するNode.jsのバージョンに対応したパッケージを使うこと1
  • @types/glob:使用するglobのバージョンに対応したバージョンを使うこと2
  • @types/node:使用するNode.jsのバージョンに対応したバージョンを使うこと2

package.jsonscriptsを定義

package.jsonに、次のようなscriptsを定義します。

package.json
{
  "scripts": {
    "prebuild": "npm run clean",
    "build": "rollup --config rollup.config.ts --configPlugin typescript",
    "clean": "rimraf dist",
    "predev": "npm run clean",
    "dev": "rollup --config rollup.config.ts --configPlugin typescript --watch",
    "lint": "eslint '**/*.{js,ts}'",
    "test": "jest --passWithNoTests"
  }
}

それぞれの役割は以下の通りです。

  • build:ソースコードをビルドしてブックマークレットを生成
  • clean:ビルド結果を削除
  • dev:開発用のウォッチモードを起動
  • lint:ESLintによる静的解析を実行
  • test:Jestによるテストを実行

tsconfig.jsonを作成

TypeScriptの設定ファイルとして、tsconfig.jsonをつくります。

tsconfig.json
{
  "extends": "@tsconfig/node16/tsconfig.json",
  "compilerOptions": {
    "lib": [
      // see https://www.npmjs.com/package/@tsconfig/node16
      "es2021",
      "dom"
    ]
  }
}

@tsconfig/node16/tsconfig.jsonを継承していますが、DOMを扱うためcompilerOptions.libdomを含めたものを再定義しています。

.eslintrc.jsを作成

ESLintの設定ファイルとして、.eslintrc.jsをつくります。

.eslintrc.js
module.exports = {
  ignorePatterns: [
    'dist/**/*.js'
  ],
  extends: [
    '@munierujp/eslint-config-typescript',
    'plugin:jest/recommended'
  ],
  parserOptions: {
    project: './tsconfig.json'
  }
}

ignorePatternsdist/**/*.jsを指定することで、生成されたブックマークレットには適用されないようにしています。

jest.config.tsを作成

Jestの設定ファイルとして、jest.config.tsをつくります。

jest.config.ts
import type { Config } from 'jest'

const config: Config = {
  preset: 'ts-jest',
  testEnvironment: 'jsdom',
  collectCoverage: true,
  collectCoverageFrom: [
    'src/**/*.ts'
  ]
}

export default config

TypeScriptを扱うためpresetにはts-jestを、DOMを扱うためtestEnvironmentにはjsdomをそれぞれ指定しています。

rollup.config.tsを作成

rollupの設定ファイルとして、rollup.config.tsをつくります。

rollup.config.ts
import terser from '@rollup/plugin-terser'
import typescript from '@rollup/plugin-typescript'
import glob from 'glob'
import type { RollupOptions } from 'rollup'
import bookmarklet from 'rollup-plugin-bookmarklet'

const entryPaths = glob.sync('src/**/main.ts')
const configs: RollupOptions[] = entryPaths.map(entryPath => ({
  input: entryPath,
  output: {
    file: entryPath.replace(/^src\//, 'dist/').replace(/\/(.+)\/main\.ts$/, '/$1.min.js'),
    format: 'iife'
  },
  plugins: [
    typescript(),
    terser(),
    bookmarklet()
  ]
}))

export default configs

ブックマークレットのサンプル

ブックマークレットを開発するための環境が整ったので、いくつかの例を示します。

Hello World

はじめにもっともシンプルな例として、Hello Worldというアラートを表示するブックマークレットをつくります。
まずはsrcディレクトリ以下にhelloディレクトリを切り、その中にエントリーファイルとしてmain.tsをつくります。

src/hello/main.ts
alert('Hello World')

npm run buildまたはnpm run devでソースコードをビルドすると、distディレクトリにブックマークレットが生成されます。

dist/hello.min.js
javascript:!function(){"use strict";alert("Hello World")}();

タイトルをコピー

次にもう少し複雑な例として、ページのタイトルをコピーするブックマークレットをつくります。
まずはsrcディレクトリ以下にcopy-titleディレクトリを切り、その中にエントリーファイルとしてmain.tsをつくります。

src/copy-title/main.ts
import { copy } from './copy'

copy(document.title).catch(error => {
  throw error
})

また、他にも必要なファイルをひととおりつくります。

src/copy-title/copy.ts
export const copy = async (text: string): Promise<void> => {
  await navigator.clipboard.writeText(text)
}

npm run buildまたはnpm run devでソースコードをビルドすると、distディレクトリにブックマークレットが生成されます。

dist/copy-title.min.js
javascript:!function(){"use strict";(async t=>{await navigator.clipboard.writeText(t)})(document.title).catch((t=>{throw t}))}();

サンプルリポジトリ

この記事で紹介している手法は、こちらのリポジトリで実際に採用しているものです。

よければ参考にしてみてください。

次回予告

次回は、ユーザースクリプトをTypeScriptで書く方法について紹介します。

  1. tsconfig.jsonを書くときはTSConfig Basesを使うと便利 - Qiita

  2. TypeScriptの型定義パッケージ(@types/~)はどのバージョンをインストールすればいいのか - Qiita 2

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