はじめに
Google Cloud Platform (GCP) を利用する際、予算管理は重要な課題の一つです。特に複数のプロジェクトやフォルダを管理している場合、予算と実際の利用料金を比較・分析することは、コスト最適化の第一歩となります。
GCPは予算アラート機能を提供していますが、月間や年間といった期間単位での設定しかできません。より柔軟な予算管理を行うためには、直近の利用状況をリアルタイムで把握し、予算との比較を行う必要があります。
本記事では、GCPの予算と利用料金を直近30日で比較・分析できるPythonスクリプトを作成し、その実装方法と使い方について解説します。なお、本スクリプトはプロジェクト単位での予算アラート設定を前提としています。フォルダ単位や組織単位など、異なる粒度で予算アラートを設定している場合は、コードの修正が必要となります。
お題
以下の要件を満たすスクリプトを作成します：
- GCPの予算情報を取得
- 直近30日間の利用料金を取得
- 予算と利用料金を比較・分析
- プロジェクト単位またはフォルダ単位での予算管理に対応
- 分析結果を見やすく表示
コードの作成
1. プロジェクト構成
.
├── main.py
├── src/
│ ├── sql/
│ ├── __init__.py
│ ├── cost_analyzer.py
│ ├── bigquery_client.py
│ ├── budget_client.py
│ └── queries.py
├── pyproject.toml
├── uv.lock
└── .env
2. 主要なコンポーネント
CostAnalyzer クラス
CostAnalyzerクラスは、予算と利用料金の分析を担当する中心的なクラスです。主な機能は以下の通りです：
- プロジェクトごとの利用料金の取得
- 予算情報の取得と分析
- 予算と利用料金の比較
- 分析結果の表示
class CostAnalyzer:
def __init__(
self,
project_id: str,
billing_account_id: str,
dataset_id: str,
table_id: str,
):
self.project_id = project_id
self.billing_account_id = billing_account_id
self.dataset_id = dataset_id
self.table_id = table_id
self.bq_client = BigQueryClient(project_id)
self.budget_client = BudgetClient()
分析ロジック
予算と利用料金の分析は以下の手順で行われます：
- BigQueryから直近30日間の利用料金を取得
- 予算情報を取得
- プロジェクト単位またはフォルダ単位で予算と利用料金を比較
- 予算に対する割合を計算
def analyze_budget_costs(self) -> list[dict]:
costs = self.get_project_costs()
budgets = self.budget_client.list_budgets(self.billing_account_id)
analysis_results = []
for budget in budgets:
# 予算情報の取得
budget_name = budget["display_name"]
budget_amount = budget["amount"]
project_ids = budget["project_ids"]
folder_ids = budget["folder_ids"]
# 利用料金の集計
total_cost = 0.0
project_costs = []
# プロジェクト単位での集計
for cost in costs:
...
# 予算に対する割合を計算
percentage = (total_cost / budget_amount) * 100 if budget_amount > 0 else 0
analysis_results.append(
{
"budget_name": budget_name,
"budget_amount": budget_amount,
"total_cost": total_cost,
"percentage": percentage,
"project_costs": project_costs,
},
)
return analysis_results
結果
スクリプトを実行すると、以下のような形式で分析結果が表示されます：
予算ごとの利用料金分析結果:
--------------------------------------------------
予算名: Production Budget
予算タイプ: project単位
予算金額: $1000.00
合計利用料金: $750.50
予算に対する割合: 75.1%
プロジェクトごとの利用料金:
プロジェクト prod-project-1 (123456789): $450.25
プロジェクト prod-project-2 (987654321): $300.25
--------------------------------------------------
この結果から、以下の情報が一目で分かります：
- 各予算の設定金額
- 実際の利用料金
- 予算に対する利用率
- プロジェクトごとの詳細な利用料金
まとめ
本記事で作成したスクリプトにより、以下のメリットが得られます：
- 予算と利用料金の比較が容易になる
- プロジェクト単位またはフォルダ単位での分析が可能
- 直近30日間の利用状況を把握できる
- コスト最適化のための意思決定をサポート
このスクリプトは、GCPの予算管理を自動化し、コスト最適化を支援するための基本的なツールとして活用できます。必要に応じて、アラート機能の追加や、より詳細な分析機能の実装など、機能を拡張することも可能です。
利用したコードはこちら。