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【本当にあった怖い話5】 狂気のプロジェクト ―辞めると決めたから、やりきれた―

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序章──「スーパーエンジニア1名とオフショア10名の交換」から始まった地獄

私は、相変わらずスーパーエンジニアのリンさんと2人で5人月働いていた。

すると突然クライアントから、
「大手のサービスと我々のサービスの“いいとこどり”をした新サービスを作りたい。予算は大手が出すから、まずPoCだけ提供してくれる?」
という要望が届いた。

最初の異変は、経営層からのアサイン要望だった。
「自社のオフショア子会社メンバーを入れて利鞘を得たい」
という理由で、リンさん(フリーランス)が外され、完全にオフショア開発体制へ。

気づけばSlackには、見知らぬ海外メンバーの名前が並んでいた。

プロジェクトはPoC(Proof of Concept)。
要件は、「大手のサービスと我々のサービスをいい感じに繋ぎたい」。
何も決まっていない。

納期は2ヶ月
そして、当然ながら大手のサービスなんて誰も触ったことがない。

それでも当時の私は、
「PoCの立ち上げから要件定義までやるのは初めてだし、なんかワクワクするな。オフショアのメンバーもリンさんくらいできるんじゃない?」
現実を舐めていた。

こうして、設計・開発・テストが三位一体で爆速進行する、闇のゲームが始まった。

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第一章──並走なんて甘い、全部同時走行だ

PMの私とオフショアSE、どちらも業務理解が甘い状態で、まずは「1日サービス触って要点だけ抑えた(気になっていた)」。

私は要件定義・概念設計を担当し、それをSEが受け取って、基本設計(らしきもの)を作り、各メンバーへ振り分ける──そんな流れで進めた。

…私はもはや、俯瞰するだけで精一杯だった。
だが、そこはオフショア。とてつもなくチケット管理が苦手。

1週間も経つと、誰が何やってるか分からない地獄のチケット&ガント図が爆誕した。

「そうか、私がチケット管理してないのが悪いんだな」
と、私がチケット管理を始めた。

そう、この時点で私は限界を超えていた。

だが、その1ヶ月後、本当の地獄、『結合テスト』 が始まる──。

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第二章──結合テスト

今回は経営層のご配慮で、
「オフショアで利鞘出てるから、日本人の専属テスター1人つけとくね」
とのこと。

ありがたい…と思ったのも束の間。

蓋を開けると、そのテスターはレスが1日4時間以上こない上に作業効率も壊滅的。

「これ、むしろ混乱しか生まないやつでは…?」

とりあえずヤバそうな部分は経営層に報告し、残りは“いつものように”私が全部こなすことにした。

実際、彼が8時間かけていたテスト作業は、私なら30分で終わった。
ホラーである。

そして、これはまだジャブ。

私が手動テストを回すたび、バグが面白いほど出る。
画面は崩れ、ボタンは反応せず、APIは無言。

「なんでこうなったんだ…」
「納期なんて間に合うわけない…」
「どうやってクライアントに説明しよう…」

と、グルグル思考が回っていたその時、次の爆弾が落ちる。

第三章──稟議の崩壊と、身銭を切る決断

ある日、プロジェクトの生命線である“稟議”が吹き飛んだ。

クライアントは言った。
「もう予算出ないけど、とりあえずウチで出すから進めよう。」

その直後、
「他にも色々優先すべきことがあって、今後の依頼事項を最優先にして、PoCの納期も遅らせたくないけど、優先順位はPoCが下で」
という連絡を受けた。

つまり、納期は据置・優先度は低下。

納期はあるけど優先じゃないという、
「無重力空間に投げ出されたような状況」になった。

でも、「これは整理するチャンスかもしれない」
そう思っていた矢先──

第四章──タブレット対応という爆弾

そんな中、クライアントが新たに放った一言。
「メインサービスのUIをタブレット対応できませんか?納期は1.5ヶ月で」

要件未定+短納期の新規案件。
PoCメンバーとの按分で進めろというカオス。

PoCの納期リスケも腰据えて検討できないまま、“同じような地雷”が降ってくる。

「強欲は罪だな…」と思う一方で、
クライアントの期待に応えられない現場スキルにも限界を感じていた。

この時点で、モチベーションは完全にゼロ。

それでもPoCは、私が初めて0→1で立ち上げたプロジェクト
どうしても納品したかった。

「じゃあ、自分のモチベーションを維持するには?」

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第五章──「やる」と決めた瞬間、退職も決めた

私は確信していた。
「この仕事をやりきっても、また次の無理がくるだけだ」

だから決めた。

「転職先を決めて、自己判断・自己責任で最後までやりきって辞めよう

離職日が決まれば、ゴールが保証される
無理難題も降ってこないし、
“会社のため”ではなく、“良いシステムを作る”に集中できる。

思いついた瞬間、
「これ、最強の一手じゃん」
と確信し、即転職活動 → 即転職先決定。

そして、部長にこう伝えた。

「3ヶ月後辞めます。転職先決まってます。有給全消化します。」

その瞬間から、すべてが動き出した。

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第六章──禁断の召喚魔法:『スーパーエンジニア』リンさん再び

PoCは、もはや誰も触れないバグの墓場と化していた。

でも、私はもう会社の利益なんて考えなくていい。

だから言った。
「リンさん、戻ってきてくれ。」

そして、「1ヶ月フルアサイン」を強行確保。

結果、信じられない速度で問題が解決。
リンさん、やはり神。

ただ、そんなリンさんでも、
「エンドの業務を理解するのに1週間はかかった」
とのこと。

そのとき初めて、
「この案件、マジでむずかったんだな」
と客観視できた。

そしてリンさんが私の設計を見て言った。

「この要件はすごく難しいと思うけど、上手く設計できてるね。

私は…泣いた。

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第七章──UIは分業、でも信頼できるのは自分だけ

PoCはリンさんの力で着地の見込みがついた。
次はタブレット対応。

リンさんはPoCに回してるので当然オフショアリソースで100%遂行するしか策がない。

そこで私はこう仮説を立てた。
「オフショアは 実装以外が苦手なのでは?

なので、実装以外──設計・仕様詰め・テスト・レビュー・管理を全部自分が持つ構成にした。

実装5人、レビュー1人(私)、テスト1人(私)、マネジメントも私。

マルチタスクの限界突破である。

でも、“辞める”というゴールがあるから、ガス欠を恐れずにアクセルを踏み込めた。

毎日20チケットずつ発行(バグチケットという名の設計書)→ 翌日全部返却 → また新しいチケット…
このサイクルを1ヶ月続け、ようやくリリース可能な品質に至った。

命の前借りをしていることに、私はまだ気づいていなかった。

第八章──奇跡の着地、だが俺は去る

離職を決めたことで得た最強のブースト効果により、
PoCもUI対応も、すべて無事に着地した。

PoCはエンドに評価され、クライアントが大型出資を受けることが決まった。
UI改修も、バグなくリリースしクライアントに感謝された。

でも、私はその代償として、3ヶ月間何もできない軽度の鬱になった。

ただ静かに、私はこのプロジェクトと会社から去った。

終章──「本当に怖いとこ」

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「やりきる」には、
「辞める」と決めるしかなかった。

それでも3ヶ月のメンタルダメージを負った。
しかし、運よく離職前の有給期間と転職直後は業務負荷が軽いこともあり休職せずに回復できた。

けれども、
「辞める」と決めなかったら、
私はきっと、壊れていた。

よくある途中で休職するPMになっていたはずだ。。。

この話の本当に怖いとこは、壊れかけてるのに止まれない状態である。
壊れかけのPJを走りながら立て直すためには死を覚悟した生贄が必要ということだ。。。

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