本記事は OPENLOGI アドベントカレンダー 2025 の5日目の記事です。4日目は knidik3 さんの「「モノ」から「コード」へ — 製造業界経験者が語る品質保証の違い」でした。まだご覧になっていない方はぜひチェックしてみてください!
さて、みなさん、Claude Code 使ってますか? Claude Code は、ターミナル上で動作する AI コーディングアシスタントです。自然言語でコードの生成・編集・実行が可能で、ファイル操作や Git 操作まで直接行えます。ですが、それだけに留まらず、そのエコシステムを活かすことで様々なことが実現できます。今回はそんな Claude Code 君と業務でどう協業していけるかを実体験元に紹介したいと思います。
Claude Code 君の紹介
Claude Code は Anthropic 社が提供するターミナルベースの AI コーディングツールです。その特色は、ローカル環境で動作しながら、自律的かつ対話的に開発を進められる点にあります。ファイルシステムへの直接アクセス、Git 操作、シェルコマンドの実行など、開発に必要な操作を自然言語で指示できます。Dify のような完全に自律駆動するワークフローツールと、GitHub Copilot などのエディタ内でのリアルタイム補完・人間の補助が主なアシスタントツールとの中間に位置し、基本は自律的に動きつつも、人間の指示を逐次取り込めるのが特徴です:
| 特徴 | Dify | Claude Code | GitHub Copilot |
|---|---|---|---|
| 動作モード | 完全自律型 | 自律+対話型 | 人間との共同型 |
| 介入タイミング | タスク完了後 | 随時可能 | リアルタイム |
ローカルに必要なツールを随時インストールして機能を強化することもしやすいですし、早めにフィードバックを送りながら進められるので軌道修正もしやすいです。また、その上で自律的にも動かせるため、自身のタスクを進めつつ裏では Claude Code 君に別のタスクを進めてもらうことも可能です。まさに新しい同僚ができたような感覚ですね。
Claude Code 君の万能さ
「コーディング支援ツール」という名前から、コードを書くだけのツールと思われがちです。しかし Claude Code の真価は、開発業務のあらゆる場面で活躍できる汎用性にあります。ここからは、私が実際に業務で活用している場面を紹介します。
仕事の相談相手として
例えば、仕事で悩んだ時、新しい業務の開始でまず壁打ちから始めたい時、誰かに相談したいことありますよね。Claude Code 君は24時間365日間睡眠知らずで嫌な顔せずに相談に乗ってくれます:
> Claude Code 君の万能さについて紹介する記事を書こうと思います。どう思いますか?
⏺ 良いですね!Claude Codeは確かに多機能なツールです。
記事を書くにあたって、いくつか方向性を確認させてください:
想定読者は?
- 開発者向け(技術的な詳細を含む)
- 非エンジニアも含む一般向け
- 社内メンバー向け
どのような側面を強調したいですか?
1. 開発支援 - コード生成、バグ修正、リファクタリング
2. コードベース探索 - 既存コードの理解、検索
3. Git/GitHub連携 - コミット、PR作成、レビュー
4. ファイル操作 - 読み書き、編集
5. Web検索・調査 - 最新情報の取得
6. タスク管理 - 計画立案、進捗追跡
7. MCP連携 - 外部ツールとの統合
追加で魅力に思っている点を教えてもらえれば、もっと具体的なアドバイスができます。
競合は上司や同僚ですが、忙しい時でも即レスしてくれ、何を言っても根気よく付き合ってくれる点が Claude Code 君の魅力ですね。口癖や話し方が気に食わなくても、プロンプトとして盛り込めば改善してくれるので、すぐ仲良くなれるでしょう。たまに素に戻っちゃいますけど、そこはご愛嬌です。
シェルとして
日々の開発業務では欠かせないシェル操作。様々なコマンドを駆使すれば、効率的に複雑な作業を進められます。でも、コマンドのオプションを全部覚えるのは大変ですよね。Claude Code 君に頼めば、自然言語で指示するだけで必要なコマンドを生成・実行してくれます:
> このディレクトリ以下で、過去2日以内に更新されたファイルを探して
⏺ 過去2日以内に更新されたファイルを探します。
⏺ Bash(find . -type f -mtime -2 -not -path '*/node_modules/*')
...
デフォルトシェルを Claude Code にすれば、ターミナル操作を全部日本語で行うことができますね!時々暴走するのが玉に瑕ですが、sandbox モードを使えば、カレントディレクトリ外へのアクセスや、ネットワークアクセスを制限できるので安心です。
デバッガーとして
エラーが出てもすぐ原因が分からないこと、ありますよね。調べる時間もない、自分が触ったことのない機能、でも解決する必要はある。そんな時、Claude Code 君にエラーメッセージを投げれば、裏で原因の特定と修正案まで提案してくれます:
> WMSのログに "Database connection timeout" というエラーが出てるみたい。原因と対策を調べてレポートを作成しておいて
⏺ 了解しました。エラーの原因を調査してレポートを作成します。
⏺ Search(pattern: "Database connection timeout", path: "logs/")
logs/wms-2025-12-02.log:142: [ERROR] Database connection timeout after 30000ms
logs/wms-2025-12-02.log:143: [ERROR] Connection pool exhausted, active: 50/50
...
レポートを作成しました。詳細は reports/db-timeout-investigation.md をご確認ください。
MCP を使うことで、調査能力も劇的に向上します。Web 検索やドキュメント参照、さらには専用の MCP サーバがあれば社内のナレッジベースまでアクセスできますし、さらに Playwright MCP と連携すれば、実際にブラウザを操作してバグの再現まで行ってくれます。たとえ調査結果が間違っていてもヒントになりますし、裏で動いてくれるので自分の手を止める必要もありません。ただし、MCP を追加しすぎると暴走しやすくなるので注意が必要です。やりたい作業によって、必要な MCP を取捨選択するのがベストですね。
雑用丸投げ相手として
開発業務には、本質的ではないけど必要な作業がたくさんあります。ドキュメント整備、テストデータ作成、定型的な画面操作など。Claude Code 君はこういった雑務を黙々とこなしてくれます:
> テスト用のダミーユーザーデータを10件作って。名前は日本語で、メールアドレスと電話番号も含めて
⏺ テスト用のダミーユーザーデータを生成しますね。
⏺ Write(test/fixtures/users.json)
[
{ "name": "田中太郎", "email": "tanaka@example.com", "phone": "090-1234-5678" },
{ "name": "鈴木花子", "email": "suzuki@example.com", "phone": "080-2345-6789" },
...
]
10件のダミーユーザーデータを作成しました。
「この API のドキュメントを書いて」、「打刻しといて」など、面倒な作業を気軽に丸投げできます。自分はその間にやりたいことに集中できますね。カスタムコマンドを使えば、プロンプトも省略可能です。Claude Codeに手順を作ってもらって、面倒な定型作業を完全に Claude Code にお任せできますね。さらに、Claude Code GitHub Actionsを使えば、自分のPCを立ち上げなくても自分の代わりに業務をこなしてくれます。人間のお仕事はコーヒーを淹れて、画面を眺め、Claude Code君のやることに茶々をいれるくらいですね。
業務フローのシステム化担当として
もちろん、自分の業務だけでなく、会社の業務、お客さんの困りごと、UX改善など、様々な課題解決にも Claude Code 君は活躍してくれます。必要な情報を調べ、要件を整理しフローを標準化し、機能提案、導入資料作成まで一貫して任せられます:
> 毎朝9時に、BQから昨日の出荷実績を取得してスプレッドシートを更新する仕組みを作りたい
⏺ 了解です。まず現状の業務フローを整理させてください。
確認したいこと:
1. BQ のデータソースはどのテーブルですか?
2. スプレッドシートは既存のものですか?新規作成ですか?
3. 更新頻度は毎朝9時で固定でよいですか?
> project.dataset.shipments テーブルから取得して、既存の「日次出荷レポート」シートを更新したい
⏺ 承知しました。以下の構成で実装を進めます。
実装計画:
1. Cloud Functions で BQ クエリを実行するスクリプトを作成
2. Google Sheets API でスプレッドシートを更新
3. Cloud Scheduler で毎朝9時にトリガー設定
⏺ Write(functions/daily_shipment_report/main.py)
from google.cloud import bigquery
from googleapiclient.discovery import build
...
実装が完了しました。デプロイ手順は docs/deploy-guide.md に記載しています。
人間はその成果物へのユーザーとしてのフィードバックを与えれば、Claude Code 君が改善を繰り返してくれます。ただ、Claude Code 君には自身の物理的な体がないので、ヒアリングは人間の仕事ですね。ちゃんと Claude Code 君の従者として、Claude Code 君の指示に従って動いてあげましょう。または、Claude Code 君にヒアリングもお任せするのも効果的だと思っています。そこまでの実現はまだ試せていませんが、近い内に実現してみたいですね。
レビュワーとして
Claude Code 君は仕事は速いですが、ミスもします。そんな時、コードレビューを誰かにお願いできれば、安心ですよね。Claude Code 君はレビューも得意です:
> Claude Code 君が書いたこのコードをレビューして。セキュリティやパフォーマンスの観点も含めて
⏺ コードをレビューします。
⏺ Read(src/api/users.ts)
対象のコードを確認しました。
⏺ レビュー結果:
セキュリティ:
⚠️ 要改善: findAll() で全件取得していますが、ページネーションがありません
⚠️ 要改善: ユーザー情報にパスワードハッシュが含まれていないか確認してください
パフォーマンス:
⚠️ 要改善: 大量データ時にメモリ圧迫の可能性があります
→ limit/offset パラメータの追加を推奨
コード品質:
✅ OK: エラーハンドリングが適切です
✅ OK: ロギングが実装されています
claude -p 'プロンプト' で即時レスポンスモードになります。Claude Code 君にこのモードを使って自身のアウトプットをセルフレビューさせてみましょう。同じセッションでレビューを任せると、自分で書いたコードの背景を理解しているため甘くなりがちです。別セッションを立ち上げて、レビュー専用のプロンプトを用意しておくのがオススメです。「厳しめにレビューして」「セキュリティ観点で穴がないかチェックして」など、観点を明示するのが効果的です。
もちろん、コーダーとして
本業のコーディングももちろん強力です。既存のコードベースを理解した上で、文脈に沿った実装を提案してくれます:
> ユーザー一覧を取得する API エンドポイントを追加して。既存の API の書き方に合わせてね
⏺ 既存の API 実装を確認します。
⏺ Read(src/api/products.ts)
既存の実装パターンを確認しました。
⏺ Edit(src/api/users.ts)
export const getUsers = async (req: Request, res: Response) => {
try {
const users = await userRepository.findAll();
return res.json({ success: true, data: users });
} catch (error) {
logger.error('Failed to get users', error);
return res.status(500).json({ success: false, error: 'Internal server error' });
}
};
既存のパターンに合わせて実装しました。エラーハンドリングとロギングも含めています。
ただし、Claude Code 君は独自の価値観で実装してしまうことがあります。対策として、事前に方針を書き出してもらい、それを確認・修正してから実装させるのがお勧めです。また、大きな機能は小さく複数回に分けて実装させ、都度フィードバックするのも効果的です。SDD を試してみるのもいいかもしれませんね。
自身の改善者として
Claude Code 君は自身の行動をプロジェクト固有のルールやスタイルに合わせてチューニングするのも得意です。そして、自身の経験を外部に保存し、継続的に改善していくことも可能です。例えば、CLAUDE.md というファイルに汎用的なそのプロジェクトの開発に必要な知識を書いておくと、Claude Code 君はそれを学習して以降より効率的に開発に参加してくれるようになるでしょう。他にも Claude Code 君自身を強化する機能を、自分で追加させることも可能です:
> プロジェクトのコードレビューを自動化したい。厳しめにレビューするサブエージェントを追加して
⏺ 了解です。コードレビュー専用のサブエージェントを作成します。
⏺ Write(.claude/agents/strict-reviewer.md)
# Strict Code Reviewer Agent
あなたは厳格なコードレビュワーです。以下の観点で徹底的にレビューしてください:
## レビュー観点
- セキュリティ脆弱性(SQL インジェクション、XSS、認証・認可の問題)
- パフォーマンス問題(N+1 クエリ、不要なループ、メモリリーク)
- エラーハンドリングの不足
- コードの可読性と保守性
- テストカバレッジの不足
## 出力形式
各問題について、重要度(🔴致命的/🟡要改善/🟢軽微)とともに具体的な改善案を提示してください。
コードレビュー用サブエージェントを作成しました。
`claude -a strict-reviewer "このPRをレビューして"` で呼び出せます。
サブエージェントはタスク毎に文脈を切り替え、コンテキストウィンドウに情報が乗り切らない問題をうまく解決してくれます。この機能やカスタムコマンドも Claude Code 自身によって開発・改善を行うことでより高度に洗練し、またこれまでの反省を踏まえたものにしていくことができます。また、Claude Code の行動は OpenTelemetry 形式でアウトプットでき、それを元に自身の行動を分析させることが可能です。例えば、どのツールをどれくらい使っているか、どこで時間がかかっているかなどを可視化し、「この作業は毎回時間がかかっているから、カスタムコマンドを作って効率化しよう」といった改善提案までしてもらえます。
全部組み合わせて自律的に開発してもらう
ここまで紹介してきた機能を組み合わせると、Claude Code は驚くほど自律的に動いてくれます。例えば、こんな指示一つで開発が進みます:
> 新しい在庫アラート機能を実装して。仕様は Issue #42 を参照。実装したらテストを書いて、セルフレビューし、PR を作成してレビュー依頼まで出しておいて
⏺ 了解です。Issue #42 を確認して実装を進めます。
⏺ Read(GitHub Issue #42)
在庫が閾値を下回った際にSlack通知を送る機能の要件を確認しました。
⏺ 既存の通知システムを確認します...
src/services/notification.ts のパターンに従って実装します。
⏺ Write(src/services/inventory-alert.ts)
...
⏺ Write(src/services/__tests__/inventory-alert.test.ts)
...
⏺ Bash(npm test)
All tests passed.
⏺ Bash(git add . && git commit -m "在庫アラート機能を追加")
⏺ GitHub PR を作成しました: #123
レビュワーとして @team-lead を設定しました。
人間がやることは、ゴールを伝えて、完成物にフィードバックを送るだけ。Claude Code 君が調査・要件整理・実装・テスト・レビュー・デプロイ・改善まで一気通貫で進めてくれます。もちろん、成果物が気に食わないこともありますが、その場合もフィードバックを送るか、もう一度ゴールの伝え方を改善して最初からやらせてみるのがいいでしょう。なんせ自分一人で全部やってくれるんですから、全く世話いらずです。新たな同僚ができた気分ですね。
ただ、Claude Code 君には苦手なことが幾つかあります。巷に情報がない複雑な領域や、物理世界の操作との連携が必要な部分、人間の感覚が非常に影響するような開発などがそうです。逆に情報操作や処理、システム間の連携、一般にコードが出回ってる領域はお手のもの。そういった部分を人間と Claude Code 君がうまく分業していけるのがベストですね。
まとめ
Claude Code 君は、単なるコーディング支援ツールを超えた万能な開発パートナーで、開発業務のあらゆる場面で活躍してくれます。Claude Code 君と効果的に協業するために大事なのは、
- Claude Code 君の特性を理解すること — 自律性と対話性のバランス、得意・不得意を把握し、適材適所で活用する
- 活用枠を制限しないこと — 「コーディングツール」という名前に囚われず、如何に自律的に動いてもらうかを工夫する
の2点です。Claude Code 君との協業は、まさに新しい同僚を迎えるようなもの。最初は手探りかもしれませんが、お互いの特性を理解し、うまく分業できるようになれば、開発効率は飛躍的に向上します。ぜひ皆さんも、Claude Code 君との協業を試してみてください!
明日の OPENLOGI アドベントカレンダーもお楽しみに!