はじめに
先日 Engineering LifeCycle Management (ELM) のパフォーマンステストを実施しました。
その過程でいくつか疑問が残り、復習の意味も込めて整理しておきます。
要件管理の現場では、いまだに Excel で要件をやり取りするケースが多いです。
確かに誰でも開けて手軽ですが、実は以下のような落とし穴があります。
- 情報の欠落が起きやすい
- 変更管理が難しい
この問題を解決するために登場するのが ReqIF (Requirements Interchange Format) です。
ReqIFとは?
ReqIF(Requirements Interchange Format)は、
異なるツール間で要件定義を交換するための国際標準フォーマット です。
例えば、以下のようなユースケースに活用できます:
- ベンダーと発注元で異なる要件管理ツールを利用している
- 長期プロジェクトで要件の履歴や差分を正確に管理したい
- Excelでは難しいトレーサビリティを担保したい
ExcelではなくReqIFを使うと何が嬉しいのか?
1. 情報が欠落しない
Excelに貼り付けた要件は、基本的に「本文」しか残りません。
優先度・バージョン・トレーサビリティといった 属性情報 はどうしても抜け落ちがちです。
👉 ReqIFなら
「要件本文+属性+リンク情報」をXML形式で保持できるため、
ツールからツールへ渡す際に 情報が欠落しない のが大きなメリットです。
2. 差分比較ができる
Excelで要件書をやり取りすると、変更点を確認するには 目視チェック しかありません。
数百行、数千行になれば…ほぼ不可能です。
👉 ReqIFなら
ツール側で「新規」「変更」「削除」を差分表示できるため、
要件の合意やレビューがスムーズ になります。
3. ツール間で往復可能
顧客は DOORS Next、サプライヤーは Polarion、社内別部門は Jama …
要件管理ツールがバラバラなのはよくある話です。
Excelでは「CSV変換」「手作業調整」が必要になり、整合性が壊れやすいのが現実です。
👉 ReqIFなら
各ツールが公式にサポートしているため、
ツール間で往復しても情報が壊れにくい。
まさに「要件管理の共通言語」といえます。
ExcelとReqIFの簡単比較
観点 | Excel | ReqIF |
---|---|---|
情報の欠落 | フィールド抜けが起きやすい | 必須項目・形式が定義され欠落しにくい |
変更管理 | バージョン差分を追いにくい | 差分比較・マージが容易 |
ツール間連携 | 手作業の変換が必要 | 異種ツール間でそのまま利用可能 |
ELMでのReqIF活用手順
ここまで「ReqIFとは何か?」と「ExcelではなくReqIFを使うと嬉しい理由」を整理してきました。
続いて、ELM (DOORS Next) で実際にエクスポート/インポートする場合の手順 を紹介します。
ReqIFでエクスポートする手順
・ 画面右の歯車マークからプロジェクト・プロパティーの管理を選択
・ ReqIFタブに移動し、定義を行う
・ 作成したReqIF定義からエクスポートを行う
圧縮したアーカイブファイル形式である.reqifzとして出力される
ReqIFでインポートする手順
・ DOORSの画面上、作成ボタンを押下し、インポートを開始
・ インポート後の要求一覧
まとめ
Excelは手軽な反面、要件管理の現場では「情報欠落」「変更管理の不便さ」「ツール間連携の非効率」といった課題がつきまといます。
ReqIFは“要件管理の共通言語”として、これらの課題を解決できる強力な仕組みです。
IBM ELM (DOORS Next) では、ReqIFを標準的にサポートしているため、
ベンダー/顧客/社内部門間での要件のやり取りを安全かつ効率的に実現できます。
参考文献
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- ELM (Engineering Lifecycle Management): IBM Community - ELM
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- WebSphere: IBM Community - WebSphere
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