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Python および Keithley 2401 sourcemeter を用いて CV 測定を行う(3)

Last updated at Posted at 2021-04-19

はじめに

(1)では必要なソフトのインストールを行った。
(2)では測定に用いるプログラムについて解説した。
いよいよ(3)では測定方法を述べる。また、理解を深めるための演習問題を課す。

測定

実験器具および装置

CVセル一式

・電解液(1 mM K3[Fe(CN)6] および 100 mM KClを含む水溶液) 20 mL程度
・作用電極
・対極
・参照電極

測定装置

Keithley 2400 ソースメータ
ケーブル 4本(赤黒2本ずつ)

測定準備

・CVセルの用意

通常は測定前に窒素バブリングを15分程度行うことで溶存酸素を追い出す必要がある。が、練習実験でとりあえず測ってみるためならそこまでしなくても良いと思う。

・ケーブルの接続

ケースレーのアプリケーションノートを参考に、以下の通りケーブルを接続する。
Force HI(ソースメータ前面右上の赤)と作用電極、Force LO(右下の黒)と対極、 Sense HI(左上の赤) と作用電極、 Sense LO(左下の黒)と参照電極を接続する。
image.png
画像はケースレーのアプリケーションノートより引用。

このような接続にする理由を簡単に説明する(適宜、上の画像を参照すること)。

前提として、ポテンショスタットの機能は次の3つである(BASの資料を参照)。
1. 参照電極に対する作用電極の電位を制御する
2. 作用電極に流れる電流を測定する
3. 参照電極にはほとんど電流を流さない

設定した電圧を4 線式で印可するとき、ソースメータは Sense HI - Sense LO 間の電圧が設定電圧になるように電源電圧をフィードバックする。したがって、4 線式で Sense に参照電極-作用電極をそれぞれ接続することで、参照電極に対する作用電極の電位を任意に設定することができる(1)。測定用のプログラムにおいて電流を測定するよう設定している(keithley.measure_current)ので、作用電極に流れる電流を測定できる(2)。最後に、2400 ソースメータの入力インピーダンスは 10^10 Ω以上あることから、参照電極に電流はほとんど流れない(3)。以上より、今回のようにケーブルを接続することで、ソースメータをポテンショスタットのように用いることができる。

測定

任意の条件を入力して測定を行う。

演習問題

測定に関する考察課題

0.01~0.1 V/s のうちの任意の 5 種類の掃引速度について測定を行い、得られた結果について以下の点で考察せよ。1~3、すべて考えてみてほしい。
1. 最初の1セグメント目では酸化ピークが見られない。その理由を考察せよ。
2. ピーク電流値が Randles-Sevcik式に従う(ピーク電流値が掃引速度の平方根と線形の関係にある)ことを確認せよ。
3. 掃引速度によっては Randles-Sevcik式に従わない場合もあるかと思う。その原因を考察せよ。何が問題なのか。

プログラミング

次の機能を持つように、(2)で示されたコードを書き換えよ。1 は少なくとも考えてみてほしい。2 以降は、興味があれば。
1. 初期電位を出発して電位を掃引させる方向を掃引方向という。変数 direction に p を代入すると掃引方向が正に、n を代入すると掃引方向が負になるようにせよ。
2. 任意の電位を初期電位(start_V)として設定できるようにせよ。ただし(当然だが)設定できる電位は low_V 以上 high_V 以下の値であることを前提とする。
3. (2)のコードを参考に、一定時間ごとに開回路電圧を測定するプログラムを書け。開回路電圧とは、サンプルに外部から電流を印可していない(0 mA の電流を印可している)状態の電圧のことである。
https://www.toyo.co.jp/material/faq/detail/id=4713#:~:text=%E9%96%8B%E5%9B%9E%E8%B7%AF%E9%9B%BB%E5%9C%A7(Open%20Circuit,%E9%9B%BB%E4%BD%8D%E5%B7%AE%E3%82%92%E7%A4%BA%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82&text=%E3%81%9F%E3%81%A8%E3%81%88%E3%81%B0%E3%80%81%E5%88%9D%E6%9C%9F%E9%9B%BB%E4%BD%8D%E3%82%92%2B100%20mV%20vs.

おわりに

本シリーズでは電気化学の主要な測定手法の 1 つであるサイクリックボルタンメトリー(CV)を、ソースメータを用いて実行する方法について述べた。今回公開したコードでは(特に掃引速度に関して)市販の電気化学アナライザに匹敵する精度の測定は困難である。しかしながら、プログラミングによりソースメータを自ら制御してみることで、ポテンショスタットの役割をより深く理解できるようになるであろう。

参考文献

ケースレー製品による電気化学テストとアプリケーション

https://jp.tek.com/-/media/files/jp-documents/5-1_echem-testmethods-application-1kz-60158-0.pdf
本シリーズはこれを参考に作成した。

2400 ソースメータ

https://download.tek.com/datasheet/2400-jp.pdf
この資料によるとセンス入力インピーダンスは 10^10 Ω 以上。センス入力インピーダンスが 4 線式使用時の電圧計(Sense側)の抵抗値だと解釈した。加えて、WE-CE 間の抵抗値はせいぜい kΩ オーダー(10^3~10^6 Ω)である。以上から、電圧計にほとんど電流は流れないと結論づけた。

BAS 電極ハンドブック

https://www.bas.co.jp/ELH.html
BAS の資料は測定方法も具体的でとてもわかりやすい。あまりメジャーではないかもしれないが、Youtube の動画もわかりやすいのでオススメ。

電気化学の基礎

https://www.bas.co.jp/xdata/2009_1st_seminar/watanabe.pdf
今回のようにケーブルを接続する理由について、この資料をもとに考察した。

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