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なぜ3D CADは普及したのにAIは普及しないのか

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Last updated at Posted at 2026-06-11

はじめに

私は、

AIが普及しない理由は、

性能不足ではないと思っています。

むしろ逆です。

現在のAIは、

すでに多くの業務で十分実用的なレベルに達しています。

それにも関わらず、

企業への浸透は想像よりも遅い。

なぜでしょうか。

私はその理由を考えていて、

ある技術との共通点に気付きました。

それが3D CADです。

3D CADも導入当初は、

習得コストが高く、

設計者の作業工数も増える技術でした。

しかし最終的には多くの企業へ普及しました。

私は、

3D CADが普及した理由と、

AIが普及しない理由は、

実は同じ問題の裏表ではないかと思っています。

今回はその仮説について書いてみます。


2D CADはなぜ普及したのか

2D CADが普及した理由は比較的単純です。

設計者自身の作業効率が大きく向上したからです。

現在では当たり前ですが、以前は図面を紙へ直接描いていました。

ドラフターと呼ばれる製図機械を使い、

線を引き、

寸法を書き込み、

修正があれば消しゴムで消して描き直します。

図面を流用したい場合も、一から描き直すことが珍しくありませんでした。

しかし2D CADでは、

  • コピー&ペーストができる
  • 修正が容易
  • 図面管理が楽になる
  • 過去図面を再利用できる

ようになりました。

これは、

紙にイラストを描くよりも、

タブレットで描いた方が便利になるのと似ています。

設計者本人が直接メリットを感じられたため、

学習コストよりも得られるメリットの方が大きく、

急速に普及しました。


3D CADはなぜ普及したのか

3D CADは、2D CADほど単純な話ではありません。

実は設計者本人だけを見ると、

3D CADには大きな負担があります。

まず習得難易度が高い。

特にNXやCATIAなどのハイエンドCADは、

数日の研修で使いこなせるようなものではありません。

私自身20年以上設計をしていますが、

今でも新しい機能を使うたびに調べることがあります。

さらに、

設計者個人の作業という観点では、3D CADは2D CADより多くの工数を必要とします。

モデリングからのアセンブリ作成、

拘束設定、

モデルからの図面化など、

2D CADには存在しない作業も発生します。

つまり、

設計者本人だけを考えると、

3D CADは必ずしも圧倒的に便利な道具ではないのです。

それでも普及した理由

ではなぜ普及したのでしょうか。

私は、

最大の理由は

設計者以外も形状を理解できるようになったこと

だと思っています。

例えば2D CADの図面を考えてみます。

設計者であれば、

2次元の図面情報から頭の中で立体形状を再構築できます。

しかし、

設計経験のない人にとっては簡単ではありません。

2D図面の例

スクリーンショット 2026-06-12 7.30.00.png
図1 2D図面の例

この図面から形状を理解するためには、

平面上の情報を頭の中で立体へ変換する必要があります。

設計者は日常的に行っていますが、

営業、

品質、

製造、

調達、

サービス担当者には難しいことも少なくありません。

言い換えると、

2D図面は設計者だけが読める言語だったとも言えます。

同じ部品を3D CADで表現した例

スクリーンショット 2026-06-12 7.30.51.png
図2 同じ部品を3D CADで表現した例

一方で3D CADでは、

形状そのものを見ることができます。

さらに分解図を使えば、

部品構成も直感的に理解できます。

設計経験がなくても、

構成要素が一目で分かります。

営業も、

品質も、

製造も、

同じモデルを見ながら議論できるようになりました。

私は、

3D CAD最大の価値は形状作成そのものではなく、

組織全体の説明コストを下げたこと

だと思っています。

もちろん、

3D CADは導入コストも高い技術です。

習得には時間がかかり、

設計作業そのものも増えます。

実際、

現在でも2D CADを使い続けている業界や企業は少なくありません。

それでも多くの企業が3D CADを導入したのは、

導入コストを上回るメリットがあったからです。


AIはどうだろうか

ではAIはどうでしょうか。

現在のAIは、

  • 異常検知
  • 不具合予測
  • データ分析
  • レポート作成

など様々なことができます。

しかし、

私は3D CADと決定的に異なる点があると思っています。

それは、

AIは説明コストを下げるどころか、むしろ増やしてしまうことがある

という点です。

例えば、

AIが

「この不具合は発生する可能性が高い」

と予測したとします。

すると周囲は、

「なぜ?」

と聞きます。

AIを導入しようとしても、

  • なぜ有効なのか
  • どの程度信頼できるのか
  • どのような前提条件があるのか

を説明しなければなりません。

つまり、

AIは成果を出す前に、

説明が必要になる技術なのです。


AIのキャズムは説明性にあるのかもしれない

私は以前、

DXが進まない理由は、

AIに何ができて何ができないのかが組織で共有されていないからではないか、

という記事を書きました。

今回改めて考えると、

AIがなかなか普及しない理由は、

キャズム理論で言うところの「キャズム」にあるのではないかと思っています。

キャズムとは、

新しい技術が一部の先進的な利用者から一般利用者へ広がる際に生じる大きな壁のことです。

そして、

そのキャズムの正体は、

説明性

なのかもしれません。

3D CADは、

形状を可視化することで、

設計者以外にも理解できるようになりました。

一方でAIは、

予測や提案はできても、

その判断根拠を組織全体で共有することが難しい場合があります。

私は、

この説明性の壁こそが、

AI普及を難しくしている要因の一つではないかと感じています。


AIの説明性はAIだけでは解決できない

では、

AIがもっと賢くなれば解決するのでしょうか。

私は必ずしもそうではないと思っています。

もちろん、

説明可能AI(XAI)の研究は進んでいます。

しかし、

説明を受ける側にも理解が必要です。

例えば、

統計や機械学習の知識が全く無ければ、

どれほど丁寧な説明を受けても判断できません。

つまり、

説明する側だけでなく、

理解する側にも一定の知識が必要になります。


AIは学び方そのものを変えるのかもしれない

ここまで、

AIの普及には説明性が重要ではないか、

という話を書いてきました。

では、

人間側の理解はどのように進んでいくのでしょうか。

私は、

従来の社内研修だけでは限界があるように思っています。

AIや統計の理解には、

想像以上に時間がかかります。

私自身、

  • Python
  • 統計
  • 機械学習
  • 深層学習

を学んできましたが、

振り返ると1000時間以上は学習に費やしていると思います。

もちろん寄り道も多かったので、

効率的だったとは言えません。

しかし、

統計や機械学習の考え方を理解するには、

それほど極端な時間とも思っていません。

だからこそ、

数時間から数日の社内研修だけで、

AIを理解するのは難しいように感じています。

そこで可能性を感じているのが、やはりAIツールです。

ChatGPTをはじめとしたAIツールは、

分からないことをその場で質問でき、

理解度に応じて説明を変えることもできます。

従来の画一的な講義型学習ではなく、

一人ひとりに合わせた学習を支援できる可能性があります。

もちろん、

まだ発展途上です。

しかし私は、

AIは業務を支援する道具であるだけでなく、

AI普及に必要な「理解」を広げるための道具にもなっていくのではないかと感じています。


おわりに

2D CADは設計者の作業を楽にしました。

3D CADは組織の説明コストを下げました。

ではAIはどうでしょうか。

現状のAIは、

大きな可能性を持ちながらも、

説明コストを増やしているようにも見えます。

私は、

AIがなかなか普及しない理由は、

キャズム理論で言うところのキャズムが存在し、

その正体が説明性にあるのではないかと思っています。

そしてその説明性は、

AIだけでは解決できません。

人間側の理解も必要です。

もしかすると、

AIが本当に普及するのは、

AIがさらに賢くなった時ではなく、

私たち自身がAIを理解できるようになった時なのかもしれません。

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